世の中どうも「デフレがコワイ派」と「(ハイパー)インフレがコワイ派」に分かれているようです(米国の場合は、この議論に政治党派のメッシュが加わるので、単純なハナシにならないのですが)。
私は相当な高インフレ環境で働いたこともあるのですが、給料日にもらったおカネの価値が毎日ガンガン減っていく感覚というのは経験してみないと分からない様な気がします。
すぐにおカネをドルなんかに替えて置いておくことのできる連中は、給料日に(仕事そっちのけで)速攻で替えるということになりますが、安月給だったり、おカネが入るスケジュールが不定期だったり、為替制限がかかってたりすると超悲惨です。もらったおカネを毎回そのまま落としてしまうようなもんです。
こういうところのお金持ちは、銀行なんてのもそもそも信用してない向きも結構いて、こういう方々は大体はハードアセットで防衛するということになります。まぁ、インフレだろうとデフレだろうと、ビンボーは浮かばれません。
最近はジョン・ポールソンのPaulson & Co.が金のETFのSPDR Gold Trust(GLD)の最大保有者になっていたりして(第2位はLone Pine Capitalでした)、連中はFedの信認が多かれ少なかれ揺らぐという状態を少しは想定しているのかもしれません。最近では「Dr Gloom」ことマーク・ファーバー博士が「米国の超インフレを確信している」なんて相変わらずの放言で少し話題になっていました。
で、「デフレがコワイ派」と「ハイパーインフレがコワイ派」はお互い仲間内で固まっていて、直接に火花が散ることは少ないのですが、今年1月のバロンズではこのマーク・ファーバーとビル・グロースが少しばかりヒートしていました。
ファーバー:経済が悪くなればなるほど、連中は貨幣を増刷する。今のジンバブエか80年代のラテン・アメリカみたいなものだ。これらの国は大幅な赤字を抱えて、貨幣を増刷したが、現地通貨ベースではすべての値段が上昇した。通貨が崩壊したんだがね。
オスカー・シェーファー:米国の連邦当局は、民間部門の信用収縮を相殺するために、バランスシートを拡大してるだけだろ?
グロース:その通り。(ワイマールやジンバブエなどと米国は)状況が全然違う。米国では数兆ドルの資産破壊が起こっていて、これは修復の必要がある。Fedのバランスシートが2-3兆ドル増えたからって、ハイパーインフレになるなんてのは見当違いだ。
ファーバー:ビル(グロース)と10年以内に米国が極めて高いインフレになるという賭けをしてもいい。来年の財政赤字は2兆ドルにもなるだろうから、Fedが実質金利を引き上げるのは難しいだろう。金利を上げたが最後、別の破滅が待っているからな。
グロース:おいおいマーク、あんたはもうちょっとアタマが切れるはずだぞ。信用創造は経済成長の中心で、信用創造が10%も20%も収縮したら経済は成長できないことくらい分かってるだろ?
ファーバー:米国経済は単に借金中毒なだけだ。真っ当な経済なら債務の成長率が名目GDP成長率を上回る必要はないはずだ。これに合意するかい?それともアンタは負債が常に名目GDPよりも速いペースで成長しなきゃならんとでも思ってるのか?
グロース:まぁ、その点は認めるよ。
ファーバー:われわれは立場が違うからな。ビルは資産運用会社の経営者だが、私は米国金融市場の外側からの観察者だ。といっても私もここ30年で初めて米国株を買ってるがね。
まぁ、信認の問題に関しては、Fedの信認の問題というより、ガイトナー/オバマでは議会民主党の大物の圧力を抑えるのは難しいかもしれない、というホワイトハウスに対する疑念の問題ではないかと思います。ところで、Fedの独立性に関しては、アラン・メルツァーが最近のCFRのパネル討論で面白いことを言ってました。
アーサー・バーンズはそれほど独立してなかった。ポール・ボルカーは極めて独立していた。アラン・グリーンスパンはそこそこ独立していた。今のFed?財務省の一部門だ。・・・・(中略)・・・・本当に独立している中銀は世界でECBだけだ。連中には政府がないからな(笑)

ご無沙汰です。メルツァーの発言はウケました(笑)。
コメント by 本石町日記 — 2009/6/3 水曜日 @
こちらこそ、ご無沙汰しております。メルツァーは「亀の甲より年の功」で、味を感じます。
一緒に話していたのが元IMF/世銀のアン・クルーガーおばーさんで、お互い全然違うこと言ってるのに、議論が成り立つというのも「年ゆえの技」かと・・・
コメント by plateaux — 2009/6/4 木曜日 @