2005/5/29 日曜日
ヘッジファンドの不振は長らく言われているので新しいことでもないですが、第一四半期もCSFB/Tremontのヘッジファンド・インデックスはマイナス0.11%、ヘッジファンド・リサーチのヘッジファンド・インデックスはマイナス0.7%とイマイチだったことや、GMの株式・債券をめぐって一部のヘッジファンドが大損失を被った噂が流れたりといったこともあって、今月はまたいろんなところで騒がれています。
もともと今のヘッジファンドの人気は、S&P500がマイナス9%からマイナス22%をつけた2000年から2002年の3年間の超弱気相場で、ヘッジファンド・インデックス(CSFB/Tremont)が3%から5%近くの上昇をみせて、「市場の状態に関係なく絶対的なリターンを上げれる」ことをみせたことが原因にあるのですが、長期的にみると、もともとそれほど「スーパー」というわけではありません。
下図はBarrons誌の今週号にのった記事に付いていた表ですが、2000-2002年のバブル崩壊後の一時期を除けばヘッジファンドが市場をそれほどアウトパフォームしているわけではないことが分かります。

(クリックして拡大)
さらに、もうちょっと長期の図がEconomistに掲載されていますが(これはヘッジファンド・リサーチ社のヘッジファンド・インデックスなので上図とは少しベースが違いますが)、これを見ると長期的にはヘッジファンドと安価なインデックスファンドはあまり変わらない、というよりインデックス・ファンドの方がややマシとなります。
まぁ、もともと「市場効率性仮説」に従えば、ヘッジファンド(やアクティブ運用のファンド)が常にアウトパフォームするのは不可能なんですが、結局全体としてみると市場はかなり効率的ってことでしょうか。
ちなみに、戦略ごとにヘッジファンドのパフォーマンスをみるのに便利なサイトにCogentHedgeなんかがあります。しかし、こういう数字から何かが導きだせるかというと、そうでもないような気もするのですが・・・
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2005/5/25 水曜日
大統領経済諮問委員会(CEA)の前委員長のマンキュー先生は、傷だらけになって(笑)やっとハーバードに帰還されましたが、米国Fortune誌がマンキュー先生のインタビューを掲載しています。
もちろん前CEA委員長であるということを前提に読む必要がありますが、インフレターゲティングから、社会保障、貿易赤字・貯蓄問題、クルーグマン、財政赤字に至るまで極めて興味深く、面白い読み物になっています。おすすめです。
フォーチュン誌のマンキュー先生インタビュー
以下ちょっとだけ紹介
インフレターゲティング
マンキュー「・・・・インフレターゲットは別に現在連銀がやっていることと大きく変わるわけではなく、連銀が意思決定と目標に関してより明示的になるだけのことであると思っています。連銀の政策決定に関する声明でのボキャブラリーがわずかに変わるということです・・・・」
貿易赤字に関して
マンキュー「・・・20年前には米国がこれだけの赤字をこれだけの期間持続できるかと聞かれれば経済学者はノーと言っていたでしょう。限界がどれくらいなのか、私たちが本当に良く分かっているとは私には思えません。私たちが世界のほとんどの国より速く成長している今は特にそういえます。・・・移民と貿易赤字が同じことを表していると考えるのも意味のあることです。資本も労働力も米国に逃避してくるのです。なぜなら米国が最も生産性の高い経済だからです」(筆者注:貿易赤字:正確には経常赤字ですが:とは米国に対する資本流入の裏返しです)
クルーグマンに関して
マンキュー「コラムニストは、広く話題になり、最も多くのメールを受け取ることを望むものだと想像します。それはトークショーのホストをジェリー・スプリンガーのような人にならせるのと同じことです。結局は物事を大げさにいうようになります。そのほうが読み物としては面白いですから。」
財政赤字に関して
マンキュー「過去数年間の財政赤字は妥当なものであると思います。それは財政赤字が良いということではなく、経済的状況(不況にさしかかっていた)と地政学的状況(戦争)を考慮すると理解できるということです」
(筆者注:需要刺激策が必要だった->したがって赤字はやむを得なかった。というのはまぁ事実としても、先生自身の財政政策のSaver-Spender Modelによると流動性の制約を受けているのは低所得層ですから、ブッシュ政権の高所得層に対する減税政策自体は需要刺激としては設計的に誤りということになりますね・・・)
えーと、ちょこっと書くと面白さが全部抜けてしまうような感じなんで、興味のある方はぜひ原文の方をどうぞ。
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2005/5/23 月曜日
FRBのグリーンスパン議長は、先週金曜日のニューヨークでのEconomic Clubでの講演(これは原油に関するものだった)の後で会場の質問に答えていた。
