2009/11/7 土曜日
「人民元を何とかせんといかんですたい」というような言説が米国でもワリと多く見られます。
「為替は自由経済の牙城」だから「ワシは介入せん」とおっしゃったおじいさまもいらっしゃいましたが、自国通貨をドルにペッグしたらあかんのでしょうか。よう分かりません。
もともと通貨自体は、金利、マネーストックなど、ファンダメンタルに係るパラメーターを各国当局が恣意的にいじってるんで、為替市場は単純に「自由市場」と呼べるようなシロモノではないですし、そうすることが内在的に正しいとも言えません。
政府・中央銀行を合わせて各国当局は、お金の価格(すなわち金利)、マネーストック、あるいは対外的な自国通貨の価値(すなわち為替)のいずれかにターゲットを設けることができますが、このうち1つを決めれば、あとの2つは基本的には市場で決められることになります(一時的には規制などで抑えることができるかもしれませんが)。
米国のような国内消費が主導的な国では、お金の価格(金利)の安定が重視されるのは当然のことです。したがって、米国は為替を口先以外でコントロールすることはできません。
逆に、外需が重要な中国では、対外的な自国通貨の価値(すなわち為替)の安定が重視されるのもまた当然のことです。米国と中国では効用関数が違うだけで、どちらが正しく、どちらが間違ってるというもんではないように思えます。
為替は調節機能なので、中国が為替を対ドルで固定すれば、調節は中国国内の生産性と物価の上昇という形で行われることになります。違いは、為替での調整は瞬時に起こるのに対して、生産性や物価での調整には時間がかかるということです。マッキンノンなんかも、今はどうか知りませんが、為替の大変動で中国がこけても誰も得はしないので、為替の変動を限定して長期的に調整した方が良いというようなことを昔言っていたような気がします(PDF)。わたしも賛成です。
ついでに、為替を固定すると、国内では規制によるもの以外は基本的に金融政策の手は縛られるので「中国(単独で)の出口政策」というのもよう分かりません。
2009/9/1 火曜日

最近では、日経がダウの影響を受けるように、米市場が上海の風向きの影響を受けているかのような感がありますが、上海続落で米国は結構な騒ぎです。S&Pなど高値水準にあるので、上海の下落が調整入りのカタリストになるかもという向きも結構いるようです(個人的には米市場は高すぎると思っていますが、弱気のコールはまだ早いように思われます)。
上海は8月4日の直近の高値からすでに23%以上下げており、50日平均を割り込み、200日平均の線も視野に入ってきています。中国当局による過剰設備の処分や、不良債権に対する引当の増額の指示、そして貸出の減速など、引き締めに対する懸念が騒ぎに輪をかけています。
しかし、例えば米市場が今の状況で、「Fedが金融引き締めに動く」などという話があっても、ほとんどの連中は一笑に付すに違いありません。中国に関しても同様で、当局はその時点で必要な措置は取るでしょうが、まだ大きくブレーキを踏みこめるような状況にはないはずです。
どうも「中国」という名前が出るだけで、皆さん完全にアタマに血が上って大騒ぎするという傾向がまったく収まっていないように思われます。私が鈍いだけという可能性もありますが。
2009/8/5 水曜日

