2005/10/2 日曜日

米国の双子の赤字

国際経済メールマガジン9/30配信分

現時点で、世界経済で一番大きい問題は何かとケーザイ関連の人に尋ねると、米国の双子の赤字ってのは、おそらくベスト3には入るんじゃないかと思いますが、最近の米国のトレンド(?)でこれもケーザイというよりはすごく政治的な話題になっています。つまりブッシュがキライかどうかで、そうそうたる専門家の見方もまさに180度違うというワケで、ケーザイガクの人ってやっぱりいい加減?

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□ 米国の大赤字

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赤字といってもいろいろありますが、米国の赤字で現在まず大問題と言われているのは経常赤字です。これはある国が輸出するモノやサービスと輸入するモノやサービスの差ですが、赤字ってことは単純な見方をすれば、輸出して稼ぐ以上に輸入して使ってるってことになります。米国の巨大な経常赤字はここ数十年続いているんで別に新しい話でもなんでもないんですが、最近騒がれてるのは、今年第2四半期の時点で過去12ヶ月の赤字が約7500億ドルと、その巨大さがますます半端じゃなくなってきているからです。まぁ、80兆円くらいになりますが、韓国の国内総生産や日本の国家予算くらいになりますねぇ。

で、これは貿易において米国の製品・サービスに対する需要(つまりドルへの需要)より米国以外の国の製品・サービスに対する需要(つまりEUやら円やらへの需要)が高いってことですから、極めて単純にいうとドルは下落し、他の通貨は上昇するはずということになります。米国の経常赤字の規模は並ではないんで本当であればそのうちにドルの大暴落が起こって、ドルを基軸通貨としている国際経済は大混乱、米国人もドルの価値が下がって今までみたいに安価な外国製品を買って豊かな生活というワケにいかなくなり、大変なビンボー生活に・・・・ というのが「大問題」の中身なんですが、みんなが一致しているのは今の状態は無限に持続可能ではない、という点だけで問題の切迫度や、原因(したがって対処方法)に関しては、最初に書いたように政治的な色によって大分、というよりは全く変わってきます。

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□ 何でもブッシュが悪い

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さて、日本で最もよく紹介されているのが、クルーグマン御大なんかでおなじみの「ブッシュ政権主犯、アジア人共犯説」です。ちょっと単純な式をマクロケーザイの教科書から出すと、

実物投資=民間貯蓄-政府財政赤字+経常赤字

という風になるのですが(何でこうなるかは教科書でも見てちょ)、ここで実物投資(つまり工場建てたりってやつね)をある程度一定と仮定すると、経常赤字は民間の貯蓄と政府の財政赤字(つまり政府の借金)で決まるように見えます(この「見える」ってとこが重要です)。上の式で財政赤字を増やして、民間貯蓄と実物投資が余り変わらないと仮定すると経常赤字が増えるでしょ。それでこの財政赤字と経常赤字の関係をもってこの2つを「双子の赤字」というわけです。

そこで、現政権の経済政策(なんてもんがあるとして)に批判的なリベラル系学者の主張は極端にデフォルメすると、「ブッシュのアホが政府の借金垂れ流してテロ対策なんかにお金ばらまいているおかげで、経常赤字が増えて米国人は大変なリスクに直面している」となります。

政府は国債を発行して借金するわけですが、普通だとこんだけ借金してる政府の国債の買い手はなかなか無いですから、国債売るためには金利を上げなくてはならず、金利が上がると投資が抑制され景気は後退、低金利での借金をベースにした住宅バブルも破裂・・・となるので、借金には限界があるはずですが、実際にはそうはならず、ブッシュは際限なく借金をしています。ここで「ブッシュの共犯者」が登場します。

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□ 何でもブッシュが悪い(アジアの黄色い人たちもちょっとね)

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つまり、対ドルで自国の通貨の為替レートが上昇して、対米輸出に悪影響が出るのを嫌がっているアジアの政府(今は主に中国が槍玉に上がってます)が米国の国債買いという形でドルを買い支えているおかげで、ブッシュも安心して金利上昇の心配なしに借金に励めるというわけです。

もちろん為替レートを操作して輸出を高めるというのは市場経済からいうと汚い手なんで、この主張の便利なところは、経常赤字も住宅バブルが続くことも米国の問題は全部アホのブッシュと汚いアジア人の責任にできることです。

ちなみに上の式を見るとわかりますが、このリクツでいくと、民間貯蓄の低下も経常赤字増大の原因になるわけですから、この主張の最後には「米国人が貯金せずにお金を使いすぎてるのも悪いんだけど」という「良心的」な自己批判も入ることがあります。また、米国外でとにかく米国が気に入らん人にとってはこの最後の点が最重要になります。つまり「アホの米国人が稼ぐ以上に使いまくっているせいで、世界経済は大変なリスクに直面している」というわけです。

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□ 米国は全然悪くない?

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もちろん物事には常に別の面があり、これはケーザイでも同じことです。現政権側、あるいはブッシュがそんなにキライじゃない学者が見る世界は全く異なっています。代表者は次期FRB議長の呼び声も高いバーナンキ御大です。

経常赤字は裏を返すと資本収支の黒字(外国からの資本流入つまり外国人のドル建て資産の増加)なんですが(厳密なとこはキョーカ書でも見てください)、それで上の式は、

実物投資=民間貯蓄-政府財政赤字+経常赤字

    =民間貯蓄-政府財政赤字+外国人の資本流入

となります。ここでバーナンキ御大の説明によると、経常赤字の最大の原因は米国人の過剰消費でもアホのブッシュの財政赤字でもなく、外国人の資本の米国への過剰流入ということになります。つまり、米国外では、特にアジアでは過剰貯蓄であり、その余り余ったお金を外国人が成長率が高く資本リターンの高い米国で運用しようとドル建て資産を増加させているのが米国の経常赤字として現れているという主張です。

確かに、米国企業の資本収益性、成長率など非常に高く、それが外国人の資金を米国に引き寄せているのも否定はできません。これまた優秀な先生のマンキュー御大なんかも「移民が米国を目指すのと同様、外国人の資金も米国を目指している」となります。

さて、それではここでアホのブッシュが正しいことに目覚めて財政赤字を縮小するとどうなるでしょう。上の場合と同様に実物投資が大体一定と仮定すると、外国人の資本流入はそのまま続くワケですから、財政赤字が減った分は民間貯蓄がそれに見合った分減らなくてはなりません。民間貯蓄が減るためには金利が下がる必要があります。というワケでバーナンキ御大の説をとると、ブッシュが財政赤字を減らしても経常赤字はそのままで、しかも民間貯蓄は減少し、つまり米国人の消費がますます増え、おまけに金利が下がって余計に住宅バブルが悪化するということになります。

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□ ちょっと考えてみよう

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説明としては、クルーグマンなんかの言っているのとバーナンキの言っているのは全く逆になるんですが、個人的にはこれはバーナンキの方に少しだけ説得力があると思います(実態は両者のどっか真ん中でしょうが。普通はケーザイの式で変数を恣意的に固定して自分の都合の良い結果を導くのは「Single Variable Economics」ってバカにされる典型です)。例えば、米国と米国以外では分かりにくいですが、分かりやすくするために、日本の東京と東京以外を考えてみましょう。思考実験として、都道府県が全て国だとしてみましょう。

東京はおそらく、米国人も目をむく経常赤字国であるのは間違いありません。トヨタの工場もないし、食糧もないし、エネルギーも無く全て輸入ですからね。あるのは企業の本社ですが、これは米国の多国籍企業の本社が米国にあるのと同じです。それで、石原慎太郎が嫌いな向きは、「石原が軍隊ごっこするために都財政を顧みずに赤字を垂れ流すせいだ」と言うでしょうし、東京キライの地方の人たちは、「東京の連中は稼ぐ以上に、消費し過ぎてるからこんなことになる」と言うんじゃないかしらん。しかし、これはあまりピンとこないんではないでしょうか?

