2005/7/29 金曜日

カナダ:iPodに対する著作権料上乗せ否定

日本でもiPodなどのデジタル・プレーヤーに対する著作権料の上乗せ(私的録音録画補償金)が討議されていましたが、カナダでは昨年12月14日にカナダ連邦控訴裁判所が、カナダの著作権委員会にはそのような著作権料の上乗せを強制する権利はないという判決をしていました。

これに対し、従来そのような料金の徴収を行ってきたCanadian Private Copying Collective (「私的コピー徴収団体」って感じでしょうか)がその決定を覆すことを求めて、最高裁に上告の申し立てをしていましたが、カナダ最高裁は昨日それを棄却したもようです。
これでカナダにおいては、少なくとも現行法においてはこのような著作権料の上乗せが認められる可能性は実質的になくなったと思われます。

もともとこのような上乗せを認めるということは、ケーザイ学的にいうと音楽が「公共財」的な性格を持っているため、通常の商行為では制作者の収入が実際に「あるべき水準」より低くなり、インセンティブがなくなるため、当該の「公共財」に対し公共の税金で補助を行うことを認めるという考え方に近いものです。(あくまでケーザイ学的観点で、著作権だとかの観点の議論ではないです)

例えば、空気を例にとれば、「空気」がもし生産されなければ存在しないと仮定してみましょう。みんなが必要な「公共財」ですが、「空気」の生産事業者にみんなちゃんと対価を支払うでしょうか。みんなが払っているということで必ず「ただ乗り(フリーライダー)」(音楽の場合であれば違法コピー)が登場し、結局必要な水準ほど「空気」が生産されなくなりみんなが苦しむ、というわけです。まあ、そこで政府は空気を消費する機器に(または直接「人頭税」みたいな)「税金」をかけてそれを補填する、ということになります。

さて、個人的には「音楽」に対してこのような考え方を適用するのは少し無理があるような気がするのですが・・・(逆に価格の上昇が需要水準を「あるべき水準」より抑える可能性もあります)。実際、価格が高すぎて、本当に消費されるべき水準より低くなっている面の方が大きいのではないかと個人的には疑っているのですが(根拠あんまりナシです)。

カナダでの決定はあくまで法律に基づくものですが、まだ今後の展開が不透明な段階では当面はこのような決定がケーザイ的にも良いのではないかと思います。

2005/7/27 水曜日

SONY BMGのわいろ事件

最近SONY BMGがラジオ局に自社で売ってる曲を放送してもらうためのPayola(賄賂)を支払っていたという件で、ニューヨーク州のスピッツァー(Eliot Spitzer)司法長官の調査を受けていた問題が米国では結構騒がれていました。

結局SONYは謝罪し1,000万ドル以上の制裁金を払って和解するみたいです(Nikkei Netの記事what’s my scene?さんとこ経由)。基本的に連邦法では特定の楽曲を放送する見返りに「相当な額」の支払いなどを受けてはいけないことになっています(法律はトーシロなんで聞きかじり)。

ところで、例えば小売業のイオンが(いや、別にどこでもいいんですが)、商品棚の良いスペースを提供する代わりにメーカーから「何とか協賛金」とかを貰うのは良くって(いやまったく感心できませんが)、放送局がSONYから放送の良いところを提供する代わりにお金をもらうのはダメなんでしょか?

これは小売業の場合は商品棚は「小売業の財産」であり、放送周波数は「放送局の財産」ではなく「公共の財産」であることによります。つまり放送局は公共の財産を使用する「ライセンス」を受けているにすぎません。

まぁ公共の財産使ってるんだから、放送局が勝手にその財産を好き勝手に処分して一部の人の便益を満たすことで大儲けするのは御法度よってことですね。規制当局のFCCの怠慢も槍玉にあがるんじゃないでしょうか。
プレスに対する和解の発表で、スピッツァーは

