2006/5/30 火曜日

米財務長官にヘンリー・ポールソン

ウワサ通りスノー財務長官は退任となったようですが、代わりの財務長官はゴールドマンのCEOのヘンリー・ポールソンということで少しばかり驚きました(以前にもウワサはありましたが、本人は「私は自分の仕事を愛している」とずっと否定していましたし、ウォール街の超A級のエグゼクティブが今になってブッシュ政権の財務長官をやりたいとは思えませんでしたから)。

昨年の報酬が3,800万ドルという「ウォール街一の高級取り」ですが、実績ももちろんそれに見合ったもので(1998年の就任以来GSの収益は190%増、利益は4倍以上になっています)、世間では「問題だらけのブッシュ政権のしかも残り少ない任期の中で、いくら有能なビジネスマンでもできることはほとんどない。まぁスノーよりは上手く応援団をやるだろうけど」という論評も多いようですが、ぼーっと人の作った経済政策に横から手を叩いているだけの人間とはとても私には思えません。

まだ良く分かりませんが、米国にとってはポジティブなニュースだと思います。

Yahoo News

2006/5/25 木曜日

株式市場つれづれ

市場の動揺が続いており、このボラティリティの上昇に関しては商品市場の動向、今更ながらに米国の双子の赤字、そしてこれも今更ながらにインフレなど色々言われています。

しかし、商品市場に関しては株が上がろうと下がろうと動こうと動くまいと常に「下手人」にされてますし(ちょっと前までは原油が上がったと言っては株下落の理由になっていたのが、このところ全く逆に原油が下がったのが株下落の原因にされたりしています)、双子の赤字はまさしく「今更」ですし、インフレに関してもずっと米国では言われ続けています

でまぁ、「些細なこと」でファンダメンタルな話でもなくて申し訳ないんですが、今回の動揺のきっかけとなったのは連銀という可能性が結構あるんじゃないかと思っています。もちろん背景にグローバル市場の不均衡というのはあると思うのですが。下の図はメリルのレポートからですが、FF先物から計算した連銀の利上げの可能性に対する市場の予想値です。

バーナンキ先生の議会証言がどれほど「ダイナマイト」であったかが分かりますし、その後の「Bartiromo事件」(先のエントリ参照)とインフレのデータがいかにこれまた「ダイナマイト級の」カウンター・アタックであったかが分かると思います。バーナンキ先生はBartiromo事件に関して謝罪しましたが、そもそも議会証言が極めて不用意なものであったと言えると思います。

で、今回の動揺を1987年のクラッシュと並べて「まずい」と言ってる人も結構いるのですが、これまた余りにオーバーな話と言う気もします。下の図はBirinyi Associatesが1987年と今年の株式市場を比較したものですが(1985-1987年と2004-2006年の比較。1985=2004=100として比較)、それまでの株式上昇の程度から見ても1987と2006では文字通り「比較にならない」ということが分かると思います(今後どうなるかは分かりませんが、少なくとも現時点では)。

そして、もう1つ今度はEconomistから借用したグラフですが、下図はS&P500のPERの推移を示したグラフです。ここ10年くらいを比較対象にすると、現在の株価が過熱しているという程では全くないと言うことが分かります(個人的にはファンダメンタル的に言って株価は少し高いと思っていますが、少なくともここ10年ではとりわけ現在が割高とは言えないということです-米国の話ですが)。

というわけで、今回に関していうと「バーナンキ下手人説」というのはそれ程外れていないのではないかと思う次第です。もちろんマズいことは極めて多くあり、そのほとんど全てが彼の責任ではないのですが、マズことが多いのは今に始まったワケじゃないですし、最後に引き金を引いた人間が槍玉に上がるというのはよくあることで・・・

株価に関して:

米国企業の第1四半期の利益成長率14%に現在の金利を考えればPER20倍程度なら株価は全く高くはない(むしろ割安)ですが、残念なことにこれは長期的に継続可能な値であるとは思えません。1920年代から現在までの期間でどの20年間をとってもダウ企業のROEは大体11%+/-0.5%の範囲に収まっています。この間にはもちろん戦争やら電気の普及やらいろいろあったわけですが、この数値だけは変わっていません。この11%のうち大体5%が内部留保され(したがって長期利益成長率は5%)、6%が配当ないし自社株買い戻しで株主に還元されるフリーキャッシュフローとなっています。

まぁ、あとはこれをどのモデルに当てはめるかだけの話なんですが、話が長くなるのでこのへんで。ちなみに過去10年間のダウのROEは18%程度(か、おそらくもっと良い)だと思いますが、これをノーマルと考えるか、良すぎると考えるかでもちろん話は変わってきます。個人的には長期的にROE18%以上というのが可能なのは独占企業位じゃないかと思っていますが。(そして過去の11%という数字もこれを裏付けています。)

2006/5/23 火曜日

総裁選と株式市場?

