2007/8/24 金曜日

クォンツ:地震の後で・・・

最近の株価のちょっと変わった振る舞いで、船底に大穴が開いたクォンツ系のファンドも多いようですが、クライアント様への「お詫び言い訳」のレターがちょろちょろ出ているようです。しかし、全般的に無責任な感覚は拭えず、何かどっかの国で地震にあった原発を運営してる電力会社のリリースみたいです。

例えばAQRのレターでは

「これは、モデルが悪いのではなく、(過去においても、成功したストラテジーに何度も起こったように)1つのストラテジーにあまりに人が集まり過ぎたということです。あまりに多くの者が同じドアから出ようとしたため問題が起こりました・・・」

・・・・。上のは典型ですが、Barclays (Global Investors)でも、Black Mesaでも、Sowoodでも色々不可抗力を挙げて、(本来は素晴らしいストラテジーが)損失を被った理由にしているという面では似たようなもんです。まぁ、地震はそんなに頻繁には起きないので、色々考えるよりは早く忘れてしまおうということでしょうか。

私が見た中で唯一の例外は、ルネサンスのジム・サイモンズで、彼はレターの中で

「問題の主な原因は、弊社のBasic Systemです ・・・ (Basic Systemに付加した)我々の予測自体はまずまずでしたが、Basicにおける下降を打ち消すほど十分なものではありませんでした。・・・ Basic Systemは低ボラティリティ・アプローチで長期的にはS&Pや他のインデックスと同等となるはずですが、・・・ 今回の幅、またはそれよりも大きい幅での乖離(いずれの方向であれ)が起こる可能性があります」

と元ガクシャっぽいコメントになっています。ジム・サイモンズ先生に関しては、以前に一度取り上げたことがあるので興味のある方は下のリンクからどうぞ。

14年間、年間平均リターン33%以上のヘッジファンド?

2007/8/21 火曜日

「怪しい投資家たち」第2幕・・・


以前「怪しい投資家たち」で少し触れたジム・クレイマー氏ですが、今週のBarronsでクソミソにけなされてました。クレイマー氏はここ2年半ほどCNBCの「Mad Money」という番組のホストをしていますが、Barronsの調べたところでは同番組での同氏の推奨銘柄は平均してマーケット全体をアンダーパフォームしており、「これだったらインデックス・ファンドを買ってた方がよっぽどマシ」というのが記事の内容でした。

同誌からの質問にCNBCからもクレイマー氏からもきちんとした返答はなく、「CNBCとクレイマー氏は過去の推奨銘柄のパフォーマンスを明確に示すべきだ。(強気市場のチアリーダーでも)説明責任はある」としています。

「Mad Money」は投資をネタにしたエンターテインメント番組で、マジで銘柄選択のために見てる人はいないでしょうから、そこまで熱くならんでもという気もします。クレイマー氏は怪しいですが、TheStreet.comでオンライン金融メディアの先鞭を付け、個人投資家のDIY投資への流れの一端を担ったという意味では中々の貢献をしたとも言えます。それに、話をさせると結構面白いオジさんです。

まぁ、少し前にテレビでFedの連中をクソミソにけなしてましたが、こんなことやってると何らかの批判を浴びるのも時間の問題だったかもしれません。下に貼付けますが、ベア・スターンズの問題が出た時の放送でかなり面白いです。オジさん曰く

「ディスカウント・ウィンドウを開けろぉぉぉ!!」
「今は、ガクシャなんかの出る幕じゃないんだ!!!」
「(バーナンキやFRBの連中は)何にも分かってないアホだ!!」
「ビル・プール(セントルイス連銀総裁)はけしからん奴だ!!!」
「利下げをしろぉぉぉ・・・・」

いや、日本の経済ニュースなんかでは、出てくるのは大手セルサイドのかしこまったストラテジストやエコノミストばっかりで楽しさという面では少し欠けるので、こういうオッチャンが1人くらいいると面白いのになぁ・・・なんて思います。

