2009/7/20 月曜日

「人間を食う軍事ロボット」で大騒ぎ

先週は、ロボット関係の「爆弾ニュース」で騒ぎが起こって、メールボックスが破裂しそうになるということがありました。

問題の発端になったのは、いつもお騒がせのFoxニュースで(記事はもう差し替えられていますが)、「次世代の軍事ロボットは死体がエネルギー源になるかも」というトンデモ・ニュースでした。これをCNETやらの他のテクノロジー関連のニュースサイトがカバーして大騒ぎになりました(例えばWiredにはこんな記事がのってます:リンク )。

これは、もともとPopular Scienceが、Robot Technology Inc.Cyclone Power TechnologyがDARPA関連で開発の発表を行ったEATRという軍事ロボット(いや、確かに「イーター(食う奴)」という感じで薄気味の悪いネーミングですが、Energetically Autonomous Tactical Robot「エネルギー的に自律的な戦術ロボット」の略です)のハナシを取り上げる際に、P. Singerの新しい本の「Wired for War」から「草、朽ち木、家具、死体などの有機燃料源」というフレーズを引用したのが悪くて、その話がアタマの線のもともと大混線しているメインストリームのメディアの記者の脳内で結合してしまったようです。

たまらなかったのが、EATRを開発した両社で、とうとう木曜日に「EATRは厳格なベジタリアンなので、心配はありません」という間の抜けたプレスリリース(PDF)を行う羽目になりました。

市場関係のニュースでも最近、ゴールドマンサックスの取引用のコンピューター・プログラムが盗まれたニュースやダークプールでの取引が増えている件などで、ことさら「テクノロジーの脅威・悪用」みたいなことを囃し立てる質の低いニュースが増えているのですが(いわゆる「HFT」などのコンピューター・ドレーディングと、ダークプールなどのハナシはまったく別の次元の話です。後者には潜在的にマズいことがあり得ます)、一般的にテクノロジー関係のトピックを咀嚼する能力が落ちている兆しであるとすると、少し懸念される状況であるような気がします。

2009/6/22 月曜日

雑談:イラン選挙報道 – 陰謀なのか記者の無能なのか?

イランの選挙(後)報道はますますヒステリー状態で、偏向の度合いも極めて激しくなっているように思えます。全然アフマディネジャドには好意的ではない私が、この件に関する話では、なぜか逆の立場に立たされていたりして苦笑せざるを得ません。

米国では報道されるデモの光景も反対派のものばかりで、政権支持派のデモはほとんど無視されています。あまりイランの現政権には好意的ではない米国在住のイラン人の知り合いにも「これはイランを攻撃しやすくするための大規模なプロパガンダではないか」と心配している向きがいます。一つ例を出すと、以下は見て分かるようにアフマディネジャド支持の集会ですが、

同日の集会が、BBCニュースでは以下のようになり、

ご丁寧にも「ムサビ支持者(反対派)は再び抗議の禁止を無視した」というキャプションが写真に付いています。この例では、BBCは読者からの指摘を受けて、「不注意でした」との「お詫び」を掲載していますが、一体どんな「不注意」なんでしょうか? BBCでこれですから、この他にも指摘を受けないまま「正しい」ものとして流されている情報が山のようにあると思われます(BBC支局長には当局から退去命令が出たようですが、これでまた大騒ぎになるんでしょうねぇ)。

昔CIAにモサデクを倒された経験を持つイラン人が陰謀を疑うのも無理はないような気もしますが、このようなことがなぜ起こるのでしょうか。

1. 欧米のメディアの中東拠点が、コスト削減で無くなったり弱体化している。おそらくテヘランにいる記者の多数は「サラーム」程度のペルシア語しかできないんじゃないでしょうか。もともと改革派の多い大都市のテヘランで、英語での取材をすればニュースの結果は見えているような気がします(しかし、イラン人の反対派が英語のプラカード持って一体誰にデモしてるんでしょうねぇ)。