そろそろ総裁選と株式市場にまつわる憶測というかヨタ話が海外投資家向けのレポートやらニュースレターなどでも出回ってきています。良く見られる「お話」で代表的なものは次のようなものです(いろいろ細部で違うバージョンが色々あるのですが)。

安倍氏の場合:いわゆる小泉路線(あくまで海外から見た場合の「改革路線」というやつですが)をある程度継承、財政支出を抑制かつ緩和的な金融政策を維持。安倍氏勝利の場合株式、債券、円はやや上昇。

福田氏の場合:LDPの守旧派にすりよる可能性あり。財政支出の一定の抑制。日銀の独立性を尊重し金融引き締めへの移行を許す可能性。したがって福田氏の場合株式、債券、円は下落。

この手のヨタ話の内容は置いておいて、面白いのは多くのレポート類で金融政策の主要な決定要因が経済やインフレ動向などではなく、政府と日銀のつばぜり合いの結果(あるいは政府サイドの一存)であるように捉えられている点です。

例えば、ブッシュ対ケリーでも、ブレア対ブラウンでも、ブラウン対キャメロンでも良いのですが、誰が政権取ったら中央銀行にどうさせるから、株価がどうなるといったようなヨタ話はまず成立しないわけですが、政府要人と日銀のメディア経由での金融政策を巡る下手なカブキまがいの立ち回りのおかげかどうか知りませんが、日本市場担当の方々はレポートネタに困らなくて目出たいことです。まぁ、そんな話を読まされる投資家には同情しますが(ってこの手のレポート類はそれほど読まれてないでしょうけど)。

2006/5/19 金曜日

バーナンキに集まる砲火

ドル、債券・株の下落、金の高騰と、このところ市場に動揺が広がっていますが、それに応じてバーナンキFRB議長に対する砲火も激しさを増しています。新任のFRB議長に対する市場の荒波と批判は前のグリーンスパン、その前のボルカーの際にもあったので新しいものではないとも言えますが、今回の場合自ら蒔いた種の部分もあるので攻撃も非常に辛辣なものとなっています。

ケチの付き始めは4月27日の米議会のJECに対する証言でバーナンキ議長が利上げの「一時中断」を匂わせたことで、議会も市場も完全に「6月に利上げ一時中断」を織り込んでしまったことです。政治家とセルサイド(証券会社)の連中は喜びましたが(実際株価も少しの間上昇しましたが)、タダでさえバーナンキに対しては「インフレ容認派」ではないかと警戒していたバイサイドの連中は、これでますますその疑惑を深めたと言えます。少なくとも「政治家に弱いんじゃないか」と受け取った連中は多いと思います。バーナンキはチェンバレン(ナチに宥和政策を取って第3帝国の台頭を許した英首相)だ」などという評価も聞かれました。

悪いことに市場の反応とこの悪評にたじろいだのか、バーナンキ先生は証言の数日後のホワイハウスの夕食会で同席したジャーナリストに「自分の発言は誤解されている」などと述べ、そのジャーナリストがテレビでそのままその発言を流してしまったいわゆるBartiromo事件」(Bartiromoはこの報道を行ったジャーナリストの名前です)が起こりました。少なくとも、証言内容に対するある程度「真っ当」とも言える市場の反応への議長の強烈な「タカ派的」打ち消し発言に頭をひねった向きも割といました。

その後5月の利上げの声明では、”some further policy firming may YET be needed “とわざわざそれほど必要の無いソフトな表現に変えたことで再び証言時点に戻るという感じで、やはり右往左往という感は少し否めないものがありました。個人的には透明性を高めるという信条は立派なものと思いますし、「連銀にとって経済・インフレの先行きが不透明なんでちょっと待って新しいデータがないと何とも言えません」ということが「透明」に伝わっているだけという気もしますが。

大手のBridgewater Associatesは、5月初旬のデイリー・レポートで「今や、我々が直面しているのは、新任の、優柔不断な学者の連銀議長と、下落するドル、下落する債券市場、高騰する金と商品価格、低迷する株式市場・・(中略)・・バーナンキは急速に制御を失っている」 と強烈な調子でこき下ろしていますし、英Timesは尊大な英国人のいやみ丸出しの記事「議長がちょっとばかりお利口すぎても、米経済は大丈夫」という記事でブッシュとバーナンキを最近の市場の動揺の「下手人」と名指ししています。アトランタ連銀主催のヘッジファンドの連中とのコンファレンスでも辛辣な評価がかなり聞かれたようです。

