Project Syndicateにロバート・シラー(Robert Shiller)先生の「Is Bernanke Ready?」という小文が載っています。「金融政策アクティビスト」議長に対する「老婆(老爺?)心」とも言える文章ですが、金融商品開発などでワケの分からん金融市場との関わりが深いだけに「お世話」承知で書かざるを得なかったというところでしょうか。
大恐慌に対するバーナンキ氏の優れた研究は、彼が次の景気後退、あるいは不況を阻止できるということを意味しない。なぜなら、デフレを止めても全ての問題を解決することはできないからだ。結局のところ米国は1933年に金本位制を離脱し、1934年には金利を1.5%に下げ(ちょっとしたエピソードを除いては)デフレを終結させたが、失業率が安定して15%を下回るには1941年、第2次世界大戦の勃発を待たねばならなかった。
したがってバーナンキ氏は彼の過去の研究から問題を一般化し過ぎる事を避けねばならないだろう。これは、医療専門家が自分の専門領域の病気の患者に対して行き過ぎた診断をしたり、軍事戦略家が過去の戦争を戦うための準備をし過ぎたりしてはならないのと同様だ。
(中略)
近い将来、原油価格の大幅高、あるいは不動産価格の下落、あるいはその両方により、一般の反応いかんによっては、バーナンキ氏は過去に類を見なかったような経済的圧力にさらされるだろう。コンフィデンスが揺らぐ事があれば、1930年代の大恐慌に対する彼の理解ゆえに、彼はそれらのショックが米国そしてひいては世界経済を沈没させることを阻止できない可能性もある。バーナンキ氏は「pushing on a string」している自分に気付く羽目になるかもしれない。
注:「Pushing on string」は金融政策に対するケインズの言葉から来たもので、経済を引き締める時にはStringを引くように金融政策は効くが、逆はそうでもないということです。新議長に対する米国の金融市場の連中の見方は曰く言いがたい結構面白いものが多いのですが(シラーは金融市場の人というわけではないですが)、この手のもその1つと言えます。

