2007/8/12 日曜日
先週は目の玉が回る状態で、あんまり何が起こってるのか良く分かっていなかったのですが、ECBやらFedが何やら気前良くお金をばらまいていたようです。
Fedが木曜に240億ドル、金曜に380億ドル(190億、160億、30億のトランシェ)
ECBが木曜に948億4,000万ユーロ、金曜に610億500万ユーロ(まぁ大体2,136億ドル)
あとは、カナダ(15億5,000万米ドル程度)、日本(84億米ドル程度)、スイス、オーストラリア、シンガポールなどがちょろちょろという感じですが、ECBとFedは(他も大体そうでしょうけど)基本的にクレジット市場の動揺で金利が急上昇したのに対応したオペでした。
びっくりするのがやはりECBの供給額で、皆さん目を剥いてました。規模を分かりやすくするために言うと、ユーロのベースマネー(M0)が大体合計で8,000億ユーロですから、ベースマネーの10%以上のお金を1日間でじゃぶじゃぶ流し込んだ計算になります。
木曜の皆さんの第1反応は「どっかで火事か?」とか「何かあるに違いない」とか「・・・」というものでした。驚いたり深読みしたりしてるうちに米国でもオーバーナイト金利が6%を飛び抜けちゃったので、FedがちょろちょろっとMBSやら国債を引き揚げて米国は木曜のオワリには5.25%に落ち着きました。
で、最初に口火を切った欧州なんですが、つい先日も、ドイツ産業銀行(IKB)がサブプライム・ローンの影響で親会社のドイツ復興金融公庫(KfW)が80億ユーロもの保証を強いられたり、ドイツ政府が救済に乗り出したりで(意外な名前が出て)少しばかり神経質になっているところに、BNPパリバのファンド閉鎖のニュースだったので、おそらく多くの銀行で「絶対貸すな」という号令でも出たんでしょうか、金利はあっという間に4.6%を突き抜けてしまいました(一番下の図)。
欧州は一応市場の規制はEU圏共通ですが、実際の銀行の監督業務は各国の権限です。で、国によって監督のやり方も、監督を行うシステムも組織も異なっています。例えばスペインやイタリアだと銀行の監督は中央銀行ですし、オーストリアとかだと政府官庁、ドイツやフランスは中銀と特別の監督機関の共同責任とかになっていて、おまけに同じような差異が証券なんかの各市場でも存在して、米国人などから見ると本当に「エキゾチックな」市場で想像がつかなくても仕方がありません。
というわけで、欧州は各銀行から見ても、ECBから見てももともとデザイン的に極めて「見通しが悪く」何かあると疑心暗鬼になりやすい環境なんで、ECBがえいやとばかり「デパートのバーゲン」式に無制限の(といっても担保付きですが)スペシャル・テンダーをしたら、各銀行がそれこそデパートのバーゲン会場でのつかみどりよろしく掴めるだけ掴んだという感じではないかと思われます。火元に直接振りかけるのではなくて、突然全館一斉にスプリンクラーを回したようなもんですから、そりゃまぁ大変なことです。
この手の「無制限のデパートのバーゲン」は911のテロ以来ですが、911の時も1日か2日か忘れましたが1,000億ユーロ程度が「捌けた」ような記憶があります。というわけでECBが緊急で「スプリンクラー」を回すと「1目盛り」1,000億ユーロが相場ということではないでしょうか。これを「ファイン・チューニング」というのは、英語力に問題がありそうですが。
(8/13 : 今日も朝方4.15%までもたげたようですが、470億ユーロを追加投入して押さえ込んだ模様。銀行のビッドは相変わらず840億ユーロ程度あったようです。)

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2007/7/24 火曜日
ドイツ政府が次世代サーチ・エンジン技術のリサーチ・プロジェクト「Theseus」に1億2,000万ユーロの補助を行うことを欧州委員会が承認したと言う記事が少し以前に出ていました。
ニュースによると、ドイツ政府は最初にシーメンス、SAP、エンポリスなどに資金を出した後は、プロジェクトの進行に応じて小規模の会社にも資金を出すとのことです。EUでは、フランスも同様の「国家的検索エンジン・プロジェクト」でトムソンに補助金を出す件で欧州委員会と交渉中で、何としても米国に対抗したいという欧州各国の政府やブリュッセルの意向が見えます。
