2009/11/3 火曜日
地球温暖化に関するコペンハーゲン会議が迫っており、どうも国際的合意に悲観的な観測が高まっているようですが(私もやや悲観的ですが)、その理由に関しては少し誤解があるようにも思えます。ということで、少しだけコペンハーゲン会議/合意に関して。
コペンハーゲンに対する悲観論で、米国内でも結構多い誤解に「中国やインドが数値目標に合意できないのに、米国が合意できるはずがない」ってのがあります。
もちろん、昔にも書きましたが、米国ではバード・ヘーゲル決議などもあり、おそらく中国やインドが相当な譲歩をしない限り、どのような条約であっても議会で3分の2の多数による批准はほぼ絶対に不可能です(実際、米国上院は、1991年にUNFCCCを批准して以来、いかなる国際的な環境合意も批准していません)。
しかし、オバマ政権は今回、コペンハーゲンの合意をUNFCCCの下での「実施協定(Implementing Agreement)」の位置付けにするように根回ししており、おそらく合意があってもその形になると思われます。「実施協定」の場合は、各国法の範囲を超えることはないため、オバマの旦那が勝手に署名できるわけです。
というわけで、京都議定書というのは、トップダウンでえいやでターゲットを決めて、後は各国で法制上の実施準備をしたわけですが(そして、もともとそれができるわけがなかった/する気もなかった米国のクリントン政権はドロップアウトしたわけですが)、コペンハーゲンの場合は、各国である程度合意できる線まで交渉して、よいしょと「実施協定」を結ぶという、ボトムアップに近い形になると思われます(いや、なるはずだったと思われます)。
さて、ここで本当の問題ですが、オバマ政権は「ワックスマン-マーキー法案」を通しておけば、表面上の削減目標はそこそこの数字なので、それで国際交渉に臨んで、中国やインドに圧力をかけて、数値目標の約束は無理でもペナルティなしのセクター別メカニズムでも呑ませて、「コペンハーゲン会議の合意という大成功」を宣伝できるという作戦だったと思います。
ところが肝心の「ワックスマン-マーキー法案」(上院では「ケリー-ボクサー法案」ですが)の年内成立がやや怪しくなっているようです。これが成立していない場合には米国はほぼスッポンポンで交渉に臨むことになりますから、すでに一方的に20%削減を表明しているEU(条件付きで30%)を除けば、各国は無理して踏み出す必要もなく、(鳩山首相の25%も条件付きですから、各国の足並みがそろわなければ、その半分や3分の1のオファーでも文句を言われることはないでしょう)、コペンハーゲンでの意味のある合意はムリということになる可能性が高いと思われます。
個人的には「ワックスマン-マーキー」はとんでもない欠陥法案だと思っているので、それでも良いかという気もしないでもないのですが、2012年の京都議定書の失効後の国際体制の合意がないという状況もマズいように思われますので(最終的には何かできるんでしょうが)、痛し痒しというところです。
2007/6/7 木曜日
「日欧が温室効果ガス半減で合意」で「米国包囲網」って・・・・
どうも最近誤解を煽る記事が多いようですが、日本は基本的に2012年の京都議定書の第1約束期間の後は「開発途上国も拘束されない限り拘束力のある数値目標には反対」しておりますので、基本的には米国とほぼ同じスタンスだと言えます。
しかも日本は京都議定書の締約国の中では目標達成が危ぶまれる最右翼の国の1つであり、国内での削減措置をほとんど行っていない国としても良く知られています。はっきり言ってこの問題に関しては安倍首相が胸を張れる点はほとんどありません。拘束力のある目標に反対ということは現在の京都体制に反対という事ですから、日本の「エコ」な方々がこれをあまり問題視していないのも不思議な気もします。
個人的には、議定書には長期目標も開発途上国の参加も欠けていますから、京都体制に反対ということ自体は論理的に別におかしいことではないと思っていますが、強制力のない「枠組み」はほとんど完全に無意味だと思っています(こうやって新聞ダネになるので政治家にとっては意味があるのかもしれませんが)。
米国やカナダの現政権のように不人気をおそれず「反対」と言うこともせず、欧州各国のように自らの身を(少しだけ)切ってリーダーシップをとる事もせず、外交の場での実体的な意味のない(国内向けの)パフォーマンスを行うリーダーに対して、各国の指導者は「老練な政治的マヌーバー」と見るのか、「第三世界並みのステーツマンシップ」と見るのかは分かりませんが。
