2008/8/2 土曜日

メリル:本当のゴロ○キは誰か・・・???

最近はSECのコックス御大は、金融市場の混乱で大儲けしたヘッジファンドの連中を締め上げようと、ネイキッド・ショートを規制したり、「不正に流されたウワサ」のネット上での痕跡を追い求めたり、50ものヘッジファンドに召喚状を連発したり大変お忙しいようです。しかし今週のメリルリンチの増資やら、「スーパーシニアABS CDO」の「売却」の顛末を見ていると、締め上げるべきゴロ○キは別のところにいるような気がするんですが・・・

まず、メリルが追加増資とCDOの売却を発表したのは7月28日で、7月17日の業績発表から10日ちょっとあとです。業績発表時点では赤字のハナシはありましたが、10日後の巨額な増資やら、「スーパーシニアABS CDO」の「売却」やらのハナシは全くなかったどころか、CEOのタイン御大は「現時点で弊社は資本の面では極めて良好な位置にあると確信している」なんぞとおっしゃってました。(その1カ月前にも同様の発言をしています)

おまけにプレジデントのフレミング氏も5月には「(ジョン・タインCEOは、)弊社は十分な資本を有しており、予測できる限り、弊社は追加的な普通株式による資本調達を行う必要がないということを明確に示してきました。1月に増資した際には、(株式に対する)需要が大きかったので、必要以上の資本調達を行うことになりました」などと言っています。

予測できるかぎり(for the foreseeable future)というのが、どれくらいの期間なのか分かりませんが、降って沸いた事故ならともかく、2カ月後に自社が行う取引を予測できないというなら相当の無能か、そうでなければ投資家相手に真っ赤かな嘘をついていたということになります。ヘッジファンドが不正に流した(かもしれない、有るか無いかも分からない)ウワサのレベルではなくこれはほとんど「虚偽の流布」に近いものです。

おまけに、少なくとも市場の一部はどうも28日のことを結構予期していたような感じも見受けられます。どの程度インサイダー情報が流布していたのか分かりませんが、これにSECの目が向けられないとすればほとんどビョーキの世界です。

ついでに増資と一緒に発表された「スーパーシニアABS CDO」の「売却」も結構面白い発表です。いろんなところで取り上げられているので詳しくは繰り返しませんが、額面306億ドルの「スーパーシニアABS CDO」(メリルの帳簿で111億ドルまで償却済み)を、67億ドルでローンスターに売るというものです。

で、このローンスターが支払う67億ドルの代金のうち、75%をメリルがローンスターに「貸し付ける」そうです。すなわち、ローンスターが払うキャッシュは16億8,000万ドルということになります。で、残りの50億2,000万ドルのメリルからローンスターへの「貸付」ですが、ローンスターの返済責任は取得した当のCDO財産に限定されるというノンリコース・ローンです。「買収者はこの取引による財産以外のいかなる資産も有しない(The purchaser will not own any assets other than those sold pursuant to this transaction. )」なんて発表には書いてありますが、ローンスターは大手のファンドグループですから、購入するCDO以外に資産がないはずがありません。

実態を想像すると、おそらくローンスターがこのメリルのCDOを買うためだけの空っぽのファンドを設定して、そこにエクイティとして16億8,000万ドルを投資し、メリルが50億2,000万ドルを貸し付け、そのファンドがその金でメリルの306億ドルの「スーパーシニアABS CDO」を買いとるというようなことではないでしょうか。

ローンスターからすれば306億ドルの債券を16億8,000万ドル(額面1ドル当たり5.5セント!)で買ったあげく、67億ドルを上回るアップサイドは全部イタダキで、75%までのダウンサイドは全部メリルに押しつけというトンでもない有利な取引です。

問題はメリルの方で、怪しいCDOの資産が、怪しい債権(プラス償却)に化けただけです。このままCDOの価格が下がってクズになればCDOの償却ではなく、不良債権の償却になるだけで、何ら本質的なリスクは変わっていません。(もちろん、償却よりも貸し倒れの方が実現するタイミングがずっと遅いというメリットはあるでしょうが・・・)

大体もうCDOの簿価が100億ドル程度まで落ち込んでいれば、メリルの図体からすればそれほど大きい額ではないと言っても良いと思うのですが、それでもここまでするってのは、「現時点で弊社は資本の面では極めて良好な位置にあると確信している」どころではないのか、余程何か事情があるのでしょうねぇ。今は都合良く増資の「クワイエット・ピリオド(情報開示自粛期間)」なんで何も言わなくて済むんでしょうが(言ったところで真っ当なことを言うとはとても思えませんが)。

しかし、バーナンキ先生といい、コックス御大といいどうもダッチロールが目につくような気がしますが、これで済むならSECなんかいらんのじゃないかしらん?

