2005/10/31 月曜日
アンドリュー・ロー先生(Andrew Lo)っていうとFinancial Engineering業界(?)では有名な、MIT Laboratory for Financial Engineeringの教授ですが、この間HBRの記事を読んでいると、彼の面白いフレーズが引用されていました。
“In physics, it takes three laws to explain 99% of the data; in finance, it takes more than 99 laws to explain about 3%.” (物理学では法則が3つもあればデータの99%の説明ができるが、ファイナンスでは法則が99あってもデータの3%を説明できない)
言ってる人が人だけに可笑しいですが、ちなみにこのフレーズを引用しているHBRの記事もケーザイガクの外の人が挙足取りの記事を面白おかしく書いているのではなく、筆者は元ベル研の研究者、元ゴールドマンのクオンツで現コロンビア大のインダストリアル・エンジニアリングおよびオペレーションズ・リサーチの教授のエマニュエル・ダーマン(Emanuel Derman)で、デリバティブの分野ではBlack-Derman-Toyモデルで有名な人です。
Harvard Business Review: ギリシャ文字を使ったケーザイガクには気をつけろ
ついでにダーマン先生はMy Life As A Quant: Reflections On Physics And Finance
という、金融関連に興味があって、理系のハナシにもちょっとは興味のある人には面白い本を書いています。
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2005/10/29 土曜日
米国国務省はパスポートに対するRFID(Radio Frequency Identification)チップ装着に関する規制を発表したようです。RFIDは名前の通り遠くから電波でスキャンできるバーコードのようなものですが、バーコードと違い光学的にスキャンする必要のないこと、情報量がケタ違いに大きいことから次代のIDタグとして期待されているものです。
もちろん、EFFなどセキュリティやプライバシーに敏感な団体は即座に反対しています。無線でスキャンできるので、例えば他人がパスポートのRFIDの情報を読み取って米国人と分かれば爆弾を投げつけることも可能なのではないかとか、情報を盗み出して複製できるのではないかとか色々ありますが、基本的には米国人(欧州でもある程度そうですが)は基本的に合法的であろうと非合法的であろうと、政府であろうと小売業者であろうとテロリストであろうと、第3者が本人の断りも無く組織的に個人の情報を収集できるようなテクノロジーにはかなり強い拒否反応を持っていると言えます。ということで当初の計画に対するパブリック・コメントではコメントの何と98%が反対ということで計画は頓挫していました。
国務省はそれに懲りもせず、今回新たに決定を発表したわけですが、さすがにパブリック・コメントには留意して、パスポートの内側に印刷されたPINをリーダーで読み取ってそれをRFIDチップに送信しないとチップが応答しないようにすることや、アクティブRFIDではなくパッシブRFIDにすること、何らかの「アンチ・スキミング」素材を埋め込むことなど、基本的に閉じられているパスポートの情報を他人が遠方から読むことを不可能にする方策をいくつか採用しています。しかし、開いて光学的に読まねば作動しないのであれば、高密度で暗号化されたバーコードの方がはるかに安いのでは、という専門家もいるようですが・・・
米国ではウォルマートがメーカーに対して商品へのRFID装着を要求したりしていた関係もあって、RFIDは急速に普及するのではないかと観測していた向きもありましたが、前述した米国人のセキュリティやプライバシーに対する懸念もあり予想された程には普及していないので、チップ業界は今回の国務省の決定には大喜びのようです。ちなみに日本でも、外務省が来年3月までの「RFID」パスポート導入を目指しているようですが、これも基本的にはパスポートの内側に印刷されたコードを光学的に読み取り、それから生成された暗号鍵をRFIDに送信して、それに対しRFIDが応答して情報を返すという方式のようです。
個人的には、反対派の皆さんが言う程リスクが高いかどうか分かりませんが、この手の反テロに名を借りたイニシアティブに共通したこととして、リスクも含めてどうもコストベネフィットで算盤が合うようには全然思えないところがあります。国際的な資金移動に関する銀行に対する規制なんかもそうなんですけどね。誰か得してるんでしょうかねぇ・・・
