2008/9/27 土曜日

今日は最初の大統領選のディベートがありました。
どちらも大統領候補としてはディベートはあまり強い方ではないのですが、マケインはいつもよりやや不調、オバマはいつもよりややマシといった感じでしょうか。
それでも議論の大部分において、マケインがかなり押していたように思えます(メディアは間違いなくそうは言わないと思いますが)。両者が話していた時間はほぼ同じだそうですが、少なくとも私はマケインの方が長く話していたような印象を受けました。
オバマの方は予想通り、「ブッシュ=マケイン」を印象づける戦略に出ましたが、これはあまり上手くないように思われます。まず、多くの人にとってはまだマケインは2000年にブッシュに挑んで八つ裂きにされた男であるということがあります(オバマ陣営としては、そのイメージを変えたいのでしょうが、言葉よりも行動の方が重いということは往々にしてあるものです)。そして、ブッシュはもはやシーンから消えて「過去の人」になりかけていますから、ブッシュの名前を連呼するのは、「明日」を売り物にしているオバマが、何となく「昨日の戦い」を戦っている印象を与えてしまうのではないでしょうか。
マケインはリック・ウォレンがホストを務めたオバマとの疑似対決や、タウンホールなどでのパフォーマンスに比較すると、少しぎこちなく堅かったような気がしますが、大部分の話題に関して優勢であったように思います。しかし、金融問題が前面に出てからやや旗色が良くないマケインとしては、今晩のディベートではただの優勢ではなく明確なノックアウトが欲しかったところかもしれません。もう少し強いパンチを繰り出せるチャンスもあったような気もしたのですが、昔人間はそこまではやらないのかもしれません。マケインとしては、金融救済策の成立がもたついてしまったので、議会での金融救済策の成立をブローカーする「手柄」を立ててからディベートに臨んで、自分の「不得手」な分野でオバマを叩きのめそうという当てが外れたというところでしょうか。
今回のモデレーターはPBSの渋いジム・レーラー氏ですが、今までの予備選などでのこのタイプのディベートのモデレーターと比較しても出色であったと思います。候補の間に割って入って自分が聞きたい話をさせるのがメディアの仕事だと思っている人も最近は多いようですが、控えめなレーラー氏のモデレーションはプロの仕事だと思わせるものでした。
追記:9/28/2008
いろいろなメディアでは、ディベート後の視聴者調査が行われ、概ねオバマ優勢との報道がなされているようですが(例えばCNNではオバマ51対マケイン38、CBSではオバマ39対マケイン24など)、調査対象の視聴者の母集団自体では民主党支持者の方が圧倒的に多いということを注記していないのは、報道としてはいかがなものでしょうか?
今回、CNNでは一応記事の最後の方に「ディベートの視聴者の41%が自分を民主党支持者であると答え、27%が共和党支持者であると答えた」と調査対象の母集団の偏りを注記しており、その点ではまだマシですが、それでもヘッドラインは「オバマの勝利」となっています。母集団のこの偏りから考えれば、51対38は「マケインの勝利」ではないんでしょうか?
