2007/9/30 日曜日
イランの次のリスクと言うと、米国の次期大統領が決まるまでに荒れるリスクが少しあるのが米中関係ではないでしょうか。イランの場合は(経済的には)エネルギー関連への投資というヘッジの手段があるのですが、米中関係の場合は誰も得るものが無いだけに少し厄介です。
中間選で民主党が大勝して以来、人民元の「操作」による「中国の不公正な」貿易慣行などという批判がかなり出てきており、民主党の大統領予備選の主要候補もそういうことを結構言っています(もちろん、現政権がきちんと対応していないからだという攻撃ですが)。
今後大統領選に向かって組合票などをまとめることも重要なテーマになってきますから、民主党の各候補もこの手の攻撃を強めることになる可能性があります。事実オバマもヒラリーも「人民元の人為的な操作」とそれに対する現政権の「無為無策」をかなり攻撃しています。
これは不幸なことですが、中道に近いヒラリーも例えば中米自由貿易協定に反対投票したことなどを宣伝材料に使っており、今後一段と保護主義的な空気となることも予想されます。もちろんこれは民主党の伝統的地盤の組合対策ですが、共和党が宗教右派を無視できないのと同様、民主党も組合左派を無視できないというわけでしょう。
それで、タイミング良く(悪く)中国製品の安全問題などが大きく取り上げられていますから、何か問題があれば一気に一部製品に対する輸入規制などの動きになりかねません。対中であまり弱腰に見られたくない共和党にそれを止める力はあまり期待できないかもしれません。
そして、もう1つ間が悪いことですが、最近中国政府は外資に依存した成長から、戦略的な産業で世界的な競争力をもった自国企業の育成を行うという方針に転換しています。
米国の実業界はかなり中国に直接投資をしてきており、それが保護主義に対する一定のブレーキになっていましたが、中国の方針転換により、一部業界ではかつての極端な外資優遇政策から一転して技術移転への強硬な要求が出てきたりしており、進出していた米国企業が地元の議員に陳情したとかしないとかいったウワサもちらほら飛んでいます。これも保護主義に対するブレーキを弱める要素になりかねません。まぁ他にダルフールとかミャンマーとか、イランとか米中の火種は山のようにあるわけですし・・・
これだけ強固に経済的につながっている米中が全面的に貿易戦争に突入という可能性は極めて低いですが、世界経済拡大のペースが弱まっている時に少しでも2大経済大国の貿易面での衝突・摩擦があれば相当なショックになるリスクもあります。
というわけで、今後特に大統領選が終わるまでは、米中関係に関して少し注意が必要であるような気がします。
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2007/9/26 水曜日
今は経済に関しては、どこを見てもクレジット危機が実体経済におよぼす影響のリスクの話ばっかりなんですが、やはり少しは「実体」リスクにも目配りをということで少しだけ覚え書き(いや、アフマディネジャド大統領の顔がここんとこ新聞やテレビなんかで氾濫してるんで、ついアタマがそっち方向に向いただけなんですが)。
米経済の減速は、程度の差はあれ皆さん織り込み済のように見えますが、世界経済に一気に冷や水をかけるようなリスクに関してはあまり注意されていないように思われます。
やはり、リスクの1番目はイランではないでしょうか。イラクは米大統領選前の政治的プロパガンダがどうであれ、次期大統領がオバマかポールにでもならない限り現状と大した変化はなさそうな気がします。
イランが核開発を進めれば、どこかの時点で米軍が攻撃する可能性は高いと思われますが、米国の現政権が次期政権まで問題を持ち越すかどうか決断する時間はあまり残っていないのではないでしょうか。
どうも攻撃なんかあり得ないと思ってる人が結構多いようですが、イランの現政権の今までの行動から、核兵器を持てばイスラエルを攻撃する可能性は100に10とまでは行かなくても100に1くらいはある(と少なくともイスラエルや多くの国の政府は考える)のではないでしょうか。テルアビブあたりに攻撃でもあれば一巻の終わりです。イランはかなり科学技術も進んでいますし。
