2008/11/30 日曜日

大恐慌脱出に財政出動は効かなかった・・・

大恐慌からの脱出はニューディールによる財政刺激によるものではなかった・・・

結果として、ニューディールにより開始された新たな支出プログラムは、経済に対して拡大的影響を直接的にはほとんど及ぼさなかった。それらの支出プログラムが消費者および企業のセンチメントにプラスの影響を与えたかどうかという点にも依然として疑問が残る。

第2次大戦に関連した米国の軍事支出も、1941年までは総支出および産出に目に見えるほどの影響を与えるほど大きくはなかった。

えーと、これを書いたのはマケイン氏のアドバイザーのウヨクの経済学者ではありません。

これは、オバマ次期政権下のCEAで委員長を務める予定のクリスティ・ローマー先生がEncyclopedia Britannicaの「大恐慌」の項目に書いたものです。こういうのを見つけるたびに楽しくなってしまいますが、本当にオバマ氏が何を考えているのかナゾです。まぁ、皆さん優れた経済学者ですから、オバマ氏も良くお話を聞いて欲しいものです。

2008/11/26 水曜日

ボルカー登場

オバマ次期大統領が、米国経済の回復と金融市場の安定のための大統領への助言を目的とする、”President’s Economic Recovery Advisory Board”(日本語では、大統領経済回復諮問会議とでも言うんでしょうか)を2年間の期限で新設し、その議長にポール・ボルカー氏を指名すると報道されています。スタッフ・ディレクターには、以前はNECのディレクター候補とみられていたゴールスビー先生(NECのメンバーでもあります)が就くようです。

報道では、大統領経済回復諮問会議は、冷戦時にアイゼンハワーが既存の官僚組織ではソ連の脅威には対応できないと考えて設置したForeign Intelligence Advisory Board(大統領外交情報諮問会議)をモデルにしたもので、それと同様に経済危機に柔軟に対応するべく設置され、大統領に直接レポートするとのことです。

ボルカー氏の登場を期待していた向きには、非常に歓迎されているようです(確かに中々やるな、という気はします)。現在の経済チームは「クリントン政権のお下がり」と揶揄されるケースも少し目立ってきているので、オバマ氏にとってはそのイメージの払拭という面もあるのかもしれません。

ただ、元CEA委員長のマンキュー先生が、次期のNECとCEAの布陣を見て「補完的というよりも、代替的になってるんじゃないか」と書いておられましたが、今度はまた新たな組織の設置で、少しばかり「船頭多くして」という感も否めないような気もします。

Volcker Tapped for Advisory Role (WSJ:$)

2008/11/24 月曜日

シティ救済:3060億ドルの保証とな・・・

米財務省がシティへの1.9兆円の出資発表」とのことで、とうとうカッコをつけることもなく(余裕もなく)剥き出しの救済となりました。

もちろん1.9兆円(200億ドル)の出資は「おまけ」で、メインのポイントは米国政府によるシティのバランスシート上にある資産保証(3060億ドル)です。この資産のバリュエーションがどう行われるか分かりませんが、いずれにせよシティは政府保証の付いた資産をレポ市場で換金することができるので、これはそのまま「剥き出し」の現金注入と大して変わりません。

分割して一部売却とか、いろんなオプションが言われていましたが、クズ資産には買い手が付くはずもなく、優良資産を売れば残った事業がジリ貧ですから、もともとこういう線での着地が想定されていたのかもしれません。

そう言えば今回の救済は、少し以前にFDICのシーラ・ベア総裁が、シティによるワコビアの買収をごり押ししようとした時に、ワコビアの資産に対して約2700億ドルの保証を付けるとか言ってたのを思い出させます。額も似てますし、ワコビアの買収という「言い訳」がなければ、スキーム的には今回と全く同じなんじゃないでしょうか。今回は時間もなく、適当な言い訳がなかったと見えます。

ところで、今まで色んな銀行やAIGにコミットした額と、今回のシティに対する200億ドルの出資(とプラスアルファ)で、TARPのお金は半分くらいコミットされた勘定になりますから、ポールソン氏の言葉通りだとすると、後はガイトナー氏におまかせということでしょうか。

今回の条件に興味のある人は、FDIC/TARP -> シティのタームシートをここで見ることができます。

ガイトナー + サマーズ = ボルカー?

