2008/10/20 月曜日

金融村がへこんでも米国人は変わらない

今回の金融村の崩壊で「米国型○○○○は終わった」(○には、各人の都合の良い言葉が入ります)とかいう話をいやというほど聞かされて少々ウンザリなのですが、私のまわりではこの手の話をする人の多くがなぜか日本人です。情報源が限られている上に、狭い反響室みたいな国の中で皆で大騒ぎしているせいでしょうか。

今回の大混乱は基本的には信用バブルの崩壊による金融村の陥没という(世界的ではありますが)ローカルな話であり、業界が業界だけに他に与える影響も大きいですが、バブルや金融危機が原因で国や経済のシステムがドラスティックに変わったという話はあまり聞きません。(ただし、虎の子の老後の資産をアドバイザーの言うまま株式ポートフォリオに突っ込んだ人々が受けた大打撃を考えると、年金改革などの政策レベルでの議論には影響があると思います。個人的には、年金という基本的に保険的な性質のあるものを、ボラタイルな株式市場に対する個人勘定の投資を主にして考えるという政策には米国であれ、日本であれ賛同しかねます。)

米国の金融村は、過去数年に大きく成長しましたが、もともと米国で圧倒的な存在だったわけではありません。S&P500の時価総額に占める比率で見ると、金融業界は1990年には全体の約7.5%でしかありませんでした。これが大きく変わるのが、2000年前後のハイテク村の大崩壊の後で、2002年以降S&P500の時価総額に金融村の占める比率は一貫して20%に達するようになります(最近は10%台の中盤です。ちなみに全盛期のテクノロジー業界はS&P500のほぼ30%を占めていました)。

金融業界の付加価値は基本的に資本の配分を行うシステムの効率を高めて、経済の生産性を伸ばすことにあるわけですが、ここ数年間の金融村の拡大期には、米国の金融以外の産業の生産性の伸びは歴史的水準から見ると低いものでした。つまり業界は経済の生産性にはあまり寄与せず、金融村の中での祭りに忙しかったとも言えます。それもあってか、米国人のマインドの中で金融業の占める位置というのも、それほど大きいものではありません。例えば、投資専門誌のバロンズが米国人投資家相手に行う「世界で最も尊敬に値する企業」調査のベスト10には金融企業は1社も入っていません(18位のゴールドマンや19位のウェルズファーゴが金融では例外的な高順位です)。ちなみにワースト10のうち5社が米国内外の金融会社です。

米国人の投資家が「尊敬できる事業」としてまず思い浮かべるのは、J&Jであり、P&Gであり、バークシャーやアップル、グーグル、ウォルマート、コカコーラ、ペプシ、GE、エクソン、シスコシステムズ、IBM、インテル、ジェネンテックなどの企業、外国企業ではトヨタやネスレ、ノバルティスのような企業です。金融村の凋落が米国人に与えるショックが長期的にそれほど大きいとは思えません。ベアー、リーマン、メリル、AIGでなく、J&J、PG、GE、IBMが消えていれば流石の米国人も悔い改めたかもしれませんが。

私はここ1カ月くらいで「今回のリセッションは米国のテクノロジー業界にとっては大チャンスだ」とはっきりと言い切っているハイテク業界の研究者や経営者、投資家を相当数見ています。そう言う理由は人によって色々ですが、私の感想は基本的に「こいつら本当に変わらん(懲りん)」です(この中には10年前に大やけどを負った連中もかなりいました)。そう言えば、トラクシス・パートナーズのバートン・ビッグスは景気回復はハイテクがリードすることになるとか言ってましたです。

コメント/トラックバック:2 個 »


コメント

  1. そうですね!
    同じ意見ばかりでは面白くないし、日本人特有の行動形態のように思います。

    コメント by kamohara75 — 2008/11/12 水曜日 @

  2. どうもどうも。日本人も相当変わった人が多いですけど、あまり表に出てこないですねぇ・・・

    コメント by plateaux — 2008/11/22 土曜日 @

この投稿へのコメントの RSS フィード。 TrackBack URI

コメントする

Line and paragraph breaks automatic, e-mail address never displayed, HTML allowed: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

(必須)

(必須)