2007/6/7 木曜日

2050年までに二酸化炭素排出半減?

日欧が温室効果ガス半減で合意」で「米国包囲網」って・・・・

どうも最近誤解を煽る記事が多いようですが、日本は基本的に2012年の京都議定書の第1約束期間の後は「開発途上国も拘束されない限り拘束力のある数値目標には反対」しておりますので、基本的には米国とほぼ同じスタンスだと言えます。

しかも日本は京都議定書の締約国の中では目標達成が危ぶまれる最右翼の国の1つであり、国内での削減措置をほとんど行っていない国としても良く知られています。はっきり言ってこの問題に関しては安倍首相が胸を張れる点はほとんどありません。拘束力のある目標に反対ということは現在の京都体制に反対という事ですから、日本の「エコ」な方々がこれをあまり問題視していないのも不思議な気もします。

個人的には、議定書には長期目標も開発途上国の参加も欠けていますから、京都体制に反対ということ自体は論理的に別におかしいことではないと思っていますが、強制力のない「枠組み」はほとんど完全に無意味だと思っています(こうやって新聞ダネになるので政治家にとっては意味があるのかもしれませんが)。

米国やカナダの現政権のように不人気をおそれず「反対」と言うこともせず、欧州各国のように自らの身を(少しだけ)切ってリーダーシップをとる事もせず、外交の場での実体的な意味のない(国内向けの)パフォーマンスを行うリーダーに対して、各国の指導者は「老練な政治的マヌーバー」と見るのか、「第三世界並みのステーツマンシップ」と見るのかは分かりませんが。

「強制力のある目標なしに二酸化炭素を抑制する」などというのは、「駐車禁止の罰則・罰金なしに路上駐車を減らす」と言ってるようなもんです。国のお金で低炭素技術(駐車場の建設)にいくらお金を積んでも、安い高炭素技術(路上駐車)があるわけですから、強制的な目標(駐禁)なしにはケーザイ学的に見ても実効性のある温室効果ガスの抑制が不可能であるのは明確であるように思われるのですが。

「拘束力のある目標は省エネの進んだ日本に不利」などというのも良く聞きますがこれも分かりません。それを言うならば、少なくとも人口当りの温室効果ガス排出量、炭素集約度のどれをとっても、「拘束力のある目標」を主張している欧州のOECD加盟諸国の方が(日本とほぼ同等の少数の例外を除いて)日本よりも不利なはずです。

今はポスト2012年の国際交渉を視野に入れた駆け引きで各国ともバルーンを上げている状態だと思いますが(ブッシュまでが「長期目標」と言い出すくらいですから)、政権与党が極めて先進的な気候変動法案のドラフトを出している英国以外はあまりどこも「ぱっとしない」のが実情ではないでしょうか。まぁ、日本もその例にもれないということで、、、

2007/4/7 土曜日

米最高裁の二酸化炭素判決ってどうよ、、、

米国最高裁は、いわゆる「マサチューセッツ州対米国環境保護庁(EPA)」裁判で、二酸化炭素を含む温室効果ガスは大気浄化法(The Clean Air Act)が規定する「大気汚染物質」に該当し、米環境保護局(EPA)に規制の権限があるとの判断を下したようです(判決文:PDF)。

この「マサチューセッツ州対米国環境保護庁(EPA)」というのは、マサチューセッツ州など12州や環境団体がEPAに対して 二酸化炭素等の排出規制をするべきだと訴えたものでしたが、今回はEPAが大気浄化法の下で温室効果ガスを規制する権限をもつかどうかが争点となっていました。9人の判事のうち5対4と言う「真っ二つ」だったようです。

これに関しては、「ブッシュ政権の敗北」とか環境保護派の勝利とかの論調が多く、地球温暖化とのからみで歓迎する報道も多いようです。ただ最高裁の今回の判決は、温暖化とのからみでは、少しやっかいな判断であるような気もします。

