2009/6/29 月曜日
この間、ピーター・シフの番組を聞いていたら、「もともと、Dr. Doomと呼ばれていたのはオレなのに、最近のメディアではDr. Doomと言えばルービニ(NY大)のことになっちまった」と言っていて笑ってしまいました。
米国は大体、市場、経済とも上がってる期間が下がってる期間を大幅に圧倒しているため、「弱気派」は相当に難しいショーバイです。フツーは「変わり者」扱いで、悪くすると「変態」扱いされます(マジです)。
しかし、その「変態」扱いに耐えぬくと、このように数10年に1度の大崩壊があった時に、今のルービニ先生のように一躍「時の人」になるチャンスが巡ってきます。
ピーター・シフなどは、昔から色んなとこで名を売っていますから、地味なルービニ先生のことはあまり知らなかったかもしれません。
しかし、ルービニ先生は「GLOBAL MACRO」というウェブサイトをやっておられた大昔から(今みたいにブログなんてなかったですから、サイトをいちいち更新しておられました。数年前に有料サイトになりました)、一貫して「世界経済の不均衡は今に大災厄をもたらす」と言い続けておられましたから、「筋金入りのヘンタイ」と言えます。大学のセンセーではなく、どっかでエコノミストでもやっていたら、おそらくとっくに「クビ」になっていたと思われます。
とゆーわけで、先生、ずっと完全に「サイコ」扱いで無視されてきましたが、昨年からの市場大崩壊で一躍「変態」から「カサンドラ」に昇格し、いまや「Dr Doom」の称号を受けて、いろんなところで大活躍されています。人間、頑張ってると良いことがあるもんです。
個人的には「Dr Doom」というと、マーク・ファーバーという印象があります。シフ社長とかルービニ先生はあまりユーモアがないので、読んだり聞いたりしてるとちょっと気分的にイマイチなんですが、ファーバー博士はユーモアがあるのであまり疲れません。
ファーバーの最近のレターの冒頭は、「もし、コロンブスに諮問委員会があったら、コロンブスはおそらくまだ桟橋にとどまったままだっただろう」というアーサー・ゴールドバーグの有名な文句で始まりますが、それに続けて「私だったら次のように続ける」として、ファーバー曰く
もし、コロンブスが船にバーナンキと、ガイトナーと、サマーズを乗せていたら、サンタマリアはアンダルシア沖に出たところで沈没していただろう。
船が最初の嵐に襲われた際に、バーナンキは中世からの海図を眺めて思案に耽っていただろうし(彼はまだ、フラットパネルTVの値段が下がるのは悪いことだが、郵便代や地下鉄料金、保険料が上がることは良いとかいう考えに取り憑かれている)、ガイトナーは他の船員といかがわしい取引をするのに忙しくしていただろうし、当時ならさしずめサンタ・マリアの設計者だっただろうサマーズは、船が浸水し始めているのに気持ちよく眠りこけていたことだろう。
ファーバーはどっちかというと米国外の比重が高くて、弱気一徹ではないですし、スイス人ですから米国メディアでの「Dr Doom」競争で勝つのは無理かもしれませんが。
2009/6/26 金曜日
郵政の社長の解任とか、民営化見直しとか、いつまで回れ右をすれば気が済むんでしょうか。
ほとんど転用もできないような赤字資産を従業員付きで引き取って頂くという話の何が悪かったのか良く分かりませんが(キャッシュフローを生まない「財産」は借金と同じです)、政治家の本分は事業価値の最大化ではなく、国民財産の保全でもなく、単に得票の最大化なので、こういうことも別に驚くべきではないのでしょう。
米国でも、政治家が新たに「手に入れた」GMが早くもオモチャにされていて、拠点の閉鎖が地元政治家の圧力で白紙に戻ったりということが起こっていますが、まだGMの国営は少なくとも暫定的というコンセンサスがあるだけましです。
郵政が企業としてやって行けるのかどうかは分かりませんが、それはどこの企業でも同じです。早く愚かなことに時間と労力を割くことをやめて、さっさと民営化するか、それがいやなら解体して売却する案を出すとか(まぁ、温泉旅館の売却ですらこの騒ぎですから、政治的に実現可能性はゼロだと思いますが)、前向きの案が出せないのでしょうか。国が資源をつぎ込んで下手な経営をすべき事業であるとは到底思えません。
しかし、この体たらくの原因の大部分は首相の無能さにあると思いますが、英国のブラウンもそうですが、やめないんですねぇ。こーゆー人は。後継者もいないし、国民の選挙もナシでの3人目の首相ですから、やめて別の人にというワケにもいかないと思いますが。
「友愛(Compassion)」というのは、とても良いスローガンだと思いますが、向ける対象を間違っています。鳩山さん。
(後記:ところで、これは西川社長が適任だという記事ではありません。個人的には西川氏は社長にあまり「ふさわしくない」のではないかと思っています)
2009/6/24 水曜日
ホワイトハウス前で「自由を愛する」イラン人のデモが行われたそうです。数百人と小規模なようですが、んんん?
