2001/12/20 木曜日

アジア大混乱

国際経済に強くなろう:メールマガジン第28号(2001年12月20日)

大新聞やニュースを見てると日本はもちろん、アメリカでも欧州でも経済はかなり「マズイ」状態らしい。でもね、アジアのトラとか言われてた地域からみれば日本の経済ですら「小春日和」に見えたりして、、、

今回は、かつてはアジアの奇跡と言われていた、アジア新興経済圏の様子を見てみよう。1990年代末の通貨危機を乗り越えたと思ったのも束の間、、、

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□ 先進国経済の減速が直撃、、、
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さて、大方のエコノミストの予想通り、アメリカ経済の減速は欧州や日本のような巨大経済ではなく、アメリカへの電子部品・機器、又は原材料の輸出が大きな割合を占める経済を直撃する事となった。

第三四半期までで、シンガポールのGDPはマイナス5.6%(10月の工業生産はマイナス21.4%)、台湾がマイナス4.2%(同マイナス6.7%)、マレーシアがマイナス1.3%(同マイナス9.0%)などと惨澹たる状態になっている。

韓国、タイ、フィリピン、インドネシアでは経済は拡大しているものの、今年はせいぜい1から2%台の成長と急激な減速となっている。国内需要が成長のエンジンである中国では第三四半期までで約7%の成長となっているが第二第三四半期だけでは約4%に減速しているという分析もある。少なくとも輸出だけに限れば中国の輸出は2000年には約30%の伸びであったのが今年はほとんど横ばいに近いと思われる。

中国も加えた新興アジア経済圏は今年の下半期では1%程度の成長となるというのが大方の予想となっている。とにかく、2001年と2002年をあわせれば、たぶん(アジア通貨危機の期間にあたる)1997年と1998年の2年間を下回る低成長となると予想する向きも多いんだよ。

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□ それで病状は??
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もちろん、経済の(特にアメリカ及び近隣の新興アジア経済圏への)輸出依存度の大きさと、IT関連の電子部品への依存度の高さが不振の大きな原因になってる。例えば輸出額がGDPの何%にあたるかってのを見てみると、シンガポールが135%、台湾が47%、マレーシア110%、香港132%、フィリピン51.3%、韓国42.1%、タイ58%、インドネシア34.9%、等と軒並み強烈な数字となっている。ちなみに中国は22%、日本は10%程度となっている。輸出中、機械、電子部品等の占める割合は50-80%となっており、ITバブルの破裂の影響は凄まじいものがある(ちなみに日本は4分の1程度)。

でもね、その他にも今回の不調には共通項がある、、、好調期に膨れ上がった投資の裏返しである、過剰な生産キャパシティーと負債、それによる過剰な不良債権が原因となった金融機関の機能不全、税収不足と経済刺激のために跳ね上がる政府の公的負債、それにデフレーション、、、なんか、どっかの国に良く似てるねぇ、、、

すでに「アジアの日本病」なんていう記事も見かけるほど、ある一面では日本の不景気に病状が似てるんだけど、ってゆーことは悪くすると、こんどの不調は結構長引きかねないってゆー怖れがあるワケだ(日本でもアメリカでも投資ブームの破裂による不況は、フツーの好景気不景気の景気変動と違っ
て、もともと長引く可能性が高い、ってゆーのは以前にも書いた)。

唯一の救いは、多くの新興アジア経済が今回は高い外貨準備、経常黒字、少ない短期対外負債という状態にある事で、前回の様な通貨危機に陥るリスクは今のところ低いって事くらいかもしれない(でもインドネシアはちょっと危ないかも)。海外からの資本流入も途切れる事無く続いている。

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□ さて対応の方は??
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韓国、マレーシアでは政府が強権を発動して、資本注入などの銀行の不良債権処理・整理を行ったけど、構造的な問題が片付いたとは思えない部分も多い(例えば韓国では潰れそうになった半導体メーカーを支援するように政府が銀行に圧力をかけたりしていた - つまりね、一気に大掃除はしたけど、まだ「散らかし好き」はそのままって事)。

通貨危機を乗り切った後、多くのアジア経済が変動通貨制へ移行しており、今回のアメリカ経済減速によるショックの各国内への波及はやや抑えられた面はある(経済不振は通貨の下落をもたらし、輸出競争力を回復させるからね)。

しかし変動通貨制下のアジアの様な「超」開放経済では財政政策による経済刺激は効きにくいっていう面がある(財政刺激の効果が輸入に流れやすいって事もあるし、効いたら効いたで通貨の上昇をもたらして輸出を抑えるってこともある)。

そこで金融政策って事になるんだけど、投資バブルの後の過剰債務経済のもとでは、金融政策(例えば金利を下げるとかだよ)はあんまり効かないってのは日本人が良く分かってる通りだ。みんな借金で首まわんなくって融資や投資どころじゃないってワケ。香港とシンガポールを除いた東アジア経済全
体で全ての債権の少なくとも20%が不良債権だと言われている(アーンスト&ヤング)。

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□ 開放経済の宿命??
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さて、もともとはアメリカ経済の大減速(それに一部、日本経済の長引く低迷)によって現在のアジア経済の困難が起こっているワケで、アメリカ経済の行方がアジア新興経済圏の帰趨を左右する状況は変わっていない。

一部アメリカ経済の早期回復を予測する向きもあって、アジア経済圏の株価も反発しているけど、アメリカ経済の先行きはそんなに1本調子では無いと考えられ、アジア経済もそんなに楽観できる状態じゃ無い。

もともと新興アジア経済圏が高度成長している頃から、「アジア経済圏は資本投下の増加に応じて成長しているだけで生産性は全く伸びていない」ってゆー批判があった(クルーグマン等)。つまり、投資額が増えてるから生産が伸びているだけで、投資額に見合った以上の生産性の上昇が見られていな
いって事。

一国の経済的な生活水準をの上昇を長期的に決定付けるのは、生産性の上昇以外には無いってのは何回も書いてる通りで、リターンの低い投資を続ける経済は遅かれ早かれ行き詰まる事になる(金利が低くてリスクの高い貯金を続ける様なもんよ)。そしてこれもここ10年以上、「日本病」の中核をなす症状だった。

日本のような比較的外に対して閉じた、しかも巨大な市場では生産性の低い国内産業を維持する「贅沢」がある程度までは可能だ。しかし中国を除く新興アジア経済圏ではそのような余裕は無い。そろそろ、資本コストに見合ったリターンを生み出す、産業上のイノベーションが必要となっている。

これは言い換えればリターンにあった資本コストで資本が提供される市場が必要って事なんだけど、不良債権や過剰債務の解消によって、まっとうな資本市場、金利メカニズムが出来る、ってのが入り口になるだろう。「日本病」本家の日本が先か、必要に迫られた新興アジア経済が先なのか、、、、?

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□ おまけ
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アジアの通貨危機に関してはニューヨーク大学、スターン・ビジネス・スクールの Nouriel Roubini 先生のサイトが充実している。もともとアジアの経済危機関係のドキュメントを集めたサイトだったけど、最近は新興経済圏を中心に幅広いトピックをカバーしている大変勉強になるサイトになっている。

http://www.stern.nyu.edu/globalmacro/