2007/8/1 水曜日

政治の脳みそ:Political Brain

今、米国の民主党関係者の間で良く読まれている本が、The Political Brainというやつです。(ところでこの本は米国のアマゾンではとっくに売ってますが、日本ではまだ予約のようです。変ですねぇ)。

この本はビル・クリントンやハワード・ディーンが言及してから一気に話題になったようで、著者はエモリー大の心理学教授で、政治的な情報が脳内でどのように処理されているかを研究している脳神経学者のグループの研究主任でもあります。

本の内容は簡単に言うと、「そんなこと当たり前じゃ・・」というような事なんですが、この本では、有権者が投票する政治家を選ぶ際に使用されている脳ミソは、理性や論理を司る部分ではなくって、脳の中ではもっと古い感情を司る部分であることを研究から示して、選挙で勝つには、政策などで理性や「アタマ」に訴えるのではなく、EQを使ってエモーションに訴えなきゃだめよん、ってなことがいろんな選挙キャンペーンの実例を踏まえて書いてあります(ってラフ過ぎな要約ですが・・・)。

民主党きっての政策通だったクリントンがこんな本を同僚に勧めているのも可笑しいですし、「そうだったのか」なんて言ってる民主党の方々を見てると「おいおい大丈夫か」って気もしますが、前の副大統領が「The Assault on Reason」なんてのを書いてるとこ見るとやっぱり彼らにはショックなのかもしれません。

ただ、こういうのは一種の才能のような気がするので、多分ビル・クリントンやオバマには全く読む必要のない本でしょうし、読む必要のある人が読んでも実際にはあまりどうにもならんような気もします(ヒラリーくらいならなんとかなるかもしれませんが)。例えば小泉前首相には読む必要はないでしょうが、安倍首相が読んでもおそらく全然駄目ではないかと思われます。

2006/8/12 土曜日

つれづれ:地球は暖まっていないし、暖まった方が良い?

先日、「選択」という雑誌の古いやつを人に頂いてパラパラ読んでいたのですが、最初の方のページに渡辺サンという東大の先生か何かが出ていて「地球は温暖化なんかしていないし、二酸化炭素が温暖化の原因となっているのも実証されていない」というようなことをおっしゃっていました。私も専門外なんで科学的に厳密にどうだと言われると良く分からない部分もあるのですが、ここまで言い切れるのはどうかという感じもします。

アメリカの学者なんかですと、こういうことをおっしゃる方は産業ロビー関連か共和党の宣伝関連の方が多いので分かり易いのですが、日本でここまで言い切れるのには何があるのか良く分かりません。とゆーわけで、これだけ見てどーだこーだもフェアではないので先生の筆になる「これからの環境論―つくられた危機を超えて」というのを読んでみました。
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2006/6/15 木曜日

スキャンダルつれづれ・・・

世間では色々騒ぎがあるようですが、とうとう日銀の中枢にまで飛び火したようで。私は別に日銀シンパでも何でもないのですが、さすがに少しヒステリーも度を超してきたような気もしないでもありません。

「キレイ」であるべき日銀総裁が(まぁ、分からんでもないんですけど)、こともあろうにホリエモンやら村上某の属すような「世間」と接点をもっていたというので「ケガレ」の輪の中に入ってしまった感もありますが、村上某は大分黒くてもまだ罪人と決まったわけでもないですし、大体、日銀総裁はファンドにお金を預けちゃいかんのでしょうか?

