2008/7/26 土曜日

ポールソン、と言ってもPaulson & Co.ですが・・・

DealBook(NYT)で見たのですが、Paulson & Co.のジョン・ポールソン氏が今度はモーゲージで大打撃を被った銀行や金融機関に投資するファンドを立ち上げる準備をしているとBloombergが報じています。

Paulson & Co.のヘッジファンドは、昨年は金融市場の大混乱で30-40億ドル儲けたと言われていますが(昨年のトップ・パフォーマンスのヘッジファンドは多くが金融関連のショートかCDSで儲けた連中なので珍しくはないですが)、「一粒で二度美味しい」という言葉を思い起こさせますねぇ(ちょっとタイミングが早くて少し眉唾という感じもします。まぁ何事も準備は早いにこしたことはないですが)。

ポールソン氏は相当早くからモーゲージ市場の問題に目を付けてショートやCDS投資をしていたようですが、最後の最後まで信念をもって待ち続けて大儲けされたようです。今度も「細工は流々、仕上げを・・・」ということでしょうか。この混乱では往復ビンタどころかトリプル・ビンタを食らった人も多く見受けますので、コントラストが鮮やかなような・・・

ところで、Paulson & Co.のアドバイザリー・ボードにはグリーンスパンおじさんも名を連ねておられるようですが(他のヘッジファンドにはアドバイスしないという独占契約のようです)、これに関しても何となく「一粒で二度美味しい」という言葉が意味もなく浮かんできました・・・

2008/5/20 火曜日

米予備選:ヒラリーおろしの不思議・・・

まぁ、あんまり外国人がとやかく言う話題ではないのですが、最近の米国のメディア(や、そしてそれにつられた各国メディア)の「ヒラリーは何でおりない?」という、かなり変な報道を見て少し気になったので、ちょっとばかり・・・(ちなみに、私はオバマのファンでもヒラリーのファンでもありません。1外国人としてはマケインが良いと思ってますから。ただ、民主党の候補に関して言えば、当初少なからぬ好意を持っていたオバマ氏には、予備選を通じて完全に失望させられたのは確かです。)

まず、今までの獲得代議員数を見ると、オレゴン、ケンタッキー選の前でオバマ氏約1900人、クリントン氏約1720人(特別代議員の推定含む)、得票数で見ればオバマ氏約1600万票、クリントン氏1550万票(問題となっているミシガンとフロリダを除く。両州を加えるとクリントン氏がわずかにリード)。代議員数で決まる予備選で、確かにクリントン氏の勝ち目はフツーに考えればほぼありませんが、特別代議員のまだ200-300人が態度を表明しておらず(そして、特別代議員は態度を変えることもあり得るため)、テクニカルに可能性はゼロとは言えません。

しかも過去を見ると、例えば1980年にはテッド・ケネディ氏がカーターに獲得代議員数で700人以上の大差を付けられながら、最後の党大会でカーターに決戦を挑んでいますし、1984年のハート氏、1988年のジェシー・ジャクソン氏、あるいは古いところでも1976年のユーダル氏(ちなみにこの年は共和党のレーガン氏も予備選での劣勢に関わらず共和党大会まで戦っています)など、最後の最後まで戦っています。私は、ヒラリー氏ほど善戦している候補が途中で降りた過去の例は知りません。

また、1位候補の陣営が、2位候補に撤退の圧力をかけるのは珍しくないかもしれませんが、今回はメディアや民主党の指導部までが片方の候補(しかも過去の2位候補と比較しても戦いに残るのは不思議ではない候補)に強烈な圧力をかけているという点でかなり異様な気がします。なぜでしょうか。

1. メディア
メディアに関してはかなり「セクシズム(性差別)」と逆「レイシズム(人種差別)」を感じます。テッド・ケネディーやユーダル、ハート、ジャクソンに許されて、ヒラリーに許されない理由は他に何があるでしょうか?「オバマネーション」の住人の若い(あまり活字を読まない)お嬢さん以外の女性は、これに多かれ少なかれ合意する人が多いような気がします。

ヒラリーはもともと「野心的すぎる」とか「あまりに戦闘的だ」とかされてきましたが、おっさんの政治家でこれがけなし言葉になる人はいないでしょう。1976年の共和党予備選では、代議員数でも得票数でもフォードに劣るレーガンが共和党大会まで残って「仁義なき」激しい決戦を挑みましたが、今のヒラリーのような馬鹿げたな非難は浴びせかけられなかったでしょう(レーガンは80年に予備選、本選で勝利し大統領になっています)。善し悪しはともかく、米国の政治の「強さ」の理由の1つは、日本では想像もつかないほどの徹底的な競争と戦いにありますが、どうもヒラリーがその戦いに参加するのは気に入らない人が多いようです。

