2009/5/30 土曜日
日本では「北朝鮮を核保有国と認めず 日米一致 」なんて目出たい見出しのニュースが出ているみたいですが、以前も書いたように、こんなことに実質的な意味があるとは思えません。
それよりも、国家安全保障担当補佐官のジム・ジョーンズ氏が北朝鮮の核は「当面の脅威ではない」と述べたり、上のニュースにも登場しているゲーツ氏自身が今は「危機的状況ではない」と話したり、かなり含みのある発言をしていることに注目すべきでしょう。
イスラエルの情報誌のDEBKA fileは、米国の北朝鮮の核に対する「反対」は容認の前触れだと書いています。
DEBKAfileのワシントンの情報筋は、オバマ米大統領が、世界第9番目の核保有国としての核武装した北朝鮮と共存する必要性を米国と世界が受け入れるように準備していることを確認した。
と書いています。まぁ、ソースがソースだけに、そのまま信じることはできませんが、米国が現実に取り得るオプションを考えると可能性は高いと思われます。
米国でも、CatoのDoug BandowやハーバードのStephen Waltなどがほとんど「放っておけ」という論陣を展開しており、おそらく米国の民主党が勝った時点でこの展開は想定しておくべきだったのでしょう。
2009/5/29 金曜日
世の中どうも「デフレがコワイ派」と「(ハイパー)インフレがコワイ派」に分かれているようです(米国の場合は、この議論に政治党派のメッシュが加わるので、単純なハナシにならないのですが)。
私は相当な高インフレ環境で働いたこともあるのですが、給料日にもらったおカネの価値が毎日ガンガン減っていく感覚というのは経験してみないと分からない様な気がします。
すぐにおカネをドルなんかに替えて置いておくことのできる連中は、給料日に(仕事そっちのけで)速攻で替えるということになりますが、安月給だったり、おカネが入るスケジュールが不定期だったり、為替制限がかかってたりすると超悲惨です。もらったおカネを毎回そのまま落としてしまうようなもんです。
こういうところのお金持ちは、銀行なんてのもそもそも信用してない向きも結構いて、こういう方々は大体はハードアセットで防衛するということになります。まぁ、インフレだろうとデフレだろうと、ビンボーは浮かばれません。
最近はジョン・ポールソンのPaulson & Co.が金のETFのSPDR Gold Trust(GLD)の最大保有者になっていたりして(第2位はLone Pine Capitalでした)、連中はFedの信認が多かれ少なかれ揺らぐという状態を少しは想定しているのかもしれません。最近では「Dr Gloom」ことマーク・ファーバー博士が「米国の超インフレを確信している」なんて相変わらずの放言で少し話題になっていました。
で、「デフレがコワイ派」と「ハイパーインフレがコワイ派」はお互い仲間内で固まっていて、直接に火花が散ることは少ないのですが、今年1月のバロンズではこのマーク・ファーバーとビル・グロースが少しばかりヒートしていました。
ファーバー:経済が悪くなればなるほど、連中は貨幣を増刷する。今のジンバブエか80年代のラテン・アメリカみたいなものだ。これらの国は大幅な赤字を抱えて、貨幣を増刷したが、現地通貨ベースではすべての値段が上昇した。通貨が崩壊したんだがね。
オスカー・シェーファー:米国の連邦当局は、民間部門の信用収縮を相殺するために、バランスシートを拡大してるだけだろ?
グロース:その通り。(ワイマールやジンバブエなどと米国は)状況が全然違う。米国では数兆ドルの資産破壊が起こっていて、これは修復の必要がある。Fedのバランスシートが2-3兆ドル増えたからって、ハイパーインフレになるなんてのは見当違いだ。
ファーバー:ビル(グロース)と10年以内に米国が極めて高いインフレになるという賭けをしてもいい。来年の財政赤字は2兆ドルにもなるだろうから、Fedが実質金利を引き上げるのは難しいだろう。金利を上げたが最後、別の破滅が待っているからな。
グロース:おいおいマーク、あんたはもうちょっとアタマが切れるはずだぞ。信用創造は経済成長の中心で、信用創造が10%も20%も収縮したら経済は成長できないことくらい分かってるだろ?
ファーバー:米国経済は単に借金中毒なだけだ。真っ当な経済なら債務の成長率が名目GDP成長率を上回る必要はないはずだ。これに合意するかい?それともアンタは負債が常に名目GDPよりも速いペースで成長しなきゃならんとでも思ってるのか?