「エアバスの夢よもう一度」ということかもしれませんが、「米国に対抗」するために、「政府が戦略的テクノロジーをピック」して「補助金を出す」という構図自体に既に欧州のダイナミズムの衰えようを感じてしまいます。欧州でも技術者の対米流出が結構起こっていますが、政府が力を入れるほど「シラける」向きも多くなるような気もいたします。
話は変わりますが少し以前に、欧州のハイパフォーマンス・コンピューティング・イニシアティブ(欧州レベルで世界最高級のペタスケールのスーパーコンピュータのセンターを建設しようというプロジェクト)に関して議論したことがあったのですが、その時に渡された「予備的なスタディ」は文書だけでも合わせて軽く200ページはあるという代物でした。
中に入っていた「Scientific Case」では、欧州レベルでスーパーコンピュータのセンターを作れば、地球温暖化のモデリングがより精緻にできるので温暖化の防止の役立つとか、タンパク質の折りたたみ間違いの解明が期待できるとか、次世代のヘリのモデリングがどうだとか、結構「マジメ」なことがびっしりと書いてあって、どっかの国の研究者の「お金ちょーだい」文書のぺらぺらの「Scientific Case」なんかと比較するとやはり良く出来ている気もしました。
しかし、気になったのは、地球温暖化を防ぐためにどーだこーだと言いながら、常に最後に出てくるのが、「欧州レベルで世界最高の施設を作らないと米国に対抗できない」とか「米国や日本では戦略的にスーパーコンピュータで優位に立とうとしているから、欧州も同様にしないと欧州の科学が世界一線級でなくなる」ってな感じの文章だということでした。
この手の「(政府の力で)科学よりも対米対抗」とか上のサーチエンジンでは「(政府の力で)技術/ビジネスよりも対米対抗」とか感じさせるところに、何となく欧州の周縁化というか、科学者、技術者、実業家の志の低下と言うか、ある種の病を感じてしまいました(それに、同じようなところで税金使って対抗しなくても進んでいる部分は別に一杯あるのにねぇ)。ただし、人によって感じ方はいろいろあるみたいで、私と一緒にスパコンの文書見た人は「さすがに欧州は戦略的に頑張って考えてる。日本の政府はどうなってんだ」なんて言ってましたが・・・
あと、欧州レベルって言ってもプライドの高い国の集まりなんで、結局どこに何のセンターを作るんだとか、コンピューティング時間をどう配分するんだとか、各国に各分野のCOEを作るんだったらどこの国が何のCOEをとるんだとか、コンピューティングの面でもグリッド派やスパコン派や、たぶんまたずーっと延々とやるんでしょう。サーチエンジンのプロジェクトでも結局ドイツとおフランスで分裂でしたし。あぁ、ヨーロッパ。
欧州検索エンジン・プロジェクト
欧州委員会のリリース
APのニュース
ついでに
欧州ハイパフォーマンス・コンピューティングのScientific Case(PDFです)
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2006/12/8 金曜日

現在、欧州における二酸化炭素排出権取引スキーム(EU ETS)の第2フェーズ(2008-2012年)の排出枠を決定するプロセスが進行中です。これは、EU ETSの対象となる欧州企業がこの期間に排出できる温室効果ガスの総量を決定づけるものなので、極めて重要なものであると言えます。
もちろん各国は自国業界の保護のためにできるだけリクツを付けて大きい排出枠を提案し、それに対して欧州委員会が各国の過大な提案をできるだけ削ろうとする、という構図になります。
第1フェーズ(2005-2007年)では、今年4/5月に発表された2005年の検証データにより排出枠が「枠」とは言えないくらいに大きい(つまり、排出を減らす必要がないほどに排出枠が甘かった)ことが明らかになり、排出権の価格は数日の間にメルトダウンしました。こういう背景もあり、第2フェーズの割当では欧州委員会がEU ETSの成否を賭けて各国政府の提案に対し強硬な態度に出ると予想されていました。
実際、11月末には、欧州委員会は、その時点で提出されていた10カ国の(極めて優等生的な英国を除く)すべての提案に対して約7%の削減を要求し、排出権の価格もやや持ち直しました(記事冒頭のグラフ:Point Carbonのサイトより)。しかし、この回復の後でさえ、かつては30ユーロ前後であったEUA(EUアローワンス)価格は7ユーロ台中盤と見るカゲもありません。何がマズいんでしょうか。