「強制力のある目標なしに二酸化炭素を抑制する」などというのは、「駐車禁止の罰則・罰金なしに路上駐車を減らす」と言ってるようなもんです。国のお金で低炭素技術(駐車場の建設)にいくらお金を積んでも、安い高炭素技術(路上駐車)があるわけですから、強制的な目標(駐禁)なしにはケーザイ学的に見ても実効性のある温室効果ガスの抑制が不可能であるのは明確であるように思われるのですが。
「拘束力のある目標は省エネの進んだ日本に不利」などというのも良く聞きますがこれも分かりません。それを言うならば、少なくとも人口当りの温室効果ガス排出量、炭素集約度のどれをとっても、「拘束力のある目標」を主張している欧州のOECD加盟諸国の方が(日本とほぼ同等の少数の例外を除いて)日本よりも不利なはずです。
今はポスト2012年の国際交渉を視野に入れた駆け引きで各国ともバルーンを上げている状態だと思いますが(ブッシュまでが「長期目標」と言い出すくらいですから)、政権与党が極めて先進的な気候変動法案のドラフトを出している英国以外はあまりどこも「ぱっとしない」のが実情ではないでしょうか。まぁ、日本もその例にもれないということで、、、
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2007/4/7 土曜日
米国最高裁は、いわゆる「マサチューセッツ州対米国環境保護庁(EPA)」裁判で、二酸化炭素を含む温室効果ガスは大気浄化法(The Clean Air Act)が規定する「大気汚染物質」に該当し、米環境保護局(EPA)に規制の権限があるとの判断を下したようです(判決文:PDF)。
この「マサチューセッツ州対米国環境保護庁(EPA)」というのは、マサチューセッツ州など12州や環境団体がEPAに対して 二酸化炭素等の排出規制をするべきだと訴えたものでしたが、今回はEPAが大気浄化法の下で温室効果ガスを規制する権限をもつかどうかが争点となっていました。9人の判事のうち5対4と言う「真っ二つ」だったようです。
これに関しては、「ブッシュ政権の敗北」とか環境保護派の勝利とかの論調が多く、地球温暖化とのからみで歓迎する報道も多いようです。ただ最高裁の今回の判決は、温暖化とのからみでは、少しやっかいな判断であるような気もします。
問題となる点は、法律の大幅な見直しでもしないかぎり、EPAは実質上、二酸化炭素を実効的に規制できる法的な枠組みを現時点では持っていないということです。今回の判断でもベースになった大気浄化法は「古き良き(?)」時代の健康被害に関連する大気汚染物質を規制するための法律で、もしEPAがこの「ポンコツ」を用いて規制を行うとなると、大気浄化法のTitle IVによる環境基準を用いるしかない可能性があります。
この環境基準を用いた規制というのは、鉛、一酸化炭素、粒子状物質の大気中の濃度(あの何とかppmとかゆーやつです)を設定するもんですが、いくら米国が最大級の二酸化炭素排出国だとしても、全世界の排出量の4分の3が米国外と言う状況で、例えばIPCCの言う「大気中の二酸化炭素濃度550ppm」なんぞという基準を使用した一国での規制は実質上無意味で不可能です(米軍に中国やインドの自動車工場や火力発電所を爆撃する許可でも与えない限りは)。つまり、もともとローカルな環境被害の防止を目的とした法律では、グローバルな問題に対処するには、力不足すぎるというわけです。
じゃあ逆に、最高裁が被上訴人(EPA)側についたら良かったのか、と言われると、これはもちろん温室効果ガス規制における政府の怠慢を合法化することになるんで、これはこれでまた困ったもんなんですが・・・まぁ、EPAも規制の即時実施を命令されたわけではないですから、いろいろ検討することになるんでしょうが、いずれにせよ、議会では民主党が多数派で、しかも次期大統領の有力候補は二酸化炭素の規制に乗り出す見通しが相当高い(マケイン、ヒラリー、オバマの各候補は強力な規制論者です)と言う状況を考えると、地球温暖化という観点だけから見た場合は、最高裁は下級裁判所に訴訟を差し戻して、議会とホワイトハウスのイニシアティブにまかせるのが最も早道であった様な気もします。
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2006/12/8 金曜日

現在、欧州における二酸化炭素排出権取引スキーム(EU ETS)の第2フェーズ(2008-2012年)の排出枠を決定するプロセスが進行中です。これは、EU ETSの対象となる欧州企業がこの期間に排出できる温室効果ガスの総量を決定づけるものなので、極めて重要なものであると言えます。
