2005/11/30 水曜日
サーベンス・オクスリー(SOX)法ってゆーと、エンロンやワールドコム事件など2000年前後に山のように起こった不正会計問題に対処するために米国で制定された法律で、財務報告の透明性を高めるために、財務情報の開示義務や内部統制の義務の強化、情報システム、業務プロセスまわりの文書化など、幅広い範囲で企業の義務が定められています。
違反した場合はCEOやCFOは牢屋入りの可能性もある恐ろしい法律ですが、会計監査法人や、ITコンサルティング、そしてソフトウェア会社にとっては、「経営者の恐怖」に「つけこんで」一稼ぎするネタになっています。SOX以降で法廷において有罪の判決が出たり、被告が有罪を認めた件数は500件を超えており、日頃はどんな提案書を見ても「で、なんぼ儲かるんや」という感じのお偉いさんも、SOXに関しては冗談抜きで「人ごとではない」ワケです。
で、売り込みも相当露骨なものが多くて笑えるんですが、この間システムがらみってことで仕事で駆り出されたソフトウェア会社某社のプレゼンも最高でした。まず、プレゼンの最初の方で、ブタ箱に放り込まれた経営者の写真、名前と刑期のリストが出てきます。少し例を挙げると、まぁ、こんな感じです。
アデルフィア:John Rigas (元CEO) 禁固15年、Timothy Rigas (元CFO) 禁固20年
ワールドコム:Bernard Ebbers (元CEO) 禁固25年、Scott Sullivan (元CFO) 禁固5年
ライトエイド:Martin Grass (元CEO) 禁固8年、Franklin Brown (元副会長) 禁固10年
以下延々と続く・・・
こういうリストが一杯出てくるんですが、写真付きで同輩の経営者の末路に思いを起こさせるという憎いというかエグイ演出にまず笑ってしまいました。そして本題のコンプライアンスからみのソフトウェアの宣伝、じゃなかった説明が入ったあとで、再びSOX法の要件を甘く見て「うちの会社は大丈夫だろう」なんて運にまかせて用意を怠るとヒドい目に遭うという脅しがあって、そのとどめがまたスゴいやつでした。あまりに可笑しかったので、最後のスライドをもらって日本語に変えてみたのが下のやつです(日本語にする際、社名等見えないように、写真の部分のみに変更しています)。

いくらなんでも人の会社の経営者つかまえて「punk(クズ野郎)」ってのは、(本当にそうだとしても)マズいと思うんですが・・・ いや、しかしこのプレゼンはやはり日本人の間では無理ですねぇ。
後記:これは言うまでもないですが、クリント・イーストウッド扮するダーティ・ハリーの有名なセリフです。ちなみに原文では
“I know what you’re thinking. Did he fire six shots or only five? Well, to tell you the truth, in all this excitement, I’ve kinda lost track myself. But being as this is a .44 Magnum, the most powerful handgun in the world, and would blow your head clean off, you’ve got to ask yourself one question: Do I feel lucky? Well, do ya punk? “
となっています。ウェブ上のいろんなやつを参考に適当に訳していますので、映画の吹き替え版、字幕版の日本語とは少し異なると思います。
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2005/11/26 土曜日
この間New York Timesをぺらぺら見ていたら、14年間にわたって平均年率33%以上のリターン!! (同時期のS&Pのリターンは年率約11%)を上げているヘッジファンド(Medallion)の話が出ていました。
運営している会社(ルネサンス・テクノロジーズ)の社長はジェームズ・サイモンズ(James Simons)で、数学をちょっとかじった人ならピンとくると思いますが、その昔多様体の研究(だったと思う)で米数学会のヴェブレン賞(数学界でも相当ステータスの高い賞の1つです)をとった元大数学者です。
投資の世界でも、その筋の人にはそこそこ知られていたものの(2004年のヘッジファンド・マネジャー年収ランキングで2位だったような気がします)、バフェットなどのようには一般には良く知られた名前ではなかったのですが、今度のNYTの記事で相当有名になったのではないでしょうか。NYTの論調はこの統計とコンピュータを駆使したファンドに感銘を受けた感じで、サイモンズ先生の「特定の価格パターンはランダムではなく、結果を予見し得る」という言葉を引用しています。
確かに、14年間にわたって年率33%というのは並み大抵ではないですが、ファンドの使用している実際の戦略の詳細の吟味なしに「大学者+コンピュータ+数学+高リターン=すごい(に違いない)」という超おめでたい論調を見てすぐに思い出したのはノーベル賞学者によるヘッジファンドLTCMでした。実際にすごいファンドである可能性ももちろんありますが、こういう論調はファンドの潜在的リスクを無視しているという面で、極めて危険です。