2008/7/26 土曜日

ポールソン、と言ってもPaulson & Co.ですが・・・

DealBook(NYT)で見たのですが、Paulson & Co.のジョン・ポールソン氏が今度はモーゲージで大打撃を被った銀行や金融機関に投資するファンドを立ち上げる準備をしているとBloombergが報じています。

Paulson & Co.のヘッジファンドは、昨年は金融市場の大混乱で30-40億ドル儲けたと言われていますが(昨年のトップ・パフォーマンスのヘッジファンドは多くが金融関連のショートかCDSで儲けた連中なので珍しくはないですが)、「一粒で二度美味しい」という言葉を思い起こさせますねぇ(ちょっとタイミングが早くて少し眉唾という感じもします。まぁ何事も準備は早いにこしたことはないですが)。

ポールソン氏は相当早くからモーゲージ市場の問題に目を付けてショートやCDS投資をしていたようですが、最後の最後まで信念をもって待ち続けて大儲けされたようです。今度も「細工は流々、仕上げを・・・」ということでしょうか。この混乱では往復ビンタどころかトリプル・ビンタを食らった人も多く見受けますので、コントラストが鮮やかなような・・・

ところで、Paulson & Co.のアドバイザリー・ボードにはグリーンスパンおじさんも名を連ねておられるようですが(他のヘッジファンドにはアドバイスしないという独占契約のようです)、これに関しても何となく「一粒で二度美味しい」という言葉が意味もなく浮かんできました・・・

2008/7/12 土曜日

原油と投機筋?あんまりカンケーないんじゃ・・・

原油価格が調子良く(悪く)上がってて、米国議会や日本の役人、G8首脳からオバマ先生まで「投機筋」タタキのようですが、こういうのってどーなんでしょーか・・・。この間も、「ユダヤ系のウォール街の投資銀行の連中が原油価格をつり上げてる」とか、目をつり上げたおじさん(日本人)が滔々とおハナシしていったんですが、どうもお顔を見てると「本気」のようだったので、ちょっと世の中心配になってきました。

「投機マネー」自体は確かに原油や他の商品の先物市場に流入してますが、「先物」市場ってのはヘッジ(投機筋にとっては価格の動向を当てっこ)するための市場ですから、いくらお金が入っても実際の需要家に入る供給の量が減るわけじゃありません(いや、どこかの「投機筋」がどこかの地下の悪の秘密帝国に米国のSPRをはるかに上回る大備蓄基地を持ってればハナシは別ですが・・・)。

というわけで、頭の中には「需要と供給」という2つの単語しか入っていないケーザイガクシャの間では、「原油高=投機筋」説には極めて懐疑的な人が多いのですが、こういうのはあんまりウケないし、政治的にも具合悪い(「悪者」見つけておけば便利ですから)のであまり報道されません。大体、「投機マネー」が入るだけで値段が上がるならば、「投機マネー」の入っている(取引所で取引されている)コモディティ(原油、銅、スズ、天然ガス、鉛など)よりも、「投機マネー」の出る幕のあまりないコモディティ(モリブデン、カドミウム、鉄鉱石、タングステンなど)の方が価格が大幅に上昇しているのはどーゆーことでしょうか。

エコノミスト誌なんかは「先物市場に対する投機マネー流入で価格が上がるって言うのは、サッカー賭博の賭けの額が試合の結果に影響するというようなものだ」と皮肉っています(もちろん先物市場のシグナルで生産者側が供給を控えたり、需要側が必要以上の手当てに動けば価格は上昇するんで、こりゃ言いすぎだと思いますが)。