何はともあれ、連銀議長の発言の重みが試されたここ数週間だったとは言えそうです。最近のインフレのデータで6月の再利上げを予想する声が少し増えているようですが(もうすぐ発表される4月のPCEレポート次第でしょうが)、6月に利上げしたとしても「バーナンキは本当は利上げを中断したいけど、仕方なしでやってるんだろう」と取る向きが多いのは確実で「最初から何にも言わなけりゃ良かった」んじゃないかという気もしますが。まぁ、どんな仕事も最初はキツいというところでしょうか。

2006/5/18 木曜日

Wiiは200ドル以下で登場か

すこし古いニュースになりますが、E3では新ゲーム機「Wii」の具体的な価格を発表しなかった任天堂ですが、先週メリルリンチのアナリストのJustin PostはWiiの価格を「200ドルを下回る」と予想しています。

スタート価格が299ドルのXbox、499ドルのPS3に比較して正解という気がします。

個人的には特に最近ゲーム機にはほとんど縁が無いのですが、ゲーム機は基本的に「おもちゃ」ですから製品の性格付けや価格設定もそれに応じたものが妥当だと思います。他社から見ればスペック的にも安くて当たり前だろ、という意見が出そうですが、商品はスペックではなく価格とニーズに合ってるかどうかですから、スペック比で安い・高いとはちょっと違うような気がします。その中でも任天堂は一貫して「おもちゃ」として割と真っ当にマーケティングしてるんじゃないでしょうか。

Forbes

過去の関連エントリ:XboxとPS3のコスト比較

2006/5/15 月曜日

量的緩和解除後のマネーサプライ

日銀の量的緩和の解除を受けて注目の高まっていたマネーサプライですが、先週発表の4月の速報によるとM2+CDで伸び率1.7%と3月の1.5%を上回り、季節調整済前期比年率でも3.8%と、減速していた第1四半期からみるとやや伸びが戻っているようです。M3+CDも伸びていますが、これは金銭信託の伸びが大きいようです。

信用乗数(下図)も3月に引き続き跳ね上がっていますが、これが量的緩和解除によるベースマネーの減少と「駆け込みローン」による一時的なものなのか、新たな上昇トレンドになるのか気になるところです。

マネーサプライ4月速報

信用乗数(クレディのレポートより)

2006/5/12 金曜日

連銀の利上げサイクルと株価

FRBはFF金利を5.0%に引上げました。まだまだ今後は不透明ですが、株屋さんなど「上げ止め」を期待する声は相変わらず高いようです(意外かも分かりませんが、ファンマネなどはそうでもないです)。

金利が上がると株価には一応ネガティブということになっているので利上げ終了は株価にはプラスのはず、ということなんですが、実際に過去のデータを見てみるとそうでもありません。Birinyi Associatesがまとめた過去1969年から2001年のデータでは連銀の引き締めサイクルの最後(の利上げ)から、次の金融緩和サイクルの始まり(最初の利下げ)までに株式市場は平均して約7%近く下げています。

こういう現象は回数が少ないので過去のデータをいじくってどうこうということは無いのですが、引き締めサイクル終了->株価にプラスなどというセールス・トークにダマされて変な物を買わない方が宜しかろうということだけは確かです。

尚、下のデータでは1989、1995年の時だけ、株式市場は上げていますがこの期間はちょうど市場最長級の18年に及ぶ上昇市場の最中であったという点で例外的と言えるかもしれません。同様に1987年は恐ろしい下げですが、クラッシュがあった時期なのでこれも例外的と言えるでしょう。

Ticker Sense (by Birinyi Associates)

連銀の金利引き締めサイクルの終了と株価パフォーマンス

最後の利上げ
最初の利下げ
期間
S&P500
リターン
4/4/69
11/12/70
20
-16,41
4/25/74
12/9/74
8
-26.72
2/15/80
5/29/80
3
-4.45
5/5/81
11/2/81
6
-4.70
8/21/84
10/2/84
1
-2.53
9/3/87
10/19/87
2
-29.78
2/24/89
6/5/89
3
12.15
2/1/95
7/6/95
5
17.77
5/16/00
1/3/01
8
-8.08
 
平均
6
-6.98
2006/5/10 水曜日

灰色金利なんて甘い?

最近、サラ金の金利に関して色々言われているようですが(私は金利の上限規制には全く反対ですが)、ちょうど最新のEconomistにアメリカの”Alternative Financial Provider”の話が載っていました。2週間程度(低所得者の給料サイクルに合わせてるんでしょうが)の短期間金融だと年換算470%にも達するということで、これは結構スゴいですね。まぁ、上限無いんでいくらでもありでしょうが・・・

ただ、Economistの記事は銀行口座も持ってない人々に焦点を当てていたので触れてませんでしたが、えげつないのは”Alternative Financial Provider”だけではないです。普通の銀行でもチェック口座の残金不足でチェックが戻ってくるのを防ぐバウンス・プロテクション・プログラムなどを使うとATMなんかで口座の残高以上の引き出しが可能になりますが、この短期金利は年率1,000%に達することもあります。

