2008/12/31 水曜日
今年はまったくトンでもない年になりましたが、そのおかげか、仕事着のまま寝てしまうような忙しさもやや影を潜めて(不況を感じますねぇ)、年末はおおいに飲んで、ちゃんと寝間着に着替えてゆっくり眠るという、怠惰な生活を楽しめました。
相変わらず経済の見通しは極めて厳しいものですが、現在の状況は、長期にわたる水ぶくれ経済でやっともっていた企業が淘汰され、新たな成長をリードする企業が生まれる「創造的破壊」のプロセスにもなり得ます(米政府/当局が無茶苦茶にいじり回さなければですが – そして、その可能性はかなり高いようにも見えますが・・・)。
先日、テクノロジー関連の連中と話をしていた際に、ある投資家が「経済が金詰まりで、ベンチャー・キャピタルも金がなくてIPO水準も最低。スタートアップ企業は縮小の嵐で、ハイテク大手も下方修正の連続。何をそんなに楽観できるんだ」というようなことを言ったのですが、誰かが「みんながアタマを使うのは、金がなくて時間があるときだけに決まってるじゃないか」みたいなことを言って大笑いになっていました。
確かにマイクロソフトやアップルという今では米国を代表する企業が生まれたのは、1973年から1975年の石油ショックによる不況の直後で、そのベースになった技術のi8080やMC6800が発表されたのは不況の最中でした。当時の株式の高値から安値への下落率はほぼ50%と現在の危機に匹敵するもので、米国政府は経済安定のために賃金統制や価格統制といった非常手段をとっていました。MSの発展の基礎になったMS-DOSが生まれたのも、1980年代初頭のいわゆる「2番底不況」の頃です。
いずれにせよ、アニマルが山のようにいる米国の経済に関しては、私は長期的にはそこそこ楽観しています(日本に関しては少しばかり心配していますが)。
ちなみに、下の写真は創業から数年後(今から約30年前)のマイクロソフトの社員達の写真ですが、少し以前に「あなたなら、この会社に投資しますか?」というタイトルが付けられて、いろんなサイトで冗談ネタに使われていました。大抵の人はまず投資しないと思いますが、MSの株式が公開されたのはこの写真から8年後でした。(IPO後の時価総額は約5億ドル、現在は一時の数分の1になっていますが、それでも約1700億ドルです)。

2008/12/13 土曜日
米上院でビッグ・スリーに対する資金繰りの支援が否決されて、民主党の方々や、目先の株価が心配な株屋さんの間では、「フーバー主義者がディールをぶっつぶした」と怒ってる向きも多いようです。
決裂のタネは、共和党が法案にくっつけようとした「労働者の給料を日本メーカーなみに下げること」という条件だったようで、不謹慎ですが少し笑ってしまいました。ビッグ・スリーの労働者からすれば、給料の4割カットになるわけですから、労組の幹部もすぐにイエスとは言えないのは無理ありません。
連邦準備制度も少し前に「議会がノーと言った融資を連銀がするわけにはいかない」としているので、あとはホワイトハウス次第となりました。
一方のGMは、破産の可能性に備えて、大きい破産ではおなじみのWeil Gotshal Manges事務所のHarver Miller氏を呼んでいると報道されています。11条申請にしても、GMのキャッシュの状態から考えれば、プリパッケージにしないと即7条逝きになってしまうでしょうからあまり時間はありませんが、相変わらずのんびりした経営陣です。
一部では、オバマ政権まで生き延びるくらいの最低限の金をホワイト・ハウスが出すのではないかという希望的観測も流れていますが、数カ月後にしても、11条適用が正道であることには変わりはないと思われます。
しかし、「あの」スティグリッツ先生も11条の適用を勧めるくらいですから、自動車屋さんには相当風当たり強いです。
2008/12/6 土曜日
米国の11月の雇用統計で非農業部門の雇用者数は前月比53万3000人だったそうです。日経のニュースでは
第一次石油危機の影響で景気が急激に悪化した1974年12月(60万2000人減)以来、約34年ぶりの大幅な落ち込みとなった。
だそうです。他のニュースでも大体同様の扱いのようです。しかし、確かに相当悪いんですが、1974年と2008年のデータの比較って意味あるんでしょか?1974年に60ドル入ったサイフ落とすのと、今年53ドル入ったサイフを落とすのを比較するようなもんです。