大体、投機筋が大々的に悪者にされ出したのは、米国議会で5月にマイケル・マスターズというヘッジファンドのおっさんが、「インデックス・ファンド」からの資金流入と中国の需要を比べるという、先物も実需も区別できていないどーしょーもない証言をして、これもワケがわかってない議員連中がそのままそのハナシに大々的に乗ってからです。この時の米議会の調査では先物市場でのインデックス・ファンドの投資が槍玉に挙げられたんですが、実需=先物ごっちゃまぜ論に乗ったところで、「インデックス・ファンド」のNYMEXでの契約残は合計のわずか12%、世界の原油年間消費の2%にすぎません(インデックス屋さんのバークレイズが出した数字ですが・・・)。

サミットでは日本はもうちょっと気の利いたところを見せるチャンスもあったかと思うのですが、お役人自体がどうも70ドル以上の分はウォール街の儲けだと思ってるみたいなんで仕方ないんでしょうか。先進国の首脳には、あまりに良い加減なIEAの需要見通しを改善するとか、代替エネルギーに対する計画/コミットメントを示すとか、イランに対するスタンスを揃えるとか、(中国とインドを脅かして消費を抑えさせるとか)もちょっと役に立つことができると思うんですが・・・

ただ、世界経済の状況次第では、需給の逼迫自体は少し誇張されすぎている可能性があるような気もします。イランのおじさんがおとなしくしてれば、原油(やその他の産業コモディティ)の価格は「短期的には」後退することがあるかもしれません。

まぁ、この話題に興味ある方は、読みやすいところで最近ではNYTのクルーグマン先生の記事や、エコノミストの記事なんかが取っ付きやすいと思います。

ところで、このクルーグマン先生の記事のタイトルは「Fuels on the Hill」でHillはキャピトル・ヒル(議会)で直訳すると「議会での燃料」ですが、このタイトル自体はもちろんビートルズの「Fools on the Hill」(丘の上の愚者=バカ)をもじったもので、原油と議員とバカという言葉が響き合った、クルーグマンらしい意地の悪いものです。

2008/6/5 木曜日

FRB議長の新しい為替方針・・・って???

猛仕事の日々で今日はとうとうダウンして、ちらちらウェブを徘徊してたら「ドル急上昇、FRB議長の新しい為替方針受け」というヘッドラインが目に入りました。

いつから為替方針が中銀のお仕事になったのか分かりませんが、バーナンキ先生、ドル下落の下手人にされて議会でイジメられるのがイヤになったんでしょうか。いずれにせよ、為替の動向と中銀のトップの意思決定に強いリンクがあるという印象を与えるのはあまり賢明な行為であるとは思えません。もうみんな「これで利下げ打ち止めは確実」なんて言ってますし。まぁ、利下げに関しては、そうなのかもしれませんけど、そういうシグナルを発するにしても良い方法とは思えません。

大体、先生が取れるアクションの幅はそんなにないんですから、こんな軽口たたいてて、それでもドルが落っこちて、それで金利もいじれなければそのうち「オオカミ少年」ならぬ「オオカミおじさん」になっちゃう可能性もあります。

財務長官がオオカミおじさんなのは別にしょうがないとして(皆それは知ってますし)、一応信用が商売道具の中銀総裁がお仲間になるのはちょっとやばいんじゃないでしょうか。ポールソンとコンビで狐と狸なんて最悪だと思うんですが。

2008/5/20 火曜日

米予備選:ヒラリーおろしの不思議・・・

まぁ、あんまり外国人がとやかく言う話題ではないのですが、最近の米国のメディア(や、そしてそれにつられた各国メディア)の「ヒラリーは何でおりない?」という、かなり変な報道を見て少し気になったので、ちょっとばかり・・・(ちなみに、私はオバマのファンでもヒラリーのファンでもありません。1外国人としてはマケインが良いと思ってますから。ただ、民主党の候補に関して言えば、当初少なからぬ好意を持っていたオバマ氏には、予備選を通じて完全に失望させられたのは確かです。)

まず、今までの獲得代議員数を見ると、オレゴン、ケンタッキー選の前でオバマ氏約1900人、クリントン氏約1720人(特別代議員の推定含む)、得票数で見ればオバマ氏約1600万票、クリントン氏1550万票(問題となっているミシガンとフロリダを除く。両州を加えるとクリントン氏がわずかにリード)。代議員数で決まる予備選で、確かにクリントン氏の勝ち目はフツーに考えればほぼありませんが、特別代議員のまだ200-300人が態度を表明しておらず(そして、特別代議員は態度を変えることもあり得るため)、テクニカルに可能性はゼロとは言えません。