余談ですが、商品等に付けるRFIDタグに関してですが、国内技術であるユビキタスIDを推進しておられる坂村センセーがセキュリティやプライバシーに関して話されていること等を見ると、どうも第三者の不法な使用を防ぐ話ばかりなようですが、先にも述べたように消費者が強烈に反発しているのは、そこらへんのストリートキッズがポテトチップの缶についてるRFIDチップを不正にハックする事なんかではなく、あくまで「(メーカーや小売業者などを含む)第3者が本人の承諾を得ずに個人の情報を組織的に収集できる技術」であり、ちょっとばかり感覚が甘すぎるような気がします。
この面では国際標準のEPC globalのセキュリティ・スタンスも大したことはないですが、まだここらへんには一応の目配りをしているように見えます。ここらへんの感覚が甘くても、中国、韓国くらいなら何とかなるのでしょうが、国際的にはやはり相当まずいのではないかと思われます。まぁ、エンジニアリングの人は、それはテクノロジーの問題ではなく運用の問題だと言いそうですけどね。
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2005/10/28 金曜日
次期連銀議長にバーナンキCEA委員長が指名されて、まわりのアメちゃんの株屋さんだとかファンマネの皆さんは相当というか天井が飛んじゃうんじゃないかというくらい大喜びしてました。
この皆さん方の本音をデフォルメして書くと、今の連銀の連中は常軌を逸したタカ派で、AGとかコーンなんてのはとんでもない(時代遅れの)フィリップス・カーバーやデマンド・サイダーで、連銀が住宅バブルや、経済成長率やら失業率なんかに注意を払ったり口をはさんだりするのは職権濫用の大間違いで、連銀は黙って商品価格や金融指標のハードデータだけに集中して、国内物価の安定だけ考えとけ、となります(まぁ、完全雇用は連銀の明示的な責務の1つなんで、職権濫用は定義上間違っていますが)。
特に最近ハリケーンが来ても、コアCPI、コアPCE、コアPPIのハードデータに大して動きがなくても、賃金上昇率が低下しても、おなじみの分かったような分からないような声明を出して利上げを続ける連銀には皆さんことにご立腹のようで、呪文のように「バーナンキ、バーナンキ」と唱えていたわけです。これはブッシュのバーナンキ指名直後の株式市場の反応にも良く現れていますね。
さて、そのような悪態にも関わらず、グリーンスパンは不測の事態が起こらない限り、最後の仕事として来年1月の退任の瞬間まで現在の利上げを継続する公算が高そうです。
ちょっと振り返ると、グリーンスパンは1987年8月に議長に就任しましたが、当時は議長交代前の連銀の金融引き締めが不完全で、グリーンスパンも荒れやすい議長交代直後にDiscount Rateの50bpの利上げを行っており、その直後の10月に株式市場の崩壊が起こっています。
まぁ、この市場崩壊の際の手腕でAGは市場の信頼を得たので結果オーライだったわけですが、この経験から言っても、AGは在職中に引き締めに一応のケリをつけようとするのではないかと思われます。とゆーわけで、連銀はあと3回程度、25bpづつ利上げをして、合計14回、350bpの利上げ後に議長交代という形にするのではないでしょうか。2回目、3回目はかなり抵抗が大きいとは思いますが。AGの代弁者でもあるコーン連銀理事も最近のスピーチで、
“Imbalances between demand and potential supply would thus now be slow to show through convincingly to inflation, but when they do, they may be costly to correct.” (要するに需給の不均衡がインフレとなって現れるのには時間がかかるけど、インフレになってからの対処はすごく難しいから、早めに引き締めないとダメなのよんってこと)
と述べており、これもAGの意向と大して変わらないのではないでしょうか。
ところで、米国議会ではウォール街の株屋さんたちの「信任が非常に厚い」Jim Saxton共和党議員が委員長を務める合同経済委員会(Joint Economic Committee)が、用意良くバーナンキの指名と同時にインフレターゲティングを推す調査報告書をまたまた出しており(一体何回目でしょうか)、バーナンキ議長登場ともあいまって皆さんの期待は膨らむ一方なんですが、そんなに期待膨らましちゃっていいのかしらん・・・
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2005/10/25 火曜日
ブッシュ大統領はバーナンキCEA委員長、元連銀理事を次期連銀議長に指名しました。米国株式市場もこれを好感し(ハリエット・マイヤーズ騒ぎの後なんでほっとしたのもあるかも)、ダウ平均はブッシュの声明の直後に117.7ポイント急上昇しています(企業の好決算もあり、最終的に169ポイント程度上がったようです)。