で、バーナンキ流に言えば「地方は成長率が低く、資金を運用する機会があまりないために、地方の資金が成長率が高く収益性の高い東京に流入してくるのが東京の経常赤字の原因だ」となります。分かりやすいでしょ。みんな認めたくはないので誰も言いませんが、米国と米国外の関係はこれに近い面が少し(あくまで少しですが)あります。国際経済においては米国が群を抜く都会で、あとは田舎ってこと。いつまでそうなのかは分かりませんけどね。

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□ グリーンスパンが悪い

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ただ、バーナンキの説明でひとつ問題があるのは「米国外の過剰貯蓄」です。世界経済はかなり高い成長を示していますから、これは「過剰貯蓄」と矛盾します。つまり、米国に流入しているのは「貯金してためたお金」ではなく、「金融がゆるくなって(つまり低金利で)、みんなが借金した資金が米国に流入してるんじゃないか」という疑いが濃厚です。

それで、世界中で金融が緩くなっているのは、もとを正せば米国の連銀議長のグリーンスパンが米国経済の減速を食い止めようと長期間に渡って低金利政策をしたことに大きな原因があります。グリーンスパンのかつての部下で、次期連銀議長の声もあるバーナンキには「米国の低金利政策が原因で世界中で金余りとなり、その資金が米国に流入して経常赤字になっている」とは言えなかったんでしょうねぇ・・・

2005/3/11 金曜日

日本人はアメ車か?

(国際経済に強くなろう第41号)3月10日配布分:「先進国で広がる格差」より。

第2次大戦終了から1980年代までが先進国間の所得ギャップが縮小する時代だったとすると、1990年代以降は先進国間の所得ギャップが開いていっている時代だ。これはとうとうOECDのリサーチのトピックとなっているが、残念なことに日本はちょっと遅れ気味のようね。

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□ 広がる対米ギャップ

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現時点で米国の1人当たりの所得(購買力平価ベース)を100とすると、欧州、日本の1人当たり所得は大体70-75の間に入っている。日本はかつては80を超えていたこともあるが、90年代以来ぱっとせず対米ギャップは広がる一方だ。

欧州でも国による差は結構あり、英国などは対米ギャップを狭めている傾向にあるが、フランス、ドイツなどでは日本と同様ギャップが広がっており欧州全体で見ると日本と同様やっぱり米国と差が開きつつある(ついでにいうと米国よりも所得が高くしかも米国をさらに引き離しつつある国がOECDで1つだけある-ノルウェイだ)。

下の図はOECDのEconomic Reformからパクってきた図だが(クリックすると見やすいです)、縦軸は米国と比較した場合の相対成長率でマイナスの領域(つまり図の下の方)にある国は、1人当たり所得で米国に遅れつつある国で、逆に上の方にある国は米国に追いつきつつある国だ。また横軸は相対的な1人当たり所得で左の方の国ほど所得が低く、右の方ほど高い。米国より豊かでしかも米国を引き離しつつあるノルウェイ(NOR)、米国と同等の所得だが成長力が高いアイルランド(IRL)以外はパッとしないが、中でも日本(JPN)、ドイツ(DEU)、イタリア(ITA)の「三国同盟」はとくにパッとしないねぇ。

Oecdgrowth-1

さて、毎年少しずつでも長年となると差は大きいものとなる。現在の米国人の中流階級の生活水準は100年前の米国の相当な金持ちと比較しても格段に恵まれているが、これはたとえ数パーセントずつの成長でも長期間では大きな差になることによる。たとえば1年間に5%ずつ所得が伸びると大体14-15年で所得は倍になる勘定だ。50年間では10倍以上、100年では130倍となる。

これはどーゆーことかと言うと、日本はもうそんなに成長しなくても良いという人もいるけど、日本が今の生活水準からそう変わらなければ、100年後には間違いなく世界でみれば貧乏国の仲間入りになるってことだ。ん?100年後の日本人なんて知った事じゃないって?まぁそーゆーのも分かるけどね。

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□ 欧州人は働き足りない

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OECDは米国とのギャップの内容を「労働力の活用度」と「労働力の生産性」に分けて大まかな分析をしている。活用度ってのは利用可能な労働力をどれだけ活用しているかってもので、生産性は労働の付加価値の高さだ。

例えば、人口10人のある国では働いている人間が1人、その1人が稼ぐ所得を100万円とすると、人口1人当たり所得は10万円となる。さて1人当たりの所得を増やすには、1)生産性を上げる:この場合だと稼いでる人の所得が例えば120万になれば、人口1人当たり12万円となる。2)働く人数を増やす。あるいは働く時間を増やす。さっきの人が残業でもするか、他の人も働くってことだ。

逆の例で言うと所得が下がるってのは、生産性が落ちてるか、労働活用度が落ちてるってことなんだけど、米国との相対的なギャップで言うと、米国と他の国の差が開いてるってことは米国と比較して、1)生産性が落ちてる。または、2)労働活用度、要は全体としてみたときの労働量が落ちてる。ってことになる。

OECDの分析によると、欧州では生産性は米国と比較しても結構いい線いってるらしい。とすると、要するに働いてる人/時間が少ないってことになるが、この理由としてOECDは労働市場の硬直性を指摘している。つまり、解雇や給料を下げるのが難しいから雇用主が雇用を躊躇するとかね。あとは年金が結構いいからある程度年とると働くより年金もらう方を選択しちゃうとか。

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□ 日本はアメ車

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「そーか。日本でもニートなんて働いてない若いの多いからなぁ」なんて思った人がいるとすると残念ながら大間違いだ。日本の場合は欧州と逆で、労働力活用度では米国より増加率が高い。したがってそれをちゃらにするぐらいのスピードで生産性で差をつけられてるってことだ。これって深刻でしょ。日本の車は燃費がいいけど、こと労働に関して言えば日本人は逆にアメ車並みってことだからねぇ。

まぁ、OECDが出してるデータなんかはもう聞き飽きたようなものだ。日本の市場は製品市場(まぁいやぁモノの世界)では相当競争的だが、サービス、農業では規制とか非競争的な補助金が多くて新規参入、競争が阻害されてるとか、GDP比で公共投資が多いとかね(これも非競争的なとこに資源が投じられてるってことね:GDP比で言えば「左翼」労働党の英国に比べて3倍近い)。

くまは結構いろんな国で働いたんだけど、日本人、特に現場の連中はそんなにさぼってるワケじゃないし(まぁ無駄な仕事多いんだけどね)、質だってそんなに悪くない。なあんで一生懸命働いてる連中が結構ずぼらしてる連中より貧しくなっちゃうのかね。これはね、別に「有効需要が足りないせい(お金使いたくてうずうずしてる日本国政府御用達のケーザイ学者の決まり文句だ)」じゃないと思うよ。

2005/2/5 土曜日

止まらない中国

メールマガジン1月29日配信分。ちょっと遅れましたが一応アップ。

中国の経済拡大が止まらない。中国当局が1月25日に発表したところでは、中国の2004年度のGDP成長率は9.5%と相変わらずの超スピードだった。一連の引締め策により大方は8%台への鈍化を予想していただけに驚いている向きも多いみたい。しかし、なぜにみんなそんなに心配するんでしょ?