「音楽を品質、芸術的な競争、美的判断などで放送するのではなく、ラジオ局は支払いを受けるために放送し、しかもそれは一般に開示されないような方法でなされていた。」

と述べています。

ところで、金融関連の人ならば、Eliot Spitzerという名前に聞き覚えがあるんじゃないでしょうか。証券業界やらミューチュアル・ファンドを巻き込んだ不祥事を暴いた人でしたね。この場合も一定の条件でフェアな取引を行うよう規制された業界で、監督官庁(この場合はSEC)の怠慢で不祥事が起こっていたわけですが、なかなか元気な人ですね。

日本でもこの手のことは(証券も放送も)多そうな気がするんですが、どうなんでしょ。
SONY和解(NYT)
SONY和解(Washington Post)
スピッツァーのオフィスのプレス・リリース
証拠書類(英語ですがこれ結構生々しくて面白いです)

2005/7/24 日曜日

人民元切り上げ(その2)

人民元の「通貨バスケット」への移行はどうも極めて大きく取り扱われているようですが、実質切り上げ2.1%でしかも中心レートから上下0.3%の変動幅、しかも中心レートは「秘密の通貨バスケット」で人民銀行が決める、というシステムにしては全体的に少し騒ぎ過ぎじゃないかという気がします。「ドル基軸通貨が云々」なんて、ちょっと・・・ 実質はせいぜい「ドル圏」内通貨の小幅なリアラインメントといったところではないでしょうか?

「イエスかノーか」みたいに迫ったおかげで、もし無視されたら完全にメンツのつぶれたアメリカ人が大騒ぎするのは分かるんですが・・・

例えば大騒ぎされている米国債への影響ですが、以前にも書きましたが中国の米国債保有高は外貨準備高に比較して小さいものです。最近の米国財務省のデータをみても2,435億ドルと大きいことは大きいですが日本の6,857億ドルの比ではないですし、英国、ドイツ、ルクセンブルグの3国の米国債保有高の合計と同じくらいです(ところで日経など、中国が「こっそり」と米ドルでない通貨に変えていたからだなんて書いているところもありますが、主要マネーセンターでそのような動きは見られていません。少なくとも大きい額がドルから他の通貨に変えられていたということは無いはずです)。

また「通貨バスケット」ですが、もし中国が貿易高にある程度従ってバスケットの構成比を決めるという過激な仮定をおいたとしても、2004年1-8月の中国の貿易相手をみると
EU 15.5%、米国14.8%、日本14.8%、アジア太平洋諸国(香港、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、フィリピン、その他ASEAN)34.9%、その他20%
ですが、「じゃあ米ドルは14.8%?」というのは大間違いで、日本、アジア太平洋諸国、その他の国も強弱の差はあれ対ドルで為替をある程度固定している国が多数ですから、ドルの比率が大して低下するわけでもないと考えられます。というわけで、米Barronsにのった記事の抄訳をのせておきます。

中国は人民元の対ドルのペッグを断ち切り、主要通貨のバスケットに対しペッグすることにより、米政府の執拗さに屈したようにみせかけた。この決定により人民元は2.1%切り上げられたが、実質的な影響はサイをノミが噛んだ程度だ。

中国政府の巧妙な動きは、米国で高まる保護貿易主義を鎮めることを目的としたものだが、さしあたりうまくいったようである。今回の決定に対するコンセンサスは「良い最初のステップ」というものである。アラン・グリーンスパンとジョン・スノーなどが賞賛を口にしただけではなく、対中強硬派の最先鋒で、中国に為替政策の変更を迫る報復的な法案(シューマー・グラハム法)の共同提案者であるチャック・シューマー上院議員でさえ、一時的にせよ態度を軟化させたようである。

これほど露骨にとるに足りない動きが、私たちの勇敢な政治家たちからこれほど迅速で、圧倒的に肯定的な反応を引き出したということは、面子を重んじるのが中国人の専売特許ではないことを示している。例えばシューマー上院議員が求めていたのは27.5%の切り上げであった(この不可思議な数字の根拠はまったく不明だが、2.1%より大きいのは確かである)。

ブリッジウォーター・アソシエーツは、中国が「好きなように何でも行うことが可能で、好きなように何とでも他国に説明できる」為替システムを考えついた、と鋭い観察をしている。中国が採用する通貨バスケットの構成は、時として倫理をわきまえない外国人投機家が為替操作などを行えないように秘密にされ、対ドルでの取引レンジは極めて狭く、取引日の前夜に人民銀行によって設定される。