問題となる点は、法律の大幅な見直しでもしないかぎり、EPAは実質上、二酸化炭素を実効的に規制できる法的な枠組みを現時点では持っていないということです。今回の判断でもベースになった大気浄化法は「古き良き(?)」時代の健康被害に関連する大気汚染物質を規制するための法律で、もしEPAがこの「ポンコツ」を用いて規制を行うとなると、大気浄化法のTitle IVによる環境基準を用いるしかない可能性があります。

この環境基準を用いた規制というのは、鉛、一酸化炭素、粒子状物質の大気中の濃度(あの何とかppmとかゆーやつです)を設定するもんですが、いくら米国が最大級の二酸化炭素排出国だとしても、全世界の排出量の4分の3が米国外と言う状況で、例えばIPCCの言う「大気中の二酸化炭素濃度550ppm」なんぞという基準を使用した一国での規制は実質上無意味で不可能です(米軍に中国やインドの自動車工場や火力発電所を爆撃する許可でも与えない限りは)。つまり、もともとローカルな環境被害の防止を目的とした法律では、グローバルな問題に対処するには、力不足すぎるというわけです。

じゃあ逆に、最高裁が被上訴人(EPA)側についたら良かったのか、と言われると、これはもちろん温室効果ガス規制における政府の怠慢を合法化することになるんで、これはこれでまた困ったもんなんですが・・・まぁ、EPAも規制の即時実施を命令されたわけではないですから、いろいろ検討することになるんでしょうが、いずれにせよ、議会では民主党が多数派で、しかも次期大統領の有力候補は二酸化炭素の規制に乗り出す見通しが相当高い(マケイン、ヒラリー、オバマの各候補は強力な規制論者です)と言う状況を考えると、地球温暖化という観点だけから見た場合は、最高裁は下級裁判所に訴訟を差し戻して、議会とホワイトハウスのイニシアティブにまかせるのが最も早道であった様な気もします。

2006/12/8 金曜日

温暖化ガス排出権市場価格

現在、欧州における二酸化炭素排出権取引スキーム(EU ETS)の第2フェーズ(2008-2012年)の排出枠を決定するプロセスが進行中です。これは、EU ETSの対象となる欧州企業がこの期間に排出できる温室効果ガスの総量を決定づけるものなので、極めて重要なものであると言えます。

もちろん各国は自国業界の保護のためにできるだけリクツを付けて大きい排出枠を提案し、それに対して欧州委員会が各国の過大な提案をできるだけ削ろうとする、という構図になります。

第1フェーズ(2005-2007年)では、今年4/5月に発表された2005年の検証データにより排出枠が「枠」とは言えないくらいに大きい(つまり、排出を減らす必要がないほどに排出枠が甘かった)ことが明らかになり、排出権の価格は数日の間にメルトダウンしました。こういう背景もあり、第2フェーズの割当では欧州委員会がEU ETSの成否を賭けて各国政府の提案に対し強硬な態度に出ると予想されていました。

実際、11月末には、欧州委員会は、その時点で提出されていた10カ国の(極めて優等生的な英国を除く)すべての提案に対して約7%の削減を要求し、排出権の価格もやや持ち直しました(記事冒頭のグラフ:Point Carbonのサイトより)。しかし、この回復の後でさえ、かつては30ユーロ前後であったEUA(EUアローワンス)価格は7ユーロ台中盤と見るカゲもありません。何がマズいんでしょうか。

ストレートに見ると、市場は欧州委員会がどれほど頑張ろうと、排出権の供給が逼迫することはないと踏んでいるワケです。この背景の一部には、途上国で行った排出削減プロジェクト(CDM:クリーン開発プロジェクトなど)による削減量の一部も自分の排出権としてカウントできる、といういわゆる「京都メカニズム」による排出権の供給が急増していることがあります。(実際には欧州の多くの国では自国内で使用できる海外調達排出権の量に制限をかける見込みなので、それがどの程度になるかという状況次第では、また展開が異なってくるかもしれません。また、この他にも、ロシアやウクライナの巨大な「潜在的余剰」というのもあるわけですが。)
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2006/10/7 土曜日