日本でもっぱら注目されていたのは元の切り上げに関する発言だったけど、ひょっとするとこれ以上に注目されたのが米国の住宅市場に関する発言だった。日本のメディアではあんまり取り上げられなかったので(というより、内容がいかにもグリーンスパンらしくて可笑しいので)、ここでちょっと取り上げてみよう。
米国の住宅市場がバブルかどうか、という質問に対して・・・
“There are a few things that suggest, at a minimum, there’s a little froth in this market. While we don’t perceive that there is a national bubble, it’s hard not to see that there are a lot of local bubbles.” (下線筆者)
いや、相変わらず分かりやすい(笑)ですなぁ。frothってのは「泡」ですから意味的にはバブルなんですが、まぁバブルじゃないけど少し「泡っぽい」ってことでしょうか。「全国的バブル」じゃないけど「局地的なバブルが一杯ある」と。ふむふむ。
“Without calling the overall national issue a bubble, it’s pretty clear that it’s an unsustainable underlying pattern. What we see are a number of forces, which are, as far as I can judge, not infinitely projectable.”
えーと、まとめるとですね、バブルじゃないけど、持続不可能。バブルじゃなくて、泡。バブルじゃなくて、多くの局地的バブル。ということだそうです・・・・ そういえば、住宅価格に関しては4月22日にドナルド・コーン連銀理事もやや強い調子で言及していましたね。
金利政策とのからみで考えると、グリーンスパン自身は資産価格の(異常かもしれない)上昇に対して、金利引き上げで対応すべきとはあまり考えていないタイプのように見えるので(逆に資産価格の破滅的な下落があったときに、金融の大幅な緩和で対応するべきというスタンスにみえます)、住宅価格から(だけで)は金利政策に大きな影響はないのではないかと思います。
上記ニュースのソース:
Bloomberg
CNN
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2005/5/21 土曜日
説明不要のケインズの”The General Theory of Employment, Interest and Money”がオンラインで読めるようになっています。
The General Theory of Employment, Interest and Money
しかし、なんでmarxists.orgなんでしょうねぇ・・・「万国の”忘れられた書物”団結せよ」かしらん・・・
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2005/5/19 木曜日
ちょっと古い話だけど、Wall Street Journalで調べものをしていると5月16日の記事にトヨタ・プリウスのソフトウェアのバグの話が出ていた。記事によると2004年および2005年初期モデルのプリウスで、高速走行中に失速・停止したり、コンピュータ・システムがシャット・ダウンしたりするといった13件の問題が米高速道路交通安全局に記録されているとのことだ。
トヨタのスポークスマンによると23万9000台のプリウスに「プログラム・ミス」があるとのことで、昨年の5月にオーナーにはディーラーに行って「ソフトウェア・アップデート」をするように警告をしたとのことだけど、何人がアップデートを受けたかとか、最近の問題がこのミスに関連するものかどうかは現在分からないとのこと。
「ソフトウェア・アップデート」には1時間程度かかるそうなんだけど、どうもこれって昔流行った「マイクロスフトが車を作ったら」という笑い話を思い出させて少しおそろしい。米国では車載のコンピュータ・システムへの将来におけるウィルス等による攻撃が結構真剣に心配されていたりするけど、そのうち本当に冗談ごとじゃなくなるかも。
WSJの記事は契約購読者に限られているけど、CNN Moneyにも記事が出ています。
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2005/5/18 水曜日
音楽データのデジタル化やらダウンロード販売で、音楽インダストリーをとりまく環境はすこしずつ変化しつつあるけど、これに目を付けて群がってきているのはMP3メーカーだけじゃない。
音楽インダストリー内での著作権をめぐる収入の分配や、契約形態の複雑怪奇さが新技術との衝突で注目を集めたり、また一つのインダストリーが非連続的な新技術により変化するさまが関心を呼んだりで、ケーザイ学者の方々も音楽インダストリーに群がってきている。まぁ、これはアメリカとかイギリスのハナシなんだけどね。日本だと「真っ当な」ガクシャはあまりこの手の研究はしないんじゃないかしらん?
