2009/6/19 金曜日

米国の金融規制(と英中銀のキングさん)

議会では今日のところはFedへの権限集中に議論が集中していました。確かにそれも重要な点ではあると思うのですが、今回の規制改正案で意外だったのは、マンモス金融機関・業界の分割という方向性が全く欠けていたことでした。

出し手が低リスクと考えて出した資金を左手で受け取って、それをそのまま右手で賭博に出せるようなコングロマリットを、Arms-Lengthでお互いのビジネス・リスクを監視し合う、相互に独立したスペシャリストに分割するという方向性がほんの少しは出るのではないかと想像していたので、それと全く逆行する方向性が出されたのには驚きました。

「逆行する」というのは、改正案では「破綻した場合には金融の安定に対する脅威になると見なされる」(つまり超大手の)金融機関に関しては、連邦準備制度に対して特別な規制を行う権限を認めている点と、しかも大手金融機関に破綻の恐れがある場合には、財務省がその機関を(破産させるのではなく)「安定化」することができるという点です。

このような金融機関は、政府・金融当局が「大きすぎて潰せない」と公認したのと同じですから、市場において断然有利になる可能性があります。どうも、オバマ政権のビジョンは、少数の超大型規制当局が、市場を支配する少数の超大型金融機関を監視するというものなんじゃないかと思ってしまいました。まぁ、サマーズ大将が取り仕切っているようですから、大手の競争力に水をさすような改革はもともとあり得ないのかもしれませんが。

一方、英中銀のキング総裁は17日のスピーチで「もしある銀行が大きすぎて潰せないと見なされるなら・・・・その銀行は大きすぎるということだ」とし、続けて「大手銀行に対して市中銀行とリスキーな投資銀行を統合することを認め、そしてその破綻に対して暗黙の国家の保証を与えるのは賢明とは言えない」と述べており、超大型金融機関の分割に前向きともとれる発言をしています。

実際には英国の金融庁なども、(シティの競争力に悪影響を与える可能性のある)グラス・スティーガル流の分割には反対なので、こういうアイデアがストレートに規制に反映されることはないかもしれません(ただ、現在世論調査で大幅にリードしている保守党は、キング総裁の意見に近いような感じですが)。

しかし、単純な分離・分割ではないにしても、昨年末の当座資金の完全な干上がりという事態と、それが引き起こした市場の恐怖を思い返すと、リスク資産と非リスク資産の間にはどこかの線で、そして何らかの形でのファイアーウォールが必要なのではないかとも思われます。以下にキング総裁のスピーチのテキストのリンクを載せておきますので、興味のある方はどーぞ(PDFです)。

キング総裁のスピーチ(PDFです)

コメント/トラックバック:2 個 »


コメント

  1.  筋論としてはキング総裁の方を支持したいですが…。ただ、相当期間厳しい情勢が続くとの見通しの中で、仮に小規模金融機関としても破たんを容認できるのか、難しい気がします。
     日本の場合、金融危機の過程で明らかにTBTFの再編を促した、そうせざるを得なかった、という事情もあります。プルーデンス政策の適切な在り方は難しいですね。
     

    コメント by 本石町日記 — 2009/6/20 土曜日 @

  2. 同感です。

    いずれにせよ、将来もバブル(とその破裂)は回避できないと思いますので、「火を出さない」ということにあまりに集中して、競争を過度に抑制することにならなければよいと思うのですが・・・ 難しいですねぇ。

    コメント by plateaux — 2009/6/20 土曜日 @

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