2005/6/29 水曜日
ファイル交換ソフトの頒布をめぐるグロックスター事件裁判の判決が出ましたが、9人の裁判官全員が全員一致で、グロックスターの著作権侵害に関する責任を否定した下級審の判決を破棄したもようです(判決)。
もともとの裁判はGroksterとStreamCast Networksのソフトを使ってユーザーが映画、音楽のファイル交換を行っていたのに対し、MGMが両社に対して訴えを起こしたものです。下級審では両社に無罪が言い渡されていましたが、MGMはこれを不服として最高裁に訴えを起こしていました。
この裁判、ハイテク業界とエンターテインメント業界両方が注目していましたが、ハイテク業界の主張は、ハリウッドが要求するようにユーザーが技術をどう使うか100%コントロールするのは不可能で、それを前提とするルールを作れば技術の進歩は阻害されてしまうというものでした。
ハイテク側は20年前のSony対ユニバーサルのベータマックス裁判を例としてあげていました(当時の裁判所の判断は、VCRには合法的な用途がありユーザーがVCRを使っておこなった著作権侵害に関してメーカーは責任を負うことはないというもの)。
今回の判決でエンタメ産業サイドは大いに祝杯を挙げているかと最初は思いましたが、どうもいろいろ米国のサイトをほっつき歩くと、今回の裁判は以前のベータマックス判決、つまり、著作権を侵害する以外の正当な用途を持つ機械のメーカーはその機械を用いてなされた著作権侵害行為の責任を問われない、という原則を再確認したものであるとの解釈が多いようです。
日本語のサイトでは、awake in a muddleさんのところで分かりやすい説明がありましたが、ハイテク業界サイドでは期待ほどではないにしろ、最悪の事態は免れたといえるようです。ただ、合法かそうではないかの線は依然としてグレーで、今後おそらく多くの裁判が戦われることになるんでしょうね。そういう意味からいうとハイテク・サイドからすると訴訟リスクはかえって増大したのかもしれません。
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2005/6/27 月曜日
原油価格が高騰している中で、CNOOC(中国海洋石油公司)の米国の石油会社Unocalに対する買収提案が米国内で議論を呼んでいるようです。米国の政治家は相変わらずちょっと騒ぎ過ぎなんですが(Unocalが権益を持つ石油/天然ガスの大半はアジアにあり、米国に対する実質的な影響は極めて少ないようです)、ただこれには懸念を煽っても仕方がない部分も(かなり)あります。
1つはCNOOCの株式の70%を実質的に保有するのが中国政府であるということで(CNOOCの70%を持つ企業は非上場の純然たる100%の中国国営企業です)、もしCNOOCがUnocalを買収するという事になると、市場取引を経由するとはいえ米国の民間企業が実質上中国政府に「国有化」されるという事態になります。
多かれ少なかれ経済原則の外にいる政治がもろに市場で企業を買うということで、経済的にはあまり歓迎できる事ではないといえます(経済原則の通用しないプレーヤーの取引による価格シグナルの歪みは資源配分の歪みをもたらしますから)。CNOOCのFu社長は米国企業でも働かれていた方ですから、市場経済のルールを心得られていますが、70%国有という現実が変わるわけではありません。
もう1つは、価格ですがCNOOCの提案196億ドルは、Unocalの原油埋蔵量1バレル当たり11.50ドルとちょっと例のない高額で(まぁ、深海探査等のテクノロジーの「代金」も入っているとは思いますが)、エネルギーの安定供給(=国内政治の安定)のためには中国政府がどれだけの資源をつぎ込む用意があるかという事を如実に表しているということです。
基本的にCNOOCは公開企業で少数株主も多数存在するわけですが、今回の買収資金に関しても100%国有企業である親会社が超低金利で70億ドル(45億ドルを3.5%の30年ローン、25億ドルの無金利のブリッジ・ローン)を出す予定のようですから、中国政府の意向が大きく働いている事は間違いないでしょう。
ということで、原油価格にとっても大きな「支持材料」と言えるのではないでしょうか・・・まぁ、最終的にCNOOCが買収するか、対抗馬のChevronが買収する事になるかはまだ分かりませんが・・・
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2005/6/26 日曜日
以前取り上げたこともある、IFPIの年次海賊版報告書(annual commercial piracy report)の最新版が出ています。世界で販売されているCDの3分の1が海賊版というのは変わっていませんが、海賊版の売上伸び率は前年比2%増でここ5年間で最低としています。
以下ちょっとニュース・リリースから何点かピックアップすると、、、
- 2004年の海賊版ディスク売上は2%増加して12億枚、ここ5年で最低の伸びだが枚数自体は2000年の倍
- インターポールなどの協力で、摘発され閉鎖された海賊版業者の87の生産ラインの生産能力は3億8000万枚(比較のためあげると米国のディスク売上のほぼ半分にあたる)