しかも過去を見ると、例えば1980年にはテッド・ケネディ氏がカーターに獲得代議員数で700人以上の大差を付けられながら、最後の党大会でカーターに決戦を挑んでいますし、1984年のハート氏、1988年のジェシー・ジャクソン氏、あるいは古いところでも1976年のユーダル氏(ちなみにこの年は共和党のレーガン氏も予備選での劣勢に関わらず共和党大会まで戦っています)など、最後の最後まで戦っています。私は、ヒラリー氏ほど善戦している候補が途中で降りた過去の例は知りません。

また、1位候補の陣営が、2位候補に撤退の圧力をかけるのは珍しくないかもしれませんが、今回はメディアや民主党の指導部までが片方の候補(しかも過去の2位候補と比較しても戦いに残るのは不思議ではない候補)に強烈な圧力をかけているという点でかなり異様な気がします。なぜでしょうか。

1. メディア
メディアに関してはかなり「セクシズム(性差別)」と逆「レイシズム(人種差別)」を感じます。テッド・ケネディーやユーダル、ハート、ジャクソンに許されて、ヒラリーに許されない理由は他に何があるでしょうか?「オバマネーション」の住人の若い(あまり活字を読まない)お嬢さん以外の女性は、これに多かれ少なかれ合意する人が多いような気がします。

ヒラリーはもともと「野心的すぎる」とか「あまりに戦闘的だ」とかされてきましたが、おっさんの政治家でこれがけなし言葉になる人はいないでしょう。1976年の共和党予備選では、代議員数でも得票数でもフォードに劣るレーガンが共和党大会まで残って「仁義なき」激しい決戦を挑みましたが、今のヒラリーのような馬鹿げたな非難は浴びせかけられなかったでしょう(レーガンは80年に予備選、本選で勝利し大統領になっています)。善し悪しはともかく、米国の政治の「強さ」の理由の1つは、日本では想像もつかないほどの徹底的な競争と戦いにありますが、どうもヒラリーがその戦いに参加するのは気に入らない人が多いようです。

逆にオバマ氏への支持は、メディア・タイプの連中からすれば「私は人種差別主義者ではない」という免罪符のようなものです。「うるさい女」と「免罪符付きミスター・フィールグッド」では勝負にならない様な気がします。2人の最後の直接討論では、大手メディアとしては珍しくABCがオバマ氏に厳しい質問を投げかけましたが、その後の他のテレビ局、新聞のABCへの非難には少し異様なものを感じるほどでした。

2. 民主党
まず、ここでも一般代議員数で勝っている「初の黒人大統領になるかもしれない候補」を特別代議員の票でくつがえすのは極めてマズい、というブレーキがかかっているのは確かでしょう。しかし、より大きい要因は民主党の左傾化にあるように思えます。共和党がブッシュの下で相当右傾化したように、民主党もその間に相当左旋回しています。

クリントン前大統領は民主党を中道に路線転換し2期連続という近年の民主党としては目覚ましい勝利を挙げましたが、NAFTAの締結など民主党の伝統的な左派からするとあまり好ましい人物とは言えません(英労働党におけるブレアのポジショニングと少しだけ似た面もあるかもしれません)。ヒラリーはビル・クリントンよりもはるかに左ですが、それでもオバマ氏にははるかに及びません(日本ではオバマ氏が中道とかいう、米国でさえすでに見られない報道がいまだにあるようですが)。

オバマ氏は有力な左派の大物達からすれば「非常に愛いやつ」ですが、ヒラリーはこの連中からすればあまり好ましくないビルの片割れです。実際、オバマ氏もここらへんは心得ていて、講演ではNAFTAを徹底的にこきおろしたり、「クリントン、ブッシュのもとでアメリカ人はどんどん経済的に貧しくなった」(事実とは異なりますが)とか言って拍手喝采をあびています。勝負が全く分からない極めて早い時点でテッド・ケネディーやジョン・ケリーなどの伝統的な左派の大物の支持を得ている点でもこれが分かります。