参考までに、中国に関する以前の記事はここにあります。

http://www.plateaus.com/econ/blog/archives/000052.html

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□ 心配の種

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中国が1978年(だっけ?)に経済開放政策をとって以来のGDPの年間平均成長率は約9.4%とすさまじいものだ。これだけから見れば9.5%の成長は極めてフツーのことに思える。何たって国は広いし、労働力はあり余ってるし、進出する外国企業は長蛇の列をなしているし、これくらい全然ノープロブレムという向きもいるに違いない。

しかし、多くの人が心配しているのは成長のスピードだけじゃない。最も懸念されているのは経済に占める投資の割合と、投資とはコインの表裏の関係にある信用(融資)の拡大だ。

2003年度においては、工場などの固形資産に対する投資はGDPの42%を占めている。2004年にはその比率はもっと増えているに違いない。米国の10%台はもとよりどんな経済もこれだけの急速な資本形成を継続できた例はない。

将来の経済成長は投資に依存するんだから、投資が多いのは悪くないんじゃない?基本的にはそうだけど、これも程度による(比較的高投資の日本の成長力がそれほど高くないのを見ても分かるが)。ケーザイで最初の方にベンキョーすることに「収穫逓減の法則」(どーでもいーが、この日本語どーにかならんのだろうか)ってのがあるが、投資が大きくなればなるほど通常リターンは下がっていく。ある点を超えるとそれ以上の投資は割りに合わなくなるってことだ。もちろん割りに合わない投資を続ければ元手は回収できないってことになる。

まぁそんな事を言わなくても単に生産能力過剰になっている可能性は小さくない。なんたって消費するのと同じくらい工場や生産設備の建設に使っているんである。

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□ 金融の問題

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その投資を支えているのが外国からの資金流入と中国の貯蓄だ。中国の家計部門は収入の約45%を貯蓄しているが、その貯蓄の大半(3分の2程度)が4大国有銀行に預けられ、この貯蓄の大半が中国の企業(主に国有企業、または国策企業)に低金利で貸し付けられ、企業の投資の源泉となっている。

これらは融資というよりは、国からの助成金に近いという向きもあるくらいだが、過剰投資の原因の1つでもあり(Lenovoだって低金利の融資が無ければ赤字のIBMのPC部門を買収できただろうか?)、当然回収不能のリスクは高い。融資の半分近くが不良債権化しているという説すらあり、これからも現在の投資水準の継続は長期的には困難だと言える。

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□ 中国のジレンマ

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さて、投資が今の水準で維持不可能だとして、例えば「もうちょっとだけ維持可能な」GDPの30%台に投資が減速するとしたらどうなるか?もしこの減速が短期間で起こった場合は額の大きさから考えて「軟着陸」どころか「地面に激突」に近く、相当のダメージは避

け難い。中国における政権の最重要課題は歴史的に政治的安定にあるから、共産党からすれば急激な減速はなんとしても避け「軟着陸」を果たしたいところだ。

経済を減速させるためには小幅な金利引き上げはあり得るが、金利の引き上げによる減速がどれだけになるか読みにくい上に、対ドルでの為替レートを固定したままの金利上げには限界がある。しかも消費とともに投資の穴を埋める事が期待される輸出のためにも通貨の大幅な切り上げはあまり好ましくない。

ということで、金利、為替レートといった手段はとられても限定的なものにならざるを得ないような気がする。引き続き、中央政府による融資の規制といった手段と、中央の意向に添わず暴走をしている地方幹部の処罰などがメインの手段としてとられるんじゃないかしらん?

投資の伸び率は2004年度は少しではあるが鈍化して25%程度、輸出、消費は堅調な伸びで投資の減速分を凌ぎ、全般としては大きな成長となっている事をみれば「軟着陸」の可能性は十分にある。ただ今まで急発展中の経済で過剰投資、過剰信用創造による急成長とその後の急減速、経済危機を免れた国は少ないと言うことも忘れることはできない。

2005/1/17 月曜日

中国の外貨準備はどこへ?

中国の外貨準備が2004年末に過去最高の6100億ドルに達した模様だ。これは中国のGDPの40%に近いというすごい額である。昨年一年間に約2070億ドル増加したことになるが、増加分だけでもGDPの12%に当たる。人民元とドルのペッグ維持のため相当なドル買いが行われたことを示しているんだけど、ここでちょっと気になったのがこの外貨準備がどこに行ってるかってことだ。

例えば日本に関しては、米国のデータで見ると日本(民間を含む)の米国財務省証券(国債だ)の保有残高は昨年10月末時点で約7150億ドルとなっている。日本の外貨準備は大体8500億ドルで、日本の財務当局は通貨別の保有高を示していない(ナゼだ?)ので良く分からないが、えいやで高めの80%がドルとすると日本の外貨準備のドル保有は6800億ドルとなる。これは先ほどの7150億ドルが民間保有(あまりないと思うが)を含んでいることを考えると、まぁまぁ理屈の通る線だろう。つまり、日本当局はドル建ての外貨準備を大半は米国債のかたちで保有しているってこと。しかし中国はどうか?

同じことを中国に当てはめるとどうか?同じ米国のデータでは昨年10月末時点で中国の米国国債保有高(くどいが民間を含む)は約1750億ドルである。おや??中国の外貨準備6100億ドルの80%がドルと考えると、中国当局は約4900億ドルのドルを保有しているはずだ。中国の民間部門の米国債保有を完全にゼロと仮定しても、4900億と1750億の差額の3000億ドル以上が米国債以外のドル建て資産の形で保有されていることになる。もちろんデータの時期の差などがあるから厳密な議論ではないけど、大まかにみれば相当な額がどこかに投資されていると考えられる。

ある程度は外国の金融機関を通した「統計からは見えない形での」米国債保有となっているだろうが、相当な額が米国の資産担保証券、あるいはたぶん社債などに投資されていると考えるのが普通だろう。ひょっとするとヘッジファンドなどに投資されている可能性もある(ヘッジファンドのLTCM破綻の際にはLTCMに投資していたイタリア中銀が青ざめた)。

米ドルは言うに及ばず、米国の主要な資産クラスは相当な高値となっており、ややリスクは高いと考えるべきだが、なんかあったら大丈夫なんだろうか(たとえばドル/人民元のレートが30%位変動すると、中国当局はGDPの約10%を失うことになる)。

まぁ、ドルレートの変動によるリスクに関しては日本も同様で中国のことを言えた義理ではない。世間では他通貨(ユーロ)にリスク分散すべきだなんて話もちらほら聞くが、日本と中国が「リスク分散」なんかしたとたんにドルの下落(と円の高騰による輸出セクターへの打撃)による本当の損失リスクをかぶることになる。この「第2ブレトンウッズ体制」は足抜けのできないブラック・ホールなんである。

独歩高のユーロ圏が音を上げて「第2ブレトンウッズ体制」に組み入れられれば米当局にとっては天国なんでしょうがねぇ、、、

2004/10/28 木曜日

ブッシュとケリー??

メールマガジン no.39配信分です。

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□ ケーザイ・ガクシャはケリー、ビジネス・コミュニティはブッシュ?
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ここまで単純なモンではもちろんない。ブッシュ支持の経済学者も結構いるし、
ケリーを支持しているビジネスマンもいる。しかしメディアなんかでは、学者
はケリー支持、企業はブッシュ支持が目立つ。

これはまあ単に学者に関してはインテリが多いから「ブッシュ支持」なんて公
言するのは、コケンにかかわるってのもあるし、ビジネスマンに関しては現政
権の批判してもお金儲けにはならないから別に公言する必要はないという事情
も大きいとは思うんだけど、その「目立つ部分」に関して言えば、どちらもロ
ジックは結構シンプルなものだ。

学者に関して言えば、最大のものが財政赤字だ。財政の大赤字にもかかわらず
「減税一本槍」の経済政策に呆れ果ててるってとこだろう。企業社会の方から
言えば、ケリーの相次ぐ「大企業」批判やら、「オフショアリング(業務の海外
委託)」に対する攻撃に見られる「保護主義的」な経済政策や、「増税」による
景気減速の怖れってとこだろう。

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□ 「保守」と「リベラル」
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ここでちょっと基本的なおさらい、、、

共和党:あっちで「保守」とか「右翼」ってゆーと、基本的には経済政策的に
は自由的、市場主義的と言える。つまり、政府は小さいのが一番で、政府が手
を出さないで済めばそれが一番良いってやつだ。極端に言うと、政府はどうせ
ロクなことはできないから市場に介入するべきじゃないし、国民から税金を集
めて公共投資やらに使うなんてのは最小限にすべきということになる。規制も
少なけば少ない程良いが、頼みの市場機能を妨げるような行為は厳しく取り締
まる(独占禁止法など)ってとこだ。