まだ上院の承認が必要ですが、ほぼ衆目の一致する候補者だったので問題は無いと思われます。以前にも書きましたが、バーナンキ先生とグリーンスパン議長の最大の相違点はおそらく具体的にはインフレターゲティングに対する姿勢の違い(バーナンキは長年にわたってインフレターゲティングの主唱者であり、グリーンスパンは一貫してインフレターゲティングに反対していました)、より広く言うと連銀の意思決定全般にわたる透明性に関する考え方にありますが、指名後のスピーチでは「グリーンスパンの金融政策、政策戦略との連続性を維持する事が第一優先順位」と答えています(まぁ、当たり前ですが・・・)。彼が独自色を出すのはある程度たってからになるでしょう。
バーナンキはハーバードの経済学部を”summa cum laude”で卒業しており(そう言えば先に最高裁長官に任命されたジョン・ロバーツ氏もハーバードの”summa cum laude”でしたね)、その後MITで博士号を取得しています。プリンストンの経済学部長を経て、2002年8月から2005年6月まで連銀理事、そしてCEA委員長に指名されています。金融政策のエキスパートであり、ブッシュ政権での経済関連のポジションでは久方ぶり(初めて??)の「重量級」の登場と言えます。
ブッシュはバーナンキをCEAにもってきて「ブッシュは彼ならコントロールできると見た(というか財政赤字に対して批判することはない)」というような見方などの政権との距離に関する不安や、アカデミックな世界以外での経験の少なさを懸念する声もあるようですが、連銀議長という仕事とグリーンスパンの後ということを考えると誰が指名されてもある程度の不安の声はおそらくやむを得ないでしょう。グリーンスパンも就任が決まった直後は散々いろいろ言われてましたしね。
各国でもインフレターゲティングを支持する向きは、「理論的支柱」の1人の最大の経済大国の連銀議長への就任を歓迎すると思われます。ただ、「インフレターゲティング派」で成功していると言われていたイングランド銀行でも、来年インフレターゲットを超える物価上昇が予想されるにもかかわらず、景気減速で「利下げ」を考慮しているなど、経済環境的には脆弱(かもしれない)景気、資産価格の高騰、原油価格高騰によるインフレ懸念などちょっと微妙な時期ですね(英国の経済サイクルは大体米国の8カ月-1年くらい先とか言われています)。
ところでプリンストンがらみでは、このバーナンキだけでなくちょっと思いつくだけでも、バートン・マルキール(Burton G. Malkiel)、アラン・ブラインダー(Alan S. Blinder)、クルーグマン(Paul Krugman)、アラン・クルーガー(Alan B. Krueger)、ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman)など、まぁ限りなく(しかも全然違う連中が)出てくること・・・
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2005/10/24 月曜日
今日も変なメールが多くて少しげんなりしていて思い出したのですが、10月は電子メールが生まれた月です。
異なるコンピュータ間で最初のE-mailが送られたのは1971年の10月とされています。送り主は、BBNのシニア・サイエンティストのRay Tomlinsonさんで、アカウントのあるホストのアドレスを表すのに”@”マークを使うのを考えだしたのも彼です。今や”@”マークはネット関連のシンボルマークみたいになっていますね。
彼が最初に使ったアドレスはtomlinson@bbn-tenexaってもので、bbnは彼の勤めていた会社、tenexaは彼のホストマシンの名前です。今おなじみの.comだとか、.co.jpとかいうアドレス方式ができるのははるかに後のことです。Ray TomlinsonさんはE-mailのコンセプト、最初の実装、その後の標準化の功績で2004年のIEEE Internet Awardを受賞しています。
ところで昔からInternetに関わっていた人にはBBN(Bolt, Beranek and Newman)っていう名前も懐かしんじゃないでしょうか。Internetの前身ともいえるARPANETの構築に大きく貢献した会社です。ARPANETは1969年に稼働していたので1971年までコンピュータ間の電子メールが無かったというのも意外な感じがしますが、新しいテクノロジーが出てくる時ってのはこんなものかもしれません(発電が発明されて、工場が電気で動くようになってからも、生産ラインの配置は長い間それまでの主要動力源であった水力ポンプに都合の良い配置になっていて、電力に都合の良い配置になるのには長い年月がかかったという話をドラッカーの本で読みましたが、このメールも新しいテクノロジーに合わせていろいろな事が変わるまで時間がかかるという良い例かもしれませんね)。
