イランの選挙(後)報道はますますヒステリー状態で、偏向の度合いも極めて激しくなっているように思えます。全然アフマディネジャドには好意的ではない私が、この件に関する話では、なぜか逆の立場に立たされていたりして苦笑せざるを得ません。
米国では報道されるデモの光景も反対派のものばかりで、政権支持派のデモはほとんど無視されています。あまりイランの現政権には好意的ではない米国在住のイラン人の知り合いにも「これはイランを攻撃しやすくするための大規模なプロパガンダではないか」と心配している向きがいます。一つ例を出すと、以下は見て分かるようにアフマディネジャド支持の集会ですが、

同日の集会が、BBCニュースでは以下のようになり、

ご丁寧にも「ムサビ支持者(反対派)は再び抗議の禁止を無視した」というキャプションが写真に付いています。この例では、BBCは読者からの指摘を受けて、「不注意でした」との「お詫び」を掲載していますが、一体どんな「不注意」なんでしょうか? BBCでこれですから、この他にも指摘を受けないまま「正しい」ものとして流されている情報が山のようにあると思われます(BBC支局長には当局から退去命令が出たようですが、これでまた大騒ぎになるんでしょうねぇ)。
昔CIAにモサデクを倒された経験を持つイラン人が陰謀を疑うのも無理はないような気もしますが、このようなことがなぜ起こるのでしょうか。
1. 欧米のメディアの中東拠点が、コスト削減で無くなったり弱体化している。おそらくテヘランにいる記者の多数は「サラーム」程度のペルシア語しかできないんじゃないでしょうか。もともと改革派の多い大都市のテヘランで、英語での取材をすればニュースの結果は見えているような気がします(しかし、イラン人の反対派が英語のプラカード持って一体誰にデモしてるんでしょうねぇ)。
2.「民主主義バイアス」:「非民主的な政権と、それへの反対派だったら、反対派が正しいに決まっている」。底流には「選挙は民主主義的なもので、反民主主義的な奴が選ばれるはずがない」という欧米人の「信念」みたいなものがあるような気がします。例えばパレスチナに関しても、多くの米国人が「脅しなどのないフェアな選挙ならハマスが勝つわけがない」なんて言ってます。
3. 「売れる記事へのプレッシャー」:国中に2みたいなバイアスのあるところで、「いやー、アメリカ人が思ってるよりアフマディネジャドへの支持は強いみたいよ」なんて言ったら石でも投げられて、悪くしたらクビになりかねません。ニュースもショーバイですから、消費者の嗜好に合わせる必要があるのでしょう。
しかし、こういうことで外交にも影響を与える世論が形成されるとしたら少しばかりおそろしいことです。
アメリカや日本にいると良く分かりませんが、アフマディネジャドというのは「(欧米人から見て)無知で貧しい」大衆に相当の人気があります。インドネシアにアフマディネジャドが訪問した際にも、外国首脳の訪問とは思えないような熱狂的な歓迎ぶりで、大変な大騒ぎだったようです。
ムサビでもアフマディネジャドでも核開発は進んでいるでしょうから、いずれにせよ制裁強化やイスラエル/米国による攻撃の可能性はあるわけですが、これで確かに世論的には攻撃はしやすくなったかもしれません。キッシンジャーなどもテレビで外からの圧力による体制転覆を説いています(懲りない人達です)。
(ついでに言うと、いろいろ話題になっているTwitterでのイラン情勢に関するTweetに関しては、その出所を追跡するとかなり面白いことが分かるのではないかと思います)
(追記:ところで私は人間の自由を奉じているので、イランの現政権は全然支持しておりません。そこらへん誤解なきようお願いします・・・)

いつも脳細胞を刺激してくれるエントリーをありがとうございます。
今回の一連の事件を観ていて思いついたのですが、アメリカ、オバマ政権としては当面イランの内政不安定がつづいてくれた方が、短期的に有利だと思っているのではないでしょうか。イランがくすぶっているかぎり、パレスティナのハマス勢力への支援がおぼつかなくなりますので、パレスティナ/イスラエル/レバノンにおけるミッチェル特使による和平工作に有利にはたらくと考えているのではないでしょうか。このままの状況が続けば「イランの脅威」を盾に取っているイスラエル右派のネタニヤフ首相の論調にも説得力がなくなります。今後数年間の内に中東和平工作に何らかのメドがたてば、オバマ政権の「二期目」に有利に働きますが、米/イラン関係の修復は今後数年間にアメリカの選挙民にハッキリと分かる形で改善の成果をあげることは難しいでしょう。
コメント by Yute — 2009/6/22 月曜日 @
コメントありがとうございます。
これは大間違いかもしれないのですが、オバマ政権はマジでイスラエルに圧力をかける気はないのではないかという気がしています。
ネタニヤフは、2009-10予算にも入植地拡張の予算を組み入れる構えのようですし、入植地に対する米国のレトリックも(それがカイロでなされたという点を除けば)、親父ブッシュの頃と大して変わっていないですし・・・、ひょっとするとイラン転覆のチャンスがあればそちらに賭けるかも、というのはシニカルすぎるかもしれませんが。。。。
コメント by plateaux — 2009/6/22 月曜日 @