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/708/trackback
2008/9/24 水曜日
数日前にマケイン大統領候補が「ワシが大統領だったらコックス(SEC委員長)はクビだ」とか言って少し話題になっていました。
マケインおじいさんの挙げている理由はそれほど感心できるものではないのですが、最近の空売り禁止のドタバタなどを別にしても、コックスの下でのSECが今回の大惨事の一因を作ったことは否めません。
2003年までは、基本的に全米のすべてのブローカー・ディーラーのレバレッジ(debt to net capital)はExchange Act Rule 15c3-1(net capital rule)により、12対1が上限とされていました。それに加えて、資本の計算では、資産の価額に相当なヘアカット(割引)が適用されていました。Net capital ruleは1975年の導入ですから、30年近く大した綻びもなく機能していたことになります。
SECは2004年にいわゆるConsolidated Supervised Entity(CSE)のコンセプトの導入に伴い、大手5社に限定してこの規制の適用外とし、法外なレバレッジを可能にしただけではなく、その際に従来の手法では適用されていたヘアカットも廃止しています。
さて、このConsolidated Supervised Entityに選ばれた「栄えある」5社ですが、ご想像の通り、ベアー・スターンズ(沈没)、リーマン・ブラザーズ(沈没)、メリルリンチ(沈没)、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスと錚々たる面々になっています。そしてモルガン・スタンレーとゴールドマンは銀行持ち株会社への移行で商売替えですから、CSEモデルの規制はわずか4年で完全に破綻したといえます。
今回の大混乱の原因の1つにこれらの会社が無理なレバレッジを積み重ねたことがあると思いますが、コックス委員長はこれには目をつぶり、空売り規制や、一定の格付けの義務付けの廃止検討など、パニックでアタマがグチャグチャになってるんじゃないかと思われます。クビにしたところで問題が何一つ片付くわけじゃありませんが、責任は免れないでしょう。
– 追記:9/28/2008 –
てなことを書いてから何日もしない間に、コックス御大は突然「CSEは廃止します。失敗でした」との声明を発表したようです。相変わらず、自分のお尻をカバーするのは早いです・・・

コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/705/trackback
2008/5/20 火曜日

まぁ、あんまり外国人がとやかく言う話題ではないのですが、最近の米国のメディア(や、そしてそれにつられた各国メディア)の「ヒラリーは何でおりない?」という、かなり変な報道を見て少し気になったので、ちょっとばかり・・・(ちなみに、私はオバマのファンでもヒラリーのファンでもありません。1外国人としてはマケインが良いと思ってますから。ただ、民主党の候補に関して言えば、当初少なからぬ好意を持っていたオバマ氏には、予備選を通じて完全に失望させられたのは確かです。)
まず、今までの獲得代議員数を見ると、オレゴン、ケンタッキー選の前でオバマ氏約1900人、クリントン氏約1720人(特別代議員の推定含む)、得票数で見ればオバマ氏約1600万票、クリントン氏1550万票(問題となっているミシガンとフロリダを除く。両州を加えるとクリントン氏がわずかにリード)。代議員数で決まる予備選で、確かにクリントン氏の勝ち目はフツーに考えればほぼありませんが、特別代議員のまだ200-300人が態度を表明しておらず(そして、特別代議員は態度を変えることもあり得るため)、テクニカルに可能性はゼロとは言えません。
しかも過去を見ると、例えば1980年にはテッド・ケネディ氏がカーターに獲得代議員数で700人以上の大差を付けられながら、最後の党大会でカーターに決戦を挑んでいますし、1984年のハート氏、1988年のジェシー・ジャクソン氏、あるいは古いところでも1976年のユーダル氏(ちなみにこの年は共和党のレーガン氏も予備選での劣勢に関わらず共和党大会まで戦っています)など、最後の最後まで戦っています。私は、ヒラリー氏ほど善戦している候補が途中で降りた過去の例は知りません。