少なくとも国連ではイランに対するこれ以上の制裁が合意される可能性は極めて低いと思われますから、イランの現政権が続く限り、可能性の高いシナリオはブッシュ政権下での攻撃か、ブッシュ政権が次期政権に問題を持ち越し->外交解決進展無し->イランが核開発継続->米国の攻撃・・・という感じではないでしょうか。どっちもまったくロクでもありませんが。
また、この問題に関しては共和党、民主党を問わず、主要な次期大統領候補の面々、議会ともそれほど(強硬)姿勢に差があるようには思えません。それに最近フランスのサルコジ大統領も「イランが爆弾を持つか、イランに爆弾が落ちるかのどっちかだ」なんて言ってるように、イランが核開発を進めた場合、攻撃に対する障壁は(経済的影響を除けば)それ程高いものであるとも思えません。
で、最良のケースでもイランをめぐる緊張は当分続くと思われますが、これは原油、ひいてはエネルギー価格全般に上昇圧力がかかることを意味しますし(今もかかっています)、この上もし何か起こるとある程度の生産余力があるのはサウジくらいでしょうから、石油は一気に上昇、世界経済には大ショックという可能性もあり得ます。くわばらくわばら。
というわけで、アフマディネジャドさん(さん付けするなと言うに)には気を付けましょう。
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2007/9/21 金曜日

今週はFedの50bpカットで株屋さんのバーナンキ議長に対する信認は再確認されたようですが、株屋さん街の外での評判はあまりよろしくないようです。
「クレジット状況の逼迫が住宅市場の調整を激化させ、より広範な経済成長を抑制する可能性がある。今回の措置は広範な経済に対する悪影響を未然に食い止めるためのものである」
だそうですが、もともとバブル状態だったクレジットがしぼむのはいかんともしがたいわけで、何となくハイテク・バブルがしぼみだした2001年のFedの0.5%下げを思い出させるような気もします(その時も市場は大喜びでしたが)。
株屋さん以外でも先週から50bp下げを期待していた方々もいて、おっしゃるには25bpでは影響が弱そうに見えるし、今後の連続下げへの期待でインフレ期待が高まらないように、声明で「今回特別の1回きりよ」という感じを出せれば一番良いんじゃないか、なんて言う方も結構いました。
ここらへんの方からすると、首尾は悪くない感じなんでしょうが、人間が覚えてるのは声明の内容ではないですから、十分以上に期待は生まれたような気がします。長期金利も上がってますし。
議会の証言では、金融委員会のロン・ポール(共和党の大統領予備選候補の1人)とバーナンキ先生の間で以下のようなやり取りがありました(ロン・ポールはリバータリアンなので、中央銀行のインフレ容認的な政策には非常に厳しい見方をしています)。
ロン・ポール:「議長はドル危機の可能性を予想しますか」
先生:「連邦準備制度は低インフレと、貨幣の価値を守ることにコミットしています」
ロン・ポール:「答えになっていないようだが、議長はドル危機の可能性を予想しますか?」
先生:「いいえ、予想しません」
ロン・ポール:「という幸運を祈っているのでしょう?(笑)」
もちろん、ロン・ポールみたいなのは例外で、議員たちも民主、共和を問わず先週まで「金を出せ」と大変な騒ぎでした(こういうのは、世の東西を問いませんねぇ)。「まだ4.75もあるから、0.5ずつ下げても9回半分あるし、それでも駄目ならヘリコプターから・・・」というのがキャピトルヒルや株屋さん街のガラの悪い頭の良い人たちの夢かもしれませんが。
(上の画像は英国のTelegraphから頂きました)
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2007/9/13 木曜日
首相の(このタイミングでの)辞任には驚きましたが、それ以上に驚いたのは辞任の理由として本人が挙げていることやら、周囲が挙げていることです。(特措法の行き詰まりがどうとか、健康がどうでこうでおかゆがどうだとか、本人のスキャンダルとか・・・)