ただし一般の米国人に目を向けると、5月14日時点のPew Researchでは、72%の回答者が「メディアはオバマ氏をまだ勝利者と呼ぶべきではない」と答えており、メディアや民主党指導部の見方とは相当離れている点も注目されます。まぁ、最終的にはオバマ氏が勝利するのでしょうが、私は今回断固戦うヒラリーを少し見直しました。「ヒラリーが○ン○マを半分オバマ氏にやれば、2人とも2つづつになる」とかいうきたないジョークを見ましたが、まぁ、大したものです。

ABCで厳しい質問を浴びせられて不満を述べるオバマ氏について、「熱いのがいやなら、キッチンから出て行け」とまで言ったヒラリーですから、最後の党大会のフロアーまで戦って欲しいものです。

2008/5/11 日曜日

インフレ懸念って、そりゃそーでしょう。

そろそろ利下げも打ち止めか(どうか分かりませんが)と思ったら、Bernanke先生は今度は市中銀行が連銀に預けている準備金に対して、金利を支払う許可を求めているようで(もともとは2011年までは認められていないので、前倒しの許可ですが)、暴走機関車というか、欲望という名の電車というか(意味不明ですが)、やりますねぇ。お小遣いをもらえる銀行は喜ぶでしょうが。

ところで、気になるインフレの方ですが、先月末にはボルカーお爺さんが「もう、そろそろ心配した方がええんじゃないかのう」とおっしゃってました。それに関連して面白いチャートを発見したので一発ご紹介。下は、1980年に使用されていたCPIの計算方法でインフレを計算したらどうなるか、という表でShadow Government Statisticから頂きました。

これは、コアCPIではないですが、コアでも大体同様の傾向になっているはずです。このチャートによると、ボルカーお爺さんが就任した当時の計算方法でいけば、インフレ率はすでに10%を上回っている状態でFF金利のターゲットは2.0%、DRは2.25%という、お爺さんからすれば「いや、もう若いもんにはついていけんわ」という世界ではないでしょうか。

もう一発分かりやすいチャートが、データの出所は同じShadow Govt Stat.ですが、レーガン時代、クリントン時代の前の計算方法でインフレ率を計算したらどうなるかというやつです(Sandiego Union Tribute)。

まぁ、意図的にインフレを過小に見積もるように統計が「改善」されているわけではないのでしょうが、例えば品質向上による値下がり効果(例えば、同じ値段でパソコンのスピードが倍になったら、値段が下がるのと同じとかいうやつです)は調整されているのに、安物の粗悪品の増加に対する「値上がり効果」の補正なんぞは聞いたことがありませんし、1980年代以降の「改善」は概ねインフレ数値を引き下げるものであったというのは確かではないでしょうか。

基本的にはこれは中銀からすれば、テイラールールの定数項をパーマネントに引き下げるのと同じような効果があるといえます。いや、テイラールールの下方シフトですと、市場の信認の問題や、インフレによる政策金利の定常状態の上方シフトにより、結局利下げ効果は相殺されますから、この場合の効果はテイラールールの下方シフト以上になります(なんたってインフレ上がらないですから)。

昔、どっかの国では「中央銀行総裁の首を切っても公定歩合を下げさせろ」とか言った有力政治家がいたそうですが、そんなことするよりも統計局の役人をおどしてインフレ率を下げる方が効果的かつスマートかもしれません(ってもちろん冗談ですので)。

2008/3/30 日曜日

血まみれ第1四半期:いろんな人達

第1四半期は大嵐になりましたが、金融、投資業界では嵐を生き残った人、沈没した人、相変わらずエゲツナイ人など、実力と運がシビアに試された期間でした。ここ3カ月は地獄のように忙しかったのであまり書けませんでしたが、最近数カ月でちょっと興味を引かれた(名経営者と言われていた/まだ言われている)人達のおハナシを一発。

1. やっぱりエグイで賞:ウォーレン・バフェットさん(バークシャー・ハザウェイ)

人の弱みに付け込んで「お前達の一番おいしい商売を買ってやるから、心安らかにお陀仏しろ」というのはフツー「救済」とは言わないもんですが、売ってくれないとなると、今度は自ら乗り込んで弱体化した連中の商売の奪取に動くあたり、年をとっても強烈にシビアなお方です。外が嵐だろうが、宇宙戦争だろうが、バークシャーの株を持ってる人は毎晩ぐっすり眠れることでしょう。