分かりやすい例としてもう1つすごいファンドを挙げてみましょう。このファンドは1992年から1999年の間に平均年率41%のリターンを上げています(同時期のS&Pは16%)。このファンドの名前は「資金大量虐殺パートナーズ」というふざけたものですが、それもそのはず、以前にこのブログでも紹介したアンドリュー・ロー先生が、ファンドのリスク評価の難しさを説明するために仮想的に作ったシミュレーション上のファンドで、このファンドの戦略はS&P500指数(SPX)のプット・オプションを全力で売るだけという単純なものでした。
もちろん株を持っている人がプット・オプションを買っておけば万一のリスク・ヘッジになりますが、プット・オプションを売る方は万一の場合は大きい損害を被るという意味で、そしてこの例のファンドでは全力で売っているという点で極めてリスキーな戦略です(これはロー先生のRisk Management for Hedge Funds: Introduction and Overviewという論文で紹介された例です)。1つ間違っていればLTCM並みの派手な破綻となったことでしょう。
私は市場効率性仮説原理主義者ではないですから、市場に非効率な(予見可能な)パターンが少々あっても別に驚きませんが、全般的に言えば概ね市場は効率的だと思っていますし、リターンとリスクのトレード・オフは厳然と存在すると思っています。
サイモンズ先生のファンドがリスクが高いのかどうかは全く窺い知り得ることではありませんが、単にある期間すばらしいリターンを上げていると言う理由だけで、実際に使われている戦略も知らずに投資したり、投資を勧めるのは賢明なことであるとは思えません(ちなみに効率性仮説によれば、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの何の保証にもなりません)。年末ラリー期待で、米国は少し浮かれているようですが、NYTにもこのような記事が出てくると少し緩みすぎではないかという気がしないでもありません。
しかし、ヘッジファンドはフツーの神経では何年もやり抜くのは並大抵ではないですが、やはりここまでの人になるとアタマだけではなく神経も全然フツーではないんでしょうね。ついでに、この先生のファンド、運用報酬5%、成功報酬44%(!!!)と手数料体系も並みではないようです。
カナダの元国防相で、ピエール・トルドー政権での副首相だったポール・ヘリヤー氏(Paul Hellyer)は、カナダのNGO3団体とともに、カナダ議会に対し宇宙人との外交(Exopolitics)に関する公聴会を開くよう求めたそうですが、その声明の中でのヘリヤー氏の発言:
米軍はエイリアンに対して使用可能な兵器の準備をしており、我々が警告を受けることもないまま、米軍は我々を宇宙戦争(Inter-Galactic War)に巻き込む可能性がある。ブッシュ政権はついに米軍に対し月面に前進基地を構築する許可を与えており、これにより米軍は宇宙からの訪問者の動向を把握する上で、そしてそう決定を下した場合には彼らに対して攻撃を加える上で有利な立場に立つことになる。
最も近い星雲との距離を考えただけでも、「警告を受ける間もなく宇宙戦争に巻き込まれる」可能性は低そうにも思えますが、、、、宇宙人の母星が石油の一杯出る独裁星(?)でないことを祈るのみです・・・
ちなみに、このヘリヤー氏はもともと「宇宙平和」の主唱者で、宇宙への兵器配備を禁止するSpace Preservation Treatyの熱心な支持者だそうで、ちょっと前にはUFOを信じていることを公言したり、カナダをグローバリゼーションと米国による植民地化から守るために、カナダの左翼活動家の一致団結を主張したりしている、まぁ名物おじさんというところです(すみません・・・)。しかし、よくこんなおじさんが国防相をやっていたという気もしますが・・・カナダは奥が深いですね。
Yahooの記事(英文)
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2005/11/24 木曜日
先日公開された11月1日付のFOMCの議事録が意外に「ハト派」っぽかったので、「利上げ終了間近」のシグナルととったアメちゃんの株屋さんたちは、ただでさえ年末ラリーで気分が良いところに「連銀のクリスマス・プレゼント(まだ早いっちゅーに)」かと、狂喜乱舞の感があります。皆さん特に気に入ったのが、
Some members cautioned that risks of going too far with the tightening process could also eventually emerge.
一部の委員は、最終的に金融引き締めのプロセスが行き過ぎるリスクが現れる可能性があると注意した。
(頭完全にブル状態の皆さんの意見は「分かってるなら最初から言えよ。そんなにAGが怖かったのか。まぁ、あいつもそろそろ終わりだしな」というところでしょうか)とか、
Several aspects of the statement language would have to be changed before long, particularly those related to the characterization of and outlook for policy.