民主党:これまた極端にデフォルメすると、対する「左翼」や「リベラル」は
市場機能なんてそれほど信用していないし、貧困層の生活保護とかヘルスケア
や、大企業や海外との競争に圧迫される小企業や労働者を守るための規制や、
競争力の弱い農家の保護やら、政府が介入すべきことは多くあり、政府が税金
をとってそれらのために使ったり、規制をしたりするのは「当然でしょ」って
ことになる。

だから、ブッシュがケリーを「リベラル」と非難する時はケリーがロクでもな
い政府の仕事のために税金をバンバンあげるぞってことだ。また共和党のブッ
シュがアホの一つ覚えみたいに「減税、減税」というのもこの対比から見ると
良く分かるだろう。もちろん、今は「右」と「左」でそれほど極端な差異があ
るわけじゃない。しかし、考え方の基本はかなり違うと言える。

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□ ブッシュとケリー:「保守」と「リベラル」か?
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さて、ブッシュだが、上の基準でいくと従来の「保守的」って言える部分は減
税くらいしかない。もともと財政赤字は政府が山ほどお金を使うことによって
起こるものだから、バラマキ政治の「リベラル」の十八番と言われていた。と
ころがブッシュはイラク戦争だけではなく、学校から農家まで歴代の民主党政
権もかすむ位のバラマキを行っている。ブッシュのメディケア(医療保険)の拡
大は史上最大規模のものだし、その上減税なんかしてるんだから赤字になって
当然だ。ブッシュが「財政赤字を半分にする」なんて言っても誰も信じないの
も無理はない。

ケリーもブッシュの富裕層への減税は元に戻すとしているが、こちらはヘルス
ケア・コストのコントロールやら、健康保険の拡大やらの約束があるので、プ
ラスマイナスすると財政赤字に関して言えば少なくとも中期的にはどっちが大
統領になっても大して変わらないと言える(ただヘルスケア関連の支出計画は議
会の共和党に潰される可能性が高いから、プラスマイナスではケリーの方が赤
字は抑えられることになるかもしれない。それに少なくともケリーには「財政
赤字は問題だ」という意識だけはある)。

ただ、ついでに言うと現在の米国経済は経常収支の赤字からも分かるように、
基本的に稼ぐ以上に使うことによってもっている。つまり両大統領候補が訴え
る今以上に強い経済を続けるためには、必然的に公的部門または民間部門が大
きな借金を抱えることになる。そして現在の財政赤字の規模を考えれば、民間
部門が2000年のバブル時代並みの借金漬けにでもならない限り、公的部門(政府)
の財政赤字が大きく抑えられる可能性は低い。つまり、経済をかなり減速させ
るか、ドルが暴落するか、あるいはその両者がおこらない限り、誰が大統領に
なっても財政赤字が急に解決するめどはあんまりない。

経済に関しては「保守」らしく、明らかにブッシュの方が「自由主義的」な発
言だが、実績を見れば、鉄鋼のセーフガードを発動したり、いろいろなところ
に補助金を出しまくったり、これまた全く言行一致しない政権である。一方ケ
リーも昔懐かしの「スーパー301条」の復活をほのめかしたり、「日本のアン
フェアな貿易慣行」のことを言ったり、民主党の支持母体の労組に受けの良い
保護主義的な発言を続けているが、過去の上院における投票歴を見るとかなり
中道の自由貿易主義に近いという面もある(それとも単にコロコロ変わるだけか)。
ここでもどちらが大統領になっても大きく何かが変わるとは考えにくい(ただケ
リーの場合は中国や日本にとっては少し風当たりがキツくなるかもしれないけ
どね)。

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□ そんなに違うのか??
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ケリーになってもアメリカ軍がイラクから早期に引き揚げることは無いだろう
し、必要であれば米国が先制攻撃を行うことはケリーも言っている。どちらも
イスラエルを支持し、アラファトに反対している。どちらが勝っても米国が京
都議定書を批准することはないし(これには共和党も民主党も仲良く反対してい
る)、国際刑事裁判所設立条約を批准することもないだろう。ブッシュはケリー
が勝ったら核物質によるアメリカに対する攻撃があると言い、ケリーはブッシュ
が勝ったら徴兵制になると言うが、実際にはどっちが勝っても攻撃はあり得る
し、徴兵制になる可能性はない。

もちろんケリーの方がより多国間主義的であり、特にヨーロッパとの関係には
気を使うだろうが、かつてのソビエトといった共通の敵が無い今となっては、
かつての「同盟国」が昔のように共同歩調を取ることはもともと困難なことだ
ろう。というわけで、メディアが言ってるのとは全く裏腹に、両候補は「大し
て変わらない」ように思える。

さて、これは良いことなのか、悪いことなのか、、、(悪いに決まってる)

2004/4/27 火曜日

中国経済の過熱??

メールマガジン4月26日配信分(第38号):

中国経済が過熱してるかって言われれば、「???」とゆー答え(じゃない答え)になる。どれくらい?って聞かれると「?????」とゆー答え(じゃない答え)になる。なんといってもあんまり信頼できる数字が無いんだからどーしよーもない。

ただ、中国経済が過熱しようがどーだか大した問題なのかって聞かれれば「たぶん、かなり」ってことになる。なんたって世界経済の成長の25%が中国の成長分(購買力平価ベースでね)だし、日本企業のお得意さんだし、多くの進出企業、これから進出しようかって企業もいっぱいあるからね。ってわけで、今回は中国経済の過熱(に打つ手はあるのか?)とゆーのがテーマだ。

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□ 当てにならん数字ですが、、、
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最初に書いたように、数字好きな連中にとっては中国はけっこうつらい。ここでは適当にみんなが使ってる数字を流用しよう(大体の傾向くらいは分かるはずだ)。

主なデータを見るとGDPは今年第1四半期までの1年で9.7%(!!!)の伸びであり、消費者物価上昇率(いわゆるインフレ率)は3月までの1年で3%(そんなに高く見えないかもしれないけど、1年前は0.9%だった)、銀行の貸し付けは3月までの1年で21%増、M1のマネーサプライも同時期ほぼ20%の伸び、今年第1四半期の投資は前年同期比50%の伸びとなっている。

おじいさんみたいな日本経済からすると目がくらみそうなペースだけどこれが持続可能なペースかって言われると、「かなり難しいかも」というのが常識的な線じゃないかしらん?(イケイケの人たちもすこし、いや、かなりいるみたいですが)

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□ 当局の不安
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これでも1990年代の前半のGDP成長率15%以上、インフレは30%近く、投資の伸び率60%以上ってのに比べればぬるま湯のようなもんだけど、温度が上がっているのには間違いない。特に融資の増加が高いスピードのまま持続しているのは危険な兆候で、全銀行融資の半分近くが不良債権化しているという話もあちこちで見る(どこから出てきた数字か良くわかりませんが)。

どの数字が信頼できるかは別にしても、実際中国当局が経済の過熱にかなり警戒感を持っている事は、銀行の準備金比率をこの8ヶ月で3回も引き上げている事からも分かる(準備金は銀行が中央銀行に置いとかなきゃいけないお金だ。これの比率が上げられると銀行は融資に回せる余力が減るから融資・マネーサプライがおさえられるーーはずなんだけどね)。

しかも、中国政府と人民銀行は当局が「過熱してる」と認定している鉄鋼、自動車、セメント、アルミニウム、不動産関連に対する新規融資を減らすように銀行に対して「行政指導」をおこなっている。しかしこれらの施策によってもなかなか勢いがとまらないところをみると「過熱」はこれらの産業だけの問題では無いのだろう。

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□ 金融政策は使えない。
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さて、米国や日本ではインフレ(あるいは資産価格の異常な上昇)の兆しが見え始めると、中央銀行に対して「利率をあげろ」の大合唱が始まるが中国はどうなんだろう。実際人民銀行が利上げを考慮していると言う報道があったりしたが、これは結構難しい。

