2006/3/31 金曜日

FRB利上げよもやま

米国連銀はFF金利を0.25%上げて4.75%にしましたが、市場は大体5%あるいは5%超えを予想する声が増えているようです。

今回のFOMCはバーナンキになって初めてなので、皆さん色々「何か」を期待していたようですが、FRBの声明も相変わらず何とでも取れるという感じで、WSJ言うところの「バーナンキは連続性を選択した」という見方が結構多いようです。

しかし、俗にFed Watcherと言われている人々は相当な「非連続性」を感じているのではないでしょうか。

グリーンスパンが長かったおかげでグリーンスパンの時代にはFRBの声明をどう解釈すべきかというゲームのルールを(非明示的であっても)お互いが良く分かってやっていたと言うところがあります。

つまり、皆さん毎回FRBの声明をその前の声明と見比べてちょっとタカ派的な単語が入ったとか、ちょっとハト派の文章が入ったとかで上だ下だと言ってた(で、おそらくグリーンスパンもそういうのを十分認識して市場に与えるアナウンス効果を考慮して声明にしていたと思いますが)という部分が大きかったわけです。

しかし、今回はいくら字面が今までのに似ているからと言って、バーナンキが肝心のグリーンスパン時代の「ルール」まで「連続性」を守るかどうかってのが全然分かりません。というか、グリーンスパンのまだるっこしいゲームのルールまでバーナンキが「連続性を守る」と考える合理的理由は全くありません(少なくとも長期的には)。

というわけで、皆が予想していたより、連銀議長の交代は期待の形成(のされ方)に少なくとも短期的には大きな影響を持ちそうです。今回もかなり見方が割れているのも、ここらへんにも少し理由がありそうに思います。

FRB声明

2006/3/23 木曜日

フランスの「iTMS公開法案?」ってどうよ。

what’s my sceneさん経由、ITMediaのニュースによると、フランスでiTMS(だけでなく他のオンライン・ミュージック・ストアも)が固有のDRMで保護しているコンテンツを、消費者がさまざまな機器で利用できるように、フォーマット変換できるように義務付ける法律(DADVSI)が下院を通過し上院にかけられることになったようです。また、消費者は自分の購入したコンテンツを他のフォーマットに変換するためDRMを解除することも認められるようです。

これだけであれば、私も基本的に大賛成なのですが(買ったものをどーやって聞こうと勝手でしょ)、この法案自体はどうも極めて「クサイ」もののようです。

まず第1に、この法案にはフランスお膝元のメジャーのVivendiによりトンでもない修正が加えられており、「潜在的に」ファイル交換に使用され得るソフトウェア(クライアント、サーバを問わず)は違法となり、この手のアプリケーションやサービスに関する情報をネット(や他の媒体)に掲載するだけでも最大で懲役3年、30万ユーロの罰金が課される可能性があります。

第2にDADVSIでは消費者が自分自身の使用のためであっても自分のDVDのバックアップ・コピーを作るのが違法となっています。これは「フェアユーズ」でさえ、著作権の侵犯に当たるとするような最近のRIAAの主張に近い過激なものです。

どうも世間ではApple/iTMSのDRM解放の話題のみに注意がいっているようですが、全般的にここらへんのことも考えると、これはひょっとするととんでもないガラクタ法案なのではないかという気もします。

ところでAppleはどうでるかの話なのですが、まずフランスでのこの法案がコピーの増加による事業のコスト増と同じ影響を持つと考えれば、Appleの業界内での独占的地位(フランスではまだバージンが首位ですが)を考慮すれば、これは基本的にVarianによる「独占業者と価格差別」の古典的な例となり、フランスでの価格を大きく引き上げるというオプションを取らない(または取れない)場合は、AppleにとってiTMSのフランス撤退というのが経済的に最も合理的なオプションとなる可能性があります。

で、この場合、最も被害を受けるのはフランスの消費者ということになりますが、iTMS撤退による消費者利得の喪失だけでなく、ガラクタ法案によるより厳しい規制も被ることになり泣き面に蜂という最悪の場合も有り得るわけですが、アホな議員をもったツケは最終的に自分に戻ってくるという教科書的結末になる可能性もあります。めでたしめでたし(どこがや)。

2006/3/17 金曜日

大統領の異常な愛情、いや取引

大統領の異常な取引 - または私は如何にして心配するのを止めて友人の核爆弾を愛するようになったか

少し忙しくてあまり雑誌類もチェックしてなかったのですが、米国・インドの「核の友達」関係を皮肉ったEconomist誌の表紙に少し笑ってしまいました。

2006/3/15 水曜日

新聞から株式欄が無くなる日?

