2009/7/20 月曜日

「人間を食う軍事ロボット」で大騒ぎ

先週は、ロボット関係の「爆弾ニュース」で騒ぎが起こって、メールボックスが破裂しそうになるということがありました。

問題の発端になったのは、いつもお騒がせのFoxニュースで(記事はもう差し替えられていますが)、「次世代の軍事ロボットは死体がエネルギー源になるかも」というトンデモ・ニュースでした。これをCNETやらの他のテクノロジー関連のニュースサイトがカバーして大騒ぎになりました(例えばWiredにはこんな記事がのってます:リンク )。

これは、もともとPopular Scienceが、Robot Technology Inc.Cyclone Power TechnologyがDARPA関連で開発の発表を行ったEATRという軍事ロボット(いや、確かに「イーター(食う奴)」という感じで薄気味の悪いネーミングですが、Energetically Autonomous Tactical Robot「エネルギー的に自律的な戦術ロボット」の略です)のハナシを取り上げる際に、P. Singerの新しい本の「Wired for War」から「草、朽ち木、家具、死体などの有機燃料源」というフレーズを引用したのが悪くて、その話がアタマの線のもともと大混線しているメインストリームのメディアの記者の脳内で結合してしまったようです。

たまらなかったのが、EATRを開発した両社で、とうとう木曜日に「EATRは厳格なベジタリアンなので、心配はありません」という間の抜けたプレスリリース(PDF)を行う羽目になりました。

市場関係のニュースでも最近、ゴールドマンサックスの取引用のコンピューター・プログラムが盗まれたニュースやダークプールでの取引が増えている件などで、ことさら「テクノロジーの脅威・悪用」みたいなことを囃し立てる質の低いニュースが増えているのですが(いわゆる「HFT」などのコンピューター・ドレーディングと、ダークプールなどのハナシはまったく別の次元の話です。後者には潜在的にマズいことがあり得ます)、一般的にテクノロジー関係のトピックを咀嚼する能力が落ちている兆しであるとすると、少し懸念される状況であるような気がします。

2007/7/24 火曜日

ヨーロッパ哀歌

ドイツ政府が次世代サーチ・エンジン技術のリサーチ・プロジェクト「Theseus」に1億2,000万ユーロの補助を行うことを欧州委員会が承認したと言う記事が少し以前に出ていました。

ニュースによると、ドイツ政府は最初にシーメンス、SAP、エンポリスなどに資金を出した後は、プロジェクトの進行に応じて小規模の会社にも資金を出すとのことです。EUでは、フランスも同様の「国家的検索エンジン・プロジェクト」でトムソンに補助金を出す件で欧州委員会と交渉中で、何としても米国に対抗したいという欧州各国の政府やブリュッセルの意向が見えます。

「エアバスの夢よもう一度」ということかもしれませんが、「米国に対抗」するために、「政府が戦略的テクノロジーをピック」して「補助金を出す」という構図自体に既に欧州のダイナミズムの衰えようを感じてしまいます。欧州でも技術者の対米流出が結構起こっていますが、政府が力を入れるほど「シラける」向きも多くなるような気もいたします。

話は変わりますが少し以前に、欧州のハイパフォーマンス・コンピューティング・イニシアティブ(欧州レベルで世界最高級のペタスケールのスーパーコンピュータのセンターを建設しようというプロジェクト)に関して議論したことがあったのですが、その時に渡された「予備的なスタディ」は文書だけでも合わせて軽く200ページはあるという代物でした。

中に入っていた「Scientific Case」では、欧州レベルでスーパーコンピュータのセンターを作れば、地球温暖化のモデリングがより精緻にできるので温暖化の防止の役立つとか、タンパク質の折りたたみ間違いの解明が期待できるとか、次世代のヘリのモデリングがどうだとか、結構「マジメ」なことがびっしりと書いてあって、どっかの国の研究者の「お金ちょーだい」文書のぺらぺらの「Scientific Case」なんかと比較するとやはり良く出来ている気もしました。