2.「民主主義バイアス」:「非民主的な政権と、それへの反対派だったら、反対派が正しいに決まっている」。底流には「選挙は民主主義的なもので、反民主主義的な奴が選ばれるはずがない」という欧米人の「信念」みたいなものがあるような気がします。例えばパレスチナに関しても、多くの米国人が「脅しなどのないフェアな選挙ならハマスが勝つわけがない」なんて言ってます。

3. 「売れる記事へのプレッシャー」:国中に2みたいなバイアスのあるところで、「いやー、アメリカ人が思ってるよりアフマディネジャドへの支持は強いみたいよ」なんて言ったら石でも投げられて、悪くしたらクビになりかねません。ニュースもショーバイですから、消費者の嗜好に合わせる必要があるのでしょう。

しかし、こういうことで外交にも影響を与える世論が形成されるとしたら少しばかりおそろしいことです。

アメリカや日本にいると良く分かりませんが、アフマディネジャドというのは「(欧米人から見て)無知で貧しい」大衆に相当の人気があります。インドネシアにアフマディネジャドが訪問した際にも、外国首脳の訪問とは思えないような熱狂的な歓迎ぶりで、大変な大騒ぎだったようです。

ムサビでもアフマディネジャドでも核開発は進んでいるでしょうから、いずれにせよ制裁強化やイスラエル/米国による攻撃の可能性はあるわけですが、これで確かに世論的には攻撃はしやすくなったかもしれません。キッシンジャーなどもテレビで外からの圧力による体制転覆を説いています(懲りない人達です)。

(ついでに言うと、いろいろ話題になっているTwitterでのイラン情勢に関するTweetに関しては、その出所を追跡するとかなり面白いことが分かるのではないかと思います)

(追記:ところで私は人間の自由を奉じているので、イランの現政権は全然支持しておりません。そこらへん誤解なきようお願いします・・・)

2009/6/17 水曜日

雑談:イランの選挙:悪化するアメリカ人のビョーキ

米国人の「米国中心主義(というか、日本人と同じで外国のことをほとんど知らんだけだったりしますが)」には時々呆れさせられますが、どうも最近「一国主義」のブッシュ時代よりもその傾向が一層激しいのではないかという気がすることがあります。

レバノンでの選挙では、選挙結果が「オバマ大統領のカイロ演説のおかげだ」とマジで信じてる方々が結構いたりして脳ミソが溶けそうでしたが、今度はマスメディア一丸となって「イランの選挙は不正だ」とか「米政府は民主派を見殺しにするな」とか、テヘランでの騒ぎをほとんど天安門事件のように騒ぎ立てています。今までの「対話路線はサヨク、強硬路線はウヨク」というのもイランに関しては少し怪しくなってきたような感さえあります。

イランの選挙で不正があったかどうか私には分かりませんが、テヘランのカフェでインテリゲンチャや若者相手の取材ばかりしているマスメディアの連中もそれは同じではないかと思われます。

そこそこ信頼性のあるように思えるNPOのTerror Free Tomorrowの選挙前の世論調査では、大体今回の得票率と近い結果が出ていますし、選挙前のテレビ討論でも、アフマディネジャド氏がポピュリストの面目躍如で、ムサビ氏を圧倒していたように思います。

それに今回のアフマディネジャド氏の得票率は、前回2005年のラフサンジャニ氏相手の決選投票での得票率と大体同じですから、得票率(と自分たちの趣味)だけで「不正だ」と騒ぎ立てる米国のメディアと若い方々には極めて危険なものを感じます。

米国との摩擦や核武装問題、そして民主主義以外にも、イラン人には心配すべき内政問題や経済問題が数多くあって、それにより投票の意思決定をする可能性があるということがどうやら多くのアメリカ人には想像できないようです。核武装したイランが危険だということと、アフマディネジャド氏が国民の支持を受けているということが十分に両立し得るということも、アタマが拒否しているようです。

ちなみに、アフマディネジャド氏は今回の選挙戦で”MA MITAVANIM”(Yes We Can)と銘打ったプロモーション・ビデオを使ったり、自分こそ、今までムサビみたいな革命体制のエリート連中がアンフェアに築いてきた富を貧しい層に再分配する「改革派」だ、というようなポジショニングを取ったりして、実際にはイランの選挙での「オバマ」は、ムサビ氏ではなくアフマディネジャド氏だったのではないかという皮肉な見方もできるのですが・・・

ただ、今回の騒ぎは、米国と付き合わざるを得ない国にとっては、米国世論の操作の可能性という面で1つのヒントを与えるものではあるかと思います。

2009/5/21 木曜日

雑談:次期駐日大使はトーシロ?