また、1位候補の陣営が、2位候補に撤退の圧力をかけるのは珍しくないかもしれませんが、今回はメディアや民主党の指導部までが片方の候補(しかも過去の2位候補と比較しても戦いに残るのは不思議ではない候補)に強烈な圧力をかけているという点でかなり異様な気がします。なぜでしょうか。
1. メディア
メディアに関してはかなり「セクシズム(性差別)」と逆「レイシズム(人種差別)」を感じます。テッド・ケネディーやユーダル、ハート、ジャクソンに許されて、ヒラリーに許されない理由は他に何があるでしょうか?「オバマネーション」の住人の若い(あまり活字を読まない)お嬢さん以外の女性は、これに多かれ少なかれ合意する人が多いような気がします。
ヒラリーはもともと「野心的すぎる」とか「あまりに戦闘的だ」とかされてきましたが、おっさんの政治家でこれがけなし言葉になる人はいないでしょう。1976年の共和党予備選では、代議員数でも得票数でもフォードに劣るレーガンが共和党大会まで残って「仁義なき」激しい決戦を挑みましたが、今のヒラリーのような馬鹿げたな非難は浴びせかけられなかったでしょう(レーガンは80年に予備選、本選で勝利し大統領になっています)。善し悪しはともかく、米国の政治の「強さ」の理由の1つは、日本では想像もつかないほどの徹底的な競争と戦いにありますが、どうもヒラリーがその戦いに参加するのは気に入らない人が多いようです。
逆にオバマ氏への支持は、メディア・タイプの連中からすれば「私は人種差別主義者ではない」という免罪符のようなものです。「うるさい女」と「免罪符付きミスター・フィールグッド」では勝負にならない様な気がします。2人の最後の直接討論では、大手メディアとしては珍しくABCがオバマ氏に厳しい質問を投げかけましたが、その後の他のテレビ局、新聞のABCへの非難には少し異様なものを感じるほどでした。
2. 民主党
まず、ここでも一般代議員数で勝っている「初の黒人大統領になるかもしれない候補」を特別代議員の票でくつがえすのは極めてマズい、というブレーキがかかっているのは確かでしょう。しかし、より大きい要因は民主党の左傾化にあるように思えます。共和党がブッシュの下で相当右傾化したように、民主党もその間に相当左旋回しています。
クリントン前大統領は民主党を中道に路線転換し2期連続という近年の民主党としては目覚ましい勝利を挙げましたが、NAFTAの締結など民主党の伝統的な左派からするとあまり好ましい人物とは言えません(英労働党におけるブレアのポジショニングと少しだけ似た面もあるかもしれません)。ヒラリーはビル・クリントンよりもはるかに左ですが、それでもオバマ氏にははるかに及びません(日本ではオバマ氏が中道とかいう、米国でさえすでに見られない報道がいまだにあるようですが)。
オバマ氏は有力な左派の大物達からすれば「非常に愛いやつ」ですが、ヒラリーはこの連中からすればあまり好ましくないビルの片割れです。実際、オバマ氏もここらへんは心得ていて、講演ではNAFTAを徹底的にこきおろしたり、「クリントン、ブッシュのもとでアメリカ人はどんどん経済的に貧しくなった」(事実とは異なりますが)とか言って拍手喝采をあびています。勝負が全く分からない極めて早い時点でテッド・ケネディーやジョン・ケリーなどの伝統的な左派の大物の支持を得ている点でもこれが分かります。
ただし一般の米国人に目を向けると、5月14日時点のPew Researchでは、72%の回答者が「メディアはオバマ氏をまだ勝利者と呼ぶべきではない」と答えており、メディアや民主党指導部の見方とは相当離れている点も注目されます。まぁ、最終的にはオバマ氏が勝利するのでしょうが、私は今回断固戦うヒラリーを少し見直しました。「ヒラリーが○ン○マを半分オバマ氏にやれば、2人とも2つづつになる」とかいうきたないジョークを見ましたが、まぁ、大したものです。
ABCで厳しい質問を浴びせられて不満を述べるオバマ氏について、「熱いのがいやなら、キッチンから出て行け」とまで言ったヒラリーですから、最後の党大会のフロアーまで戦って欲しいものです。
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/310/trackback
2008/3/25 火曜日