しかし、気になったのは、地球温暖化を防ぐためにどーだこーだと言いながら、常に最後に出てくるのが、「欧州レベルで世界最高の施設を作らないと米国に対抗できない」とか「米国や日本では戦略的にスーパーコンピュータで優位に立とうとしているから、欧州も同様にしないと欧州の科学が世界一線級でなくなる」ってな感じの文章だということでした。

この手の「(政府の力で)科学よりも対米対抗」とか上のサーチエンジンでは「(政府の力で)技術/ビジネスよりも対米対抗」とか感じさせるところに、何となく欧州の周縁化というか、科学者、技術者、実業家の志の低下と言うか、ある種の病を感じてしまいました(それに、同じようなところで税金使って対抗しなくても進んでいる部分は別に一杯あるのにねぇ)。ただし、人によって感じ方はいろいろあるみたいで、私と一緒にスパコンの文書見た人は「さすがに欧州は戦略的に頑張って考えてる。日本の政府はどうなってんだ」なんて言ってましたが・・・

あと、欧州レベルって言ってもプライドの高い国の集まりなんで、結局どこに何のセンターを作るんだとか、コンピューティング時間をどう配分するんだとか、各国に各分野のCOEを作るんだったらどこの国が何のCOEをとるんだとか、コンピューティングの面でもグリッド派やスパコン派や、たぶんまたずーっと延々とやるんでしょう。サーチエンジンのプロジェクトでも結局ドイツとおフランスで分裂でしたし。あぁ、ヨーロッパ。

欧州検索エンジン・プロジェクト
欧州委員会のリリース
APのニュース

ついでに
欧州ハイパフォーマンス・コンピューティングのScientific Case(PDFです)

2007/4/26 木曜日

Web2.0バブルですかぁ?日本だけかも・・・

なんだか良く知りませんけど、Web2.0(のお金)に関するお話を時々聞くんですが、ちょっと誤解というかイメージの一人歩きと言うか、日本では特に大きいんじゃないかと言う気がします。

まず、ベンチャー・キャピタルなんかが浮き足立ってみんなWeb2.0に集まってきてるんじゃないかというイメージがあるようなんですが、Web2.0企業に関わらず最近のインターネットからみのベンチャーはあんまりお金がかからない上に、出口もIPOではなく企業売却が多いんで、大金積んでボロ儲けというクセがついたベンチャー・キャピタルの面々にはあまり出番が無いのではないでしょうか。

ベンチャー・ファンドは期待される利益も大きいですし、出資者に要求する手数料も高額ですから、少なくとも10億ドルくらいで売却できる企業でないと、そこそこのベンチャー・キャピタルでは手を出さない(出せない)と思いますが、Web2.0でその額で売れる企業というとYouTubeやFacebookなどのごく一部の例外を除けばあんまり無いのではないでしょうか。大体Web2.0の大半の企業の「出口」価値は1,000-2,000万ドルといったところだと思いますが、ほとんどのベンチャー・キャピタリストはそんな「小銭」には興味が無いように見えます。

で、起業家の方もIPOで超大金持ちを目指すゾーとかいう人はそれほど多くなくって、YouTubeもそうでしたが(YouTubeの場合は大金でしたが)、そこそこ大きくなった段階で企業売却を考えてる人が多いようなんで、起業から売却まで全くベンチャー・キャピタルのレーダーには映らないというケースも多いと思われます。起業家はもともとベンチャー・キャピタルを避けたい人が多いので、ベンチャー・キャピタルの出資を受け入れる場合も、企業が相当大きくなって、自分たちが主導権を握れることが確実になってからというケースも多いようです。まぁ、今はインターネットがらみの起業はあまりお金がかからないので、そういうことが可能になっている面も大きいんですが(極端な例では、IMのMeeboの場合では創業者の3人が起業資金で用意したのは1人2000ドルづつというものです)。

そこで、ベンチャー・キャピタルの代りにお金を出しているのが、カリフォルニアでははいて捨てるほどいる、元起業家で「小金」をためた「エンジェル」たちということになります。先ほどのMeeboも1日5万ビジターに達した段階でサーバの増強が必要となりましたが、この際には3人のエンジェルから10万ドルの出資を得ています。Meeboも最終的にはベンチャー・キャピタルから350万ドルを調達しましたが、それはすでに1日あたり20万のログインユーザを抱えて、起業家が完全にビジネスプランの主導権を握った後のことでした。

