2005/8/29 月曜日
保守派の雑誌としてはEconomistの表紙には時々少しWickedなセンスがありますが、今週号もちょっと意地の悪い表紙でした。

Economistは原油の価格上昇に関して、基本的に経済の好調を反映した米国および中国の過剰消費を挙げており、このエネルギー効率が悪く過剰高成長の2大経済が原油価格を押し上げる事によって、比較的成長率の低い欧州などの経済に実質的に「原油税」をかけているとしています。
税率の引上げなどによる米国におけるガソリン価格の上昇(による原油需要の抑制)、中国国内での石油価格統制および補助金の撤廃による原油価格上昇の市場価格への反映(による原油需要の抑制)が好ましい解決としていますが、ってことはこりゃ無理ですね。
この記事見た複数の米国人の反応では以下のようなものが多かったです・・・
「大体英国とか日本みたいに小さくって国中電車が走っている国じゃないんだから、ガソリン高くするってのはナンセンス。それにさ、米国でガソリン増税してガソリン消費が減ればどーなんのさ。石油価格は下がるかもしれないけど、それで喜ぶのは中国でしょん。今の価格(以上)でも連中買いだって言ってるんだから、米国で減った分中国が喜んで一杯買うの目に見えてるじゃないの。結局原油価格はそんなに下がらないし、何で中国喜ばすために米国で増税しないといけないのさ」
まあね、十理はなくても一理はありますね。残念ながら。それできっと中国人に聞いても同じような事言うんでしょうねぇ。
2005/8/23 火曜日
MITの雑誌のTechnology Reviewをパラパラ眺めてると、2005年版のR&Dスコアカード、いわゆるInnovation Indexの全世界の企業ランキングが載っていました。
これは企業の研究開発費、研究開発費の前年比変動率、研究開発費の前年比変動額、研究開発費の売上高に占める比率を同じ重み付けで総合してはじき出したものです。計算方法の是非には議論もあると思いますが、上位15社を1位から挙げると -
- サノフィ・アベンティス
- マイクロソフト
- バイオジェン・アイデック
- ゼネラル・モーターズ
- メルク
- ファイザー
- ジョンソン・エンド・ジョンソン
- インテル
- ダイムラー・クライスラー
- グラクソ・スミスクライン
- フォード・モーター
- ノバルティス
- アストラゼネカ
- ロシュ
- シーメンス
となっています。
1位と3位のサノフィとバイオジェンは合併の影響でR&D費が重複していて計算されているので、来年はおそらく下がりますが、見ていて気がつくのはやはりバイオ・医薬系が多いことでしょうか。バイオと医薬は現在最も研究開発集約的な産業であると言えます。
日本企業では、松下電器が17位(電気製品業界ではトップにランクされています)、トヨタが18位、ソニーが28位、ホンダが31位となっています。とかく日本では欧米企業を「短期利益重視」なんて言ってる人が多いみたいですが、ここからは少し違う像が浮かんでくるのではないでしょうか?
2005/8/20 土曜日
最近、鳥インフルエンザ絡みの記事を経済誌などでもちらほら見るようになっていますが、カナダの金融グループのBMOグループの投資顧問ユニットであるBMO Nesbitt Burnsが、鳥インフルエンザH5N1が人間の間で流行した場合に経済に与える影響に関するレポート「Investor’s Guide to Avian Flu」を公表しています。
忙しくてまだ読んでないんですが、さっと読み飛ばしたところでは、期間と深刻さによっては、少なくとも短期的には1930年代の大恐慌に匹敵する経済的打撃ということで、投資家は経済的にサバイバルするためには、現金、不安定な銘柄に対するプット・オプション、優良な債券、レポートで触れているようなリスクに対するエクスポージャーが最低限の、配当を行っている株式を考慮すべきだそうで・・・
ただ、アジアがおそらく震源になるのでここらへんの通貨で現金持っててもダメかも。まぁ命あってのモノダネだと思いますが。大量の死者で住宅が供給過剰になって現在の不動産バブルが破裂するかもなんていうぞっとするハナシも出ておりました。
どちらにせよ、市場がまっとうに機能するというのはフツーでも極めて難しい(情報インフラや、反市場的行為の規制やら、法制やら、必要になる要件を考慮すれば市場経済が一部の先進国でしかそこそこ機能していないのは偶然ではないです)ので、物理的に破壊的なインフルエンザがくるとレポートに書いてある通り「市場はワクチンをうっていない人間と同じくらい脆弱である」ってことになるかもしれませんね。
Investor’s Guide to Avian Flu (英文、PDF)
2005/8/18 木曜日
ロンドンの地下鉄爆破テロに関わったとみられる、Hussain OsmanことHamdi Adus Issacがイタリアで逮捕されたのは携帯で「足がついた」からだという報道は結構みますが、少し前にそれに関する少し詳しい記事をFTで読んでいて気になった点がありました。記事中で、FTは次のように書いています -
より重要なことには、携帯電話事業者は(当局からの要請があれば)、所有者が携帯電話を使用していない時でさえ携帯のマイクを起動し、携帯電話を安全保障当局にとって完璧な盗聴機器に変貌させるソフトウェアを、どのような携帯電話にも所有者に気付かれないようにリモートでインストールすることができる。
