2002/3/27 水曜日

デフレ批判批判

(国際経済に強くなろう)第30号:2002年3月27日発行分

ちょっとレポート書きに追われてサボっている間に、世間では総合デフレ対策なんてのができたり、とうとうデフレは「社会の敵ナンバー1(あるいは不良債権問題に次ぐナンバー2)」の御墨付きをもらったみたいね。この程度のマイルドな物価下落で何を騒いでるのかさっぱり分からんという、物わかりがとっても悪い人々も少しだけいるみたいだけど、何を隠そう(別に隠していないが)筆者も物わかりのとっても悪い一人であったりする。とゆーわけで、今回は「再びデフレについて」。

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□ 経済財政諮問会議のおさらい
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経済財政諮問会議(しかし長い名前だ)によると、デフレが悪玉なのは、

「第一に、実質金利が上昇し、総需要が抑制される。第二に、実質債務負担が高まる。第三に、賃金の調整が難しく、それが生産減少、雇用削減をもたらす。こういうことが顕在化すると、景気低迷やデフレ期待により、消費・投資の先送りや、資金、労働力が成長部門に円滑に移動しない結果として、産業構造調整が遅れる。また、景気低迷で、資産価格が下落すると、更にそれがデフレを悪化させる。」(2月12日諮問会議議事要旨より)

って事になるそうだ。ちょっと解説しよう(分かってる人は例によってとばして下され)。極端な例として、一年で物価が半分になる例を考えてみよう(つまりお店にいくと値札の価格が半分になってるって事ね)。

第一の実質金利に関しては、金利が例えゼロとしても、物価が半分になるって事は持ってるお金で一年後には2倍の買い物ができるって事(100万円持ってれば、一年後今の値うちで200万円相当の買い物ができる)なんで、実質的な金利はこの場合100パーセントとなる。

10億円の投資は現在のお金の値うちで10億円相当以上のリターンがない限り「ワリにあわない」って事になる(それにそんなにウマイ話はそうそうない)し、消費に関しても来年値段が半分になるならちょっと我慢しようって事で「消費・投資の先送り」になって「総需要が抑制」されるワケだ。

第二の実質債務負担に関していえば、物価が半分になって(売り上げが半分になって)も借金が半分になるワケじゃないから実質的な借金の重みは2倍になるって事(過剰債務に悩む企業にはツライ)。

第三の賃金に関してはケーザイガクでいう「賃金の下方硬直性」ってやつだけど、物価が下がっても賃金(給料のことよん)は簡単には下がりにくい(少なくとも短期的には)から、人件費の実質的上昇による企業の収益性悪化、それによる生産の減少や雇用の減少をもたらすってワケ。

で、「物わかりのとっても悪い人々」はなんでこんな簡単な事が分からんのだろうか?

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□ ちょっとまて、、、
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まず、上では50%のデフレの例だが、現在の物価下落はせいぜい1-2%ってところで史上最低金利と合わせて考えれば、他の先進国と比較しても実質金利は高いとは言えない(まぁ他の国と比較しても厳しい経済情勢だから「高くない」くらいじゃダメだって話もあるんだろうけど)。

実質債務の高まりに関しては確かにそうなんだけど、現在銀行のリスク管理債権の85%を占める非製造業に限ってみると、もともとデフレ以前から借金に耐える経営をしてきてないってのが第一の問題なワケだ。

非製造業の総資産利益率(ROA:Return on Asset)を見てみると、ここ数十年負債コストを上回ったという事がまったく無い。つまり、すごーく単純化してゆーと、インフレ時代からずっと借金の利息以下のリターンしかあげてないわけで、インフレだろうがデフレだろうが今行き詰まっている企業のほとんどは早晩行き詰まる運命にあったワケ(なぜ今まで行き詰まらなかったかに関してはちょっと後でね)で、マイルドなインフレにしたところで「たぶんどーにもなんない」。

「賃金の下方硬直性」はデフレ下では確かに問題になるが、別にデフレが原因でそーなってるワケじゃない。労働市場の硬直性の方がむしろ問題と思う。給料下がるのがイヤで成長セクターに移ろうと思っても、労働市場が流動化してないとどーしようもないしね。

で、「これらの事が顕在化しておこる消費の先送り」なんだけど、これも相当怪しい。消費者物価で強烈に下がっているのは「家具・家事用品」、「被服、履物」、「交通・通信(特に通信)」、「教養娯楽(特にパソコン、テレビ等)」ってとこなんだけど、「被服、履物」を除けば、物価が下がっている分野では消費は増加しているし、逆に物価が上昇している教育、諸雑費では消費が減少している(1999-2001)。

投資に関しては確かに落ちているが、もともと日本では採算無視の過剰投資が多かったというのは何回も書いている通りで、これも収益性の低さの裏返しって面も大きい。

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□ 問題は資産価格の下落か??(いや違う)
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実質債務の高まりに関しては不良債権問題ともからまってくるんだけど、疑問は、ずっと何十年も儲ける以上に借金してきていた非製造業の企業群が今までなぜやってこれたのか、そしてなぜ今、底が抜けちゃったのかって事だ。

「不良債権問題はデフレの結果であり原因では無い」とか「バブル崩壊による不良債権問題はもう終わっていて、今はデフレによって不良債権が増えている」なんていう論調をよく見るんだけど、これはちょっと納得ができない。

確かに、80年代後半の一時期だけをバブルととらえればそうなのかもしれないんだけど、実際には日本のバブルはもっと根が深いものだったと思う。「55年体制」が始まった1955年から1991年の36年間に6大都市の地価は170倍(!!!!)となっており(ちなみに同時期の卸売物価指数の上昇はせいぜい2倍ってところだ)、はっきり言って土地等の資産さえ買っておけば、本業のリターンがどれだけ低くっても膨大な「含み益」で債務過剰におちいる事もなかったワケだ(又、土地さえ持ってればいくらでもお金を借りれたから、みんな借りまくって投資した)。

この資産価格の大幅な価格上昇を前提とした経営手法(経営と言えるかどーか分からないが)が清算されない限り、つまり企業収益力の抜本的な改善が無い限り、インフレ政策をとったところで行き着く先は、資本の海外逃避、それによる不況下の金利上昇という結果になる可能性が高い(インフレで値うちの下がる円ベースで、しかも収益力の低い企業に投資する程、みんなお人好しじゃ無いんじゃないかしらん?)。

資産価格が下がってるのが問題なんだから、日銀に土地でもなんでも買わせて資産価格を吊り上げろ、ってゆー(本末転倒した)話もあるみたいだけどね、基本的に資産価格が上がるにはその資産を使って行われる事業の収益力が上がるしか無い(実際、収益力の高い場所の地価は下げ止まってきているしね、上と同じで政府の価格コントロールを信じてまた何十年にも渡って土地バブルがおこるとは思えないんだけどねぇ。他所にも買うものあると思うし)。

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□ じゃーどーすりゃいーのさ
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言い古されてるけどね、不良債権問題の解決、および構造改革による低収益セクターのリストラ等、地道にやるしかないんじゃないかしら。この結果デフレ気味で経済は推移する事になるんだろうけど、デフレが今の問題の根本原因とは思えない(それにインフレが特効薬とも思えない)ってのは上に書いたとーりだ。痛みも当然出てくるけど、デフレ対策に名を借りた痛み止めもその時に始めて役に立つんじゃない?

おっと、ところでなんでデフレなのかってゆー大事なところを考えるスペースが無くなってしまったけど、これに関してはまたいつかね。