最近は改善されたのかも分かりませんが、この短期貸し付けは私が知っているところでは少なくとも貸付真実法(Truth in Lending Act)の開示対象にはなっておらず、堂々たる大銀行があの手この手で金利と手数料を稼ごうとしていました。大体、残高不足の人が使うので、Economistの例と同様、低所得者の人がトンでもない金利を払うことになるケースが多いです。

ところで、このバウンス・プロテクション・プログラムなどの金利は昨年結構問題になっていたのですが、きっかけを作ったのはサンフォード・バーンスタインのアナリストであるハワード・メイソン氏のレポートによるところも大きいようでした。メイソンさんは数年前にもサブプライム・モーゲージ業界における捕食的貸付に関していち早く注目して問題提起したアナリストですが、別に消費者保護主義者と言うわけではなく、単に「銀行が収益を上げる方法が一般市民と規制当局の精査に耐え得るものかどうか投資家は注意を払うべきである」としていました。アナリストとしては真っ当なスタンスだと思います。

ところで、金利上限規制に反対する理由はケーザイ学的にはイッパイあるわけなんですが、私の場合それよりも自分の売る商品にどんな価格付けてもそれは勝手(であるべき)でしょ、という理由が大きいです(金利はお金の値段です)。当然のことながら市場が競争的である、という前提が必要ですけど。

もちろん、違法な取り立てが良いなんて思ってませんし、多重債務問題も大きな問題だと思っていますが、市場の価格統制というのも大問題だと思います。私は別にサラ金さんの商売とは何の関係もないんですが、お上が「お前の商品の値段の上限はいくら」なんて言う世界はちょっと、、、まぁ、サラ金と言わずに他の商品の名前を入れてみたら、気色悪さが分かって頂けるように思うのですが。

Economist

機関に嫌われるヘッジファンド・マネジャーになる10の方法

古い雑誌なんかを片付けてると、結局読み出して全然片付かないということが良くありますが(え、私だけ??)、この間古雑誌を片付けてて、古いヘッジファンド・マネジャーをパラパラ見てるとCalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)のシニア・インベストメント・オフィサーのクリスティン・ウッド女史がヘッジファンドの連中のために「大手年金基金に嫌われるトップ10の方法」を書いてるのを見つけて少し笑ってしまいました。

「ヘッジファンドの連中も大人しくなった」とか「あれじゃミューチュアル・ファンドの連中と変わらん」なんてのを最近良く聞きますが、さすがにCalPERS程になると全世界から山気のある変な人々が山のようにやってくるようです。以下、CalPERSの玄関口から放り出される(または門前払いを食う)10の方法・・・

10位:頼んでもいない提案書を山のように送りつける
9位:CalPERSが何をしようとしているのか全く分かっていない。おまけにこっち(CalPERS)も分かっていないと考える
8位:ガレージに自分たちのジェット機が入るかどうか聞く
7位:「ノー」と言うと、同じことを繰り返す
6位:5枚のスライドで済むのに50枚のスライドのプレゼンをする
5位:完全に後知恵ででっち上げた、しかも0/0(運用、成功報酬の両方がゼロ)と仮定した実績を見せる
4位:こっちの年間予算よりも高額な腕時計をする
3位:理事会メンバーと5分間会議するだけで自動的に1億ドルの投資が転がり込むと考える
2位:法外な手数料と長期間のロックアップ期間に対して何の根拠も示さない
1位:最近ガバネーター(シュワルツネッガー)に会ったかと聞く

(笑)

2006/5/6 土曜日

二酸化炭素価格メルトダウン

EU排出権取引取引スキーム(EU ETS)における価格がメルトダウンしています。上の図(Source: PointCarbon)でも分かりますがつい数週間前まで30ユーロ程度で安定していたEUA(EUアローワンス)価格は12ユーロ程度まで急落しています。

これはフランス、オランダなど数カ国が2005年において二酸化炭素排出量が割当量を下回ったと発表したためで、おまけに大排出国のドイツの排出量も割当量を下回ったという(未確認)報道がパニックに追い打ちをかけた状況になっているためです。

原油の高騰->コスト安の石炭使用の上昇->二酸化炭素排出の増加->排出権価格高騰というストーリーが完全に外れたワケで、ロンドン証取ではカーボン金融からみの会社は軒並み下落、排出権を山ほど抱えている企業の株も下落となっています。高値を当て込んで最近CDM投資の呼び込みに熱心だった途上国の排出権商売熱にも少し影響が出そうですね。

しかし、排出枠という市場最大のファンダメンタルがEU委員会と各国政府の綱引きという政治要因で決まるEU ETSの最大の弱点が垣間見えるような値動きでもあります。