ストレートに見ると、市場は欧州委員会がどれほど頑張ろうと、排出権の供給が逼迫することはないと踏んでいるワケです。この背景の一部には、途上国で行った排出削減プロジェクト(CDM:クリーン開発プロジェクトなど)による削減量の一部も自分の排出権としてカウントできる、といういわゆる「京都メカニズム」による排出権の供給が急増していることがあります。(実際には欧州の多くの国では自国内で使用できる海外調達排出権の量に制限をかける見込みなので、それがどの程度になるかという状況次第では、また展開が異なってくるかもしれません。また、この他にも、ロシアやウクライナの巨大な「潜在的余剰」というのもあるわけですが。)
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2006/6/30 金曜日
EU排出権取引スキーム(EU ETS)における、2005年の排出量の検証結果が5月の中旬に発表されて、排出枠に対する予想外の排出量の低さで市場はぐちゃぐちゃになっていましたが、検証結果を見れば見るほど色々面白いです。もともと欠陥の多い超人工的な市場で欠陥と参加者や需給の動向の関係やらで市場の勉強にはもってこいなのですが、そこらへんの面白い話は今度時間のある時にでも。
排出量が排出枠に比較して低かったというのは、もちろんすごく省エネが進んでいるからではあまりなくて、排出枠が単に大きかっただけという面がかなり大きいのですが、面白いのは国別の状況で、一番排出枠が余って楽なのがドイツ(21Mtのアローワンス余剰)とフランス(19.1 Mtの余剰)になっています。でもって一番厳しいのが英国(27.1Mtの排出過剰)となっています。ちなみにEU全体では約65 Mtのアローワンス余剰と排出権はだぶついています(少なくとも2005年は)。
で、さっきも言いましたが、この結果は別にドイツとフランスで省エネが進んでるからでも、英国がさぼっているからでも全然なくて、見ようによっては各国政府がどれだけ(不)真面目に取り組んでいるかのバロメーターとも言えます(排出枠は欧州委員会と各国政府の政治的綱引きで決まる部分も大きいので、排出枠が大きいってことはそれだけ自国産業が二酸化炭素を大量に排出できるように政府が頑張ったってことですから)。
で、EU ETSはもともとEUの「威信的」プロジェクトの1つだったワケですが、とかく「自国産業に不利」とか「排出枠がキツすぎる」とかブータレながらも排出枠設定当時はまだEUを主導していたフランスとドイツが仲良く自分たちのフトコロだけは確保していたワケでこれはやはり大したものです(?)。ただ実績データが出たと言うことで、今度の排出枠割当では欧州委員会も甘くはないと思いますが。
一方英国ですが、ブレアが京都議定書目標よりはるかに厳しい「自主目標」を掲げていただけあって、EU ETSの排出枠もそれなりに厳しかったということで少なくとも「言行一致」は示されたようです(おっと、行動はそれほど伴っていないので「言言一致」でしょうか)。
ところで欧州全体では国ごとにデコボコもありますが、2008-2012年の間の京都議定書目標自体は射程に入ってきているようです(まだ排出超過の見込みですが)。現時点で一番ヤバそうなのはカナダと日本ということのようです。
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2006/5/6 土曜日

EU排出権取引取引スキーム(EU ETS)における価格がメルトダウンしています。上の図(Source: PointCarbon)でも分かりますがつい数週間前まで30ユーロ程度で安定していたEUA(EUアローワンス)価格は12ユーロ程度まで急落しています。
これはフランス、オランダなど数カ国が2005年において二酸化炭素排出量が割当量を下回ったと発表したためで、おまけに大排出国のドイツの排出量も割当量を下回ったという(未確認)報道がパニックに追い打ちをかけた状況になっているためです。
原油の高騰->コスト安の石炭使用の上昇->二酸化炭素排出の増加->排出権価格高騰というストーリーが完全に外れたワケで、ロンドン証取ではカーボン金融からみの会社は軒並み下落、排出権を山ほど抱えている企業の株も下落となっています。高値を当て込んで最近CDM投資の呼び込みに熱心だった途上国の排出権商売熱にも少し影響が出そうですね。
しかし、排出枠という市場最大のファンダメンタルがEU委員会と各国政府の綱引きという政治要因で決まるEU ETSの最大の弱点が垣間見えるような値動きでもあります。
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