2. 明暗を分けたで賞:リチャード・コバセビッチさん(ウェルズ)とアンジェロ・モジロさん(カントリーワイド)

去年の米国のモーゲージ・ビジネスでは、オリジネーターとして1位だったのがウェルズ・ファーゴで2位でカントリーワイド・フィナンシャル、サービサーとしては1位がカントリーワイドで2位がウェルズでした。

しかし、結局カントリーワイドはボロボロになってバンカメに1株7.7ドルで救済買収され(1年前は45ドルくらいでしたが)、ウェルズはホーム・エクイティ・ローンで傷を負ったものの相変わらず結構な利益を出しており、コバセビッチさんも後任に無事席を譲って会長に収まるなど、名経営者と謳われた2人は対照的な結末となったようです。ただモジロさんは4000万ドル近い退職金や手当を断ったようで、一代で築いた会社の末路に対する無念さが少し見えるような気がしました。

あと、(今まで)無傷なところでは、ブラックロックのラリー・フィンクさんも、最近色々買った資産を合わせて1.3兆ドルでほとんど無傷というのは大したものではないでしょうか。一方でリーマンのリチャード・ファルドさんは色々煙が立っていますが大丈夫でしょうか?

おまけ: ベアーのとばっちりで賞:ジム・クレイマーさん

いや・・・。相変わらず面白い人ですが、この「ベアー・スターンズは絶対大丈夫。ベアーには問題なんで全然ない。ベアーの株を今売るのはアホだ」というのは・・・ちなみに3月11日放映です・・・

2008/3/25 火曜日

米国予備選:民主党に流れるウォール街のお金:金欠マケイン

相変わらず地獄の忙しさで、おまけに予備選のチェックなどしてると何も書くヒマがないのですが、前回に続いて予備選に関してちょっと。今回の予備選は、史上まれに見る額を各候補が集めて使いまくっていますが、お金では相変わらずパッとしないのがマケインお爺さんです。で、米国の金融界の連中の寄付がどうなっているかをさっとチェックしてみました(出所はCenter for Responsive Politics)。

もともとウォール街の連中は共和党支持が強いのですが、今回の共和党候補は金融界に割と(かなり)冷淡なマケインということで、寄付にもそれがストレートに出ています。今のところヒラリー・クリントンとバラク・オバマの民主党両候補が証券/投資業界の連中から仲良くそれぞれ約600万ドルずつもらっているようですが、それに対してマケインは250万ドル程度とウォール街の冷たさが表れています。

世論調査では、民主党両候補とマケインは概ね互角というところなので、これは「勝ち馬に乗る」とかそういうものではなく、基本的に言うことをあんまり聞いてくれそうにない御仁に出す金はないというところでしょうか。サブプライム騒ぎでも基本的に「徳政令」一本槍の民主党のお二方に対して、マケインは以前には「不法のあったものには処罰を」なんて言ってましたし、今日も「政府の仕事はシステミック・リスクに対処することであり、大銀行であれ、小さい借り手であれ、無責任な行動をとった者を救済して、それに報いるのは政府の仕事ではない」なんて言ってました。

ちなみに2000年の選挙では、証券/投資業界の連中の寄付はブッシュに400万ドル、ゴアに140万ドル、2004年はブッシュに880万ドル、ケリーは400万ドルちょっとというところでした。

ところで、マケインは軍事的にはタカ派なので、軍需産業の連中には良いかというとそうでもなくって、ヒラリーの22万ドルに対してマケインは18万ドル程度でここでも大負けです(オバマでも14万ドルを集めています)。

大体ステルス機への給油機に関する国防省と米国軍需産業の大手ボーイングの大型商談を、不正な取引の可能性があると言いがかりをつけてつぶした張本人がマケインで、このあおりを食ってボーイングのエグゼクティブが2人牢屋に放り込まれたという事件があったこともあり(しかもこの事件のおかげでボーイングの代りに受注したのがウヨクの米国人の大嫌いなフランス企業というオチまでついていました)、軍需産業もイマイチ応援したくないというところでしょうか(未だに議会ではボーイングに近い両党の議員がマケインを攻撃しています)。

