原油価格が調子良く(悪く)上がってて、米国議会や日本の役人、G8首脳からオバマ先生まで「投機筋」タタキのようですが、こういうのってどーなんでしょーか・・・。この間も、「ユダヤ系のウォール街の投資銀行の連中が原油価格をつり上げてる」とか、目をつり上げたおじさん(日本人)が滔々とおハナシしていったんですが、どうもお顔を見てると「本気」のようだったので、ちょっと世の中心配になってきました。
「投機マネー」自体は確かに原油や他の商品の先物市場に流入してますが、「先物」市場ってのはヘッジ(投機筋にとっては価格の動向を当てっこ)するための市場ですから、いくらお金が入っても実際の需要家に入る供給の量が減るわけじゃありません(いや、どこかの「投機筋」がどこかの地下の悪の秘密帝国に米国のSPRをはるかに上回る大備蓄基地を持ってればハナシは別ですが・・・)。
というわけで、頭の中には「需要と供給」という2つの単語しか入っていないケーザイガクシャの間では、「原油高=投機筋」説には極めて懐疑的な人が多いのですが、こういうのはあんまりウケないし、政治的にも具合悪い(「悪者」見つけておけば便利ですから)のであまり報道されません。大体、「投機マネー」が入るだけで値段が上がるならば、「投機マネー」の入っている(取引所で取引されている)コモディティ(原油、銅、スズ、天然ガス、鉛など)よりも、「投機マネー」の出る幕のあまりないコモディティ(モリブデン、カドミウム、鉄鉱石、タングステンなど)の方が価格が大幅に上昇しているのはどーゆーことでしょうか。
エコノミスト誌なんかは「先物市場に対する投機マネー流入で価格が上がるって言うのは、サッカー賭博の賭けの額が試合の結果に影響するというようなものだ」と皮肉っています(もちろん先物市場のシグナルで生産者側が供給を控えたり、需要側が必要以上の手当てに動けば価格は上昇するんで、こりゃ言いすぎだと思いますが)。
大体、投機筋が大々的に悪者にされ出したのは、米国議会で5月にマイケル・マスターズというヘッジファンドのおっさんが、「インデックス・ファンド」からの資金流入と中国の需要を比べるという、先物も実需も区別できていないどーしょーもない証言をして、これもワケがわかってない議員連中がそのままそのハナシに大々的に乗ってからです。この時の米議会の調査では先物市場でのインデックス・ファンドの投資が槍玉に挙げられたんですが、実需=先物ごっちゃまぜ論に乗ったところで、「インデックス・ファンド」のNYMEXでの契約残は合計のわずか12%、世界の原油年間消費の2%にすぎません(インデックス屋さんのバークレイズが出した数字ですが・・・)。
サミットでは日本はもうちょっと気の利いたところを見せるチャンスもあったかと思うのですが、お役人自体がどうも70ドル以上の分はウォール街の儲けだと思ってるみたいなんで仕方ないんでしょうか。先進国の首脳には、あまりに良い加減なIEAの需要見通しを改善するとか、代替エネルギーに対する計画/コミットメントを示すとか、イランに対するスタンスを揃えるとか、(中国とインドを脅かして消費を抑えさせるとか)もちょっと役に立つことができると思うんですが・・・
ただ、世界経済の状況次第では、需給の逼迫自体は少し誇張されすぎている可能性があるような気もします。イランのおじさんがおとなしくしてれば、原油(やその他の産業コモディティ)の価格は「短期的には」後退することがあるかもしれません。
まぁ、この話題に興味ある方は、読みやすいところで最近ではNYTのクルーグマン先生の記事や、エコノミストの記事なんかが取っ付きやすいと思います。
ところで、このクルーグマン先生の記事のタイトルは「Fuels on the Hill」でHillはキャピトル・ヒル(議会)で直訳すると「議会での燃料」ですが、このタイトル自体はもちろんビートルズの「Fools on the Hill」(丘の上の愚者=バカ)をもじったもので、原油と議員とバカという言葉が響き合った、クルーグマンらしい意地の悪いものです。