相変わらず地獄の忙しさで、おまけに予備選のチェックなどしてると何も書くヒマがないのですが、前回に続いて予備選に関してちょっと。今回の予備選は、史上まれに見る額を各候補が集めて使いまくっていますが、お金では相変わらずパッとしないのがマケインお爺さんです。で、米国の金融界の連中の寄付がどうなっているかをさっとチェックしてみました(出所はCenter for Responsive Politics)。
もともとウォール街の連中は共和党支持が強いのですが、今回の共和党候補は金融界に割と(かなり)冷淡なマケインということで、寄付にもそれがストレートに出ています。今のところヒラリー・クリントンとバラク・オバマの民主党両候補が証券/投資業界の連中から仲良くそれぞれ約600万ドルずつもらっているようですが、それに対してマケインは250万ドル程度とウォール街の冷たさが表れています。
世論調査では、民主党両候補とマケインは概ね互角というところなので、これは「勝ち馬に乗る」とかそういうものではなく、基本的に言うことをあんまり聞いてくれそうにない御仁に出す金はないというところでしょうか。サブプライム騒ぎでも基本的に「徳政令」一本槍の民主党のお二方に対して、マケインは以前には「不法のあったものには処罰を」なんて言ってましたし、今日も「政府の仕事はシステミック・リスクに対処することであり、大銀行であれ、小さい借り手であれ、無責任な行動をとった者を救済して、それに報いるのは政府の仕事ではない」なんて言ってました。
ちなみに2000年の選挙では、証券/投資業界の連中の寄付はブッシュに400万ドル、ゴアに140万ドル、2004年はブッシュに880万ドル、ケリーは400万ドルちょっとというところでした。
ところで、マケインは軍事的にはタカ派なので、軍需産業の連中には良いかというとそうでもなくって、ヒラリーの22万ドルに対してマケインは18万ドル程度でここでも大負けです(オバマでも14万ドルを集めています)。
大体ステルス機への給油機に関する国防省と米国軍需産業の大手ボーイングの大型商談を、不正な取引の可能性があると言いがかりをつけてつぶした張本人がマケインで、このあおりを食ってボーイングのエグゼクティブが2人牢屋に放り込まれたという事件があったこともあり(しかもこの事件のおかげでボーイングの代りに受注したのがウヨクの米国人の大嫌いなフランス企業というオチまでついていました)、軍需産業もイマイチ応援したくないというところでしょうか(未だに議会ではボーイングに近い両党の議員がマケインを攻撃しています)。
他にも例えば、法曹/ロビイストの寄付ではヒラリーが1,400万ドル、オバマが1,100万ドルに対して、マケインは350万ドルと、やはりマケインにはお出してもしゃーないというところのようです。
マケイン陣営への財界からの主要アドバイザーはシスコ・システムズのジョン・チェンバース(!!)がいたりと結構渋いんですが(サイフも渋いと思いますが)、まぁ、これでマケインが勝ったら大したもんですねぇ。
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/307/trackback
2008/2/7 木曜日
ここ1カ月ほど地獄の忙しさで、長時間労働の後はへとへとになって最後に大統領予備選の状況をチェックして眠るという超不毛な生活をしていたおかげで、そこらへんの人よりも選挙状況には明るくなってしまいました。
と言っても、米国の内政にはほとんど無関係な一外国人でしかないので、何のコメントをする立場にもないのですが、ただ米国の大統領となると米国外にもそれなりの影響があるので、その面では興味の引かれるところです。
一外国人として次期米大統領に望むことといえば、1. 予見可能性(つまり、あまりブレないこと)、2. 内外の保護主義に対抗できること、3. 米国外のイベントに一貫した建設的な関与ができること、くらいなんですが、まぁこれが満たされるのは残っている候補の中ではマケインお爺さんくらいではないかと思われます。
金融関係や投資家の間ではロムニーの人気が高いように感じます(もちろん、投資家優遇税制を当て込んでのことです)。しかし、同氏はさすがに元ベインの親玉で、情報の非対称性を利用する手腕は今回の選挙戦を見ても大したものですが、これは世界市場で重要な地位を占める米国の大統領としてはあまり望ましい資質ではないような気がいたします。それに都合が悪くなるところころ変わるところは知事時代から変わっていないようですし。メインストリートの経営者にはそれほど人気がないように見えるのもこういうところがあるような気がします。有能なのは分かるのですが。