ということで、最近の騒ぎをみていると、西洋中世史の阿部謹也先生が日本の「世間」について書いた(そして見事に日本の学会「世間」から無視された)本を思い出しました。

世間は個人の準拠集団である。したがってそこから陰に陽に利益をうけているばあいには、その世間の構成を明らかにする必要はない。・・・・(中略)・・・・(しかし)ひとたび何らかの疑いがかけられると、世間が浮かび上がってくる。その(人の)世間とはいったい何なのかが問題なのである。いまだ最終判決が下っていないのに、疑いがかけられると容疑者として他の人々から区別され、周囲の者にまでその疑いの結果が及んでくるというわが国の構図を考えると、それは・・・(中略)・・・中世の神判の世界からほとんど隔たっていないのではないだろうか。
本人以外の人間にも疑いが及ぶと言う構図には、明らかに古代以来のケガレの系譜があると考えられるからである。

阿部謹也「世間」論序説―西洋中世の愛と人格 カッコは筆者。

もともと、行くとこまで行かないととまらんのかもしれませんが、金融で必要なのは継続的に効率性が担保される透明性とルールが保たれるような、ちょっとばかり不具合があっても機能する堅牢なシステムであり、今のような騒ぎはほとんど意味ないんじゃないかと思われますが・・・

日本人は何よりも秩序を愛する。彼らは必ずしもロシアやアメリカ合衆国との戦争を欲していない(それは結果としてそうなるにすぎない)。彼らは政治的な視界を明るくしたいと望んでいるのだ。
 「われわれに満州を与えよ。ロシアと合衆国を打倒しよう。然る後に、われわれは安んじて身を落ち着けることができるだろう。」ある日本人によるこの指摘は、わたしをひどく驚かせた。このきれいに掃除してしまいたいという欲望が。
 日本は掃除狂(マニア)なのである。
 わたしのように割合と汚れた人間の考えによれば、洗濯なるものは戦争と同じで、何かしら子供っぽいことなのだ。何故というに、それはしばらく経つと、またやり始めなければならないものだからである。
 だが、日本人は水と「サムライ」と名誉と仇討とが好きだ。「サムライ」は血の中で洗う。日本人は空まで洗ってしまう。日本の絵の中に汚れた空を見たことがあるか?だが、それにしても!

アンリ・ミショー「アジアにおける一野蛮人」(彌生書房、小海永二訳) - 原文傍点を下線に変えてあります。

私のように割合と汚れた人間には最近の「掃除熱」はちょっとばかり?と感じられる今日この頃です。だが、それにしても?

2006/6/11 日曜日

怪しい投資家たち

村上氏の話も報道を見てるといよいよワケ分からん話になってきているようですが、もちろん米国にも(とゆーか米国には)怪しい人々がいっぱいいます。相次ぐスキャンダル以来社内でのコンプライアンスに対する要件がかなりキツくなっている大企業でも簡単に白黒決められないハナシが山のようにありますから、PEファンドやヘッジファンドなどは推して知るべしという感じもします。

ちょっと古い話になりますが、ジム・クレイマー(日経CNBCで昔「クッドロー&クラマー」なんて番組やってましたね)の「ウォール街中毒者の告白」(いや、かってに書名訳しちゃってますが、原題は「Confessions of a Street Addict」)でクレイマーがGSでブローカーやってた時からヘッジファンドやってた時のオハナシを書いてるんですが、これも相当怪しいです。

クレイマーのファンドは12年間、年間平均リターン24%だったそうなんですが、ってことは手数料等を入れると30%程度(以上)はリターンがあったはずです。で、この12年間、ダウンした四半期は1回だけなんだそうです。で、30%のリターンが正規分布してたと仮定すると、48四半期でダウンが1四半期だけというのをもっともらしく説明できる数字はボラティリティが4%ちょっとでシャープ・レシオが7程度ってことになります。
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2005/10/31 月曜日

ギリシャ文字を使った経済学には気をつけろ

アンドリュー・ロー先生(Andrew Lo)っていうとFinancial Engineering業界(?)では有名な、MIT Laboratory for Financial Engineeringの教授ですが、この間HBRの記事を読んでいると、彼の面白いフレーズが引用されていました。

“In physics, it takes three laws to explain 99% of the data; in finance, it takes more than 99 laws to explain about 3%.” (物理学では法則が3つもあればデータの99%の説明ができるが、ファイナンスでは法則が99あってもデータの3%を説明できない)