- 海賊版カセットテープの売上減少で海賊版レコーディングの売上数量自体は微減
- 31カ国で海賊版の売上が正規版の売上を上回る
などが挙げられます。
海賊版業者の摘発はある程度効果を上げていると結論していますが(摘発ラインの規模からしておそらくそうなんだろうと思いますが)、ケーザイ学的にゆーと、巨大なブラック・マーケットの存在は、悪人の数が多いということよりも、正規市場のプライシングに問題があるということを示す場合が非常に多いです。つまり、ディスクの価格が高すぎるという可能性もあります(無限にコピー可能な製品では必ずしも一般的な商品の市場のアナロジーは成り立ちませんが)。
ところで、別の調査ですが、ロイターが報じたところによると音楽消費者の35%はいまや正規で音楽ダウンロード購入をしており、違法ダウンロードの経験があると答えた40%という数字に迫っているようです。インターネット・ウィルスの恐れや、音質などが主な理由とロイターは報じています。以前取り上げましたが、元クラッシュのプロデューサーのサンディ・パールマンのいうようにダウンロード音楽を一律5セントくらいにすると確かに違法ダウンロードはかなりなくなる可能性があるかもしれませんね。
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2005/6/25 土曜日
音楽携帯が躍進してiPodの「我が世の春」も終わるって話はもう聞き飽きるくらい流布してるんですが、今度はウォール・ストリート・ジャーナルの投資誌であるBarronsで同じハナシが出てました。私自身は「携帯機器ではあんまり音楽聴きたくない派」なんですが、個人的にはこの「携帯圧勝シナリオ」は眉唾だと思っています(ケータイってなんか音楽の対極にある機械のような気がして・・・でも趣味がからむと大体私の予測は外れるんですが・・・)。
野暮用で記事のちょっとしたまとめを作ったんですが、その一部だけ下にのせてみました。上で書いたように個人的には内容はあまり買えないんですが、ヨーロッパでの携帯電話音楽サービスのミュージウェイブのハナシがちょっとだけ面白かったような・・・
モルガン・スタンレーのアナリストであるレベッカ・ランクル氏は最近のレポートで、アップルの全製品のラインアップで勢いが続くとしている。同氏の予想では -
- iPodの今年度の売上は400%増の2,200万台、来年度はさらに倍増の4,500万台
- マッキントッシュの伸長も続く
- アップルの今年度の売上は70%増の140億ドル、来年度は220億ドル
- 利益は今年度には4倍のほぼ12億ドル(EPS1.34ドル)、来年度には15億ドル(EPS1.67ドル)以上
- アップルのPERは33倍が妥当であり、それによると株価は60ドル程度(現在39ドル程度)。
しかし、この予想は今後予定されている音楽携帯電話の登場を計算に入れていない。携帯電話企業は音楽産業と連携し大半の携帯電話を音楽プレーヤーに変貌させようとしている。iPodがたとえ4,500万台売れたとしても、携帯端末は7億5,000万台販売されており、これはアップルの将来に暗い影を投げかけている。
iTunesストアでは1曲が99セントであるのに比較し、携帯電話では6秒間のリングトーン(着うたのようなもの)が2ドルで売れている。すでにLi’l FlipやPetey PabloのようなアーチストはCDよりもリングトーンの売上の方が多い。ソニーBMGやEMIのような音楽産業もワイヤレス通信業者との方がアップルよりもやりやすいと考えている。
欧州でもドイツ・テレコムのT-モバイル、ボーダフォンなどが音楽のダウンロード・サービスを提供している。この両社は音楽サービスをフランスの非公開企業であるミュージウェイブに外部委託している。
ミュージウェイブのサービスでは、携帯ユーザはいつでもストリーミング音楽を聴くことができ、携帯で音楽をダウンロード購入できる。フルトラックの他にもリングトーン、ビデオ・リングトーン、リングバック(電話をかけてきた相手に聞こえる呼び出し音を音楽にしたもの)の購入ができ、購入した音楽は、携帯とPCの両方にダウンロードできる。
外出先で新しい音楽を聴いたときに、携帯をその音源に近づければ、ミュージウェイブのサービスはその曲が何かを探し出し、その曲を購入できるようにしてくれる。また、ユーザはダウンロード購入した曲を友人にワイヤレスで転送できるが、その友人はその曲を1-2回聴くと支払いが必要となる。顧客の購入履歴データも重要であり、顧客の過去の購入履歴から他の曲やリングトーンを推奨するサービスを行っているが、売上の34%はそのような推奨によるものである。
先月ロジャーズ・ワイヤレスはカナダでフルトラックの音楽ダウンロード・サービスを1曲1.25-1.99カナダ・ドル(1カナダ・ドル=約88.5円)で開始した。最初にサービスに対応した携帯端末はノキア(NOK)の端末で価格は130-300カナダドルである。アップルは1曲販売するたびにクレジット・カード会社に10-20セントの請求手数料を支払う必要があるが、毎月請求を行っている携帯電話会社にはこのような追加費用は必要ではなく、デジタル音楽を販売する上で大きく優位にある。