ハイテク起業家がハイテク・ベンチャー・キャピタルを嫌うというのもまぁもっともなところがあって、まずハイテク・ベンチャー・キャピタルと言いながら、実際に知ってるテクノロジーはプレゼン用のパワーポイントとキャッシュフロー計算用のエクセルのマクロくらいで、その割には色々口をはさんでくる上に、利益に対する要求が厳しく、おまけにCTOやらCFOやらくだらん役職をいっぱい作る(そして自分たちの何人かはそのC?Oに就任する)上に、同じくらい無知な取締役を山ほど連れてくる、というイメージが強くあって、IPOでごっそり大金を狙うのではない限りVCには関わりたくないといった起業家も結構多くいるようです。その点、元起業家の同輩であるエンジェルは物分かりも良いし、起業家の悩みも良く分かってるということで頼りにされる場合もあるように見えます。

大体、Web2.0の場合、広告費をベースに考えているビジネスモデルが大半ですが、確かに広告費がオールドメディアから移動しつつあるとはいえ、全体のパイの7割程度をGoogleやYahooなどの大手が押さえている現状で、これだけ多くの2.0企業を支える収益源はないということで、Web2.0ブームも投資という面だけに限れば、米国ではある程度抑制された「地味な」ブームであるようにも感じられます(もちろん例外もありますが)。

ここらへん、ちょっと話題になっただけでヘラクレスとか何とかでIPOになってとんでもない値段がつく日本の方がよっぽど過激のように感じられたりもします。

2006/8/19 土曜日

アジア各取引所のシステム応答時間とな・・・

先日ちょっとしたところでアジア各地の取引所のシステムの応答の遅延時間の表を見たのですが、少なくともシステムのレスポンス時間に関しては、なかなか各取引所とも世界の他地域の取引所と比較しても遜色の無い水準に達しつつあるようです。

もちろん、例外は東証とジャスダックでして、いくら取引量が多いとは言え、これは少し情けなさ過ぎる数字のような気もいたします。アルゴリズムとかいう以前の問題のような気もいたしますが、やはり「旧大蔵スピード」なんでしょうか・・・

面目を一新しているのは少し前まで「アジア最低速」だった大証で、今度は一転してアジア最速の取引所となりました。現物では東証の足許にも及ばない量ですが、それでもこれは他市場と比較しても中々のものです。商品開発も頑張って欲しいものですが。


(source: credit suisse)

2006/8/1 火曜日

この電気自動車は飛ぶか?

数カ月前から一部で話題になっていましたが、米国のベンチャー企業のTesla Motorsの電気自動車の記事がEconomistの最新号にも載っていました。なかなか結構なスペックです。

性能は静止状態から時速60マイル(約100km)まで4秒、一晩の充電(家庭の普通のコンセント)で400km走行というもので、十分実用の水準に達していそうです。

環境に関しては結局電気も石炭やら何やら燃やして発電してるので、言うほどには環境に優しいというものではないと思いますが、現在の米国の発電構成(約50%が石炭火力)をベースにすると、通常のガソリン自動車よりも温室効果ガスの排出は少なそうです。

温室効果ガスの排出に関しては、どの先進国も道路輸送での排出量削減ではつまづいているので、電気自動車(でも何でも良いのですが)ネットで排出量が減少するのであれば、排出源が削減の困難な道路輸送から、より規制の容易な発電セクターに移ると言うだけでもメリットはあるような気がします(まぁ、よっぽど普及すればという話ですが)。

ちなみにこの会社の出資者はPayPalの創立者のElon Musk、グーグルの創立者のLarry PageとSergey Brinらが名前を連ねているようです。気になる価格は8万9,000ドルで一般に対する出荷は2007年夏の予定とのことです。これは2人乗りロードスターですが、数千台販売した後でより安価な4人乗りの自動車を発売する予定のようです。

Tesla Motors