言ってる人が人だけに可笑しいですが、ちなみにこのフレーズを引用しているHBRの記事もケーザイガクの外の人が挙足取りの記事を面白おかしく書いているのではなく、筆者は元ベル研の研究者、元ゴールドマンのクオンツで現コロンビア大のインダストリアル・エンジニアリングおよびオペレーションズ・リサーチの教授のエマニュエル・ダーマン(Emanuel Derman)で、デリバティブの分野ではBlack-Derman-Toyモデルで有名な人です。

Harvard Business Review: ギリシャ文字を使ったケーザイガクには気をつけろ

ついでにダーマン先生はMy Life As A Quant: Reflections On Physics And Financeという、金融関連に興味があって、理系のハナシにもちょっとは興味のある人には面白い本を書いています。

2005/5/25 水曜日

マンキューのインタビュー

大統領経済諮問委員会(CEA)の前委員長のマンキュー先生は、傷だらけになって(笑)やっとハーバードに帰還されましたが、米国Fortune誌がマンキュー先生のインタビューを掲載しています。

もちろん前CEA委員長であるということを前提に読む必要がありますが、インフレターゲティングから、社会保障、貿易赤字・貯蓄問題、クルーグマン、財政赤字に至るまで極めて興味深く、面白い読み物になっています。おすすめです。

フォーチュン誌のマンキュー先生インタビュー

以下ちょっとだけ紹介

インフレターゲティング

マンキュー「・・・・インフレターゲットは別に現在連銀がやっていることと大きく変わるわけではなく、連銀が意思決定と目標に関してより明示的になるだけのことであると思っています。連銀の政策決定に関する声明でのボキャブラリーがわずかに変わるということです・・・・」

貿易赤字に関して

マンキュー「・・・20年前には米国がこれだけの赤字をこれだけの期間持続できるかと聞かれれば経済学者はノーと言っていたでしょう。限界がどれくらいなのか、私たちが本当に良く分かっているとは私には思えません。私たちが世界のほとんどの国より速く成長している今は特にそういえます。・・・移民と貿易赤字が同じことを表していると考えるのも意味のあることです。資本も労働力も米国に逃避してくるのです。なぜなら米国が最も生産性の高い経済だからです」(筆者注:貿易赤字:正確には経常赤字ですが:とは米国に対する資本流入の裏返しです)

クルーグマンに関して

マンキュー「コラムニストは、広く話題になり、最も多くのメールを受け取ることを望むものだと想像します。それはトークショーのホストをジェリー・スプリンガーのような人にならせるのと同じことです。結局は物事を大げさにいうようになります。そのほうが読み物としては面白いですから。」

財政赤字に関して

マンキュー「過去数年間の財政赤字は妥当なものであると思います。それは財政赤字が良いということではなく、経済的状況(不況にさしかかっていた)と地政学的状況(戦争)を考慮すると理解できるということです」

(筆者注:需要刺激策が必要だった->したがって赤字はやむを得なかった。というのはまぁ事実としても、先生自身の財政政策のSaver-Spender Modelによると流動性の制約を受けているのは低所得層ですから、ブッシュ政権の高所得層に対する減税政策自体は需要刺激としては設計的に誤りということになりますね・・・)

えーと、ちょこっと書くと面白さが全部抜けてしまうような感じなんで、興味のある方はぜひ原文の方をどうぞ。

2005/5/21 土曜日

ケインズの「一般理論」がオンラインに

説明不要のケインズの”The General Theory of Employment, Interest and Money”がオンラインで読めるようになっています。

