2009/8/31 月曜日
民主党が大勝となったようですね。一市井の人間として鳩山さんにいくつかお願い。
- 「市場原理主義が云々」などという戯言をやめてください。市場が万能なんて思っている人は現実上ほとんどいません。日本の問題は「市場原理主義」ではなく「規制・行政万能主義」です。子供にお金ばらまくより、子育てに関する良質のサービスが競争的な価格で提供される市場が存在する方が重要です。
- 弱者に対するセーフティネットの欠如や機会不均等は悪ですが、格差自体は悪ではありません。所得の過剰な再配分や、特定の産業の保護で成長のインセンティブを歪めるのは「反成長政策」ですので慎重にお願いします。
- 情緒的な「アジア主義」という戦前の日本と同じ過ちを避けて下さい。アジアはグローバリゼーションから最も恩恵を受けている地域であり、「グローバリゼーションには反対だけどアジア重視」とは何を意味しているのかまったく不明です。「アジア通貨」などよりも、日本の市場開放の方がよほど役に立ちます。
- チャベス大統領が言うようなことを、NYタイムズなどの大新聞に載せないでください。喧嘩を売っても誰の得にもなりません。
文句ばかり書きましたが、 官僚機構への英国式の規律の導入や、政治主導のトップダウンで政策実施を行うシステムの確立には賛成です。建前だけでなく、実のある改革を望みます。 安倍さんや福田さんのように途中で投げ出さずに頑張ってください。
2009/8/26 水曜日
米国市場は相変わらず元気で、S&P 500は先週の金曜日以降節目の1015をしっかりと上回っています。昨日はセルサイドの方々の守護神ともサンタクロースとも言うべきバーナンキ先生の再任が発表されて、気の早いテクニカルな方々の間では、短期的に次の重要な線である1120を試す展開を予想される方も結構いらっしゃるようです。
当面は足下の数字は改善が続くと思われますので、その限りにおいては市場の勢いは支えられるのかもしれません。
ただし、私は長期的には株価は利益と成長率で決まるという迷信の信者なので、現在の株価が正当化されるには翌年の利益、成長率共に相当の良いニュースが必要であると思っています(しかし、例えばAllen/Galeのような賭けの損失の完全救済と流動性拡大の組み合わせの「資産価格バブル」モデルに従えば話は別ですが・・・ こっちが正解だったりして)。
現時点では、超々強気のセルサイド(まぁ、ショーバイですが)、強気のファンマネ連中などに比較すると、大手の機関、個人投資家などはそれほど温まっておらず、低水準で安定している債券の利回りや、さほど安定しているとは言えないクレジットスプレッドにそれが現れているように思えます(ただし、債券ワールドでも、ジャンクに近い方が一貫してアウトパフォームしているという傾向はかなり明確です)。ここら辺が変わってくると、景気回復期待も本物なのかもしれませんが・・・
2009/8/12 水曜日
先週は最後に米国の雇用統計の改善(コンセンサスの325K減に対して247Kの減少)という「爆薬」が破裂し、S&P 500は1005のレンジを大幅に超えて上昇し、一時はテクニカル的にフィボナッチ・リトレースメントの節目の1つである1015を上回りました。
過去の不況期においても、景気後退終了直後の1年間の株式市場のトータル・リターンは30-50%に達しているので(例えば1973-74年のエネルギー危機では、米国株式市場は回復期最初の1年間では39%、2年間では82%のリターンを記録しています)、景気後退終了直後の短期でのリターンを狙った資金流入があっても不思議ではありません。
ただ、先週の雇用統計に関して言えば、確かに良いニュースではあるものの、少しばかり注意が必要です。
1. 自動車セクターで2万8000も雇用が増えている。自動車部門は過去において2-3万は一貫して雇用が減っていましたから、これだけで5-6万の上ブレがあったことになります。もちろんこれには、最近の米政府による政策が効いていると考えられます。
2. ついでに自動車セクターの在庫調整からの波及効果によっても製造業全体で1-2万程度は上ブレはあったと考えられます。
3. 公的セクターの雇用にも大きなブレがあります。5-6月には公的セクターの雇用は6万程度の減少でしたが、7月は1万2000の雇用増となっています。
1-3はすべて景気回復ではなく、一時的な政策効果であり、それによるヘッドラインの雇用数に対する上ブレ効果は7-10万に達していることになります(したがって、これがなければコンセンサスの32万5000のマイナスというのは良い線だったと言えます)。平均収入の上ブレにも自動車部門の上昇と、最低賃金の引き上げと言う一時的政策効果が含まれています。
さらに、失業率の9.5%から9.4%への低下ですが、これにも総労働人口の減少という分母の減少が効いています。BLSによると6月の総労働人口は154,926,000人で、7月にはこれから796,000人減少しています。これらには失業の長期化により、就職を諦めた人なども含まれています。
雇用状況を別の角度から見るために、総人口と雇用人口の比率を見ると、7月は59.4%と6月の59.5%からさらに低下し、25年来の低水準となっています(下図、Econompic Dataから)。ちなみにこの比率は年初時点では61%でした。