この動きの中でまた新しい論文を見つけたんだけど、そのタイトルもずばり「ROCKONOMICS」だ。書いたのはプリンストン大学の経済学・公共政策教授で、労働経済に関しては御大のALAN KRUEGER先生とMARIE CONNOLLYだ。ALAN KRUEGERセンセーは10年ほど前に米国労働省のチーフ・エコノミストも務めていたガクシャだ。
この論文は、業界におけるさまざまな問題に関する、枠組みの提起と考察といった体裁になっている。まだあまり読んでないけど、面白そうなハナシもちらほらのっている。
例えば、米国ではコンサートの回数、チケットの販売数ともここ数年減少しているけどこれはなぜかとかね。これはチケットの価格が映画などの他のエンターテイメントに比較しても異常に上昇しているからなんだけど(下図)、じゃあ、なぜチケットの価格は上昇しているのかとかね。
ケーザイ学者連中の関心が業界に向いてから日が浅いので、どの論文もまだ全体の枠組みや突っ込みどころを模索中と言う感じなんだけど、業界構造の研究では特にミクロの連中にとっては相当面白い(つまりケーザイ的に非効率的、非合理的な)ネタがいっぱいあると思うので、みんな頑張ってそこら中ひっくり返してほしいと思うのでした。
いろいろ読んで楽しみたい人にはこの論文の参考文献リストにも一部他の研究が参照されているので、みてみると良いと思います。
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2005/5/17 火曜日

FRB議長アラン・グリーンスパンがとうとう退任の意向を表明した。もともと来年の1月がメドとみられていただけに、驚きはまったくないんだけど、これで後任者の憶測もよりおおっぴらに行われることになるんでしょうね(といっても、まぁ、もう十分おおっぴらに行われていますが)。
で、英国人は競馬、将来の株価、相撲の優勝者と何でも賭け事のネタにしてしまうけど、もちろんFRB議長の後任者も賭けの対象になっている。そこでちょっと、インターネット・ギャンブルのサイトでの賭け率をチェックしてみた。
BetRoyal.com
ベン・バーナンキ 33-20
グレン・ハバード 2-1
マーチン・フェルドスタイン 4-1
ジョン・テイラー 7-1
ドナルド・コーン 7-1
PaddyPower.com
ベン・バーナンキ 13-8
グレン・ハバード 2-1
マーチン・フェルドスタイン 4-1
ジョン・テイラー 13-2
ドナルド・コーン 15-2
ということで、どちらも本命がベン・バーナンキ、大穴がドナルド・コーンとなっていて、衆目は一致しているようです。
ところで、最近経済学では大人数による賭けを使った予想の研究が結構行われていて、選挙結果や経済、株価の予想まで多くの人が(賭場サイトなどのように)お金を賭けて予想した結果は割と当たるということが言われてますが(株式市場なんかはお金賭けた事業パフォーマンス予想そのものですから、同じようなやり方で予想した結果が当たるのは当然という気もしますが・・・)、これはどうでしょうか、、、(まぁ、どう見ても順当な予想ですが)
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2005/5/16 月曜日
日本でもDVD録画機器などには「著作権料」として「私的録音録画補償金」が上乗せされている(つまり、すごくはしょって言うと、消費者はどうせこーゆーキカイで著作権料も払わずにばんばんコピーするんだろうから、キカイに著作権料を上乗せして徴収しちゃえ、ということだ。私的使用での複製は認められてるんだから変なハナシではあるんだけど、ここらへんの話はややこしいから詳しいことはここではパスします・・・)。
最近はCDの売上がイマイチなのは、インターネットやコンピュータなんかを使ってみんな不法コピーをしまくってるからだなんてことを洋の東西を問わずエンターテイメント業界は騒いでるけど、それだったら上に書いたのと同じ考え方で、ハードディスク、パソコン用のCDドライブやMP3プレーヤーに著作権料を上乗せして徴収すればいいじゃん、というハナシがこれまた洋の東西を問わず持ち上がっている。