火曜日のところではマケインお爺さんが共和党ではアタマ2つくらい出た感じですが、共和党のハードコア(右翼)の方々はお爺さんを目のカタキにして嫌っているので今後も少し多難な感じもあります。まぁ、お爺さんの頑丈さは今までで十分にテスト済みですが、頑張って欲しいものです。
コメント (1)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/306/trackback
2007/9/30 日曜日
イランの次のリスクと言うと、米国の次期大統領が決まるまでに荒れるリスクが少しあるのが米中関係ではないでしょうか。イランの場合は(経済的には)エネルギー関連への投資というヘッジの手段があるのですが、米中関係の場合は誰も得るものが無いだけに少し厄介です。
中間選で民主党が大勝して以来、人民元の「操作」による「中国の不公正な」貿易慣行などという批判がかなり出てきており、民主党の大統領予備選の主要候補もそういうことを結構言っています(もちろん、現政権がきちんと対応していないからだという攻撃ですが)。
今後大統領選に向かって組合票などをまとめることも重要なテーマになってきますから、民主党の各候補もこの手の攻撃を強めることになる可能性があります。事実オバマもヒラリーも「人民元の人為的な操作」とそれに対する現政権の「無為無策」をかなり攻撃しています。
これは不幸なことですが、中道に近いヒラリーも例えば中米自由貿易協定に反対投票したことなどを宣伝材料に使っており、今後一段と保護主義的な空気となることも予想されます。もちろんこれは民主党の伝統的地盤の組合対策ですが、共和党が宗教右派を無視できないのと同様、民主党も組合左派を無視できないというわけでしょう。
それで、タイミング良く(悪く)中国製品の安全問題などが大きく取り上げられていますから、何か問題があれば一気に一部製品に対する輸入規制などの動きになりかねません。対中であまり弱腰に見られたくない共和党にそれを止める力はあまり期待できないかもしれません。
そして、もう1つ間が悪いことですが、最近中国政府は外資に依存した成長から、戦略的な産業で世界的な競争力をもった自国企業の育成を行うという方針に転換しています。
米国の実業界はかなり中国に直接投資をしてきており、それが保護主義に対する一定のブレーキになっていましたが、中国の方針転換により、一部業界ではかつての極端な外資優遇政策から一転して技術移転への強硬な要求が出てきたりしており、進出していた米国企業が地元の議員に陳情したとかしないとかいったウワサもちらほら飛んでいます。これも保護主義に対するブレーキを弱める要素になりかねません。まぁ他にダルフールとかミャンマーとか、イランとか米中の火種は山のようにあるわけですし・・・
これだけ強固に経済的につながっている米中が全面的に貿易戦争に突入という可能性は極めて低いですが、世界経済拡大のペースが弱まっている時に少しでも2大経済大国の貿易面での衝突・摩擦があれば相当なショックになるリスクもあります。
というわけで、今後特に大統領選が終わるまでは、米中関係に関して少し注意が必要であるような気がします。
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/300/trackback
2007/9/26 水曜日
今は経済に関しては、どこを見てもクレジット危機が実体経済におよぼす影響のリスクの話ばっかりなんですが、やはり少しは「実体」リスクにも目配りをということで少しだけ覚え書き(いや、アフマディネジャド大統領の顔がここんとこ新聞やテレビなんかで氾濫してるんで、ついアタマがそっち方向に向いただけなんですが)。
米経済の減速は、程度の差はあれ皆さん織り込み済のように見えますが、世界経済に一気に冷や水をかけるようなリスクに関してはあまり注意されていないように思われます。
やはり、リスクの1番目はイランではないでしょうか。イラクは米大統領選前の政治的プロパガンダがどうであれ、次期大統領がオバマかポールにでもならない限り現状と大した変化はなさそうな気がします。
イランが核開発を進めれば、どこかの時点で米軍が攻撃する可能性は高いと思われますが、米国の現政権が次期政権まで問題を持ち越すかどうか決断する時間はあまり残っていないのではないでしょうか。