どれ1つ見ても目を疑うようなもので、1つでも本当ならばこういうナイーブな方が行政府のリーダーに選ばれるというリーダーの選択のプロセス自体に大きい問題があるように感じます(他の事はともかく、首相に選ばれたこと自体は彼の責任ではないでしょうから)。また、少し以前のバンソーコー元農相みたいに日本語運用能力すら怪しい人が議員どころか閣僚にまで選ばれて、冗談みたいなハナシで政治状況が揺らぐとかいうのも見ていると、自民党も議員の候補者やリーダーのスクリーニングの方法をそろそろ少しマジメに考えた方が良いんではないかと言う気がします(民主党もそうかもしれませんが)。
例えば、英国なんかでは各政党の議員の候補者になること自体に何段階かハードルがあり結構(能力的に)難しくなっています。あの口八丁手八丁、舌先八寸で体力満々のブレアでさえ、議員になる前は労働党の候補になるのに相当の苦労をしています。ざっと見た感じ、英国下院の2世、3世議員の数は大体全体の5%未満程度だと思われますが、こういうスクリーニングがバンソーコー元農相みたいな方が出てくるリスク(や後々のコスト)を減らす上で少しは効いていると思われます。ちなみに英国は実権のない「貴族院」でさえ大半は「成り上がり者」の一代貴族で、今や世襲と言えるのは非常に少数派のように見えます。
また、非常に盛り上がりに欠ける総裁選ですが、これも派閥の票集めだけではなく個人的な資質に欠ける方はある程度ちゃんと落ちるようなプロセスにできないもんでしょうか。米国大統領候補選びの予備選のキャンペーンは長い上に大騒ぎで外国人から見てるとあまり効率的には見えませんが、あれだけ長期間メディアのさらし者にされ、皆からボコボコにされれば、少なくともタフではない人間や極端に無能な方が残れない可能性が高いのは確かです。(ついでに言うと、候補者の数が多いのでそこそこ色々な政策アイデアが出されるという点も悪くありません)
昔みたいに冷戦で外交の枠組みが決まっていて、真面目な国民が働いた(毎年増える)お上がりを分配するシステムを回すのがメインの仕事だった時は別に誰が何やってても大して問題ではなかったのかも分かりませんが、今のご時世では冗談みたいな短命内閣が右行ったり左行ったりというのはチトまずかろうという気もします。もう政策がどうとか言う以前のハナシなんですが。
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2007/9/11 火曜日

先週末は米国雇用統計が過去4年で初めてのマイナス(-4000)、しかも前期の数字も大幅に下方修正ということで、皆さん大騒ぎの模様でした。
米経済の減速は既に織り込み済みで、8月の雇用統計は当初大方が予想していた10万を3万-4万程度下回ると見ていた人もマイナス増は予想していなかったため、ベッドで寝ていたゴールディロックスちゃんが突然帰ってきたクマさんを見たときのような有様でした。
これで、Fedの利下げの口実はできたような気がしますが(先物市場では年内に4.5%程度まで下がると期待しているようです)、問題は利下げしないリスクと同様に利下げにも大きいリスクがあるということです。
まず金の値上がりからも見て取れるように、インフレまたは(および)ドルの底抜けのリスクがあります。少なくとも今の景気減速はタイトな金利政策の影響ではないように見えますから(M2は過去3カ月でも6%以上のペースで増加しています。1年前は3-4%でした)、利下げしても景気の下支えの効果はなく、ドルだけが底抜けでインフレ上昇(先日の生産性指標は良くありませんでした)という可能性も(かなり)あるわけです。
米ドルインデックス(下のグラフ)は先週末には80を下回りましたが、これは例外的な一時期を除けば30年以上ぶりの未踏の世界で、利下げはまさしくドルの底板を打ち抜く可能性もあります。議会などの強烈な利下げコールの圧力もありますし、ドルの信認の本格的な揺らぎというリスクもあり、先生には本当に悩ましい世界になりました。
何となく1年以上前のシラー先生の「Is Bernanke Ready?」という記事を思い出してしまいました。少し前に「バーナンキの仕事なんて福井(総裁)の仕事に比べればラクチンなもの」なんて暢気なこと書いていた人もいましたが、そんな事ないですよねぇ。やっぱり。(いや、日銀総裁も大変だとは思っております)
ところで、上のクマは本石町さんとこの記事を見て思いつきました。これくらい可愛い奴だと良いのですが・・・(まぁ、まだ分かりませんが)

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