一つには、まだ市場経済に移行中で、「価格が需要と供給を決める」という法則が金融市場ではあんまり働いていないように見えるって事もある(金利はお金の価格に他ならない)。しかしもっと基本的な問題がある。ケーザイ学の基本では「固定相場制をとった国には金融政策は無い」ってのがある。したがって人民元の相場を対ドルで固定した中国には、基本的に金融政策の自由度は無い。(厳密にはこれは資本の往来が自由な市場にあてはまる事で、資本市場を自由化していない中国には厳密にはあてはまらないが、基本的に働く力は同じだ)

金利を上げればその貨幣は買われる。したがってその貨幣の他の貨幣に対する相対的な価格(為替)は上がる。だから中国の金利が上がれば人民元が買われる(もともと人民元は将来値上がりするしか無いと踏んで買ってる連中も多いから買いの圧力はますます増える)。この状態で人民元の対ドル相場を固定するには中央銀行はドルを大量に買わなければならない(実際にこうなっている)。

ドルを買った資金は市場にあふれてマネーサプライはまたまた上がる。マネーサプライの増加は金利差が小さくなるまで続く。これを抑えるには国債を売って市場からお金を吸い上げるしか無い(これは良く市場介入の不胎化なんて言われてるやつだ)。大量のお金を吸い上げようと大量に債券を発行すると債券の値が下がる。つまり金利が上がる。金利が上がるとみんなが思うとますます人民元が買われる。最初に戻る。無限ループ。

とゆーわけで人民元の対ドル相場を固定する限り、中国の金融政策を決めるのは人民銀行ではなく、米国連銀だとゆーことになる(この通貨ペアのもう一方、ドルの金利を決めるのは連銀だからね。ドルの金利が上がれば人民元の金利を上げるのも可能だ。為替は結局2つの通貨の相対的な価値だからね)。

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□ 中国はどう出るのか??
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なんてことをだらだら書いてると、中国は人民元の他通貨に対する変動幅を広げる計画だと中国高官が言ったという報道があった(Financial Times 4/21)。しかも相場の変動幅は対ドルで設定するのではなくいくつかの通貨バスケットに対して設定するらしい。まあ対ドルでも通貨バスケットでも基本は変わらないけど、変動幅が狭ければ結局固定相場と大して変わらないだろう。

長期的には変動相場への移行を当然考えているだろうけど、あんまり元が上がるとこんどは経済成長に冷や水をかけかねないから、当然それはまだまだ先の話だ。ある程度の高成長は政治的安定のために必須だからだ。

より厳しい規制によって融資とマネーサプライを押さえ込むというのは、実行可能ならかなりキクだろう。ただ透明で体系だったルールに基づいた規制を普段から実行するのでなく、対症療法的に厳しい規制をやると予想以外の結果を生むリスクがある。日本のバブル末期のいわゆる「総量規制」を思い出してもわかる。

とゆーわけで当面中国は市場・銀行の(マイルドな)規制と先進国(特に米国)の景気が回復してそこの金利が上昇する事に頼らざるを得ないってことになる。結果は「神のみぞ知る」だけど、米国の利上げも視野に入ってきたみたいなので、結構「ツイてる」のかもしれない(逆にあんまり上がってもこまるんだけどね)。

2004/4/1 木曜日

新ブレトン・ウッズ体制??

国際経済メールマガジン4月2日配信分(第37号):

つい数日前(3月30日付けFinancial Times)、Martin Wolfが現在の国際通貨体制に関してのカリフォルニア大のDooley先生とドイツ銀行のLandau、Garber両氏による論文「The Revised Bretton Woods System」を紹介していた。ちょっと面白かったので、4月2日配信のメールマガジンでとりあげて見ました。今や世界の大半を占める地域が「ドル圏」となっており、米国の低金利政策がこのドル圏の経済ブームを作り出しているというお話です。

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□ 新ドル圏?登場
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この論文はタイトルが示すように、現在、かつてのブレトン・ウッズ体制(ドルを中心として、各国が自国通貨の対ドルレートを固定するという固定相場制)に近い国際通貨体制が世界経済の過半をしめる地域で形成されているというものだ。

これを「ドル圏」と名付けると、「ドル圏」は、1.ドルが流通する米国やすでに通貨のドル化をした地域(core zone)、2.自国通貨の対ドル相場を固定して、事実上自国の金融政策を放棄した地域 (inner circle - 仮にドル圏内環としよう。中国、香港、マレーシアなどが含まれる)そして3.自国通貨の対ドルレートは固定していないものの、対ドルレートを安定させるためには大規模な市場介入も辞さない地域(outer circle - 仮にドル圏外環としよう。日本、インド、韓国、ロシア等が含まれる)からなる。

このドルに対する固定相場、または緩やかな相場安定を基軸とした「ドル圏」は今や世界全体のGDPの53%、人口の52%を占めるという巨大通貨・経済圏を構成している。
dollarzone.gif

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□ 新ドル圏における米国連銀政策の意味
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アメリカ連銀の金融政策は必然的にこの「ドル圏」全域に波及する。連銀はアメリカの雇用の上昇と物価上昇があきらかになるまでは、低金利政策を継続させる構えのようだけど、これはもちろんドル圏全体の金利に下向けの圧力をかけて、ドル圏全体の経済を刺激するする事になる(自国の金利を上げれば金利目当てのマネーが流入して対ドル相場が上がる危険性があるからね)。

ドル圏全体で見れば雇用はありあまる程だし、生産力もあり余ってるし、おまけにアメリカの生産性は速いペースで上がっているから連銀の低金利政策にかかわらずアメリカの雇用もインフレも簡単には上がらない。したがって必然的に低金利政策は長引かざる得ないとゆーことになる。

ドル圏内部の各政府の外貨準備の主要通貨はもちろんドルだけど、他の通貨、例えばユーロに切り替える、ということは対ドル相場安定という「ドル圏」の政策に反するから簡単にはできない。したがってドル圏内部の政府はアメリカ国債を買い続け(つまりアメリカにお金を貸し続け)、アメリカはそのおかげで金利上昇の心配も無く、稼ぐ以上の投資・消費ができることになる。これはますますアメリカ経済を刺激し、「ドル圏」の国々は対アメリカ輸出でうるおうことになる。

増大する輸入に悲鳴をあげる国内産業を保護しようとして、アメリカがドル安に誘導しようとしても、ドル圏内部の各国政府による大規模なドル買いの市場介入を招くから、ドル圏内部の通貨に対してはそれほど効果は無い。それよりもドルを含む、ドル圏内部の通貨全てが(円とか元とかね)がドルに対するよりドル圏外の通貨(ユーロ)等に対して下落する事になる。

市場介入は各国でのマネーサプライを増大させるし(これについてはまたいつか説明しよう)、通貨の下落はドル圏外への輸出を増大させるし、対ドルレートの安定は対米輸出の安定を保証するし、ドル圏経済はますます刺激される事になる。

とゆー具合に、アメリカ経済を浮揚させようとする連銀の金融政策は「ドル圏」全体の経済を壮大な規模で刺激するすることになる。日本を始めアジアの政府は歴史上類を見ない規模で市場介入をおこないドルを買っているが、上に上げた論文に従えば、これもブレトン・ウッズ崩壊後初めて、歴史上類をみない規模で「ドル圏」が形成されてきていることの結果でしかない、ってことになる。

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□ 新ドル圏の経済ブームの行く末は??
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上にあげたロジックにしたがうと、連銀の低金利政策はけっこう長く続かざるを得ないということになり、したがって「ドル圏」の経済ブームも長く続く事になるんだけど、いったいその先はどーなるんだろうか?