Royal United Service Instituteのサンドラ・ベルは「私達は、追跡可能な個人IDカードを気付かないうちに携帯電話という形で携行し始めた」と語っている。
まぁ、考えてみれば技術的には十分に可能な話ですが、米国の友人に聞いたところ、米国の当局でも話題にはなっているようだけれども米国ではまだやっていないと思うと言っていたので、現時点では欧州に限る話なのかもしれません。しかし、ますます携帯嫌いになるような話ではあります。
Financial Times (登録者専用の記事かもしれません)
Guardian(セキュリティの特集記事-前述のFTの記事の言及しています。登録不要)
2005/8/12 金曜日
原油が高騰していますが、昔ちょっと話題になった100ドルって話もまた復活するかもしれませんね。ところで、それに負けないくらい印象的な価格上昇を見せているのが二酸化炭素の排出権です。下のグラフは欧州排出権取引スキーム(EU ETS)での排出権価格ですが、今年の初めの1トン当たり7ユーロ前後から6月には25ユーロを超える勢いでした(現時点ではかなり反落していますが)。

これは、京都議定書のターゲットを達成できない国が相当数あるという見方を裏付けるものですが(つまり、排出できる量:排出権の需給悪化が想定されるってこと)、もう1つはEU当局が排出枠に関してある程度厳格な立場を取り続けるだろう、という市場の当局に対する「一定の信認」の表明ともとれます。
ところで、京都議定書のターゲットを(まっとうな方法では)達成できないだろうと見られている最右翼の国がカナダと日本だということはあんまり知られていないようですね。クールビズなんてのんきなことやってますが。
それなりに進んでいるのは上にあげた欧州で、域内の25カ国にある13,300の大規模な二酸化炭素排出企業/施設(発電とか地域暖房とかね)に対し、強制的な排出枠が割り当てられ、排出枠を下回った場合はEU ETS市場で排出権を売却できるし、逆に排出枠を超えそうな企業は排出枠を遵守するためにETS市場で排出枠の購入ができるというものです。
排出枠を超えた場合は重い罰金が課されるため、企業はいやでも自社施設の排出枠に神経質にならざるを得ません。排出権市場は米国でのSOx排出削減での経験をもとにして創設されたもので、市場メカニズムに沿った形で経済的にこの手のあんまり有り難くないものを減らすには有効な政策手段であることが確認されています。
さて、日本に関してはこのような国内排出権取引システムも存在せず、海外の大方の見方は「日本は多分議定書の目標は達成不可能、でもまっとうじゃない方法で達成するかも」というものです。
つまり、カギはロシアとウクライナなんですが、京都議定書のもとではこの両国は二酸化炭素をまったく減らす必要がない、、、というより現在の排出量より排出枠の方が極めて大きくなっており、余分な排出枠を外国に売却して大儲けできるという状態になっています(なんでこうなったかに関しては、長くなるので省略・・・)。この余分な排出枠は、実際の二酸化炭素排出削減には関係なく、しかも投機的目的で使用される可能性があるため「ホットエア」と呼ばれています。で、日本はロシアに大金を払ってこのホットエアを購入してメンツを守るんじゃないか(そしてロシアは足許見透かしてすごい価格をふっかけるだろう)というのが海外では大方の見方なわけです。
一方のカナダに関してもホットエアを購入するんじゃないかという見方もありましたが、カナダ国内ではホットエアなんかを買ってまで目標を達成するということに対して大きな反対があり(まっとうですね)、主要閣僚がすでにカナダの議定書目標不遵守の可能性を示唆したりしています。それでもカナダでは大規模最終排出事業者(LFE)に対して排出枠を強制し、欧州と同様の排出権取引システムを導入することはほぼ決定的になっています。
のこる日本ですが、2005年から環境省主導で試験的な国内排出権取引システムが始まります。しかし、自主参加型(つまり強制力がなく参加自由)で、参加企業には電力などの大規模排出事業者は含まれず、しかも参加表明した企業には政府が排出削減のための投資に対する補助金を支払うという、実効性はほとんどゼロの補助金垂れ流しのおそろしいシステムです。これでは排出削減のコストが税金を通じて間接的な形で賄われるため、排出権の市場価格に反映されないだけではなく、企業の製品コストにも反映されません。
これでは普通では市場に反映されない二酸化炭素の排出コストを人為的に市場に反映させ、排出レベルを本来経済的に許容できるレベルに(しかも効率的に)下げるという市場メカニズムをまったく無視したものになっています。しかも、試験システムで企業が表明した「自主目標」は27万6,380トンでメチャクチャ少ないんですが、それに対する補助金の予算が26億円ということで、1トン当たりナンと68ユーロ以上となっています。上であげた欧州ETSでの市場価格(一応削減コストを反映していると考えられます)のナンと3倍にあたる税金を補助金として投入するわけですね(ちなみに英国なんかでは排出削減は民間責任であり税金による二酸化炭素排出削減の補助は一切行わないとしています)。
クールビズやこういう役立たずのプロジェクトで「努力している」というアリバイ作りをして、最終的にはプーチンに多額の贈り物をしてホットエアを購入して政府のメンツを守るというおそろしいシナリオではないことを祈るばかりです。なんか私のまわりには「日本はすごく進んでいる」なんて激しく誤解して、議定書不参加の米国批判でストレス発散してる(ちょっと恥ずかしい)人がかなり多いんですが・・・