グロース:まぁ、その点は認めるよ。
ファーバー:われわれは立場が違うからな。ビルは資産運用会社の経営者だが、私は米国金融市場の外側からの観察者だ。といっても私もここ30年で初めて米国株を買ってるがね。
まぁ、信認の問題に関しては、Fedの信認の問題というより、ガイトナー/オバマでは議会民主党の大物の圧力を抑えるのは難しいかもしれない、というホワイトハウスに対する疑念の問題ではないかと思います。ところで、Fedの独立性に関しては、アラン・メルツァーが最近のCFRのパネル討論で面白いことを言ってました。
アーサー・バーンズはそれほど独立してなかった。ポール・ボルカーは極めて独立していた。アラン・グリーンスパンはそこそこ独立していた。今のFed?財務省の一部門だ。・・・・(中略)・・・・本当に独立している中銀は世界でECBだけだ。連中には政府がないからな(笑)
2009/5/25 月曜日
北朝鮮がまた核実験を実施し、そして米政府は今のところまた相変わらずの対応の構えのように見えます。オバマ大統領の声明に曰く
北朝鮮の威嚇的な行動により引き起こされた危険に対しては国際コミュニティによる行動が必要である
北にとっては恐ろしくも何ともない、形式上の「お怒りの言葉」をまたまた出すくらいしか「国際コミュニティ」にはできないのではないかと思いますが(今回はもう少し格好を付けるかもしれませんが)、そろそろ日本人も北の核保有に対する米国の最終的なシナリオを想定しておいた方が良い気もします。
米国にとってもオプションは大してあるとは思えません。
1. 北に対する米主導の軍事行動:まず問題外。中国と再度衝突する可能性すらあります。
2. 制裁強化:北が核をあきらめるほどの(その可能性が少しでもあるとして)、あるいは北が崩壊するほどの厳しい制裁には中ロが反対するでしょうから、これも可能性が低いとでしょう。
とにかく、北が揺らぐような措置には中国が必ず反対するでしょうし、米国の現政権には中国と対決する気は毛頭ないようなので1も2も現状ではアウトでしょう。
中国にとっては、北が万一崩壊でもして、そして万が一にでも親米政権などができて、近くに米軍基地などができることに比較すれば、過去の「血の同盟国(で核保有国)」の方がはるかに「マシ」ということになります(今回は少なくとも形の上では、以前よりもかなり強い「お怒りの言葉」を発するでしょうが)。
したがって、中国がこの件でマジで協力することがあるとすれば、中国はおそらくその交換条件として「(少なくとも将来における)朝鮮半島からの米軍の完全な撤退」あるいはそれに類する条件を求めることになるんじゃないでしょうか。そう言う面では中国にとっては北朝鮮が突っ走って、それに対する措置の必要性が高まるほど、自国の交渉カードが強くなるという面もあります。
というわけで、米国にとっての3番目のシナリオは
3. 中国の協力による北朝鮮政権の屈服、または交代/崩壊 -> 北の「中国化」、長期的に朝鮮半島全域における中国のプレゼンスの増大と米国のプレゼンスの低下
ということになります。米国はこれがいやなら
4. 北を「各クラブ」の一員として(明示的にしろ、暗示的にしろ)認めて、そのようにつきあう。しかし第3国やテロ組織への核技術の流出がコワいので、その代わり核拡散に対するそれなりに厳しい条件を付ける。
というようなところでしょうか。しかし、これはイランなどへの波及もあり得るので米国にとっては3と同じように困難なことです。もちろん、今の米民主党周辺では
5. 「交渉してるうちに少しはマトモな政権ができる」
という都合の良い夢を見ている向きも多いようですが、これは最終的には3か4への「つなぎ」にしかならないのではないでしょうか。今の政権にとっては、これが一番簡単そうな気もしますが。
いずれにせよ、国連決議だろうが制裁だろうが、大した意味がないのは歴史が実証済みです。どう転んでも、日本人にとっては非常にユーウツなことではあります。
2009/5/23 土曜日
ドル・インデックスは、5月初旬に当面のサポートと思われていた83を割り込んだ後ぐずぐすしていましたが、先週はとうとう一時80を割り込みました。
英国の格付けのアウトルックがネガティブに引き下げられたことから、「次は米国か」という懸念が広がったことが大きかったのですが、最後に効いたのがこの方の発言です。
みんなひそひそとは話していても、ビル・グロスほどの御大が公然と、米国がAAAの格付けを失う可能性について語るというのは米国人にとっては(それが相当にシニカルな人間であっても)結構こたえたようでした。
イタリアと同格の日本人からすれば「こんだけ借金するってずっと言ってんだから今さらガタガタしてもねぇ」と思うのですが、何と言っても天動説の方々ですからショックきついです。今までさんざん米国経済をこき下ろしていた連中まで、グロスがこれほどオープンに米国格下げの可能性について触れたのには少し驚いていました。
実際の問題となればトンでもないハナシなので、「別に今日明日のハナシじゃないんだけどね」と言っているグロスもどこまで真剣か分かりませんが。
まぁ、これで1つタブーが無くなったということで・・・
Pimco’s Gross Says U.S. ‘Eventually’ Will Lose AAA
2009/5/21 木曜日
米国では全然ニュースが流れてませんが、東京発のニュースで次期駐日大使としてウワサされているのは、オバマ大統領の選挙戦での金集めでベスト30の「バンドラー」(大口資金調達人)に入る方だそうです(4年前はジョン・ケリーのためにも結構な大金を集めたようですが)。
知り合い(キョーワ党支持者。日本人に気を使って):「いくら何でも重要な友好国に金集めの論功行賞でトーシロを送り込むなんてトンでもないハナシだよな。」
私:「金集めのプロだろ。どーせ日本で公共投資の資金調達でもさせんじゃねーの。ぴったりかもよ。」
周り:(笑い)
いや、分かりませんが・・・