電話会社はアップルよりも音楽の売上を伸ばせると考えている。アップルが4億曲もの音楽を販売したのは称賛に値するが、現在までに1500万ユニットのiPodが販売されたことを考慮すると、1ユニットあたりの販売曲数はそれほど多いものではない。
ボーダフォンとベライゾン・コミュニケーションズのジョイント・ベンチャーであるベライゾン・ワイヤレスは米国で最初に大規模な3Gネットワークを展開するが、音楽は同社にとって「極めて戦略的」としている。
逆にワイヤレスは音楽産業にとっても戦略的である。CDの売上は下落しており、アーチストとレコード・レーベルはこの下落をリングトーンやリングバックなどで埋め合わせるための努力を進んで行っている。音楽産業は今や売上の10%をこれらの素材から上げている。ソニーBMGの幹部は携帯端末はその数の多さによりiPodに比較して重要な音楽市場になるとしている。この幹部は米国の携帯電話の数はiPodの数を18対1で上回っているとしている。
クアルコム、フリースケール・セミコンダクターやテキサス・インストゥルメンツは、携帯端末の基本的なチップセットにデジタル音楽用のチップを組み込む予定であり、クアルコムはすでにそのようなチップのサンプル出荷を行っている。来年以降、ノキア、サムソン、モトローラなどの3G端末にとっては、音楽プレーヤーの方がデジタル・カメラよりも一般的な装備となる可能性がある。
もちろんアップルも立ち止まっていないだろう。次世代iPodはWiFi機能を搭載するといわれており、ミュージウェイブのサービスのように友人に音楽を転送できるようになるだろう。
しかしソニーBMGやEMIのようなレコード・レーベルはアップル独自の音楽フォーマットに反対し、iPodにデータを転送できないCDをリリースしている。しかもワイヤレス通信事業者とレコード業界はオープン・モバイル・アライアンスの旗印のもと、自分たちのデジタル音楽フォーマットを開発している。
ミュージウェイブの会長であるジル・バビネ氏はiPodについて「袋小路の戦略をとっているかもしれない」と述べている。
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Foreign Affairsといえば米国の外交・政治専門誌で大物もよく寄稿していますが、最新号(2005年7/8月号)ではなんと全体の3分の1を鳥インフルエンザの特集に当てていて、政府による対策の加速を訴えており、米国においてかなり危機感が高まっていることを示しています。
今までの中国南部、東南アジアでのH5N1の状況をみると、1918年のスペイン風邪をはるかにしのぐ猛威を振るう可能性があるとしており、ちょっとユーウツな話ではあります。私も勉強不足で、これ読んで初めて知ったこともわりとあったのですが、そのうちのいくつか(まぁ私からするとForeign AffairsがEUもイラクも中国もそっちのけでこれだけの特集を組んだということ自体が少しコワいのですが)。
- 1918年のスペイン風邪では、米国では当時の人口の6%にあたる675,000人が死亡。1918年の米国の全死亡数のほぼ半数がスペイン風邪に関連するものだった。現在に当てはめると200万人が米国で死亡することになる。スペイン風邪で最も死亡数が多かったのは20-35才の若い大人(これもH5N1と似ている)。
- 通常のインフルエンザは実験用マウスには影響しないが、H5N1では100%死亡。感染した鶏肉を与えられたタイの動物園の虎は418頭中147頭が死亡。人間での死亡率は2003年の68%から2004年の12月には36%になっており、ウィルスの人間への「親和性」が高まりつつあることが恐れられている。
- H5N1に感染した鶏は100%死亡。卵もやられるので、卵をベースとしている従来のワクチン生産手法はそのままでは使えない。インフルエンザの初期にウィルスの増殖を抑えるといわれているタミフルはスイスのロッシュ1社のみが製造しているが、生産拠点はスイスの一カ所で、WHOが鳥インフルエンザに備えて各国に勧めている在庫の積み増しは困難。インフルエンザ・ワクチンは儲からないので生産規模は世界的に縮小中。
- 前回のインフルエンザ大流行は1968-69年で、これも中国南部で発生しているが、当時と比較してもウィルスが変異を繰り返して人間から人間に感染するタイプに進化しやすい状況(人間、豚、家禽類の密集)になっており、H5N1が「人間対応型」になる可能性が高い。例:1968年の中国の人口7億9000万に対し現在は13億、当時の中国の豚の数520万頭に対し現在は5億800万頭、家禽類は当時の1230万羽に対し現在は130億羽(!)と「ウィルス試験管」状態となっている。
この間のSARSのような破壊力の弱いものでも、経済的影響は大きいものだったが、スペイン風邪をはるかにしのぐ規模となると、経済・外交、各国の政治、治安に重大な影響を与えることになるため、各国政府は対応を加速させるべきだというのが各記事の結論になっています。実際米国ではインフルエンザ対策の予算は数倍規模でかさ上げされてきているようですが、それではどうしようもないということなんですが・・・ところで、日本は大丈夫かしらん?
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