地球温暖化:米国をナメると後がマジでコワイぞっ、、、と

最近時々、地球温暖化を否定するような本だとか、記事だとかを目にすることがあります。大体ネタは米国の地球温暖化懐疑派のものなんですが、そういう記事や本と合わせて「米国ではXXXXが常識」(XXXXにはもちろん温暖化に関して懐疑的な言葉が入ります)とか「温暖化で騒いでいるのは一部のリベラル」なんて文句が入ってたりするのですが、米国の状況に対するこういう無知は極めてリスキーであると思われます。

もちろん米国は多様ですから、話す人によって全く違う世界が見えるわけで、上で挙げたような記事や本が「間違い」と言うのは困難なのですが、少なくともミスリーディングであるのは確かです。2009年以降(要するにブッシュ以降)、共和党政権が続いたとしても、何らかの形で明確な連邦レベルでの温暖化ガス排出規制のスキームが打ち出される可能性がかなりあると見ているビジネスマンは結構多く、その影響も少し考えておく必要があります(もちろん「玄人さん」達は考えていると思われますが)。

現在、米国が温暖化ガス規制を行っていない大きい理由には、米国人の規制嫌いの他には、「他の国が何もしていない(すなわちグローバルでの実効性が無い)のに何でワシらだけ損する必要があるのか」というのがあります。例えば、クリントンが京都議定書を批准のために議会に送ることができず、ケリーも京都議定書批准に反対と述べた大きい理由の1つには、米上院の「バード-ヘーゲル決議(92対0での圧倒的可決)」があります。ここでは、米国が行動する際には「発展途上国の意味のある参加が不可欠」とされており、途上国に排出枠が課されていない京都議定書では、共和党でなくても、もともと米国の参加は不可能に近かったと言えます。

逆に言うと、そのような米国において、米国内レベルであろうと連邦レベルの対策なり規制が取られた場合には、何らの対策も行っていない途上国、そして大排出国であるにもかかわらず、国内規制がほとんどなされていない日本のような先進国に対するプレッシャーは、決して小さいものではなかろうと想像できます。大体、アメリカの「都合の良い記憶回路」と「腕力」に関しては疑問の余地が無いわけで・・・、そこで米国の圧力と有権者の怒りという「リスク」に備えるため、「米国2009年対策説」の根拠を少し下に挙げておきます。
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2006/8/12 土曜日

つれづれ:地球は暖まっていないし、暖まった方が良い?

先日、「選択」という雑誌の古いやつを人に頂いてパラパラ読んでいたのですが、最初の方のページに渡辺サンという東大の先生か何かが出ていて「地球は温暖化なんかしていないし、二酸化炭素が温暖化の原因となっているのも実証されていない」というようなことをおっしゃっていました。私も専門外なんで科学的に厳密にどうだと言われると良く分からない部分もあるのですが、ここまで言い切れるのはどうかという感じもします。

アメリカの学者なんかですと、こういうことをおっしゃる方は産業ロビー関連か共和党の宣伝関連の方が多いので分かり易いのですが、日本でここまで言い切れるのには何があるのか良く分かりません。とゆーわけで、これだけ見てどーだこーだもフェアではないので先生の筆になる「これからの環境論―つくられた危機を超えて」というのを読んでみました。
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2006/6/30 金曜日

二酸化炭素に見るEU

EU排出権取引スキーム(EU ETS)における、2005年の排出量の検証結果が5月の中旬に発表されて、排出枠に対する予想外の排出量の低さで市場はぐちゃぐちゃになっていましたが、検証結果を見れば見るほど色々面白いです。もともと欠陥の多い超人工的な市場で欠陥と参加者や需給の動向の関係やらで市場の勉強にはもってこいなのですが、そこらへんの面白い話は今度時間のある時にでも。

排出量が排出枠に比較して低かったというのは、もちろんすごく省エネが進んでいるからではあまりなくて、排出枠が単に大きかっただけという面がかなり大きいのですが、面白いのは国別の状況で、一番排出枠が余って楽なのがドイツ(21Mtのアローワンス余剰)とフランス(19.1 Mtの余剰)になっています。でもって一番厳しいのが英国(27.1Mtの排出過剰)となっています。ちなみにEU全体では約65 Mtのアローワンス余剰と排出権はだぶついています(少なくとも2005年は)。