2007/8/18 土曜日

市場つれづれ:FRBはDRを50bp下げ

FRBがDiscount Rate(公定歩合)を50bp下げましたが、同時に出した声明に経済の「ダウンサイド・リスク」を入れた上に、ご丁寧にコーン&ガイスナーのご両人が大銀行相手のコンファレンス・コールで「ディスカウント・ウィンドウ使うのは恥ずかしいことじゃないから、何かあったら遠慮せずにいらしてねぇ」という、サラ金のセールスみたいなパフォーマンスまで付けるサービスでした。

気の早い向きは「これで9月の利下げは確実」なんて言ってますが、ここまでサービスしてるんですから、FRBは基本的にはインフレ圧力のピーク・アウトと広範な経済の大きい減速を確認するまでは、出来る限り利下げはしたくないということだと思います(もちろん、この願望の通りに行くかどうかは全く分かりませんが)。

もともと、FRBは金利を上げ始めたら止めずに壊れるまで締め上げておくべきというのが私のスタンスですので、その面ではバーナンキ先生に対する評価はあまりできませんが、今回のアクションに関しては、何かあったらとにかくすぐにFF金利をいじくって何とかするというグリーンスパン流ではなく、最後の貸し手としてディスカウント・ウィンドウを提供するというのは全く悪くない、というか流動性危機のリスクに対しては極めて正統的な対応と言えます(先日からの資金供給は明らかにあまり必要なところには回っていないように思われます)。

ディスカウント・ウィンドウでは、ABS、CP、MBS、ホールローンなど幅広い担保でお金を借りることが可能です(質の低い担保では100ドルに対して借りれるのが95ドル、とかいったヘアカットはあるでしょうが)。「ペナルティ付き」どころか「お安い」お金と言えます。

ところで、「あほう!今起こってるのはグローバル金融危機だ。ほっといたらメルトダウンだ。FedとECBは協力してなんとかしろ、ゴルァああぁぁ」とか騒いでる方もいらっしゃいますし、米国経済のハードランディング必至と言っている方もいらっしゃいますが、株の方では相変わらずそこそこ強気な方達もいらっしゃるというのも事実です。

株に限って言えば強気の方々の基本的な線は、1)米国経済は減速するが2%以上を維持、2)世界経済は依然として強くシクリカル・ピークはまだまだ先、3)PERで見れば今の株価は大して高くないってとこです。おまけに今年は調整も無く上がってきた強気相場の5年目ということで、強烈な調整が少なくとも1回、小さいのなら2-3回とか予測していた向きも多いので「ようやく来たけど、ちょっとキツいかな?でも、まだもうちょっとダウンサイドがあるかも」くらいの方もそこそこいらっしゃいます。1と2のどっちかが(と言っても両方とも深くつながってますが)欠ければこのダイハードな方々も大きく変わるでしょうが。

2007/8/13 月曜日

紙クズCDOの持ち主たち・・・・

最近色んなファンドがトンでもない損害を出しているモーゲージ・ベースのCDOですが、CDOのいわゆる「産業廃棄物」の部分は大元のローンプールの元金の5%程度が毀損すると文字通りの「紙くず」になると言われています。サブプライムの場合ビンテージにもよるでしょうが、十分5%の壁は越えているわけで、すでに実質上紙クズ同然となってしまっている証券が結構あると思われます。

リスクを承知でレバレッジを目一杯かけて「産業廃棄物」を抱え込んで大損しているヘッジファンドやら、自らせっせと販売用の「産業廃棄物」を製造して、そのあげく自己勘定にも抱え込んでる銀行や株屋さんなどは単なる自業自得なんで何とも思いませんが(「自業自得」で済んでないところが問題ですが)、問題は利回りと格付けだけで投資している投資家です。(みんな結構格付けが高かったりしました)

大体誰もすべての証券の精査などしている暇も能力もないですから、この手の投資家は結構多そうです(大体、格付けというのはそういう投資家のためのものであるはずですが)。Bloombergによると、この紙クズの持ち主は -

1. 銀行、プライベート・バンク (32%)
2. 資産運用会社 (22%)
3. 保険会社 (19%)
4. 年金、その他 (18%)
5. ヘッジファンド (10%)

となっています(株屋さんが見えませんが?)。年金などは相当アタマにきている状況ではないでしょうか。まだファンドを除けば普通の保険や年金などの損失の話はあんまり聞きませんが、単に価額の評価ができないのでまだ「モデルによる価格」でバランスシートにのっかてるところも多いのではないでしょうか。