逆にオバマ氏への支持は、メディア・タイプの連中からすれば「私は人種差別主義者ではない」という免罪符のようなものです。「うるさい女」と「免罪符付きミスター・フィールグッド」では勝負にならない様な気がします。2人の最後の直接討論では、大手メディアとしては珍しくABCがオバマ氏に厳しい質問を投げかけましたが、その後の他のテレビ局、新聞のABCへの非難には少し異様なものを感じるほどでした。

2. 民主党
まず、ここでも一般代議員数で勝っている「初の黒人大統領になるかもしれない候補」を特別代議員の票でくつがえすのは極めてマズい、というブレーキがかかっているのは確かでしょう。しかし、より大きい要因は民主党の左傾化にあるように思えます。共和党がブッシュの下で相当右傾化したように、民主党もその間に相当左旋回しています。

クリントン前大統領は民主党を中道に路線転換し2期連続という近年の民主党としては目覚ましい勝利を挙げましたが、NAFTAの締結など民主党の伝統的な左派からするとあまり好ましい人物とは言えません(英労働党におけるブレアのポジショニングと少しだけ似た面もあるかもしれません)。ヒラリーはビル・クリントンよりもはるかに左ですが、それでもオバマ氏にははるかに及びません(日本ではオバマ氏が中道とかいう、米国でさえすでに見られない報道がいまだにあるようですが)。

オバマ氏は有力な左派の大物達からすれば「非常に愛いやつ」ですが、ヒラリーはこの連中からすればあまり好ましくないビルの片割れです。実際、オバマ氏もここらへんは心得ていて、講演ではNAFTAを徹底的にこきおろしたり、「クリントン、ブッシュのもとでアメリカ人はどんどん経済的に貧しくなった」(事実とは異なりますが)とか言って拍手喝采をあびています。勝負が全く分からない極めて早い時点でテッド・ケネディーやジョン・ケリーなどの伝統的な左派の大物の支持を得ている点でもこれが分かります。

ただし一般の米国人に目を向けると、5月14日時点のPew Researchでは、72%の回答者が「メディアはオバマ氏をまだ勝利者と呼ぶべきではない」と答えており、メディアや民主党指導部の見方とは相当離れている点も注目されます。まぁ、最終的にはオバマ氏が勝利するのでしょうが、私は今回断固戦うヒラリーを少し見直しました。「ヒラリーが○ン○マを半分オバマ氏にやれば、2人とも2つづつになる」とかいうきたないジョークを見ましたが、まぁ、大したものです。

ABCで厳しい質問を浴びせられて不満を述べるオバマ氏について、「熱いのがいやなら、キッチンから出て行け」とまで言ったヒラリーですから、最後の党大会のフロアーまで戦って欲しいものです。

2008/3/25 火曜日

米国予備選:民主党に流れるウォール街のお金:金欠マケイン

相変わらず地獄の忙しさで、おまけに予備選のチェックなどしてると何も書くヒマがないのですが、前回に続いて予備選に関してちょっと。今回の予備選は、史上まれに見る額を各候補が集めて使いまくっていますが、お金では相変わらずパッとしないのがマケインお爺さんです。で、米国の金融界の連中の寄付がどうなっているかをさっとチェックしてみました(出所はCenter for Responsive Politics)。

もともとウォール街の連中は共和党支持が強いのですが、今回の共和党候補は金融界に割と(かなり)冷淡なマケインということで、寄付にもそれがストレートに出ています。今のところヒラリー・クリントンとバラク・オバマの民主党両候補が証券/投資業界の連中から仲良くそれぞれ約600万ドルずつもらっているようですが、それに対してマケインは250万ドル程度とウォール街の冷たさが表れています。

世論調査では、民主党両候補とマケインは概ね互角というところなので、これは「勝ち馬に乗る」とかそういうものではなく、基本的に言うことをあんまり聞いてくれそうにない御仁に出す金はないというところでしょうか。サブプライム騒ぎでも基本的に「徳政令」一本槍の民主党のお二方に対して、マケインは以前には「不法のあったものには処罰を」なんて言ってましたし、今日も「政府の仕事はシステミック・リスクに対処することであり、大銀行であれ、小さい借り手であれ、無責任な行動をとった者を救済して、それに報いるのは政府の仕事ではない」なんて言ってました。

ちなみに2000年の選挙では、証券/投資業界の連中の寄付はブッシュに400万ドル、ゴアに140万ドル、2004年はブッシュに880万ドル、ケリーは400万ドルちょっとというところでした。

ところで、マケインは軍事的にはタカ派なので、軍需産業の連中には良いかというとそうでもなくって、ヒラリーの22万ドルに対してマケインは18万ドル程度でここでも大負けです(オバマでも14万ドルを集めています)。