ちょっと調べれば分かりますが、1974年12月時点の米国の労働人口は7,760万人、今年11月では1億3,610万人で、労働力全体に対する比率で見れば、1974年12月の雇用者数の減少はマイナス0.78%、今年11月はマイナス0.39%で、今回の雇用者減のインパクトは1974年当時の半分程度です。
ついでに言うと、1973年/75年の不況期には、11月にも36万8000人の減少(-0.47%)、翌年の1975年1月も36万人(-0.47%)、75年2月も37万8000人(-0.49%)とメガトン級の失業が続いています。ちなみに73/75年の不況は、期間は16カ月、GDPはその間に3.4%の縮小、株式市場の高値から安値の下落率はマイナス48.2%、ピーク時の失業率は9.0%となっています。
今回は、景気後退の期間はこれを超える可能性がかなり高いとみられますが、まだ(金融以外の経済全体の状態という意味では)「100年に1度」には少しばかり遠いような気がします。
そういえば、投資業界歴45年(・・・)というスティーブ・ルーソルドお爺さん(ルーソルド・グループ)は、少し以前にみんなが「今回は異例」とか「何十年ぶり」とか騒いでるのに対して、「みんな市場の歴史を全然勉強していない。今回のようなことは過去にもあったし、新しいことではない」と少しご立腹の様子でした。
2008/12/1 月曜日
ビッグスリーが支援を得るために作成を求められた再建計画の提出期限が迫っています。
10日くらいの期間で再建計画ができるはずがないという向きもいますが、私は結構素晴らしい再建計画が出てくるのではないかと思っています。何たってビッグスリーの計画立案の能力は実証済です。立案した計画を実行できない無能力さも実証済ですが・・・
というわけで、ビッグスリーの経営陣は議会の諸先生の命ずるがままに、12月1日の週は裸踊りでも、綱渡りでも、一気飲みでもするでしょうが、その結果どうなるかは予断を許しません。以下、シナリオ予想。
1. 満額回答:議会もレームダック状態ですから、こんな重大な決定をできる可能性は低いと思われます。ブッシュ大統領が首を縦に振るかどうかも分かりません。経営陣もこの可能性は低いと見ているのではないでしょうか。甘く見て可能性10%。
2. オバマ政権に先送り:オバマ政権でこの問題を扱うまでGMがもつように、少額の「つなぎ融資」をする。オバマ次期大統領も新たな民主党議会も、労組の強力な支持を受けて当選していますから、まさかつぶすことはあるまいというのが経営陣、労組の読みではないでしょうか。したがって、「この先送り」が経営陣の最も望んでいるシナリオであると思われます。フォードとクライスラーは来年の夏か秋まではもつと見られているので、1のシナリオでない場合は基本的に先送りのシナリオです。甘く見て可能性40%。
3. GM破産 – チャプター11:リストラの必要があるなら最強のオプションです。しかしチャプター11にしたところでお金がないのは変わりませんし、運転資金の貸し手がいるようにも思えません。結局政府が借入金に保証を付けるか、直接資本を注入するというアレンジをした上でのことになるでしょう。ただ、チャプター11の下でということなら、現政権でもノーとは言わないと思われます。個人的には現政権であれ、次期政権であれ、これが最も合理的な方法であると思います。ただ、短期間で議会がそこまでまとまるかどうか分からないので、可能性30%。
4. GM破産 – チャプター7:清算オプションは、経済的なショックが大きそうなので誰も望んでいないと思いますが、今の議会を見ていると、議会があーだこーだもめてる間にタイムアウトでGM突然死という可能性は完全にないとは言い切れません。可能性20%。
で、フォードとクライスラーですが、GMがチャプター11でリストラして身軽になったり、GM清算でGMの優良資産を体力のある外国メーカーが買収したりした場合には、とても対抗する力はないので早晩今のGMと同じ立場に追い込まれることになると思われます。
というわけで、GMの経営陣はもちろんのこと、ビッグスリーの経営陣はみなさん、GMがオバマ政権までもつように議会がつなぎ融資を決定することを望んでいると思われます。