米国では全然ニュースが流れてませんが、東京発のニュースで次期駐日大使としてウワサされているのは、オバマ大統領の選挙戦での金集めでベスト30の「バンドラー」(大口資金調達人)に入る方だそうです(4年前はジョン・ケリーのためにも結構な大金を集めたようですが)。

知り合い(キョーワ党支持者。日本人に気を使って):「いくら何でも重要な友好国に金集めの論功行賞でトーシロを送り込むなんてトンでもないハナシだよな。」

私:「金集めのプロだろ。どーせ日本で公共投資の資金調達でもさせんじゃねーの。ぴったりかもよ。」

周り:(笑い)

いや、分かりませんが・・・

2009/4/30 木曜日

よもやま:豚インフルエンザ

ここ数日、豚インフルエンザが話題に上がることが多くなってきました。

火曜日にはタイムズ・スクエアのアーンスト・アンド・ヤングさんの本社ビルのスタッフが豚インフルエンザだったと判明しフロアの一部が閉鎖されたと、同社の広報担当からのコメント入りで報じられていましたが、数時間後には同じ広報担当がそれを撤回するなど、この手の情報の乱れは今後多くなりそうな気がします。

今の時点で少し気になった点をいくつか。

CDC:米国の疾病管理予防センター(CDC)は早期から積極的に動いており、すでにタミフルとリレンザの備蓄の4分の1を放出したようです。

CDCはメキシコでの騒ぎが大きくなる以前の4月13日時点で新型インフルエンザの発生を把握していたようです。4月21日の週刊疾病率死亡率報告(MMWR)では4月13日と17日に報告された豚インフルエンザ2例について書かれていますが、MMWRでこれほど早い時点の情報が出されるのはかなり異例だということで、公衆衛生の専門家は「一体なにが起こっているのか」と注目していたようです。

1918年?:破滅的な流行だった1918年の時は、今回の豚インフルエンザと同じ「H1N1」型だったそうです。1918年以降の1957年頃までは(マイルドな)H1N1が季節的流行の主流だったそうで、1957年以前に生まれた人にはひょっとすると(交差反応により)少しは耐性があるかもという??なウワサもあります(よしんば交差反応があったとしても、フルの免疫がそんなに長く持つのか?という真っ当な疑問はありますが)。

いずれにせよ、今回のウィルスは「新型」(おそらくほとんどの人間に免疫がないという意味で)で、症状的にはフツーの季節的流行と似ていて、しかし免疫がないゆえに大々的に流行する潜在性があるとしか今の段階では言えないようです。致命率や流行曲線を判断するには、まだデータがあまりにも限られているとのことです。

インフルエンザはかなり季節的な病気で、これから夏になるため、季節的にラッキーだったという人もいます。しかし、1918年の流行に関する研究では、ニューヨークで春先に一度軽い流行があった後、夏の間には息を潜めていたものの、8月にドカンと再来し破滅的な被害をもたらしたという研究もあるので、その点ではあまり安心できません。

市場:市場は今のところまったく気にしていないようですが、慎重な連中は少し警戒しています。ここでラッキーだったのは、昨年以来の大混乱で、慎重な方々はすでにかなりディフェンシブなスタンスにあるということです(ここ少しの間は大分緩んできていますが)。

かなり以前に、鳥インフルエンザの市場に対する影響に関する投資家へのガイドについて書いたことがありますが、基本的には他の危機への対処と大して変わらないと思います。まぁ、マスク屋さんが儲かるに違いないとか騒いでいる人もちらほらいますが。