ちなみにBBNは1948年にMITの教授が創立した企業で、米国でのアカデミックと産業界の往来が昔からの根が深いものであることも分かります。BBNは今でも先端のテクノロジー会社としてやっていってます。
これまでの電子メール25周年とか30周年のときには、マスメディアなんかは最初の電子メールというのをドラマチックな出来事にしようとして「最初のメールは何についてでしたか」とか「最初のメールを送った日の夕食は何でしたか」なんていう質問をしていましたが、Tomlinsonさんは「1971年に何してたかとかメールで何書いたかなんてフツー覚えてないよねぇ」って感じで笑えました。最初の電子メールの内容はたぶん自分宛にテスト用で出した”QWERTYIOP”とか”TEST-1-2-3″とかで、最初に他人に出した電子メールの内容はおそらく電子メールが使えるようになったというお知らせと使用方法ではないかということですが、この無味乾燥ぶりもなんとなくインターネット時代の技術にはふさわしいような気がしたものです。
Ray Tomlinsonさんのページ
最初のE-mailに関するBBNのページ
“@”マークに関するBBNのページ
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2005/10/23 日曜日
ちょっと前にLiveDoorのフジ買収で大騒ぎと思ったら、今度は楽天がTBSだそうですね。TBSの経営陣サイドやらのどうしようもない対応はいまさらなんで、あまり驚きはないのですが、この手の買収話には何か気持ち悪いところもあります。
なんか気持ち悪い、ってのはAOLとタイムワーナーなんかもそうだったんですが、資本関係や所有権をテコにした、かなりドメインの異なる異種企業間の提携・統合(ごちゃまぜ)ってのがどうもすごく「オールド・モデル」にみえるとこです。
例えば米国のCATV会社のComcastはずっと以前から他社に先駆けて、各TV放送局の有力番組のビデオ・オン・デマンド(VOD)放送のライセンスを大量に獲得し(他社には自社よりも高い価格でないとライセンスさせないという条件で)、他CATV会社や通信事業者相手の戦いを有利に進めていますが、もしComcastがこれをやるためにTV局の株を買い占めて事業統合とか言ってたらどうだったんだろうとか、AppleはiTunesで音楽を売りさばいていますが、レコード会社がAppleを買収するとか、Appleがレコード会社の株を一部買って事業統合という話はどうなんだろうか、と思ってしまったわけです。可能だとしてもおそらく投資家はそっぽを向いていたのではないでしょうか。まぁ今回の話とはかなり違いますが。
テレビ番組から広告サイトに誘導したり、TBSコンテンツのブロードバンド配信や各種イベントのチケットをネット販売する──など「テレビとネットの組み合わせは、いいコンビネーションになる」そうなんですが、これってもともと買収やら「事業統合」が必要なことなんでしょうか?この程度の事をするために買収をテコにしてかなりドメインの異なる事業を所有権を通じて一緒にするというのがハイリスク・ローリターン(かどうかは分かりませんが)のすごく「古い話」に見えてしまうわけです。株価にしても「コングロマリット・ディスカウント」の可能性もあると思いますし。
これだけの話なら事業統合ほどの話ではなく、普通の業務提携や「戦略的同盟」レベルでやるべき話のように思えます。今のメディア業界のスピードを見ていると交渉に気の狂うような時間がかかるのかもしれませんけどね(TBSが番組ソフトを大量に保有していて、安値でのソフト買いという事なら分からなくもないですね。本当のところはここらへんが狙いかもしれません。TBS「自体」がどれだけのソフトを保有しているのかトーシロには分かりませんが)。
こういう形にしたのは「真剣さを示すため」だそうですが、ビジネスは常に真剣にやるもんですから、株買えば真剣ってのも良くわかりませんねぇ。
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2005/10/18 火曜日
日本の公的債務はGDPの160%とか、770兆とか780兆とか、まぁとんでもない額になっています。底が抜けるととんでもない事になるとゆーので、誰の背中も凍り付き何も言えなくなる額ではあります。財務省はバランスシートの試案を出していますが、公的な資産などは実際には売れないものが多いので、実際の債務超過額は発表されている241兆ってなもんではないんでしょうね。
で、対策は第1に歳出削減、第2、第3が無くて、第4に増税、第5、第6がなくて、第7にインフレなんて話なんですが、日本の国民はこの数字にあまりビビって拙速になる必要はなく、理性的に自分たちに降りかかる負担を考慮しながら債務圧縮のオプションをゆっくり考えるくらいの余裕はあるという論文を最近ちょっと見つけました。財務省の脅しにあまりに敏感に反応する必要はひょっとしたらないかも?