他にも例えば、法曹/ロビイストの寄付ではヒラリーが1,400万ドル、オバマが1,100万ドルに対して、マケインは350万ドルと、やはりマケインにはお出してもしゃーないというところのようです。

マケイン陣営への財界からの主要アドバイザーはシスコ・システムズのジョン・チェンバース(!!)がいたりと結構渋いんですが(サイフも渋いと思いますが)、まぁ、これでマケインが勝ったら大したもんですねぇ。

2008/2/7 木曜日

選挙中盤・・・

ここ1カ月ほど地獄の忙しさで、長時間労働の後はへとへとになって最後に大統領予備選の状況をチェックして眠るという超不毛な生活をしていたおかげで、そこらへんの人よりも選挙状況には明るくなってしまいました。

と言っても、米国の内政にはほとんど無関係な一外国人でしかないので、何のコメントをする立場にもないのですが、ただ米国の大統領となると米国外にもそれなりの影響があるので、その面では興味の引かれるところです。

一外国人として次期米大統領に望むことといえば、1. 予見可能性(つまり、あまりブレないこと)、2. 内外の保護主義に対抗できること、3. 米国外のイベントに一貫した建設的な関与ができること、くらいなんですが、まぁこれが満たされるのは残っている候補の中ではマケインお爺さんくらいではないかと思われます。

金融関係や投資家の間ではロムニーの人気が高いように感じます(もちろん、投資家優遇税制を当て込んでのことです)。しかし、同氏はさすがに元ベインの親玉で、情報の非対称性を利用する手腕は今回の選挙戦を見ても大したものですが、これは世界市場で重要な地位を占める米国の大統領としてはあまり望ましい資質ではないような気がいたします。それに都合が悪くなるところころ変わるところは知事時代から変わっていないようですし。メインストリートの経営者にはそれほど人気がないように見えるのもこういうところがあるような気がします。有能なのは分かるのですが。

火曜日のところではマケインお爺さんが共和党ではアタマ2つくらい出た感じですが、共和党のハードコア(右翼)の方々はお爺さんを目のカタキにして嫌っているので今後も少し多難な感じもあります。まぁ、お爺さんの頑丈さは今までで十分にテスト済みですが、頑張って欲しいものです。

2007/11/26 月曜日

「暗黒の金曜日セールス」は好調のようですが・・・

毎年この時期になるともうヘロヘロで、ロープにでもつかまるか、タオルでも投げ込んで欲しい気分ですが、感謝祭の翌日は「Black Friday」と呼ばれており全米主要小売店が年間一番のバーゲン・セールを行う日です。またクリスマス商戦の「キックオフ」とも言え、消費の動きに注目が集まる日でもあります。

Bloombergによると、Black Fridayの売上は全米で前年比8.3%と予想を大きく上回る好調だったようです(週末の2日間でも7.2%の上昇のようです)。ニュースを色々あさってみると、中身は一概に明るいとは言えないようですが(例えば1人当たりの支出は3%以上減少しているなど)、株式市場にとっては年末のプレゼントになるかもしれません。

もちろん、「これで心配は吹きとんだ」などと言える状態には程遠いわけで、このニュースで皆さんが少し浮かれ気分になっているようであれば、ポートフォリオの組み替えのチャンスかもしれません。

先週の第3四半期の業績発表がほぼ終わった時点で、S&P500の企業利益は前年比8%以上の落ち込みで、米国の景気の減速はかなりはっきりしています。

これ程のマイナスの時は通常ですと数四半期後には”R”の字がちらつくのですが、まぁ、金融と一般消費財という「サブプライム銘柄」が両者ともマイナス30%を上回る落ち込みで足を引っ張っているわけで、ダイハードな強気派は金融だけ除いた数字を計算して「米国は大丈夫」なんて言ってる人もいます。しかし、これは何となくハンバーガーからバーガー部分を除いてカロリー計算をして「ハンバーガーは健康食品」なんて言ってるような感じもいたします。

一方で、資本財、ハイテクは2桁成長ですが、これは両者とも基本的にグローバル経済銘柄で、世界経済が相変わらず底堅いことを示していると言えます。基本的に米国は減速、グローバルはそこそこ強いというシナリオは変えていない人が大半のようですが、米国がどれだけ弱くて、世界経済がどれだけ底堅いかはこれからのお楽しみ(楽しくないかもしれませんが)というところでしょう。