次期財務省長官はNY連銀のボスのガイトナー氏でどうも本決まりのようです。同時にクリントン政権後期の元財務長官であるラリー・サマーズ氏がNECのディレクターとの報道もなされているのでこれも決まりでしょう。

周りではボルカー氏待望論が圧倒的に強く、私もボルカー氏が良いのではないかと思っていたのですが、80才を超えているので少しきつかったかもしれません。ここのところ、オバマ陣営は「1年限定で」ということでボルカー氏に就任を要請しているというウワサも流れていました(現政権ともクリントン政権とも距離があり、ポールソン氏を上回る「重み」という点では、オバマ氏にとっても都合が良かったのではないかと思われます)。ただポールソン氏をみても平日休日関係なしの24時間勤務態勢と言う感じなので、年齢がやはりネックだったのではないかと思います。

金融危機への対処であれば、ガイトナー氏は十二分に活躍できると思いますが(というか、既にしていますが)、財務長官ともなれば議会のトンでもない連中や中国を含む各国首脳とも渡り合う必要があり、ドル体制の将来を睨んでの政策展開という面ではやはりもうちょっと「嵩」の欲しいところです。少なくともガイトナー氏のオフィスがポールソン氏の「第2ホワイトハウス」のような広範な権限を持つとはあまり想像できません。

・・・というわけで、「補強」としてのラリー・サマーズ氏のポストを含めた「同時リーク」となったのではないでしょうか。ボルカー氏の重みには敵いませんが、ガイトナー氏とサマーズ氏の「二枚銀」もなかなか強力な布陣です(同列に扱うとサマーズが怒りそうですが)。また、これでサマーズ氏には次期FRB議長の目も出てきたような気もします。

市場はかなり下げているので、これで今後強力な刺激策の方向性が示されれば(オバマ氏もようやく一歩踏み込んだ発言をしていました)、短期的(数カ月)に市場は反発に向かうような気がします(ボラティリティは相変わらず高いと思いますが・・・)。

2008/11/21 金曜日

市場つれづれ:ダウ7,552

自動車メーカーの救済をめぐって、米議会は1カ月半前のTARP騒動の出来の悪いリメークのような様相を呈していますが、その中でダウは7,552、S&P500にいたってはとうとう1997年4月(!)以来の安値となりました。(大体、まだ火がくすぶっている金融機関が山ほどある時に、自動車どころではないような気もしますが)

現政権は自動車メーカー救済にはもともと乗り気ではないですし、任期も残り数十日ということで大したことはできませんから高見の見物モードです。その中でペロシ下院議長やらリード上院院内総務が景気刺激策や自動車業界救済で議会を掻き回すたびに市場が混乱するというのがここ2週間くらいのパターンになっていましたが、リーダーシップ不在も来るところまで来たという感じがします。

通常は大統領選の結果が確定すると不確定要因が1つ減るので、就任式までの期間は市場は結構安定する場合が多いのですが(ブッシュとゴアのいずれが勝ったか確定するまで相当時間のかかった2000年は例外としても)、今回の混乱は経済環境がもちろん最大の要因であるとはいえ、次期政権の「音無しの構え」も1つの要因になっている気がします。

G20サミットでも「保護主義の封じ込め」など、なかなか良いことが声明に盛り込まれていますが、オバマ氏からの反応は完全にゼロで、次期政権がどちらに向いているのか全くナゾです。ある程度声が聞こえてきたのはオバマ氏が最近(11月16日)のCBSの60分のインタビューに答えた時でしたが、自動車に関しては支援には前向きであるものの「すべての利害関係者が持続可能な米国自動車産業に関する計画で一致する」ことを条件として支援を提供する線で議会が政権と議論を持つべきという「何とも他人事」な内容でした。

次期政権の組織構築で完全に忙殺されているのであろうと思われますが(埋めるポストの数だけでも膨大なものです)、例えば政策狂のビル・クリントンなどであれば、この状況で静かに一歩引いて黙っているなどということは無かったのではないでしょうか。もう選挙には勝ったんですから、そろそろ選挙戦中の「戦略的曖昧」は止めても良いころではないかと思われます。先週の「バロンズ」でも、オバマ氏に対して「就任式なんか待たずに、今週からペロシとリードを何とかして市場を落ち着かせろ」なんて書かれてました。