この論文はコロンビア大学経済学部の副学部長であるDavid Weinstein教授と、論文執筆当時はニューヨーク連銀のエコノミストで現在はシカゴ大学経済学部のChristian Broda助教授によるもので、昨年9月のもので少し古いのですが、彼らの結論によると日本の公的債務は、今後日本がどの程度の公的支出を行うか有権者がまだ決定する余地のあるものであるとしています。
まだざっと読み飛ばしただけなので、不正確かも分かりませんが、彼らの論文のベースの1つは、政府機関、準政府機関の間での債権債務、例えば日銀や他の公的機関が保有する国債などは公的機関全体の正味で見れば、債務と資産で打ち消し合うので実質的な債務とはならないというものです。この影響を取り除くと、日本の正味の政府債務はGDPの46%になり、これに公的機関が民間セクターに対してもつ不良債権を足して、日本の正味の政府債務はGDPの62%となるというのが彼らの計算です。これでも結構高いんですが、OECDの平均を少し下回る程度になります。
彼らは、いろいろなケースで公的債務を持続可能とするための課税水準を推測していますが、最悪の事態でも、日本の公的債務は課税水準を平均的なEU諸国並みまで上げるだけで持続可能であるとしており、最も妥当な水準としては3%から9%の課税水準の上昇が必要であろうとしています。これでも相当きついとは言えますが、彼らの計算が正しいとすると、巷で言われている破滅的なシナリオには根拠がなく、財政崩壊の可能性は低いということになります。
余談ですが、経済学はろくな事を予想しないので「Dismal Science (陰気な学問)」と言われているのですが、この論文のタイトルは”Happy News from the Dismal Science”と「陰気な学問からの良いニュース」というタイトルとなっています。
ちなみに昨年のEconomistでも紹介されていたものです。
論文の全文は下のリンクからダウンロードできます。
Happy News from the Dismal Science
追記:コメントして頂いた方から、こちらのサイトにこの論文の要約が出ているとの情報を頂きました。上の駄文よりもはるかにきちんと要約されているので一読をお勧めします。あと、翻訳も出ているようです(驚きました)。訳書の情報も上記リンク先にあります。
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2005/10/16 日曜日
全般的に企業決算は昨今明るくなっているようなんですが、まだ「日本経済の二重構造」(つまり、国際競争にさらされて強力となった製造業を中心とする輸出産業と、規制などで生産性の低い国内産業の二重構造)はまだ温存されたままです。政治家のレトリックとは裏腹に「規制緩和」といってもほとんど進んでいないのが現状ではないでしょうか。
中間決算で百貨店大手3社(三越を除く)が増益決算だそうで、これはこれで目出たいんですが、最新四半期の営業利益率をざっと見てみるとざっと以下のようになります(Yahoo! Finaceより、連結)。
大丸:3.1%
高島屋:2.9%
三越:1.7%
これは、全体的に低収益の国内産業なのであまり目立ちませんが、例えば、同じく「百貨店は絶滅する」と長らく言われている米国の同業者の最新の四半期の営業利益率をちょっと見ていると、下のようになります(Dow Jonesより)。
フェデレーテッド・デパートメント:8.0%
J.C.ペニー:4.6%
サックス:3.4%
業績不振で事業売却の激しい圧力を受けている高級百貨店サックスでさえ、日本の大手百貨店を凌いでいます。まぁ、会計基準も少し異なりますし、同じ百貨店といっても業態的にはかなり異なりますので直接的な比較は不可能ですが、同じような国内産業でも相当収益力(そして収益に対する市場の圧力)が異なっていることが分かります。ついでに英国のマークス・アンド・スペンサーの営業利益率は大体8%前後です。
ちなみに、格差は百貨店だけではないです。大手チェーンを見てみても、最新の四半期の営業利益率では、