温故知新ってことで、かつてのブレトン・ウッズ体制の崩壊を簡単に振り返ると、基本的には、世界規模でのインフレと安定したドルのせいで競争力を失った国内産業を保護しようとした米国政府の一方的ドル切り下げという2つの要因でかつてのドル体制は崩壊したんだった。

そしてこれらは基本的に今度も起こりえる。ドル圏全体の低金利と政府による通貨市場に対する大規模な介入は、ドル圏内部のマネーサプライを増大させることになる。マネーサプライの増加は長期的にインフレにつながると考えているのは「金こそ全て派(マネタリスト)」だけじゃない。ただ、上にも書いたようにドル圏内部は生産力、労働力過多の上に中国等はそれ以上に生産力を増強しているから簡単にはインフレ圧力は出てこないだろうけどね。

ドル安誘導に関しては、日本政府や他のアジア政府による市場介入を批判したり、大統領選挙という事もあって国内産業への気使いが目立つけど、アジア各国のアメリカ国債購入が細るようなことがあれば、低金利政策が破綻するから、当面は金利上昇のデメリットと国内産業の不満による政治的デメリットを天秤にかけた中途半端なものにならざるを得ないだろう。

とゆーわけで、この「新ブレトン・ウッズ」体制がいつ破綻するかは分からないけど、Martin Wolfの言葉を借りれば「それまでは、経済ブームをせいぜい楽しもう」ってことになるのかもしれない。

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□ おまけ「ドル圏」の外側は??
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ここで気になるのはユーロ圏だけど、すでに対ドル、対円でのユーロ高や、ドイツの経済不振に音を上げた連中が欧州中央銀行(ECB)に利下げしろっていう大合唱をしている。3月は利下げを見送った欧州中銀だけど、5月には利下げに踏み切るという見方も多くなってきている。巨大な「ドル圏」での低金利政策に完全に知らん顔をするのはむつかしいということかもしれない。

最近の米Foreign Affair誌に「もうG7とかG8とかそんなものは無意味だ。アメリカとEUのG2を作ってそこでいろんな事を決めちゃえば良い」なんてトンでも無い事を書いてたおっさんがいたが、けっこう当たってるのかもしれない。そうなれば「新ブレトン・ウッズ体制」は崩壊する前にホントに世界をおおうかもね(もちろんそれで崩壊しなくなるって事じゃないよ)。

2004/3/25 木曜日

信用膨張とバブル

国際経済メールマガジン3月25日配信分(第36号):

なぜ信用膨張はバブルを呼ぶのかという問題をウォートンのAllen先生とニューヨーク大のGale先生の理論をダシにして紹介した駄文です。基本的にはPrincipal-Agent問題の定式化といえます。

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国際経済に強くなろう

http://www.plateaus.com/econ/blog/

■ 今回のテーマ:信用膨張とバブル ■

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ウェブでも書いたけど、アメリカでのバブル懸念が広がっている。アメリカで
の前回のバブルはハイテクバブルだったけど、今度は株ばっかりじゃなく、不
動産が結構な高値になっている。資産の価値がどんどん上がってるもんだから
それを背景に新規の借金やら借り換えやらでまた投資資金が増えて資産価格が
また上がるという、どっかで見た光景になっている、っていうんだけど、今回
は信用膨張(つまり貸し借りの膨張)とバブルの関係についてちょっと考えて
みよう。

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□ ニワトリとタマゴか?
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金利が下がると、借金をしやすくなる。そして金利が下がると、投資もしやす
くなる。したがって金利が下がると信用(貸し借り)も実物投資も膨張する。
債券以外の金融資産(株とかね)も比較的魅力的になるから金融投資も膨張し
て資産の価格も上昇する。

例えば年間10円のキャッシュフローのある資産の適正価格は金利10%なら100円
だけど、金利が1%なら1000円になる(1000円以下だとこの資産の方が金利を稼
ぐより有利だから、1000円になってこの有利さが消滅するまではみんなこの資
産を買い上がることになる)。

これは当たり前なんだけど、往々にして金利の低下(や経済成長とか)で合理
的に説明できる以上に、資産の価格がはるかに上がっちゃうことが時々おこる。
さっきの例で言えば、この資産の価格が2000円にも3000円にもなっちゃう事が
あるが、これが俗にいう「バブル」だ。

企業なんかの場合は将来のキャッシュフローはまあ当たるも八卦ってとこがあ
るから、株の場合はさっきの例みたいには簡単にはいかないけど、どう転んで
も将来的にキャッシュフローが倍になりそうになくても平気で株価が倍になっ
ちゃったりする事があるわけだ。で、その購入資金が借金だったりすると、信
用量も金利で合理的に説明できる以上に増える事になる。

さて、信用が膨張して、資産価格がバブルっぽくなってくると、新聞なんかで
は「余った金が行き場を失ってXX市場に流れ込んで価格急騰」なんて感じで良
く書いたりするけど、これだと貸し借りでお金が増えてバブルになるって感じ
だ(まあお金が増えた分の裏には借金が増えてるんだから別に「余ってる」ワ
ケじゃないんだろうけどね)。

また、ケーザイ学者なんかの論法では、何らかの理由で資産の価格が上昇し続
ける、あるいはなんらかの理由で資産の適正価格が実際よりもっと上にあると
人々が思っちゃったりして、どんどん投資を行う。投資のリターンに対してみ
んな強気だから(金利が低くてやりやすい)借金をしまくりその結果信用も膨
張する。「何らかの理由」ってのは「根拠無き熱狂」だったりするんだけど、
これだとバブルがあって信用が増えるってカンジになるね。

とゆーことで、「信用の膨張」と「バブル」ってのはニワトリとタマゴみたい
なカンジだけど、「金あまり」とか「根拠無き熱狂」ってのにあんまり感心し
なかったのがウォートンスクールのアレンとニューヨーク大のゲイルの両先生
だ。先生たちによると、「信用の膨張があると必ずバブルになる」。なんで?

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□ 他人のお金は使いやすい
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両先生の論点は非常に簡単だ。たとえばあなたが今10億円もってるとしよう。
ある資産があって、50%の確率で12億円、50%の確率で8億円になるとする。
もしあなたがリスク中立なら(ケーザイ学用語だ。まぁ無理してリスクをとら
ないし、非常にリスクを怖れるわけでもないって事)、あんまり無理して購入
しようとは思わないだろう。

さて、今度はあなたは一文無しだとする。奇特な人がいて10億円貸してくれた
とする(話を簡単にするため金利はゼロとしよう)。今度は全く同じ資産でも、
50%の確率であなたには2億円はいる(12億で資産を売り払って元金の10億円を
返すからね)。50%の確率であなたは破産して1文無しになる(貸した人はもち
ろん残った資産を差し押さえる)。

この場合はもちろん合理的な人間なら購入した方が有利ってことになる。最初
のケースでは資産の適正価格は10億円だが、次のケースでは借金して買う人に
とっての資産の適正価格は11億円となる。したがって、借金によりファイナン
スされる場合は、「合理的に」バブルが発生する。

この例はもちろん極端に簡略化されている(例えば破産のコストだとか貸した
人が実はすごくコワイ人であとでコワイ目にあうなんて事は考えてない)。し
かし、例えばこれが「あなた」ではなくて企業だったりしたらどうだろう?実
際このような企業による投資を山ほど見たのではないだろうか?失敗しても倒
産はまずないし、倒産すればそれはその時なんてね。ペイオフ以前の銀行にい
たっては、借りたお金(つまり貯金)を返せなくても政府がかわりに保証して
くれると言うオマケまでついていたんだった。

平たく言えば投資を決定する主体にとっての損得と、実際上の損得が一致しな
い場合、必然的に、又、合理的にバブルが発生し得る。って事なんだけど、借
り手と貸し手の損得は上で見たみたいに基本的に異なるから、信用が膨張して
る(つまり借金してる連中が一杯モノを買ってる)っていう状態は「必然的に」
バブルになるってワケ。

これは基本的にスティグリッツ先生なんかがずっと言ってる、モラルハザード
による市場の非効率性の定式化と言える。

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□ 政策的手段
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バブルに対する政策的手段ってのはいろいろ議論の種になってきた。一つは規
制(prudential regulation)によるもので、例えば上の資産の例で言うと、10億
借りて投資するなり貸し出しなりする場合は2億円の自己資金をもってないとダ
メってゆーような規制だ。