国旗が違う・・・ 何と皆さんパーレビ国王時代の旗を振っていらっしゃいます。しかも、その後には昔のパーレビ国王のご子息まで登場したようです(パーレビさんは、最近色んなところで登場しておられますが、「もし私が選ばれたら国のために務める用意がある」そうです・・ )。どわー。CNNなどでも極めて好意的に取り上げられています。
私の知り合いのイラン人には、イスラム革命で国外に逃げ出したインテリ連中のご子息なども結構いるのですが、さすがにパーレビ体制が良かったというのは(当時の体制で甘い汁を吸っていた連中を除いて)あまり聞いたことがありません。少しでも体制批判すれば、秘密警察サヴァクに引っ立てられるという恐怖政治だったわけですから。
当時イランに駐在していた日本の方の話などを聞くと、日本語でシャーの悪口を言ってもどこからかサヴァクに通報されるとのウワサまであったそーです。で、もちろん、パーレビ政権は、それ以前の民主的に選ばれたモサデク政権を米国がクーデターで倒して打ち立てた「立憲君主国」だったということを考えると、上のデモは一体どなたが組織されたもんなんでしょうか?
で、今までの展開を私なりにまとめると:
1. 選挙はアフマディネジャドが実際に勝っていた可能性が極めて高い。
イランの大統領の権限はそれほど強くないというのは、ハタミの時もラフサンジャニの時も言われていたことです。アフマディネジャドだけが例外とも考えられません。ムサビやラフサンジャニの反対行動を見ても、革命政権の中枢部内部でさえ強い対立があることが分かります。
そのような状況で組織的に問題も起こさず全国的に1000万票以上もの不正ができるとは少し考えにくい様な気がします。事前の(海外の組織が行った)全国的な世論調査でも(選挙結果以上の)大差が付いていましたし。
2. 選挙後の騒乱は「出来レース」か?
ムサビは開票が始まる以前に勝利宣言をしていました。投票結果がどうであれ、それを認めないという意思表示です。そしてその通り、開票直後に反対派を率いて大規模な抗議活動を行いました。この強気の理由は分かりませんが、自分たちに対する政治的攻撃があれば大変なことになるぞという、ハメネイに対する示威行為ではないでしょうか。
ムサビの後ろ盾のラフサンジャニやハタミが巨額の富を有しているのは多くのイラン人が知っています。これらの政権幹部は、海外メディアの常宿の5つ星ホテルも多数あるテヘラン北部の超金持ち地帯(昔のパーレビ政権の幹部が住んでいた地帯)を支配していますが、こうなった経緯にはもちろん疑惑があります。
しかし、革命政権の正当性にかかわるものだけに、この疑惑は公然とは語られていません。それが、アフマディネジャドが、選挙前のテレビ討論で、国が苦しんでいた時期にラフサンジャニなどが不正蓄財を行っていたと爆弾発言したもんですから視聴者の間では結構な騒ぎだったようです。
ムサビやラフサンジャニやハタミこそが革命政権の腐敗から甘い汁を吸ってきた連中で、自分こそがその不正と戦う改革派なのだというポピュリスト的なポーズだったわけですが、これは貧乏人の大衆には受けた一方で、ムサビなどからすれば、アフマディネジャドが本当に危険な男であると分かった一瞬だったのではないでしょうか。おそらく、選挙後に示威行動をしないと、何をされるか分からんと思ったのではないでしょうか。
3. 外国メディア
この騒乱に外国メディアが飛びついたわけですが、それに関しては前のエントリーで書いた通りです。イラン人は過去の痛い経験から何かあるとすぐに英国人(米国人に対するよりも恨みは深いようにすら感じます)の陰謀のせいにするクセがあって、今回もBBC追放という形でそれが現れていたのは面白く感じました。実際、モサデク打倒で米国をそそのかしたのは英国だそうですが。
ただ、欧米のメディアにはやはり「後進的なイスラム体制」という抜きがたい蔑視感情があるように思えます。報道が完全にバランスを失っていると感じた者も少なくないはずです。今まではガザでもイラクでも「残酷な場面」の報道をある程度自粛してきたメディアが、今度はイラン人女性の残酷な殺害現場ビデオを休む間もなく報道するのはかなり異常に感じます。
私はイランの現政権による核武装は封じ込める必要があると思っていますし、イランの民主化も結構なことだと考えています。それが武力などによるものになる可能性があることも認識しています。しかし、それでも今回の選挙後の展開には極めて居心地の悪い空気を感じます。この感覚は全然上手く説明できないのですが、ひょっとするとそれは、私も戦争により「政権転覆」された国の人間だからかもしれません。
2009/6/23 火曜日