さてと、2人の米国人ジャーナリストの解放(「恩赦」だそうですが)が決定されたというのは良かったとして、ビル・クリントンほどのステータスにある人間が行くのですから、お互いそれだけではないというのは明らかだと思います。
逆に言えば、北からすればクリントン・クラスの人間を引き出すためにこそ必要だった「人質」であり、米国にすればクリントン・クラスの人間を送り込む「口実」になったとも言えます。
米国人も北朝鮮人も日本人ほど健忘症ではないので、以前もカーターが訪朝した後、米朝関係は「リセット」となり、クリントン政権と北朝鮮とのいわゆる「米朝枠組み合意」が成立したということを押さえておいても良いと思います。
最近の大統領としては、私はクリントンをかなり高く評価しているのですが、米朝枠組みに関しては(ズボンのチャックがだらしないところと同じく)大きい例外の1つで、北朝鮮に上手くしてやられただけではないかと思っています。
しかし、米国の民主党系のインテリの方々はそうは思っていない人が多く、クリントンの築いた枠組みがもう一歩で成功しつつあったのに、ブッシュが登場してそれをぶっつぶして、そのために北が核開発を進めたと考えている向きが多いということも、忘れっぽい日本人は押さえておく必要があります(一例としてKaplanの記事)。
(私は、これは極めて米国中心的な誤った見方だと思っています。これらの方々の考えは、たとえて言えば、ルースベルトが大日本帝国を締め付けていなければ、日本は帝国海軍を廃棄しただろうというようなものです)
オルブライトが金正日と並んでマスゲームを楽しく見てからまだ10年も経っていません。そしてオバマ大統領の就任直前の金融サミットではオルブライトがオバマの名代を務めたことからも分かるように、クリントン政権時代の名残りは現政権にも強く残っています(イマニュエル氏をはじめ、ホワイトハウスの要所要所にもクリントン時代のスタッフが就いています。まぁ、それに言うまでもなくヒラリーが国務長官をやっているわけですが)。
現在、イスラエルでも、イランでも、そして北朝鮮でも外交面で少し行き詰まっている感のある米国からすれば、再び「第2次米朝枠組み合意」で振り出しに戻る(今度は北朝鮮はもう核保有国ですから、北の政権からすれば「上がり」のあとであって、振り出しではないですが)という可能性もあるかもしれません。オルブライトは2006年にプリンストンでの学生に対する講演で「対北朝鮮政策を中国に委託することなどできない。北朝鮮はアメリカとの対話を望んでいる」と述べています。
日本からすれば、「核保有国」の(そして必ずしも友好的ではない)隣国と付き合っていくということに直面せざるを得ない、長い時間の始まりになるのではないでしょうか。
2009/7/2 木曜日
中国物流・採講聯合会(CFLP)によると、中国の6月のPMIは5月の53.1から53.2に上昇し、これで4カ月連続で50台を上回っています。上海はこれを好感して1.7%上昇し、また年初来の高値を更新しました。中国人民銀行総裁の周小川氏も8%のGDP成長目標を達成、ないしは上回る可能性があると言っているようです。
ところで、中国に関してはお役所の数字もあまり信用できませんが、欧米系(日本もそうかもしれませんが)のエコノミストやアナリストも相当ひどいので困ったものです。発表値がいい加減で、予想値もいい加減では、どーしよーもありません。
中国は超のつく大国で、地域が違うと国が違う以上の差がありますから、上海のおしゃれなバーで、夜な夜な英語のできるボンボンや、小姐と酒飲んで遊んでても中国経済のことはまったく分かりません(「中国」と一括りで呼ぶこと自体に大体無理があるのですが ・・・)。
経済、ビジネスの基本的な知識がきちんとあり、言葉ができて、ある程度各地を見て回って、夜も働く連中(つまり、母国での「ふつーレベル」の連中)がやってくるまでは(ということは当分は無理かもしれませんが)仕方ないかもしれません。
米国では中国語を勉強する人も増えており、「チャイナスクール」の層はかなり厚くなりつつありますから、ひょっとすると今後は少しは変わってくるかもしれませんが。
ところでISMに関しては、米国でも44.8と絶対的なレベルは低いものの、6カ月連続の前月比プラスで、2008年9月の水準をとうとう超えてきました。米国株に関しては夏から秋にかけて調整というのがクロート筋のコンセンサスのようですが・・・
昨日に続きbespoke investmentから

2009/5/25 月曜日
北朝鮮がまた核実験を実施し、そして米政府は今のところまた相変わらずの対応の構えのように見えます。オバマ大統領の声明に曰く
北朝鮮の威嚇的な行動により引き起こされた危険に対しては国際コミュニティによる行動が必要である
北にとっては恐ろしくも何ともない、形式上の「お怒りの言葉」をまたまた出すくらいしか「国際コミュニティ」にはできないのではないかと思いますが(今回はもう少し格好を付けるかもしれませんが)、そろそろ日本人も北の核保有に対する米国の最終的なシナリオを想定しておいた方が良い気もします。
米国にとってもオプションは大してあるとは思えません。
1. 北に対する米主導の軍事行動:まず問題外。中国と再度衝突する可能性すらあります。
2. 制裁強化:北が核をあきらめるほどの(その可能性が少しでもあるとして)、あるいは北が崩壊するほどの厳しい制裁には中ロが反対するでしょうから、これも可能性が低いとでしょう。
とにかく、北が揺らぐような措置には中国が必ず反対するでしょうし、米国の現政権には中国と対決する気は毛頭ないようなので1も2も現状ではアウトでしょう。
中国にとっては、北が万一崩壊でもして、そして万が一にでも親米政権などができて、近くに米軍基地などができることに比較すれば、過去の「血の同盟国(で核保有国)」の方がはるかに「マシ」ということになります(今回は少なくとも形の上では、以前よりもかなり強い「お怒りの言葉」を発するでしょうが)。
したがって、中国がこの件でマジで協力することがあるとすれば、中国はおそらくその交換条件として「(少なくとも将来における)朝鮮半島からの米軍の完全な撤退」あるいはそれに類する条件を求めることになるんじゃないでしょうか。そう言う面では中国にとっては北朝鮮が突っ走って、それに対する措置の必要性が高まるほど、自国の交渉カードが強くなるという面もあります。
というわけで、米国にとっての3番目のシナリオは
3. 中国の協力による北朝鮮政権の屈服、または交代/崩壊 -> 北の「中国化」、長期的に朝鮮半島全域における中国のプレゼンスの増大と米国のプレゼンスの低下
ということになります。米国はこれがいやなら
4. 北を「各クラブ」の一員として(明示的にしろ、暗示的にしろ)認めて、そのようにつきあう。しかし第3国やテロ組織への核技術の流出がコワいので、その代わり核拡散に対するそれなりに厳しい条件を付ける。
というようなところでしょうか。しかし、これはイランなどへの波及もあり得るので米国にとっては3と同じように困難なことです。もちろん、今の米民主党周辺では
5. 「交渉してるうちに少しはマトモな政権ができる」
という都合の良い夢を見ている向きも多いようですが、これは最終的には3か4への「つなぎ」にしかならないのではないでしょうか。今の政権にとっては、これが一番簡単そうな気もしますが。
いずれにせよ、国連決議だろうが制裁だろうが、大した意味がないのは歴史が実証済みです。どう転んでも、日本人にとっては非常にユーウツなことではあります。