で、さっきも言いましたが、この結果は別にドイツとフランスで省エネが進んでるからでも、英国がさぼっているからでも全然なくて、見ようによっては各国政府がどれだけ(不)真面目に取り組んでいるかのバロメーターとも言えます(排出枠は欧州委員会と各国政府の政治的綱引きで決まる部分も大きいので、排出枠が大きいってことはそれだけ自国産業が二酸化炭素を大量に排出できるように政府が頑張ったってことですから)。

で、EU ETSはもともとEUの「威信的」プロジェクトの1つだったワケですが、とかく「自国産業に不利」とか「排出枠がキツすぎる」とかブータレながらも排出枠設定当時はまだEUを主導していたフランスとドイツが仲良く自分たちのフトコロだけは確保していたワケでこれはやはり大したものです(?)。ただ実績データが出たと言うことで、今度の排出枠割当では欧州委員会も甘くはないと思いますが。

一方英国ですが、ブレアが京都議定書目標よりはるかに厳しい「自主目標」を掲げていただけあって、EU ETSの排出枠もそれなりに厳しかったということで少なくとも「言行一致」は示されたようです(おっと、行動はそれほど伴っていないので「言言一致」でしょうか)。

ところで欧州全体では国ごとにデコボコもありますが、2008-2012年の間の京都議定書目標自体は射程に入ってきているようです(まだ排出超過の見込みですが)。現時点で一番ヤバそうなのはカナダと日本ということのようです。

2006/6/2 金曜日

またクールビズの季節・・・

また、クールビズの季節だそうで、これ自体は二酸化炭素にも地球温暖化にはほとんど影響はないと思いますが、暑い中完全武装というのもしんどいですから、涼しい格好というのは少しは楽かもしれません。環境大臣も仕事してるみたいに見えますし。学者にも二酸化炭素と温暖化の関係に疑問を持っている向きもいるようなんで、適当にやっておこうということかもしれません。

ただ、京都議定書に関して言えば、現時点での見通しだけからは日本の状況はかなり危機的なように見えます。下の図はちょっと以前にPointCarbonが出したものですが、現在予定されている政策、プログラム、予算等をすべて考慮した上で各国が京都議定書の約束に比較してどういう状態になるかという予想(二酸化炭素の排出量が京都目標と比較して何%上回るか、あるいは下回るか)を示したものです。

まぁ、日本よりマズい国はもともと京都議定書などほとんど何とも思っていないイタリアとスペイン、そして今年の始めに新政権が誕生して先行き怪しそうなカナダぐらいです。これだけからすると量的に見れば日本は群を抜いた「違反第1位」になるのは間違いなさそうです。実際には最近はCDMなど開発途上国からのプロジェクトベースの排出権の供給が大幅に増加しているので、実際にはこれよりだいぶマシかもしれませんが、「クールビズ」やら「もったいないふろしき」で何とかなる次元の話では全くありません。

さて、日本としてはそのような「不名誉」だけは避けたいところでしょうが、最後の切り札があるので政治家の皆さんも涼しい顔をしているのかもしれません。それはロシアとウクライナなんですが、もともと京都議定書批准のエサとして旧ソ連時代の排出量を基準に排出枠をもらっているので、山のように排出権がだぶついています。

下の図は今度は京都目標に比較して何ギガトンくらいの余剰/不足になるかという予想ですが、ロシア一国の余剰排出枠だけでEU、日本、カナダの不足量をカバーしておつりがくるくらいです。

まぁ、この排出枠(AAU)に関しては取引の可能性もメカニズムもまだ不透明な点が多いですが、いざとなったらロシアにこれだけ大判振る舞いした各国の政治力がモノを言うことになるのではないでしょうか。プーチンもガスや原油だけでなく儲け口がいろいろあってめでたいことです。

ところで引用したPointCarbonの資料は要約版が無料でダウンロードできるので、興味のある方はどうぞ。

Carbon 2006 - PointCarbon

2006/5/6 土曜日

二酸化炭素価格メルトダウン

EU排出権取引取引スキーム(EU ETS)における価格がメルトダウンしています。上の図(Source: PointCarbon)でも分かりますがつい数週間前まで30ユーロ程度で安定していたEUA(EUアローワンス)価格は12ユーロ程度まで急落しています。