New York Timesの記事によると、同紙は4月4日から火曜日-土曜日の間の紙面における、従来の全銘柄の株価掲載を止め、同紙のウェブサイトでのインタラクティブ・ツールと市場情報のパッケージを提供すると発表した模様です。

紙面では現在の株価の表の代わりに、S&P500のトップ100銘柄のパフォーマンス一覧を含む市場・経済情報、市場分析、外為などの情報を掲載した2ページのスペースになるようです。

基本的に、多くの読者が投資情報をインターネットで見るようになってきたため、紙面を削ってコストを削減するということのようですが、記事によると他にもシカゴ・トリビューン、ロサンゼルス・タイムズなどが株価欄を大幅に削減しており、今後同様の動きが広がるかもしれません。

しかし、そこら中に載っている情報をずっと毎日大量の紙でずっと配布していたわけですから、あまりに遅い動きと言えば遅いですねぇ・・・ただ、こうして考えてみると、他にも要らなくなるページが相当結構あるような気もしますが・・・

日本の新聞もそのうちどこかやるんでしょか?

2006/3/14 火曜日

米国株式市場の魔の4年サイクル?

米国の株式は今年も結構底堅く推移しているようですが、米国株式を見てる人の潜在意識の中で消そうとしても消えないのが、今年ちょうど底の年に当たる「魔の4年サイクル」ではないでしょうか。

下のグラフ(クリックで拡大)を見ても分かりますが、S&P500は歴史的に上昇傾向にあり、したがって時々調整局面を迎えますが、恐ろしいのがその規則性で、実質ベースで見るときっかり4年ごとにトラフになっています(唯一の例外は1986年ですが、次の年の1987年に「倍返し」という感じになっています)。

良くある説明では、大統領選サイクルとの関係で、大統領任期の4年目には政権サイドが選挙の勝利を目指して何が何でも経済拡大を図るために株価は上昇し、選挙の憂い少なく「真面目」に経済運営する(ので、その結果株価が下落する)のが2年目ってハナシなんですが(ホンマかいなって感じですが)、気になるところではあります。

完全にランダムウォークなど無視したようなグラフですが、まぁ株式市場も極めて人為的な世界ですから、人知を超えた完全なランダムというのも難しいかも(?)・・・

BTR “Investment Strategy Upd.” (PDFです)

米国株式4年周期グラフ(クリックで拡大)

2006/3/11 土曜日

LSE、Nasdaqの買収提案を蹴る

ロンドン証取(LSE)は米国Nasdaqによる41億7,000万ドルの買収提案を拒否したようです。まぁ、買収金額が低すぎるってことらしいんですが、この金額は2006年度のLSEの利益をベースにしてもPER26倍に当たりますから、それほど高成長ではない業界では相当高いものです。

LSEの株価自体、相次ぐ買収提案で高騰しておりここ1年で倍程度になっていますから、それに対する8%のプレミアムでも拒絶というのは相当な強気と言えます。ただ、この間のオーストラリアのMacquarie Bankグループによる買収提案を拒絶したとき程、えげつない拒否の表明ではないので、LSEとしても今後のNYSEなどの動きも考えて柔軟な物言いにしているという気もします。

LSEは欧州大陸の主要取引所としては(意外なことに)取引所自体の時価は小さい方ですから、今後もこの手の提案は結構あると思いますが、今度の拒否は今までのと比べても紳士的(?)な感じなのでNasdaqやNYSEとの(どんな形にせよ)今後の提携話は有り得るという気もしました。。

ところで今回の提案で英国人連中が一番気にしていたのが、ロンドン証取が外人に買収されることではなくて、Nasdaqに買収となったらLSEに上場してる企業の報告基準にまで悪名高きSECが口をはさむんじゃないかということで、ここらへんずっと買収慣れしていて、所有と法規制の権限と言う問題がアタマの中できっちり分かれているシティの連中っぽいって感じでした。