The General Theory of Employment, Interest and Money

しかし、なんでmarxists.orgなんでしょうねぇ・・・「万国の”忘れられた書物”団結せよ」かしらん・・・

2005/5/3 火曜日

ジョン・ベイツ・クラーク・メダルにみる米国の元気さ

米国の40才以下の優れた経済学者に与えられるジョン・ベイツ・クラーク・メダルは、今年はMITのDaron Acemogluに決まりました。

修士、博士を取ったのはLSEで、現在はMITの教授です。論文は一部ここでみることができます

このあいだ受賞したSteven D. Levitt (Freakonomicsの著者です)もそうだったのですが、研究内容をみると、米国の若い学者が「楽しんで(そんなに気楽ではないと思いますが)」柔軟(好き放題)に研究しているのがみてとれます。

例えば、ある論文では100年前の植民地では兵士、司祭、船乗りの死亡率が入植者の数に影響を与え、その結果として植民地にどのような制度ができるかに影響を与え、それがそれらの国々の現在の経済・社会的な側面に大きな影響を与えているとかいうことを研究していますし、他の論文では民主主義と経済パフォーマンスの因果関係に異論を唱えています。

まぁ、こんな連中がぞろぞろいて、その好き放題な研究を認める年寄り連中もいるという点からみても、米国の元気さはやはりあなどれません。

ところで、Freakonomicsもなかなか面白かったです。

2005/4/9 土曜日

ヘンリー・ハズリット(Henry Hazlitt)の本がオンラインに

自由主義者というべきか、古典的リベラルというべきか、ウヨク反動というべきか、オーストリアン支持者というべきか、まぁ、どうでもいいんですが、ヘンリー・ハズリットなんですが、フリードマンやらハイエクが称賛した古典のEconomics in One LessonがFoundation for Economic Educationのサイト上でオンラインで公開されています(PDF)。

アマゾンで買っても2000円くらいのものですが、「いまさら買うのモナー」という人にはよろしいんじゃないでしょうか。

Economics in One Lesson

(後記)これでケーザイ学ベンキョーして「脳天気反動ウヨク」のレッテルを貼られてもくまはいっさい関知しません。大変良く書かれている本でお薦めできるんですが、このおじさん大恐慌の時代を生きていたにしては驚くべき事ですが、市場の失敗という発想は完全にゼロです。そこんとこさえ気を付ければ良い読み物だと思います。

2005/2/4 金曜日

Elizabeth Monroeの英国による中東介入史

“Britain’s Moment in the Middle East, 1914-1971″は大分昔の英国の歴史学者のElizabeth Monroeが、イギリスの中東へのかかわりの最初から最後(まぁ、まだ続いているわけですが)までを書いた本だ。残念ながら絶版になってるようだけど、知り合いに貸してもらうことができた。最近の米国の中東へのかかわりを見る上でも色々比較するとアイロニーに満ちている。再版を望みたい本だ。

英国、フランスにとって、中東の石油へのアクセスは歴史的に大きな関心事だったわけだけど、英国、フランスの中東での野心が大きく挫折したのがスエズだ。エジプトのナセルを追放するために、「世界にとって危険なアラブの独裁者を倒す」という名目で英国・フランス軍、そしてイスラエル軍がエジプトに侵攻を試みたんだった。肝心の米国にも参戦を求めたが米国はエジプト侵攻に反対し結局「連合軍」は撤退せざるを得なくなった(ちなみに今回のイラク戦に対するフランスの行動はこれへの仕返しだという向きもある)。

以前(大昔)、フランスの「テル・ケル」誌のフィリップ・ソレルスのインタビューを読んでいると、フランス軍がスエズから撤退しなければならなくなった時、当時フィリップ・ソレルスは学生だったわけなんだけど、フランス国旗が半旗に掲げられた寒い校庭に全員で整列させられて国歌を歌わされたっていう話をしていたのを思い出す(記憶があまり定かじゃないんだけど、こういう話だったと思う)。イラク戦争に対するフランスの反対があんまり信用できなかったのもこんなところがある。あのドビルパン外相も内務大臣に「栄転」したとたん、国内のイスラム系団体をがんがん締め付けてるしね。やれやれ。