金融規制のあり方に関しては、いろいろ言われていますが、どーもこういうのはビジネスの世界に詳しい方の話が少なく、おまけに米国の現政権のブレーンは法律屋さんと学者さんと役人の集まりなんで(ビジネスと役所の両方のケーケンのあるボルカーおじいさんは、サマーズに完全にブロックされてるみたいですし)、どうも話がスキマティックで面白くありません。
というわけで、政策面でもビジネスに対するコンサルでも経験豊富なバート・エリーおじいさんに銀行規制について聞いたエコノミスト誌のインタビューはなかなか良かったです。
「あのなぁ、どうせ規則なんかでは人間は抑えられんのじゃよ。インセンティブの向きを変えんとのぅ。税金とかな。格付機関の規制なんかも無駄じゃ。連中には訴えられる方が効くんじゃ。(政府の提案している)システミック規制機関なんか上手くいくワケないじゃろ。骨折り損じゃ。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」と言うことで、相変わらず良い味出してます。
2009/6/22 月曜日
イランの選挙(後)報道はますますヒステリー状態で、偏向の度合いも極めて激しくなっているように思えます。全然アフマディネジャドには好意的ではない私が、この件に関する話では、なぜか逆の立場に立たされていたりして苦笑せざるを得ません。
米国では報道されるデモの光景も反対派のものばかりで、政権支持派のデモはほとんど無視されています。あまりイランの現政権には好意的ではない米国在住のイラン人の知り合いにも「これはイランを攻撃しやすくするための大規模なプロパガンダではないか」と心配している向きがいます。一つ例を出すと、以下は見て分かるようにアフマディネジャド支持の集会ですが、

同日の集会が、BBCニュースでは以下のようになり、

ご丁寧にも「ムサビ支持者(反対派)は再び抗議の禁止を無視した」というキャプションが写真に付いています。この例では、BBCは読者からの指摘を受けて、「不注意でした」との「お詫び」を掲載していますが、一体どんな「不注意」なんでしょうか? BBCでこれですから、この他にも指摘を受けないまま「正しい」ものとして流されている情報が山のようにあると思われます(BBC支局長には当局から退去命令が出たようですが、これでまた大騒ぎになるんでしょうねぇ)。
昔CIAにモサデクを倒された経験を持つイラン人が陰謀を疑うのも無理はないような気もしますが、このようなことがなぜ起こるのでしょうか。
1. 欧米のメディアの中東拠点が、コスト削減で無くなったり弱体化している。おそらくテヘランにいる記者の多数は「サラーム」程度のペルシア語しかできないんじゃないでしょうか。もともと改革派の多い大都市のテヘランで、英語での取材をすればニュースの結果は見えているような気がします(しかし、イラン人の反対派が英語のプラカード持って一体誰にデモしてるんでしょうねぇ)。
2.「民主主義バイアス」:「非民主的な政権と、それへの反対派だったら、反対派が正しいに決まっている」。底流には「選挙は民主主義的なもので、反民主主義的な奴が選ばれるはずがない」という欧米人の「信念」みたいなものがあるような気がします。例えばパレスチナに関しても、多くの米国人が「脅しなどのないフェアな選挙ならハマスが勝つわけがない」なんて言ってます。
3. 「売れる記事へのプレッシャー」:国中に2みたいなバイアスのあるところで、「いやー、アメリカ人が思ってるよりアフマディネジャドへの支持は強いみたいよ」なんて言ったら石でも投げられて、悪くしたらクビになりかねません。ニュースもショーバイですから、消費者の嗜好に合わせる必要があるのでしょう。
しかし、こういうことで外交にも影響を与える世論が形成されるとしたら少しばかりおそろしいことです。
アメリカや日本にいると良く分かりませんが、アフマディネジャドというのは「(欧米人から見て)無知で貧しい」大衆に相当の人気があります。インドネシアにアフマディネジャドが訪問した際にも、外国首脳の訪問とは思えないような熱狂的な歓迎ぶりで、大変な大騒ぎだったようです。
ムサビでもアフマディネジャドでも核開発は進んでいるでしょうから、いずれにせよ制裁強化やイスラエル/米国による攻撃の可能性はあるわけですが、これで確かに世論的には攻撃はしやすくなったかもしれません。キッシンジャーなどもテレビで外からの圧力による体制転覆を説いています(懲りない人達です)。
(ついでに言うと、いろいろ話題になっているTwitterでのイラン情勢に関するTweetに関しては、その出所を追跡するとかなり面白いことが分かるのではないかと思います)
(追記:ところで私は人間の自由を奉じているので、イランの現政権は全然支持しておりません。そこらへん誤解なきようお願いします・・・)