この場合は投資で穴あけた場合も自分のお金を出して補填しないといけないか
ら、上の例で見た、損得で見た資産の適正価格は10億円となってバブルは生じ
ない。ちょっとエリアは違うけどBISの銀行に対する自己資本規制も良く似た
コンセプトだと言える。ただ、企業で言えば自己資金は株主資本になるけど、
株主が大損しても企業のマネージャーが(個人的に)大損するとは限らないか
ら、これでは「損得の不一致」は完全には無くならない。

あとは、バブルっぽくなってきたら、中央銀行は早めに金利をあげて対応しろ
ってのもあるけど、これはウェブログでも書いたけど、「言うは易し、行うは
ナントカ」ってカンジで結構むつかしい(興味があったらblogの方を見て下さ
い)。

最後は、連銀のグリーンスパン流の「バブルには中銀は手出ししない(口は出
してもね)」ってやつだ。バブルがつぶれた時に市場にお金をばらまいてバブ
ルが崩壊した痛みを和らげるしか、バブルに対して中央銀行が出来る事はない
ってカンジだけど、上で言ったように信用の膨張はバブルを呼ぶから、最悪の
場合は中央銀行がお金を出回らせる、と投資家が判断した場合は次のバブルが
すぐ起こるってことになってこれも痛し痒しだ。とゆーことで、バブルに効く
特効薬とゆーのは今のところナイ。

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□ おまけ
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簡単にしすぎてAllen, Gale両先生にご迷惑をかけるといけないんで、参考文献
をあげておきます。Googleなんかで検索すればPDFで手に入るものもあると思い
ます。

Allen, F. and Gale, D. (1999).
  ‘Bubbles, Crises, and Policy’
   Oxford Review of Economic Policy, vol.15, No.3 pp.9-18

Allen, F. and Gale, D. (2000).
  ‘Bubbles and Crises’
   The Economic Journal, vol.110 pp. 235-255

Allen, F. and Gale, D. (2002).
  ‘Asset Price Bubbles and Stock Market Interlinkages’
   Center for Financial Institutions Working Papers,
   Wharton School Center for Financial Institutions,
   University of Pennsylvania

2004/3/9 火曜日

ドイツも日本病?

メールマガジン3月9日配信分(第35号):

ドイツ経済が振るわないといわれだして早10年にもなろうとしています。ドイツ統一のせいだとか、高福祉のせいだとか、労働市場の柔軟性が無いからだとか、いろいろ言われていますが、最近はやってきたのが、「低資本コストによる恒常的低リターン体質」論です。これって日本に似てる??

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■ 今回のテーマ:ドイツは日本病??? ■
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ドイツ経済がふるわない。どれくらいふるわないかとゆーと、購買力平価ベー
ス(名目の金額じゃなくってその金額でどれくらいのモノが買えるかってゆー
購買力のベース)で、ドイツの一人あたりのGDPはとうとうEUの平均を下回って
しまった(ほんの20年くらい前は平均より20%も高かった)。

EU15カ国の中で一人当たりの所得でドイツより低いのはいまや4カ国しかない。
日本経済のバブル後の不振は「スキャンダル」とまで言われてたけど、それに
勝るとも劣らない不振ぶりといえる。

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□ 東ドイツが悪いのか?
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ドイツ経済のケチのつけはじめは1990年の東西ドイツ統合だ。統合でドイツの
一人当たりGDPは一気に下がる事になったんだけど、それでもEU平均よりは9%
は高かった。それ以降のドイツの経済成長率は平均して年1.4%と、日本を東の
横綱(もちろん不振の)とすると、まさしく西の横綱といえるひどさだ。日本
はとうとう2003年暦年ベースでプラス2.7%と超低空飛行からおさらばしそう
だけど、ドイツは1%以下の伸びでこのままだと一人横綱となってしまいそう
な勢いだ。

これだけ続くと、東ドイツのせいとばっかリは言えなくなってくる。もともと
東ドイツの経済規模は西ドイツに比較すれば小さいものだったしね。ドイツ経
済の問題としてよく言われてるのは、高水準の労働者コスト、高い税金、高福
祉コスト、おまけに硬直的な労働市場などがあげられてるけど、これらは多か
れ少なかれ(結構好調だったりする)他のヨーロッパ諸国と共通してることだ。
じゃあ、一体ドイツのナニが悪いのか??

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□ 安い資金が諸悪の根源??
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そこで最近言われてるのが、歴史的に見て他国と比較して安かったドイツの資
本コストが問題だという見方だ。ひらたくいうと、ドイツでは企業が他国と比
較して安い金利で資金を調達できたのが問題だってこと。

ちょっと待って、と言いたい人もいっぱいいるだろう。資金調達コストが安け
れば、企業はいっぱい投資するし(投資リターンが低くっても、投資コストが
低けりゃ利益が出るでしょ)、投資が多ければ資本集積が進んで結局長期的な
成長率は上がるんじゃない?

実際こう考えて、政策的に戦略的産業分野に対して、資金調達コストを下げよ
うとした国も多いし、日本のかつての高成長は企業が低コストで資金を調達で
きたからだっていう論調も(昔は)多かった。しかしここが問題のポイントだ
と考える向きも多い。

つまり、資金調達コストが低いと、低リターンのプロジェクトにも多くの資金
が使われる事になる。そして現在行われる投資の生産性が将来の経済の生産性
を決定つけると考えるならば、低リターンの投資を多く行う経済は必然的に長
期的には低成長の経済となる。資金調達コストが高ければリターンの低い投資
は割に合わないから必然的に集積される資本の生産性は高くなる(まぁ真偽は
さておいて、ここらへんが「人為的に金利を抑えるのは良くない」ってゆー、
ここ20年くらい勢いの良い、金融自由化論者たちの論拠のひとつでもある)。

さて、間接金融が主流で、しかも国有金融機関の強いドイツでは確かに、英米
型経済に対して資金調達コストは安かった。さてリターンの方はと言うとこれ
また、Return on Capital (資本に対する利益の割合)で見ると、ドイツ企業
の平均はここ10年一貫して5%を切っている。米国企業、他の欧州の企業が平
均して10%以上のリターンを出しているのと比べると、明らかに無駄な投資が
多い(そして長期的な経済の生産性を損なってきた)といえる。

そして、今やより透明で競争的な金融政策を目指す欧州委員会が、国有金融機
関に対する国家による保証を「非競争的」として将来的に排除する事を決定し、
また、投資家も銀行に対する投資により多くのリターンを要求するようになり、
ドイツの資金調達コストは上がりはじめている。低リターンであれ投資が行わ
れている間は将来のリターンはともかく、少なくとも現在の需要を支えること
はできるけど、それすら困難になってきたわけだ。

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□ 経済も日独同盟??
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ここまで書いてみると、どうも日本経済との類似点の多さにいやでも気がつく。
間接金融主導による安い資金調達コストによる、過大な(低リターンの)投資っ
て言う点でね。実際日本企業の資本に対するリターンも(最近はかなり上がっ
てきてるみたいだけど)、歴史的に欧米企業に比べて非常に低かったし、GDPの
うち投資が占める割合も(ドイツと同様)非常に高かったというのはこのメール
マガジンでも以前ふれたとーりだ。

さて、おまけに日本と違うのは、今やEUの一部であるドイツにはつかのまでも
低金利政策をとって痛んだ企業のリストラをやりやすくするっていうオプショ
ンがないってゆー点だ。ドイツの政治家たちは欧州中銀の利下げを強く求めて
きたけど、先日も欧州中銀は金利の現状維持を決めたところだ。日本と同様な
硬直的な労働市場も、資源の再配置を難しくする要因となっている。

とゆーわけで、もしも上がりつつある資金コストが長期的にドイツ経済の生産
性をあげる(かもしれない)としても、それまでには結構キツい道のりになる
んじゃないかと思われる。そしてドイツ経済が大きな位置をしめる欧州経済も
全体としてみれば数字上パッとしないかもしれない。

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□ おまけ
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ただ、ドイツを除く他のヨーロッパ諸国は結構好調だったりする。企業の投資
リターンが米国と同様に高いってのは上にも書いたとーりだけど、一人当たり
のGDPでも過去10年間の平均成長率が2.3%と米国経済を上回っているし、雇用
の伸びも1.3%と米国と同レベルになっている(ちなみにドイツは0.2%)。

日本の成長率が底打ちした(ように見える)今、ますますドイツだけ目立って
しまうワケだ。

2004/2/25 水曜日

アメリカの職はインドに消える??