オランダでも似たようなハナシがあるんだけど、digitalmusicnewsによると今度は英国でも同じハナシが持ち上がっているらしい。これが万が一にでも通ると、英国ではiPodに2万4000円(!)程度の著作権料が上乗せされることになる。iPodの場合はiTMSですでにDRMがかけられており、著作権料2重取りになるのでこれはあまりにもあまりのハナシだ。
カナダでも同じようなハナシがあったが、カナダではそのような「著作権税」には法的根拠がないとして裁判所で却下されている。ところで、「洋の東西を問わず」と書いたけど、日本でももちろん騒ぎは始まっている。異国だけでなくすでに周りでも火を吹き始めているので要注意だ。日本での補償金の行方に関しては「What’s my scene」さんのところで話題になっていました。
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2005/5/12 木曜日
世間ではイスラムが経済成長を阻害しているとか、それでイスラム圏の貧しさがテロの温床となっているとかという「お話」を良く見かけるんだけど、これを怪しいと感じている人も多いんじゃないかしらん(でもないか)?
もともとマホメットは商人だったし、現在はともあれ、昔のイスラム圏は西欧に比較して商売に関しても極めてオープンで、経済的に隆盛を極めていた歴史もある。現在でも、マレーシアなどはそこそこ高い成長率を保っているという例もある。
それで、最近イスラム教と経済成長にかんする実証研究の論文(Religion, Culture, and Economic Performance, Marcus Noland, IIE)をちょっと見つけたんだけど、やはり想像通り、イスラム教に対する信仰が経済成長に対してマイナスに働くという仮説は統計的に棄却されている。それどころか、複数国間の研究でも、単一国内の研究でも、イスラム教徒の人口に占める割合と成長率の間には統計的に有意な正の相関が認められている(つまり、イスラム教徒の比率が多いほど成長率が高いという可能性がある)。
計量経済研究の結果はかなり精密な分析が必要とされるので、この研究だけで決定的な結論が出るわけではもちろん無いんだけど、少なくともイスラム->貧困->テロという単純なオハナシは成立しないみたい。
紹介した論文はここでみれます。
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2005/5/11 水曜日
5月9日のAssociate Pressのニュースによると、米国巡回控訴裁判所はFCC(連邦通信委員会)のいわゆる「ブロードキャスト・フラグ」の仕組みを越権行為であるとして否定した模様。
この「ブロードキャスト・フラグ」というのは、エンターテイメント業界の圧力で考案されたもので、放送番組の所有者がコピー不可の「フラグ」をつけた番組のコピーやインターネット上での共有ができないようにする装置を、デジタル・テレビやらパソコンやらVCRタイプの録画装置に装着することをメーカーに義務づける事を要求する規制です。
実際にはデジタル・テレビや録画機器にはコピー防止の装置が着いたものが多いので、この判決が実際にもつ影響はそれほど大きいものではないかもしれませんが、この規制がスクラップされたということは、政府が規制し得る範囲にキツい枠組みがはまったということで、強制的DRMの反対派にとってはかなり大きい勝利といえます。言い換えるとエンターテイメント業界にはキツい決定で、すでに議員たちに対する強烈なロビー活動が始まっているみたい・・・放送界とエンタメ界の金の力がどこまで威力を発揮するのか興味をそそられるところではあります。
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