声明のいくつかの側面、特に、政策の性質および見通しに関する部分に関しては、 近い将来に変える必要がある可能性がある。
というような部分で(政策スタンスがAccomodativeだとか、Measured paceで利上げを続けるとかといった部分が変更されるんでしょうが)、「経済も順調なペースで成長継続の見込み」というようなおまけまでついて、皆さん顔がほっといても緩んじゃう状態のようです。
ただ、良く読むとどうもインフレには依然として警戒的スタンスで、「そろそろ中立レベルに近いんで、金利の引き上げを止める時がきたら止めるよ」というレベルの宣言のようにしか見えないというのも事実なんですが・・・皆さんやはり幸せも過ぎると嬉しいことしか目に入らないようで・・・
いずれにしても、まだ最低でも50bpくらいの上げはあると思っていますが、バーナンキの最初の仕事として、50bpくらいの金利引き締めは残しておくという可能性がかなり高いと思われます。したがってピーク金利をどこらへんに設定するかによっては、バーナンキに変わる前に一度金利据え置きが入る可能性も無きにしもあらずといったところでしょうか。つまり、最大予想でピークが5%と見れば、バーナンキ前に従来の予想通り4.5まで上げ、バーナンキ就任後に5.0%まで引き上げ、ピークが4.75%とか4.5%であると見ればバーナンキ就任前に金利据え置きが少し入り、バーナンキ後に4.75とか4.5%まで引き上げという感じではないでしょうか。個人的には中立レベルをかなり超えるところまで上げると思いますが。
連銀議長就任の初仕事が、金利引き上げの終了とか利下げになってしまうと、さすがに間違った期待形成で市場が完全にめちゃくちゃになるリスクが高すぎるので、ある程度はバーナンキに引上げの仕事を残しておくと見るのが順当だと思います。今回の議事録だけで頭が季節外れの春景色になってしまった(そうは見せていませんが)、普段は超スマートな連中を見てると、そういうリスクはおそらく無視できないんじゃないかと・・・
おまけ:ついでに言うと通貨関連の連中は怒りくるっています。Daily FXでは
The dollar is rolling over and as always, it is the Fed’s fault.
ドルは軟化。いつもようにFedのヘマ
(笑)
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2005/11/22 火曜日
米国では、金利を引き上げ続ける連銀に対して、「インフレなんか大した水準でもないのに連中は一体何を考えてるのか」という批判がかなり強いですが(特に金融、不動産、カジノ、独立系電力などの「高レバレッジ」業界ではそうですが)、逆に「インフレは実質的には既に相当の水準に達しており、Fedはまたしても完全に出遅れている」という批判もこれまた金融界を中心にして結構あります。
そんな中で今週はWSJ発行の株屋さん御用達雑誌であるBarrons誌が売り物のコラムの中でインフレに対しかなり強い調子で警告しており、まわりではちょっとした話題になっていました。以下ちょっと紹介・・・
もちろん、消費者物価指数のなどのお役所御用達のインフレ指標によると、何にも問題なんてない、心配に値するインフレなんて存在しないってことになる。でもね、少なくとも準お役所の1つである連銀はCPIの示しているものに納得していない。さもなければ、グリーンスパン一味は正真正銘のサディストってことになる。それ以外に連中が過去1年間規則正しく金利を上げてきた理由があるかね?
CPIの数字、およびウォール街の連中が「コア」の数字に対して持っている妄想の愚かしさに関しては本誌は何度も書いている。「コア」ってのは食品、燃料、住居費を除くやつだけどね、まぁ誰かが言ってたみたいに、飯も食わず、運転もせず、公園に住むんだったら結構な数字だ。名高いPhilippa DunneとDoug Henwoodによる最新のLiscioレポートも「米国において間違いなく大きなコスト圧力の1つである医療費がCPIではきちんと反映されていない」って指摘している。
Liscio Reportというのは、債券市場の超ベテラン記者のJohn Liscioが始めた米国経済ニュースで、「その筋」の人には結構読まれているレポートです。最新のレポートではBarronsの書いているようにPhilippa DunneとDoug HenwoodがCPIにおける医療費の扱いについて書いており、「BLSが(サービス、製品の)質の向上をきちんと捉えていないから、CPIは実際より高めの数字になるというような話を良く聞くが、実際の問題は全く逆であり、これ(医療費)がその明白な例の1つだ」としています。
おまいら、ちょっとは現実を見ろ。数字をよっぽどいじくり回さない限り、インフレが無いってことを示す数字を毎月でっちあげるのは至難の業だ。それにね、CPIでは質的改善の調整ができてないなんていう良く聞く話だけどね、こりゃアホの恨み節か、なんかの冗談に間違いない。
Barronsの記事の最後は「Hedonics, anyone?」というフレーズで締めくくられており、インフレの質的調整のヘドニクスと、今回のコラム記事の主題であった「強気過剰」とかけた「快楽主義」のシャレになっていて、「こりゃうまい」と思いました(本筋と全く関係ない感想ですみません・・・)。
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