イオン(日本):3.2%
ウォルマート(米):6.0%
ターゲット(米):7.2%
テスコ(英):5.6%
ということになっています。こういう数字には常に「市場構造が違う」とか「業態が違う」という答えが用意されているのですが、「儲からない市場構造が日本ではなぜ温存されるのか」という疑問には触れられないことが多いのではないでしょうか。
ちなみに、私が実際に見たり聞いたりした中では、上で書いた日本の小売企業では大丸に最も「経営の意思」を感じました。管理部門もスリムですし、自社できちんと「マーチャンダイズ」しようとしている意思を感じました。当たり前のように聞こえますが、あんまりないんですよねぇ。
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2005/10/13 木曜日
日銀の福井総裁が量的緩和解除の時期に関して「2006年度にかけて可能性が高まる」と述べたそうです。慎重に観測気球を上げながら現在の政策フレームワークからの出口をはかっているようです。
先物市場も、来年の10月までにオーバーナイト金利が大体30-35ベーシスポイントになると織り込んでおり、用意は着々という感じもちょっとだけありますが、量的緩和の解除は日銀による事実上の国債引受の額の低下となる可能性が高いですから、政治家(とモルヒネ中毒者のみなさん)がどれだけやかましくなるかという点が少し不透明要因といえます。
量的緩和の主なメリットは日本の金融システムに対する信任のメルトダウンを防ぐという意味合いが最も大きかったと個人的には考えていますので、金融システム不安も一段落した今、あまり拙速にする必要はないとは思いますが、出口に着実に向かう時期に来ていると思います。まぁ、このままある程度の原油高が続けばCPIには強力な下支えになりますから、「表向き」のリクツもつけやすくなってますしね。
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2005/10/12 水曜日
ちょっと古いニュースですが、どうも村上ファンドが阪神電鉄の株を買い集めて、阪神タイガースの上場を勧めているようですね。驚きました。阪神株に球団価値が正当に織り込まれていないから(本当にそうなのかどうか分かりませんが)、上場して球団の価値を100%実現して株主に還元せよということでしょうか。
村上ファンドのことですから、色々問題のある親子上場ではなく、阪神電鉄の保有比率は相当引き下げ、IPOあるいは阪神球団の株式を既存の株主に割り当てるスピンオフ形式にすることを考えておられるんじゃないかと思いますが(法律には疎いので会社分割法上どういう課税になるのか分かりませんが)、面白い話だと思います(そんなに高値が付く程キャッシュフローの生み出される事業なのかどうか良く分かりませんが)。
スピンオフは米国などではよく使われている手法で、極端なところでは昔「ただの電話会社」だったAT&Tが、社内での先端技術開発の中核であったルーセントテクノロジーズをスピンオフし、当初10ドル未満だったルーセント株はその後バブルの最高時には84ドルまでつけて、AT&Tの技術の価値を100%(以上)実現し、「ただの電話株」のAT&Tの株主を大喜びさせたことがありました(その後バブル崩壊で1ドルを切る事態になるのですが)。阪神も「ただの電車株」ですが、「阪神タイガース」の人気の価値を100%実現するには良いアイデアだと思います。
阪神球団の上場に関しては反対の声も多いようですが、もし上場すれば株主、経営者からすれば球団の高成績による人気上昇が最も利益にかなう事となるでしょうから、球団の強化、人気を第一義に真剣に考えるでしょうし、資金面での事とも合わせ、球団にとってもそれほど悪い話じゃないような気もします。最近でこそ結構強いですが、もともと阪神電鉄は「阪神電車にそこそこ人が乗ってくれれば良い」くらいの経営態度だったと思いますし(わーごめん)。
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