もちろん各国は自国業界の保護のためにできるだけリクツを付けて大きい排出枠を提案し、それに対して欧州委員会が各国の過大な提案をできるだけ削ろうとする、という構図になります。
第1フェーズ(2005-2007年)では、今年4/5月に発表された2005年の検証データにより排出枠が「枠」とは言えないくらいに大きい(つまり、排出を減らす必要がないほどに排出枠が甘かった)ことが明らかになり、排出権の価格は数日の間にメルトダウンしました。こういう背景もあり、第2フェーズの割当では欧州委員会がEU ETSの成否を賭けて各国政府の提案に対し強硬な態度に出ると予想されていました。
実際、11月末には、欧州委員会は、その時点で提出されていた10カ国の(極めて優等生的な英国を除く)すべての提案に対して約7%の削減を要求し、排出権の価格もやや持ち直しました(記事冒頭のグラフ:Point Carbonのサイトより)。しかし、この回復の後でさえ、かつては30ユーロ前後であったEUA(EUアローワンス)価格は7ユーロ台中盤と見るカゲもありません。何がマズいんでしょうか。
ストレートに見ると、市場は欧州委員会がどれほど頑張ろうと、排出権の供給が逼迫することはないと踏んでいるワケです。この背景の一部には、途上国で行った排出削減プロジェクト(CDM:クリーン開発プロジェクトなど)による削減量の一部も自分の排出権としてカウントできる、といういわゆる「京都メカニズム」による排出権の供給が急増していることがあります。(実際には欧州の多くの国では自国内で使用できる海外調達排出権の量に制限をかける見込みなので、それがどの程度になるかという状況次第では、また展開が異なってくるかもしれません。また、この他にも、ロシアやウクライナの巨大な「潜在的余剰」というのもあるわけですが。)
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2006/10/7 土曜日
最近時々、地球温暖化を否定するような本だとか、記事だとかを目にすることがあります。大体ネタは米国の地球温暖化懐疑派のものなんですが、そういう記事や本と合わせて「米国ではXXXXが常識」(XXXXにはもちろん温暖化に関して懐疑的な言葉が入ります)とか「温暖化で騒いでいるのは一部のリベラル」なんて文句が入ってたりするのですが、米国の状況に対するこういう無知は極めてリスキーであると思われます。
もちろん米国は多様ですから、話す人によって全く違う世界が見えるわけで、上で挙げたような記事や本が「間違い」と言うのは困難なのですが、少なくともミスリーディングであるのは確かです。2009年以降(要するにブッシュ以降)、共和党政権が続いたとしても、何らかの形で明確な連邦レベルでの温暖化ガス排出規制のスキームが打ち出される可能性がかなりあると見ているビジネスマンは結構多く、その影響も少し考えておく必要があります(もちろん「玄人さん」達は考えていると思われますが)。
現在、米国が温暖化ガス規制を行っていない大きい理由には、米国人の規制嫌いの他には、「他の国が何もしていない(すなわちグローバルでの実効性が無い)のに何でワシらだけ損する必要があるのか」というのがあります。例えば、クリントンが京都議定書を批准のために議会に送ることができず、ケリーも京都議定書批准に反対と述べた大きい理由の1つには、米上院の「バード-ヘーゲル決議(92対0での圧倒的可決)」があります。ここでは、米国が行動する際には「発展途上国の意味のある参加が不可欠」とされており、途上国に排出枠が課されていない京都議定書では、共和党でなくても、もともと米国の参加は不可能に近かったと言えます。
逆に言うと、そのような米国において、米国内レベルであろうと連邦レベルの対策なり規制が取られた場合には、何らの対策も行っていない途上国、そして大排出国であるにもかかわらず、国内規制がほとんどなされていない日本のような先進国に対するプレッシャーは、決して小さいものではなかろうと想像できます。大体、アメリカの「都合の良い記憶回路」と「腕力」に関しては疑問の余地が無いわけで・・・、そこで米国の圧力と有権者の怒りという「リスク」に備えるため、「米国2009年対策説」の根拠を少し下に挙げておきます。
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