今後減損の計上などで損失が明るみに出てくると、格付け機関を相手にした訴訟などが出てくる可能性もありそうな気がします。少なくともPIMCOなどの債券屋さんは、数年前から「メザニンのくせにAが3つなんておかしいだろう」などといった批判および見直しの要求を公にいろんなところでやってますから、格付け屋さんもまったくシラを切ることはできないはずです。ベア・スターンズのファンドが吹っ飛んだときも、ベアとフィッチ、ムーディーズ、S&Pなどの間で見苦しいやりとりが見られましたが、今後の予告編みたいなものかもしれません。

バーナンキ御大はこの手の証券の損失額を約1,000億ドルと言っていますが、昔のS&Lの崩壊のコストが1,500億ドルだったので大体似通った水準になりそうです。まぁS&Lの場合には全部米国の納税者が負担していたところを、今度は世界中が負担するわけですから、宣伝通りの「リスク分散(というか拡散)」の能力だけは証明されたと言えます。

Bloomberg 「あなたの年金に潜む毒物」(英語、PDFです)

2007/8/12 日曜日

紙くずCDOにECBの放火、じゃなかった放水

先週は目の玉が回る状態で、あんまり何が起こってるのか良く分かっていなかったのですが、ECBやらFedが何やら気前良くお金をばらまいていたようです。

Fedが木曜に240億ドル、金曜に380億ドル(190億、160億、30億のトランシェ)
ECBが木曜に948億4,000万ユーロ、金曜に610億500万ユーロ(まぁ大体2,136億ドル

あとは、カナダ(15億5,000万米ドル程度)、日本(84億米ドル程度)、スイス、オーストラリア、シンガポールなどがちょろちょろという感じですが、ECBとFedは(他も大体そうでしょうけど)基本的にクレジット市場の動揺で金利が急上昇したのに対応したオペでした。

びっくりするのがやはりECBの供給額で、皆さん目を剥いてました。規模を分かりやすくするために言うと、ユーロのベースマネー(M0)が大体合計で8,000億ユーロですから、ベースマネーの10%以上のお金を1日間でじゃぶじゃぶ流し込んだ計算になります。

木曜の皆さんの第1反応は「どっかで火事か?」とか「何かあるに違いない」とか「・・・」というものでした。驚いたり深読みしたりしてるうちに米国でもオーバーナイト金利が6%を飛び抜けちゃったので、FedがちょろちょろっとMBSやら国債を引き揚げて米国は木曜のオワリには5.25%に落ち着きました。

で、最初に口火を切った欧州なんですが、つい先日も、ドイツ産業銀行(IKB)がサブプライム・ローンの影響で親会社のドイツ復興金融公庫(KfW)が80億ユーロもの保証を強いられたり、ドイツ政府が救済に乗り出したりで(意外な名前が出て)少しばかり神経質になっているところに、BNPパリバのファンド閉鎖のニュースだったので、おそらく多くの銀行で「絶対貸すな」という号令でも出たんでしょうか、金利はあっという間に4.6%を突き抜けてしまいました(一番下の図)。

欧州は一応市場の規制はEU圏共通ですが、実際の銀行の監督業務は各国の権限です。で、国によって監督のやり方も、監督を行うシステムも組織も異なっています。例えばスペインやイタリアだと銀行の監督は中央銀行ですし、オーストリアとかだと政府官庁、ドイツやフランスは中銀と特別の監督機関の共同責任とかになっていて、おまけに同じような差異が証券なんかの各市場でも存在して、米国人などから見ると本当に「エキゾチックな」市場で想像がつかなくても仕方がありません。

というわけで、欧州は各銀行から見ても、ECBから見てももともとデザイン的に極めて「見通しが悪く」何かあると疑心暗鬼になりやすい環境なんで、ECBがえいやとばかり「デパートのバーゲン」式に無制限の(といっても担保付きですが)スペシャル・テンダーをしたら、各銀行がそれこそデパートのバーゲン会場でのつかみどりよろしく掴めるだけ掴んだという感じではないかと思われます。火元に直接振りかけるのではなくて、突然全館一斉にスプリンクラーを回したようなもんですから、そりゃまぁ大変なことです。