どうも攻撃なんかあり得ないと思ってる人が結構多いようですが、イランの現政権の今までの行動から、核兵器を持てばイスラエルを攻撃する可能性は100に10とまでは行かなくても100に1くらいはある(と少なくともイスラエルや多くの国の政府は考える)のではないでしょうか。テルアビブあたりに攻撃でもあれば一巻の終わりです。イランはかなり科学技術も進んでいますし。
少なくとも国連ではイランに対するこれ以上の制裁が合意される可能性は極めて低いと思われますから、イランの現政権が続く限り、可能性の高いシナリオはブッシュ政権下での攻撃か、ブッシュ政権が次期政権に問題を持ち越し->外交解決進展無し->イランが核開発継続->米国の攻撃・・・という感じではないでしょうか。どっちもまったくロクでもありませんが。
また、この問題に関しては共和党、民主党を問わず、主要な次期大統領候補の面々、議会ともそれほど(強硬)姿勢に差があるようには思えません。それに最近フランスのサルコジ大統領も「イランが爆弾を持つか、イランに爆弾が落ちるかのどっちかだ」なんて言ってるように、イランが核開発を進めた場合、攻撃に対する障壁は(経済的影響を除けば)それ程高いものであるとも思えません。
で、最良のケースでもイランをめぐる緊張は当分続くと思われますが、これは原油、ひいてはエネルギー価格全般に上昇圧力がかかることを意味しますし(今もかかっています)、この上もし何か起こるとある程度の生産余力があるのはサウジくらいでしょうから、石油は一気に上昇、世界経済には大ショックという可能性もあり得ます。くわばらくわばら。
というわけで、アフマディネジャドさん(さん付けするなと言うに)には気を付けましょう。
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/299/trackback
2007/9/13 木曜日
首相の(このタイミングでの)辞任には驚きましたが、それ以上に驚いたのは辞任の理由として本人が挙げていることやら、周囲が挙げていることです。(特措法の行き詰まりがどうとか、健康がどうでこうでおかゆがどうだとか、本人のスキャンダルとか・・・)
どれ1つ見ても目を疑うようなもので、1つでも本当ならばこういうナイーブな方が行政府のリーダーに選ばれるというリーダーの選択のプロセス自体に大きい問題があるように感じます(他の事はともかく、首相に選ばれたこと自体は彼の責任ではないでしょうから)。また、少し以前のバンソーコー元農相みたいに日本語運用能力すら怪しい人が議員どころか閣僚にまで選ばれて、冗談みたいなハナシで政治状況が揺らぐとかいうのも見ていると、自民党も議員の候補者やリーダーのスクリーニングの方法をそろそろ少しマジメに考えた方が良いんではないかと言う気がします(民主党もそうかもしれませんが)。
例えば、英国なんかでは各政党の議員の候補者になること自体に何段階かハードルがあり結構(能力的に)難しくなっています。あの口八丁手八丁、舌先八寸で体力満々のブレアでさえ、議員になる前は労働党の候補になるのに相当の苦労をしています。ざっと見た感じ、英国下院の2世、3世議員の数は大体全体の5%未満程度だと思われますが、こういうスクリーニングがバンソーコー元農相みたいな方が出てくるリスク(や後々のコスト)を減らす上で少しは効いていると思われます。ちなみに英国は実権のない「貴族院」でさえ大半は「成り上がり者」の一代貴族で、今や世襲と言えるのは非常に少数派のように見えます。
また、非常に盛り上がりに欠ける総裁選ですが、これも派閥の票集めだけではなく個人的な資質に欠ける方はある程度ちゃんと落ちるようなプロセスにできないもんでしょうか。米国大統領候補選びの予備選のキャンペーンは長い上に大騒ぎで外国人から見てるとあまり効率的には見えませんが、あれだけ長期間メディアのさらし者にされ、皆からボコボコにされれば、少なくともタフではない人間や極端に無能な方が残れない可能性が高いのは確かです。(ついでに言うと、候補者の数が多いのでそこそこ色々な政策アイデアが出されるという点も悪くありません)
昔みたいに冷戦で外交の枠組みが決まっていて、真面目な国民が働いた(毎年増える)お上がりを分配するシステムを回すのがメインの仕事だった時は別に誰が何やってても大して問題ではなかったのかも分かりませんが、今のご時世では冗談みたいな短命内閣が右行ったり左行ったりというのはチトまずかろうという気もします。もう政策がどうとか言う以前のハナシなんですが。