したがって、先週の雇用統計は「悪くはない」が、そのトレンドを将来にわたって当てはめるのは適切ではないということになります。経済状態がプラスの方に向いているのは確かであるとしても、雇用情勢が実質的に改善し、個人消費などのメインエンジンに火がつくのはまだまだ先であると考えるのが妥当です。
(このトレンド自体は過去の深刻な不況と同様です。雇用が改善し始めるのは大体、景気後退が終了してから10-12カ月後となっています。したがって、逆に言うと「雇用や個人消費がダメだから経済回復もダメだ」というのも過去の例を無視した極端な議論と言うことになります)。
2009/8/5 水曜日

さてと、2人の米国人ジャーナリストの解放(「恩赦」だそうですが)が決定されたというのは良かったとして、ビル・クリントンほどのステータスにある人間が行くのですから、お互いそれだけではないというのは明らかだと思います。
逆に言えば、北からすればクリントン・クラスの人間を引き出すためにこそ必要だった「人質」であり、米国にすればクリントン・クラスの人間を送り込む「口実」になったとも言えます。
米国人も北朝鮮人も日本人ほど健忘症ではないので、以前もカーターが訪朝した後、米朝関係は「リセット」となり、クリントン政権と北朝鮮とのいわゆる「米朝枠組み合意」が成立したということを押さえておいても良いと思います。
最近の大統領としては、私はクリントンをかなり高く評価しているのですが、米朝枠組みに関しては(ズボンのチャックがだらしないところと同じく)大きい例外の1つで、北朝鮮に上手くしてやられただけではないかと思っています。
しかし、米国の民主党系のインテリの方々はそうは思っていない人が多く、クリントンの築いた枠組みがもう一歩で成功しつつあったのに、ブッシュが登場してそれをぶっつぶして、そのために北が核開発を進めたと考えている向きが多いということも、忘れっぽい日本人は押さえておく必要があります(一例としてKaplanの記事)。
(私は、これは極めて米国中心的な誤った見方だと思っています。これらの方々の考えは、たとえて言えば、ルースベルトが大日本帝国を締め付けていなければ、日本は帝国海軍を廃棄しただろうというようなものです)
オルブライトが金正日と並んでマスゲームを楽しく見てからまだ10年も経っていません。そしてオバマ大統領の就任直前の金融サミットではオルブライトがオバマの名代を務めたことからも分かるように、クリントン政権時代の名残りは現政権にも強く残っています(イマニュエル氏をはじめ、ホワイトハウスの要所要所にもクリントン時代のスタッフが就いています。まぁ、それに言うまでもなくヒラリーが国務長官をやっているわけですが)。
現在、イスラエルでも、イランでも、そして北朝鮮でも外交面で少し行き詰まっている感のある米国からすれば、再び「第2次米朝枠組み合意」で振り出しに戻る(今度は北朝鮮はもう核保有国ですから、北の政権からすれば「上がり」のあとであって、振り出しではないですが)という可能性もあるかもしれません。オルブライトは2006年にプリンストンでの学生に対する講演で「対北朝鮮政策を中国に委託することなどできない。北朝鮮はアメリカとの対話を望んでいる」と述べています。
日本からすれば、「核保有国」の(そして必ずしも友好的ではない)隣国と付き合っていくということに直面せざるを得ない、長い時間の始まりになるのではないでしょうか。
2009/8/2 日曜日
S&P 500は5週連続の上昇で、先週は一時995を超えて1000が視野に入る点まで進みました。
先週書いた通り、セルサイドの鼓笛隊の皆さんは利益予想の引き上げに忙しくて、今や2010年のS&P 500の予想利益は74.55ドルになっています。これで計算すると、先週の末時点でS&P 500の2010年予想PERは13.25倍となり、過去50年間の平均である16.5倍と比較して大幅な「割安」水準にあるということになります。
逆に過去50年平均のPERを予想利益に適用すると、S&P 500は前週末の987.5から1230になっても良いということになるんですが、これは少し、というか大々的に「???」ということになります。
大体セルサイドのアナリストの予想というのは、株価が上昇すると上がる傾向にあり(笑)、逆に株価が下がるとそれに合わせて下がる傾向にあります。実際の数字で見ると、S&P 500の利益は2006年後半の経済がギンギンだった時のピークでも85ドル程度です(下図のS&P 500の過去の利益推移参照 )。

まぁ、オペレーショナル・ギアリングもありますし、アジア経済などはかなり急速に回復しているので「あり得ない」とは言えませんが、75ドルの利益という数字の可能性は現段階では「極めて高い」とは言うのは少しばかり難しそうです。
では、株価はもう上がらんのか、大きく下がるのか、と言うとこれまた悩ましいところで、過去2週間の株価の動きは極めて勢いの強い市場の特徴を示しています。来週は公式統計ではISM、製造業新規受注など、企業ではP&G、クラフト、シスコなどの超大物の業績発表が控えています。これらの結果次第で今まで様子見だったリテールの投資家などが流れ込んで出来高が増えるようなことがあれば、また賑やかになる可能性も十分にあり、一段の上ブレがあっても不思議ではありません。
ただ、足下の経済は工業生産が示しているように改善傾向が明らかであるとは言え、良い予想も悪い予想も含めてすべてはまだ想像の範囲でしかなく、回復の速度に関しても全く分かりません。私は個人的にはどちらかというと楽観的な方ですが、プルーデントな投資家にとっては、まだ目先の靄が晴れるまでは様子見が正しい態度であるように思えます。