(国際経済に強くなろう)第34号:2004年2月25日発行分

みなさま、ご無沙汰しています。地獄の論文書きで、またまた大分休んでしまいましたが、お元気ですか?(前回と全く同じセリフ、、)おかげさまで、論文も終わってのんびり(ええかげんに働かんか!)してます。休んでいる間、おしかりや激励のメール大変ありがとうございました。楽しみにしてますので何でもいいから書いてやって下さい(ぺこり)。

今回は復帰第一発(?)とゆーことで軽く(いつもの事だけど)、現在米国大統領選の議論でもかなりズーム・アップされているアメリカの職の海外流出について考えてみよう。成長めざましい中国や振興アジア諸国に囲まれた日本にとっても他人事じゃない(かもしれない)。

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□ 今度はホワイト・カラーの職がアメリカから消える?
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ここ数十年にわたって、アメリカの製造業の職はへり続けてきた。かつては、アメリカの製造業は日本、そしてそれに引き続いてアジアの新興国、そして中国等の競争相手に職を奪われてきた(と少なくとも連中の多くは考えている)。北米自由貿易協定以降はメキシコ等への製造業の職の流出が続いている(らしい)。実際、今やアメリカで製造業に従事する人は労働人口の12%にすぎない(比率で言えば30年前の半分以下になってしまった)。

そして最近は、IT技術を用いた仕事の外国へのアウト・ソーシング(外国への仕事のアウトソーシングは「オフショアリング」なんて呼ばれたりしている)により、空洞化とは無縁と思われていたサービス業やホワイトカラーの仕事までが海外に流出しはじめた。コールセンターや受注センターなどネットワークを使えばコストの高い米国内におく必要は無いし、ソフトウェア開発だって安いインドのプログラマーが面倒見てくれる。「オフショアリングがホワイトカラーの失業問題の根源だ」なんて考えてる人も多い。

雇用問題はかなり感情的になりやすい分野だから、労組と仲良しの民主党の大統領選の候補者はもちろん、ブッシュ大統領までもがみんなこぞって保護主義的な議論を展開してきている。メディアにとってもセンセーショナルな記事を書ける格好の題材だから、結構いーかげんな事を書きまくっている(日本で産業空洞化が話題になった時の騒ぎを覚えている読者もいるんじゃないかしらん?)。

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□ マンキウ先生受難の巻
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さて、この騒ぎのまっただなかで大統領の経済アドバイザーのマンキウ(マンキューって書いてる人も多いね:「マンキウ経済学」とかのわかりやすい教科書もかいてる若くて超スマートな大先生だ)が「仕事のオフショアリングはアメリカ経済にとってすっごくいい事だ」なんて議会で証言しちゃったもんだから、民主党は「そら見ろ、これが共和党政権の正体だ」なんて攻撃するし、お膝元の共和党からもマンキウ先生の辞任を要求する議員がでたりと、蜂の巣をつついたような大騒動になった。

まあ確かにこの微妙な問題に対してストレートな発言をするには最悪のタイミングだったけど、マンキウの議論は大昔のこのマガジンでも以前とりあげた事のあるリカルドの定理にもとづいたオーソドックスなものだ。

すっごく単純な例をあげてみよう。あなたがすごく有能な(つまり報酬のバカ高い)法律家だとする。ついでに書類のタイピングも超高速でできると考えよう。さて今ここにあなた程早くはタイピングできないタイピストがいるとする。さて、あなたは法律業務とタイピングの業務の両方に資源(つまりあなたの時間)を使った方がいいだろうか?それともあなた程良く出来なくてもタイピストを雇ったほうがいいだろうか?

いろいろ時給をあてはめてかんがえれば、あなたにとっても、タイピストにとっても、また両者をあわせても、あなたが法律業務に精を出し、タイピストがタイプするのがもっとも効率的だとわかる。マンキウ先生は単に、法律家は法律業に精を出すのが(そしてタイプを頼める相手がいるのは)いいってことを言ったワケだ。

もちろんこれに反論するのは簡単だ。法律家はタイプをやめた時間を法律業に使えばいいけど、外国にイッテしまった仕事をしていた失業者は簡単には法律家になるわけにはいかないでしょん。つまり、長期的にはともかく、短期あるいは中期的には仕事が外国にいっちゃうのはやっぱり困るんじゃない??

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□ いったいそんなに大層なモンダイなのか??
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ここで注意しないといけないのはアメリカの労働市場がきわめてダイナミックで、職の再配置(つまり経済資源の再配置)がきわめて大規模・恒常的におこっているっていう点だ。毎月200万ものポジション・職が流動しており、その中で失われるよりはるかに多くの職が作り出されている。1980年から2002年の間にアメリカの人口は23.9%増加したが、雇用されているアメリカ人の数は37.4%増加している。

失われた仕事以上の仕事が強烈なスピードでアメリカ内で生まれているってことだ(失業者に対する短期的なセーフティーネット=失業保険や再訓練の重要さは言うまでもないけどね)。

もちろん、安価できつい仕事ばっかりが増えてるんであって、法律家などの高給取りの仕事が増えた訳じゃないってゆー人も多いけど、アメリカ人の所得と「オフショア」の所得の差を見ればそれほど説得力があるとは思えない(アメリカ国内で富の分配にかなりゆがみがあるのは事実だとおもうけどね:でもこれは日本人やインド人のせいじゃないでしょん)。

それともうひとつ、すごく重要な点なんだけど、海外に「オフショアリング」される仕事の数が一体どれだけなのかってモンダイがある。フォレスター・リサーチによれば2015年までに330万のサービス業の仕事が海外に流出すると推定されている。毎月へっちゃらで100万や200万の仕事がつぶれたり生まれたりしてるアメリカでこれが一体どれだけのモンなんだろうか?他の貿易のせいで生じた失業(主に製造業)についても同様の事が言える。2001年において貿易により失業しちゃった人は全失業者の0.6%にしかすぎないと言われている。

筆者としては、政治家たちが雇用問題に敏感になっている有権者の心理につけこんで、あまり上等じゃないやり方でこのモンダイを政治問題化してしまってるんじゃないかってゆー見方もできなくもないんじゃないと思うわけだ。

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□ リベラルの課題
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貿易・サービス業の職の海外流出モンダイにかこつけて弱い産業を守る保護主義的政策に舵を切るのはあまり感心できない。筆者はぜんぜんブッシュがいいとは思わないんだけど、特にリベラル=民主党候補の保護主義的な議論には危機感を少し感じている。クリントンはリベラルだったけど、生産性の低い産業を守るだけではモンダイはまったく解決しないってことがよくわかっていたように思う。彼はお膝元の民主党議員の猛反対を封じ込めて北米自由貿易協定を成立させたんだった。

クリントンを強烈に皮肉った映画「パーフェクト・カップル」でジョン・トラボルタ扮するクリントンをモデルにした民主党候補は、さびれた工場の労働者にむかって「私はこの工場を生き延びさせるという約束はできない。なぜなら経済は変わってしまっており、あなたたちはこれからオツムと技術で競争して行かなければならないからだ。私はそのための教育と訓練は約束する」ってな感じの事を言うんだけど、とてもクリントンっぽくておかしかった。

クリントンが信望を失って以来、民主党の昔風のリベラルへの回帰を止