WSJ($)

2006/3/10 金曜日

日本は相変わらず日本という話

とうとう量的緩和も解除のようですが、経済も地を這いながらも中々強いということで、日銀のいつもの話ベタを除けば、タイミングもそれほど悪くない(ほっとくと将来のショックに対する恐怖が逆に出てくるという意味で)かもしれません。物価上がり気味のところでゼロ金利継続なので、どっかの株屋さんの口を借りれば実質的には緩和と言えないこともないですが、基本的には1990年代初頭のバブル崩壊の後始末が少しだけ終わったという象徴的な意味の方が大きいかもしれません(15年もかけて)。

で、15年もかけてどうなったかというと、メディアなんかでは、改革のおかげで日本企業はお上に頼らなくなりスリムになって無駄を切り落とし、日本経済は筋肉質になったとかいうおハナシをよく見るのですが、FTのマーチン・ウルフがちょうどこれに関して、”Unreformed, but Japan is back”というちょっと面白いコメントを書いていました。

「日本経済は依然として、成長が輸出と投資に依存する経済であり、民間セクターが自国で収益性高く投資できるよりもはるかに多く貯蓄している経済であり、企業が資本を無駄に使っている経済である。日本が回復しているのは、日本の経済が新しい経済になったからではない。バブル時代の遺物が一部クリーン・アップされたのである。」

というわけで、ウルフ氏はいくつか例をあげているのですが、例えば

  • 2001年第1四半期から昨年第4四半期までGDPは実質で9.9%上昇したが、需要増加のうち輸出の寄与が30%、投資が18%、公的セクターが14%と輸出、投資、公共投資頼りは相変わらず。
  • GDPに占める企業投資の割合は米国、ドイツに比較して40%高い。しかし、高投資は高成長を生んでいない。平均的な日本企業は米国企業と同じ価値を生み出すのに、米国企業より70%も多くの資本を必要とする(もし日本企業のROIが米国企業並みになっていたら、投資は減少し投資頼りの日本経済は減速していたかも)。

というわけで、ウルフ氏に言わせると「日本はやっぱり日本」となります。15年かけてちょっと元に戻ったというところなんですが、バブル崩壊でGDPの2.7倍にも及ぶ富が失われるという、この比率だけで言えば米国の1930年代をしのぐ惨劇の後としては、悪くないんじゃないかというのがウルフ先生のご意見のようです。

ただ2003年の日本の家計の純負債は可処分所得の317%(「借金まみれ」の米国家計の2004年の数字は185%)、政府も企業も国際的な水準から見るとまだまだ借金まみれということで、この面でもあまり手放しの評価とはいきませんが、、、

Unreformed, but Japan is back

2006/3/6 月曜日

日銀量的緩和解除つれづれ

日銀の量的緩和解除が結構騒がれているみたいで、いろいろなことを聞くだけでなく、聞かれたりするんですが、ちょっと騒がれ過ぎなような、、、

キャリー・トレードがなくなって、米国資産から日本の資金が離れてドル安になるとか、なんか大変なことが起こってるかのように聞かれると「・・・・」となるしかないのですが、量的緩和解除っていっても今の35兆の当座残高をどれくらい減らすのかは分かりませんが、大体決済に必要な日銀当座残高を6兆円としても、バッファに30兆もあるわけで10兆やそこら減らしたところで実質的に何の変化が起こるのかさっぱり分かりません。

金利にしてからが、決死の覚悟で連銀なみに0.25%上げたところで(まぁ、当分有り得ない話だとは思いますが)キャリーに何の影響があるんでしょか?(大体どれくらいキャリートレードがあるのか実体もよく分かってないってのもありますが)

というわけで、大きい影響はもっぱら「期待」というところなんでしょうが、どうも外人連中の騒ぎぶりを見てると、日銀はもうちょっとおしゃべりになっても良いのではないかという気もします。「解除」の一点張りで、解除後の政策スタンスに関する期待醸成が全然できていないようで、、、(まぁ、しょっぱなから首相や官房長官の行政の長が否定姿勢に出たのも、まずかったような気もしますけど。なんか必要ない大げさな「カブキ」にしてしまったという点で、、、)