これはフランス、オランダなど数カ国が2005年において二酸化炭素排出量が割当量を下回ったと発表したためで、おまけに大排出国のドイツの排出量も割当量を下回ったという(未確認)報道がパニックに追い打ちをかけた状況になっているためです。

原油の高騰->コスト安の石炭使用の上昇->二酸化炭素排出の増加->排出権価格高騰というストーリーが完全に外れたワケで、ロンドン証取ではカーボン金融からみの会社は軒並み下落、排出権を山ほど抱えている企業の株も下落となっています。高値を当て込んで最近CDM投資の呼び込みに熱心だった途上国の排出権商売熱にも少し影響が出そうですね。

しかし、排出枠という市場最大のファンダメンタルがEU委員会と各国政府の綱引きという政治要因で決まるEU ETSの最大の弱点が垣間見えるような値動きでもあります。

2006/2/7 火曜日

地球は暖まっているか冷えているかの賭け市場??

What’s my sceneさん経由、時事通信のニュースで「地球は『ミニ氷河期』に=太陽活動が停滞−ロシア天文学者」というのを見たのですが、少し以前に「Nature」で読んだ地球温暖化に関するちょっと面白い賭けの話を思い出しました。

この賭けを提案したのは、現在日本の地球環境フロンティア研究センターで地球環境モデリングの研究をしている英国人研究者のJames Annanさんですが、賭けの内容は1998-2003年の平均地球表面温度と2012-2017年の平均温度を比較して、気温が上昇していたらAnnanさんの勝ち、気温が下がっていたらAnnanさんの負けで、賭け金は10,000ドルというものです。

Annanさん、面白いことにこの賭けを地球温暖化に対する懐疑派の大物(で強制的な2酸化炭素削減スキームに反対の米国共和党の理論的支柱)であるMITのRichard Lindzen教授に挑んだのですが、Lindzen教授は賭け率が50-1なら受けるという何とも情けない返事だったようです(つまり、気温が下がればLindzen教授は10,000ドルもらうが、気温が上がった場合にはLindzen教授は200ドルしか払わないという、Lindzen教授に極めて有利な条件でならば受けても良いということだったようです)。

結局Lindzen教授とは賭けの条件で折り合わなかったのですが、まぁ、この地球温暖化懐疑派の大物が自分の理論にどれくらい自信があるのか良くわかるような話なので一時大きな話題になっていました。

後日ロシアの2人の学者Galina MashnichさんとVladimir Bashkirtsevさんがこの賭けを受けて立ったようで、この2人は上でリンクした記事の学者と同様、地球気温は太陽の活動に大きく影響されるという立場のようです。

ところで、この話を紹介しているGuardianの記事でも指摘しているように、現在短期的な気候の変化による農作物等への打撃はCMEの天候取引などのメカニズムで一部ヘッジすることが可能です。しかし、地球温暖化の長期的なダメージに関してはヘッジが困難です。このAnnanさんの賭けのように、長期的な将来の気温先物のような市場があれば、温暖化の際に沈没などの危機にさらされる地域にとっては良いヘッジになりそうな気がします。ロバート・シラーのマクロ・リサーチあたりが商品化すると面白いのですが。

Natureの記事(有料)
Guardianの記事(無料)

2005/8/12 金曜日

もう1つの高騰:排出権取引

原油が高騰していますが、昔ちょっと話題になった100ドルって話もまた復活するかもしれませんね。ところで、それに負けないくらい印象的な価格上昇を見せているのが二酸化炭素の排出権です。下のグラフは欧州排出権取引スキーム(EU ETS)での排出権価格ですが、今年の初めの1トン当たり7ユーロ前後から6月には25ユーロを超える勢いでした(現時点ではかなり反落していますが)。

Co2Price

これは、京都議定書のターゲットを達成できない国が相当数あるという見方を裏付けるものですが(つまり、排出できる量:排出権の需給悪化が想定されるってこと)、もう1つはEU当局が排出枠に関してある程度厳格な立場を取り続けるだろう、という市場の当局に対する「一定の信認」の表明ともとれます。