今回の発表は、新たな為替システム自体の内容に関しては貧しいものだが、中国の経済システムの本質を示唆するものとしては注目に値する。例えば今回の発表で使われている「社会主義的市場システム」あるいは「管理変動相場制度」という言葉が示すのは、中国が第一義的に「統制」経済であるということである。どのような経済でも政治的な要素はあるが、中国ではすべてがそれに盲従している。これは中国経済を予測不能なほどもろいものにしている。例えば、失業の急増による社会不安を怖れて中国政府は経済の過熱を抑制できていないが、これは全世界で衝撃が感じられるほどのハード・ランディングの可能性を大きく高めるものである。

今回の変更がどのような意外な影響を及ぼすかを予想するには時期尚早だが、我々の巨大な貿易赤字も財政赤字も為替ではなく我々の役立たずの財政政策が原因であることから、今回の切り上げが貿易赤字にも財政赤字にも何の影響も与えないということは賭けても良い。そして大惨事でも起こらない限り米国の財政政策が変更されることはないだろう。

(ついでに言うと、上の「巨大な貿易赤字も財政赤字も為替ではなく我々の役立たずの財政政策が原因」というのはクルーグマンなんかが言いそうですが、少し違うような気もします。どちらかというとバーナンキマンキューなんかが言ってる「世界中の資本が米国に流入するため」という方が当たってるような気がします。)

2005/7/21 木曜日

人民元切り上げ

先日8月の人民元切り上げの可能性のハナシを書いたところですが、8月を待つまでもなく人民銀行が人民元の実質的切り上げを発表、即日実施としたようです

内容は先日書いた内容と大体同じで、対ドル切り上げ幅2.1%(1ドル=8.1100元)に相当する通貨バスケット制をベースとする管理変動相場制への移行となっており、変動幅は従来通り中心レートから上下0.3%と狭いものとなっています。

通貨バスケットは中心レートの決定に際してドルだけでなく他通貨も考慮するということです。この中心レートは毎日市場が開く日の前日夜に発表されるようですが、通貨バスケットの構成比やレートの決定方法などの内容はおそらくあまり明確にされることはないでしょう。

またマレーシアも即時に管理変動相場への移行を発表していますが、「ブレトン・ウッズ2」で多かれ少なかれ対ドルにペッグされているとみられる通貨はつられ高になりそうですね(円も含め)。

BBC哲学者人気投票:Top10決定

Ludwig Wittgenstein70X70

BBC radio4がやってた「我々の時代の最も偉大な哲学者」人気投票の結果発表がありました。

それで結果ですが、1位、しかも2位以下を大きく引き離しての1位は、な、なんと、カール・マルクスでした・・・こりゃ驚きです(いや、エラい人だと思いますが・・・ちなみに私の趣味で写真はヴィトゲンシュタインです・・・すみません)。トップ10は上から順に、

  1. マルクス : 27.93% (!!)
  2. ヒューム : 12.67% (イギリスだからでしょうか)
  3. ヴィトゲンシュタイン : 6.80% (くまも一時狂いましたが、ちょっと上すぎるような・・・)
  4. ニーチェ : 6.49% (上に同じ)
  5. プラトン : 5.65% (こっから下はまぁ、どっかには出る名前ですが、「我々の時代」かしらん?)
  6. カント : 5.61%
  7. アキナス : 4.83%
  8. ソクラテス : 4.82%
  9. アリストテレス : 4.52%
  10. ポパー : 4.20% (ヴィトゲンシュタインにポパーですか、、、、?)

となっています。

しかし、ちょっとサイトを見てみると、もともと最初のノミネーション自体に問題がありそうですが、このマルクスのダントツぶりは何なんでしょうか? 組織票でしょうか、、、柄谷行人がいっぱい入れたとか・・・
ただ、こんな投票やる放送局は少ないでしょうねぇ・・・
BBC : In Our Time’s Greatest Philosopher Vote – Result