この手の「無制限のデパートのバーゲン」は911のテロ以来ですが、911の時も1日か2日か忘れましたが1,000億ユーロ程度が「捌けた」ような記憶があります。というわけでECBが緊急で「スプリンクラー」を回すと「1目盛り」1,000億ユーロが相場ということではないでしょうか。これを「ファイン・チューニング」というのは、英語力に問題がありそうですが。

(8/13 : 今日も朝方4.15%までもたげたようですが、470億ユーロを追加投入して押さえ込んだ模様。銀行のビッドは相変わらず840億ユーロ程度あったようです。)

2007/8/11 土曜日

株主平等の「原則」?

数日前のことになってしまいますが、スティール・パートナーズがブルドックソースの買収防衛策の発動差し止めを求めた仮処分申請が最高裁に棄却されたそうですね。

ブルドックソースの買収防衛策は、「スティール以外のほとんどの株主が、買収で企業価値が棄損すると判断したといえる」ので「株主平等の原則の趣旨に反するものではない」らしいんですが、こんなことで「原則」が簡単に「曲がって」良いのでしょうか?

まぁ、2005年に経済産業省と法務省が共同で出した「企業価値・株主共同の利益確保または向上のための買収防衛策に関する指針」(すごい名前ですが)では買収者以外の株主に対してだけ新株・新株予約権の割当をしても株主平等の原則に違反しないというすごいことが書いてあるので、まったく驚くには当たらないような気もしますが(今回とはスキームが違うので厳密な比較対象にはならないんでしょうが)。

単純にパラフレーズして(はいけないんでしょうが)「多数が判断したら少数の者には同等の権利を与えなくても良い」というのであれば全然「平等の原則」なんぞ無いのと同じのような気がするのですが、法律の世界では違うのでしょうか。

全然カンケーないですが、仕事で「それはプリンシプルだろう」と私が言うと(すごい良い加減な人間なんでそんなことを言うのは本当に稀ですが)「それは譲ったらあかんのちゃう(譲ってはいけないのではないでしょうか)?」という意味ですが、これが日本の会社に行って「それは原則でしょう」などというと、「それはリクツで実際には当てはまらないから、うるさいこと言うな」という意味の場合が多いような気がします。何か「株主平等の原則」ってのもこんなもんなんでしょうか?「原則」なんて言葉は止めて「建前」とかにしとけば良いんじゃないでしょうか。

2007/8/1 水曜日

政治の脳みそ:Political Brain

今、米国の民主党関係者の間で良く読まれている本が、The Political Brainというやつです。(ところでこの本は米国のアマゾンではとっくに売ってますが、日本ではまだ予約のようです。変ですねぇ)。

この本はビル・クリントンやハワード・ディーンが言及してから一気に話題になったようで、著者はエモリー大の心理学教授で、政治的な情報が脳内でどのように処理されているかを研究している脳神経学者のグループの研究主任でもあります。

本の内容は簡単に言うと、「そんなこと当たり前じゃ・・」というような事なんですが、この本では、有権者が投票する政治家を選ぶ際に使用されている脳ミソは、理性や論理を司る部分ではなくって、脳の中ではもっと古い感情を司る部分であることを研究から示して、選挙で勝つには、政策などで理性や「アタマ」に訴えるのではなく、EQを使ってエモーションに訴えなきゃだめよん、ってなことがいろんな選挙キャンペーンの実例を踏まえて書いてあります(ってラフ過ぎな要約ですが・・・)。

民主党きっての政策通だったクリントンがこんな本を同僚に勧めているのも可笑しいですし、「そうだったのか」なんて言ってる民主党の方々を見てると「おいおい大丈夫か」って気もしますが、前の副大統領が「The Assault on Reason」なんてのを書いてるとこ見るとやっぱり彼らにはショックなのかもしれません。

ただ、こういうのは一種の才能のような気がするので、多分ビル・クリントンやオバマには全く読む必要のない本でしょうし、読む必要のある人が読んでも実際にはあまりどうにもならんような気もします(ヒラリーくらいならなんとかなるかもしれませんが)。例えば小泉前首相には読む必要はないでしょうが、安倍首相が読んでもおそらく全然駄目ではないかと思われます。