ところで、京都議定書のターゲットを(まっとうな方法では)達成できないだろうと見られている最右翼の国がカナダと日本だということはあんまり知られていないようですね。クールビズなんてのんきなことやってますが。
それなりに進んでいるのは上にあげた欧州で、域内の25カ国にある13,300の大規模な二酸化炭素排出企業/施設(発電とか地域暖房とかね)に対し、強制的な排出枠が割り当てられ、排出枠を下回った場合はEU ETS市場で排出権を売却できるし、逆に排出枠を超えそうな企業は排出枠を遵守するためにETS市場で排出枠の購入ができるというものです。

排出枠を超えた場合は重い罰金が課されるため、企業はいやでも自社施設の排出枠に神経質にならざるを得ません。排出権市場は米国でのSOx排出削減での経験をもとにして創設されたもので、市場メカニズムに沿った形で経済的にこの手のあんまり有り難くないものを減らすには有効な政策手段であることが確認されています。

さて、日本に関してはこのような国内排出権取引システムも存在せず、海外の大方の見方は「日本は多分議定書の目標は達成不可能、でもまっとうじゃない方法で達成するかも」というものです。

つまり、カギはロシアとウクライナなんですが、京都議定書のもとではこの両国は二酸化炭素をまったく減らす必要がない、、、というより現在の排出量より排出枠の方が極めて大きくなっており、余分な排出枠を外国に売却して大儲けできるという状態になっています(なんでこうなったかに関しては、長くなるので省略・・・)。この余分な排出枠は、実際の二酸化炭素排出削減には関係なく、しかも投機的目的で使用される可能性があるため「ホットエア」と呼ばれています。で、日本はロシアに大金を払ってこのホットエアを購入してメンツを守るんじゃないか(そしてロシアは足許見透かしてすごい価格をふっかけるだろう)というのが海外では大方の見方なわけです。

一方のカナダに関してもホットエアを購入するんじゃないかという見方もありましたが、カナダ国内ではホットエアなんかを買ってまで目標を達成するということに対して大きな反対があり(まっとうですね)、主要閣僚がすでにカナダの議定書目標不遵守の可能性を示唆したりしています。それでもカナダでは大規模最終排出事業者(LFE)に対して排出枠を強制し、欧州と同様の排出権取引システムを導入することはほぼ決定的になっています。

のこる日本ですが、2005年から環境省主導で試験的な国内排出権取引システムが始まります。しかし、自主参加型(つまり強制力がなく参加自由)で、参加企業には電力などの大規模排出事業者は含まれず、しかも参加表明した企業には政府が排出削減のための投資に対する補助金を支払うという、実効性はほとんどゼロの補助金垂れ流しのおそろしいシステムです。これでは排出削減のコストが税金を通じて間接的な形で賄われるため、排出権の市場価格に反映されないだけではなく、企業の製品コストにも反映されません。

これでは普通では市場に反映されない二酸化炭素の排出コストを人為的に市場に反映させ、排出レベルを本来経済的に許容できるレベルに(しかも効率的に)下げるという市場メカニズムをまったく無視したものになっています。しかも、試験システムで企業が表明した「自主目標」は27万6,380トンでメチャクチャ少ないんですが、それに対する補助金の予算が26億円ということで、1トン当たりナンと68ユーロ以上となっています。上であげた欧州ETSでの市場価格(一応削減コストを反映していると考えられます)のナンと3倍にあたる税金を補助金として投入するわけですね(ちなみに英国なんかでは排出削減は民間責任であり税金による二酸化炭素排出削減の補助は一切行わないとしています)。

クールビズやこういう役立たずのプロジェクトで「努力している」というアリバイ作りをして、最終的にはプーチンに多額の贈り物をしてホットエアを購入して政府のメンツを守るというおそろしいシナリオではないことを祈るばかりです。なんか私のまわりには「日本はすごく進んでいる」なんて激しく誤解して、議定書不参加の米国批判でストレス発散してる(ちょっと恥ずかしい)人がかなり多いんですが・・・