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/297/trackback
2007/8/1 水曜日
今、米国の民主党関係者の間で良く読まれている本が、The Political Brain
というやつです。(ところでこの本は米国のアマゾンではとっくに売ってますが、日本ではまだ予約のようです。変ですねぇ)。
この本はビル・クリントンやハワード・ディーンが言及してから一気に話題になったようで、著者はエモリー大の心理学教授で、政治的な情報が脳内でどのように処理されているかを研究している脳神経学者のグループの研究主任でもあります。
本の内容は簡単に言うと、「そんなこと当たり前じゃ・・」というような事なんですが、この本では、有権者が投票する政治家を選ぶ際に使用されている脳ミソは、理性や論理を司る部分ではなくって、脳の中ではもっと古い感情を司る部分であることを研究から示して、選挙で勝つには、政策などで理性や「アタマ」に訴えるのではなく、EQを使ってエモーションに訴えなきゃだめよん、ってなことがいろんな選挙キャンペーンの実例を踏まえて書いてあります(ってラフ過ぎな要約ですが・・・)。
民主党きっての政策通だったクリントンがこんな本を同僚に勧めているのも可笑しいですし、「そうだったのか」なんて言ってる民主党の方々を見てると「おいおい大丈夫か」って気もしますが、前の副大統領が「The Assault on Reason
」なんてのを書いてるとこ見るとやっぱり彼らにはショックなのかもしれません。
ただ、こういうのは一種の才能のような気がするので、多分クリントンやオバマには全く読む必要のない本でしょうし、読む必要のある人が読んでも実際にはあまりどうにもならんような気もします(ヒラリーくらいならなんとかなるかもしれませんが)。例えば小泉前首相には読む必要はないでしょうが、安倍首相が読んでもおそらく全然駄目ではないかと思われます。
コメント (0)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/287/trackback
2007/7/15 日曜日
日本では参院選に向けたキャンペーンが始まりましたが、米国でも2008年の大統領選、その前の予備選に向けていつもの大統領選に比較しても早い時期からキャンペーンが始まっています。各候補の政策もいろいろ日本とは事情が違っていて面白いですが、今回は相続税に関してちょっと調べてみました。ところで、日本の選挙では税金の議論は概ねタブーみたいですが、あまりよろしくないですねぇ。
共和党:
ルディ・ジュリアーニ:相続税廃止。「貯蓄、成長に悪影響を与え、しかもアンフェアな税金」
ジョン・マケイン:「低税率、シンプル、予見可能で控えめに」
ミット・ロムニー:相続税廃止。「所得に課税、貯蓄に課税、相続に課税」はアンフェア。
民主党:
ヒラリー・クリントン:相続の99%を非課税に(相続減税)。
バラク・オバマ:農家と小規模事業を保護するために相続税を改革(相続減税)。
ジョン・エドワーズ:極めて高額の相続に対して相続税を維持して、ユニバーサル・ヘルスケアの財源に。
ビル・リチャードソン:最富裕750家族に限定して相続税を維持(相続減税)。
クリス・ダッド:所得の不平等を是正する手段として必要。
ジョー・バイデン:カップル当り700万ドル(約8億4,000万円)を超える部分に一律45%。
どうでしょうか。私は個人的には相続税にはあまり縁の無い層ですが、相続税は貯蓄と資本形成に悪影響を与える可能性があり、小規模事業や起業家といった経済の活力を生む層に大きい負担を強いるため単純に廃止する(または上のクリントンやリチャードソンみたいに課税対象を極めて限定的に絞り込む)のがベターだと思っています。こういうのは日本では「タブー」なんでしょうねぇ。
相続税の各国比較は難しいですが、下の図は日本の財務省による国際比較に関する資料から相続税負担率の国際比較に関する資料(クリックで拡大)です。

コメント (2)
TrackBack URI : http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/283/trackback