2008/8/2 土曜日

メリル:本当のゴロ○キは誰か・・・???

最近はSECのコックス御大は、金融市場の混乱で大儲けしたヘッジファンドの連中を締め上げようと、ネイキッド・ショートを規制したり、「不正に流されたウワサ」のネット上での痕跡を追い求めたり、50ものヘッジファンドに召喚状を連発したり大変お忙しいようです。しかし今週のメリルリンチの増資やら、「スーパーシニアABS CDO」の「売却」の顛末を見ていると、締め上げるべきゴロ○キは別のところにいるような気がするんですが・・・

まず、メリルが追加増資とCDOの売却を発表したのは7月28日で、7月17日の業績発表から10日ちょっとあとです。業績発表時点では赤字のハナシはありましたが、10日後の巨額な増資やら、「スーパーシニアABS CDO」の「売却」やらのハナシは全くなかったどころか、CEOのタイン御大は「現時点で弊社は資本の面では極めて良好な位置にあると確信している」なんぞとおっしゃってました。(その1カ月前にも同様の発言をしています)

おまけにプレジデントのフレミング氏も5月には「(ジョン・タインCEOは、)弊社は十分な資本を有しており、予測できる限り、弊社は追加的な普通株式による資本調達を行う必要がないということを明確に示してきました。1月に増資した際には、(株式に対する)需要が大きかったので、必要以上の資本調達を行うことになりました」などと言っています。

予測できるかぎり(for the foreseeable future)というのが、どれくらいの期間なのか分かりませんが、降って沸いた事故ならともかく、2カ月後に自社が行う取引を予測できないというなら相当の無能か、そうでなければ投資家相手に真っ赤かな嘘をついていたということになります。ヘッジファンドが不正に流した(かもしれない、有るか無いかも分からない)ウワサのレベルではなくこれはほとんど「虚偽の流布」に近いものです。

おまけに、少なくとも市場の一部はどうも28日のことを結構予期していたような感じも見受けられます。どの程度インサイダー情報が流布していたのか分かりませんが、これにSECの目が向けられないとすればほとんどビョーキの世界です。

ついでに増資と一緒に発表された「スーパーシニアABS CDO」の「売却」も結構面白い発表です。いろんなところで取り上げられているので詳しくは繰り返しませんが、額面306億ドルの「スーパーシニアABS CDO」(メリルの帳簿で111億ドルまで償却済み)を、67億ドルでローンスターに売るというものです。

で、このローンスターが支払う67億ドルの代金のうち、75%をメリルがローンスターに「貸し付ける」そうです。すなわち、ローンスターが払うキャッシュは16億8,000万ドルということになります。で、残りの50億2,000万ドルのメリルからローンスターへの「貸付」ですが、ローンスターの返済責任は取得した当のCDO財産に限定されるというノンリコース・ローンです。「買収者はこの取引による財産以外のいかなる資産も有しない(The purchaser will not own any assets other than those sold pursuant to this transaction. )」なんて発表には書いてありますが、ローンスターは大手のファンドグループですから、購入するCDO以外に資産がないはずがありません。

実態を想像すると、おそらくローンスターがこのメリルのCDOを買うためだけの空っぽのファンドを設定して、そこにエクイティとして16億8,000万ドルを投資し、メリルが50億2,000万ドルを貸し付け、そのファンドがその金でメリルの306億ドルの「スーパーシニアABS CDO」を買いとるというようなことではないでしょうか。

ローンスターからすれば306億ドルの債券を16億8,000万ドル(額面1ドル当たり5.5セント!)で買ったあげく、67億ドルを上回るアップサイドは全部イタダキで、75%までのダウンサイドは全部メリルに押しつけというトンでもない有利な取引です。

問題はメリルの方で、怪しいCDOの資産が、怪しい債権(プラス償却)に化けただけです。このままCDOの価格が下がってクズになればCDOの償却ではなく、不良債権の償却になるだけで、何ら本質的なリスクは変わっていません。(もちろん、償却よりも貸し倒れの方が実現するタイミングがずっと遅いというメリットはあるでしょうが・・・)

大体もうCDOの簿価が100億ドル程度まで落ち込んでいれば、メリルの図体からすればそれほど大きい額ではないと言っても良いと思うのですが、それでもここまでするってのは、「現時点で弊社は資本の面では極めて良好な位置にあると確信している」どころではないのか、余程何か事情があるのでしょうねぇ。今は都合良く増資の「クワイエット・ピリオド(情報開示自粛期間)」なんで何も言わなくて済むんでしょうが(言ったところで真っ当なことを言うとはとても思えませんが)。

しかし、バーナンキ先生といい、コックス御大といいどうもダッチロールが目につくような気がしますが、これで済むならSECなんかいらんのじゃないかしらん?

コメント/トラックバック:0 個 »

この記事にはまだコメントがついていません。

コメント RSS

コメントをどうぞ

段落や改行は自動挿入です。メールアドレスはサイト上では非表示です。
使用できる HTML タグ: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

(必須)

(必須)