大体ステルス機への給油機に関する国防省と米国軍需産業の大手ボーイングの大型商談を、不正な取引の可能性があると言いがかりをつけてつぶした張本人がマケインで、このあおりを食ってボーイングのエグゼクティブが2人牢屋に放り込まれたという事件があったこともあり(しかもこの事件のおかげでボーイングの代りに受注したのがウヨクの米国人の大嫌いなフランス企業というオチまでついていました)、軍需産業もイマイチ応援したくないというところでしょうか(未だに議会ではボーイングに近い両党の議員がマケインを攻撃しています)。

他にも例えば、法曹/ロビイストの寄付ではヒラリーが1,400万ドル、オバマが1,100万ドルに対して、マケインは350万ドルと、やはりマケインにはお出してもしゃーないというところのようです。

マケイン陣営への財界からの主要アドバイザーはシスコ・システムズのジョン・チェンバース(!!)がいたりと結構渋いんですが(サイフも渋いと思いますが)、まぁ、これでマケインが勝ったら大したもんですねぇ。

2008/2/7 木曜日

選挙中盤・・・

ここ1カ月ほど地獄の忙しさで、長時間労働の後はへとへとになって最後に大統領予備選の状況をチェックして眠るという超不毛な生活をしていたおかげで、そこらへんの人よりも選挙状況には明るくなってしまいました。

と言っても、米国の内政にはほとんど無関係な一外国人でしかないので、何のコメントをする立場にもないのですが、ただ米国の大統領となると米国外にもそれなりの影響があるので、その面では興味の引かれるところです。

一外国人として次期米大統領に望むことといえば、1. 予見可能性(つまり、あまりブレないこと)、2. 内外の保護主義に対抗できること、3. 米国外のイベントに一貫した建設的な関与ができること、くらいなんですが、まぁこれが満たされるのは残っている候補の中ではマケインお爺さんくらいではないかと思われます。

金融関係や投資家の間ではロムニーの人気が高いように感じます(もちろん、投資家優遇税制を当て込んでのことです)。しかし、同氏はさすがに元ベインの親玉で、情報の非対称性を利用する手腕は今回の選挙戦を見ても大したものですが、これは世界市場で重要な地位を占める米国の大統領としてはあまり望ましい資質ではないような気がいたします。それに都合が悪くなるところころ変わるところは知事時代から変わっていないようですし。メインストリートの経営者にはそれほど人気がないように見えるのもこういうところがあるような気がします。有能なのは分かるのですが。

火曜日のところではマケインお爺さんが共和党ではアタマ2つくらい出た感じですが、共和党のハードコア(右翼)の方々はお爺さんを目のカタキにして嫌っているので今後も少し多難な感じもあります。まぁ、お爺さんの頑丈さは今までで十分にテスト済みですが、頑張って欲しいものです。

2007/11/26 月曜日

「暗黒の金曜日セールス」は好調のようですが・・・

毎年この時期になるともうヘロヘロで、ロープにでもつかまるか、タオルでも投げ込んで欲しい気分ですが、感謝祭の翌日は「Black Friday」と呼ばれており全米主要小売店が年間一番のバーゲン・セールを行う日です。またクリスマス商戦の「キックオフ」とも言え、消費の動きに注目が集まる日でもあります。

Bloombergによると、Black Fridayの売上は全米で前年比8.3%と予想を大きく上回る好調だったようです(週末の2日間でも7.2%の上昇のようです)。ニュースを色々あさってみると、中身は一概に明るいとは言えないようですが(例えば1人当たりの支出は3%以上減少しているなど)、株式市場にとっては年末のプレゼントになるかもしれません。

もちろん、「これで心配は吹きとんだ」などと言える状態には程遠いわけで、このニュースで皆さんが少し浮かれ気分になっているようであれば、ポートフォリオの組み替えのチャンスかもしれません。

先週の第3四半期の業績発表がほぼ終わった時点で、S&P500の企業利益は前年比8%以上の落ち込みで、米国の景気の減速はかなりはっきりしています。

これ程のマイナスの時は通常ですと数四半期後には”R”の字がちらつくのですが、まぁ、金融と一般消費財という「サブプライム銘柄」が両者ともマイナス30%を上回る落ち込みで足を引っ張っているわけで、ダイハードな強気派は金融だけ除いた数字を計算して「米国は大丈夫」なんて言ってる人もいます。しかし、これは何となくハンバーガーからバーガー部分を除いてカロリー計算をして「ハンバーガーは健康食品」なんて言ってるような感じもいたします。

一方で、資本財、ハイテクは2桁成長ですが、これは両者とも基本的にグローバル経済銘柄で、世界経済が相変わらず底堅いことを示していると言えます。基本的に米国は減速、グローバルはそこそこ強いというシナリオは変えていない人が大半のようですが、米国がどれだけ弱くて、世界経済がどれだけ底堅いかはこれからのお楽しみ(楽しくないかもしれませんが)というところでしょう。