2006/9/30 土曜日

ポール・ボルカーの「奇妙な世界」

Paul Volcker (元FRB議長)に、歴代のNY連銀総裁のGerald Corrigan (現ゴールドマン)、William McDonough (現メリル – たぶん)、Anthony SolomonにTim Geithner (現職)という豪華メンバーを揃えて先週行われた、パネル・ディスカッションの内容がちょっと話題になっています。内容はBloombergKing Reportなどで少し触れられていますが、基本的にはインフレ警戒色の強いものであったようです。

Corrigan
「瓶から昔のインフレの魔物がとび出る可能性が少しある。一旦やつが飛び出ると、再び閉じ込めるのは極めて難しい」(おなじみのたとえですが)「米国市民の福利という面に限って言えば、長期的に極めて深刻な問題となる可能性がある」

Volcker
「インフレが少しずつ這い上がってきているのに少し懸念を強めている。・・・・ウォール街の多くの人々は引き締めと言う面では大したことは何も起こらないという前提で動いている。しかし、いったん人々がそれを確信すれば、インフレはますます上昇し、それに対して手を打つのも難しくなる」
「我々は奇妙な世界に生きている。そこでは、3%のインフレは安定を意味し、0.5%の物価下落はデフレになるらしい。新しい言葉には全くついていけない・・・」(笑)

ところで、準備制度、連銀や財務省に山程出入りしているアドバイザーには全米でも相当良い部類に入る大学の先生たちがすごーく多いですが、大体タカ派的な金融引き締め政策には反対の人が非常に多いです。まぁ、先生達の生活がかかっている頼みの綱の大学のendowmentは、大体トンでもないリスキーな資産やストラテジーに投資してるとこが多いですから、こういう傾向になるのは当たり前のような気がします(いや、半分以上は真面目です。”self interest”というのは、法律で禁止されない限り、別に恥ずかしい社会ではないですから)。

で、endowmentの投資アドバイザーがウォール街という具合で、米国のインテリ界の生活もまたリスク資産に骨がらみとも言えます。と・・・いうわけで、ちょっとばかりインフレが上昇してもバーナンキ先生がボルカーになる可能性はゼロからマイナスの間ではないかと思われます。期待通り、米経済はソフトランディング、インフレはそこそこで収まる、という具合に行けば宜しいのですが。

コロンビア大パネル・ディカッション
ブルームバーグの記事
KIng Report (購読者のみ)

ただNBERトライアル

ガッコー出た後、気前の良くない会社なんかに行ったり、自分で何かしてたりすると、人の論文をお金払って読むというのがアホらしく感じる人も多いのではないかと思いますが、NBERがタダのトライアル期間をやってるようです。

期間は11月15日までで、2004年10月以降の論文をフリーでダウンロードできます。えーと、もちろん上限がありまして、100本までだそうです。

ということで、興味ある方は下からどーぞ:

NBER TRIAL

2006/9/3 日曜日

コア・インフレに意味はあるか・・・

先週少し話題になっていたのはカンサス・シティ連銀の後援で開かれていたジャクソン・ホール・シンポジウムで、英国中銀のチーフ・エコノミストであるCharles Beanがバーナンキ先生などお歴々の面前で、FRBがコア・インフレを重視しているのを批判した(という風にしか聞こえない)スピーチを行ったことでした。

インフレの指標は今だに学者の間での論争のネタの1つですが、FRBなどがエネルギー価格などを除いたコア・インフレを重視しているのに比較して、英国中銀、欧州中銀ともヘッドラインの数字をより重視しています。

Charles Bean氏の論点の中心は、原油価格上昇の原因は、工業製品の下落をもたらしている原因と全く同じ、新興市場の工業化とグローバリゼーションであり、したがって、下落している工業製品価格を指数に残したまま、エネルギー価格を指数から取り除く手法の妥当性は極めて疑わしいというものです。

個人的には、これは真っ当な議論であると思います。少なくとも現在のFRBのコア重視には、少し前の「M3データ追放」と同様の割り切れなさを感じざるを得ません。ってなこと言ってるとまた「お前、金利上げ支持派か」って見られちゃうんですけどね。

Chareles Beanのコメント(PDFです)