アフリカにおける中国の影響力
Grantaはなかなか面白い英国の文芸誌ですが、最新号の「africa」にChannel 4 Newsのインターナショナル・エディターであるLindsay Hilsum女史がアフリカにおける中国の影響力の拡大に関して取材した時の取材記が掲載されていました。筆者によると、アフリカ全域において中国の影響力が急激に増大しており、アフリカと中国間の貿易は毎年倍増しているようです。
取材記なので、あまりハード・データは含まれていませんが、興味深い話がいくつかのっています。中国政府は天然資源の採掘契約にしても、借款にしても、援助にしても西欧諸国とは異なり、民主化しろとか透明性を高めろとかいう条件を付けませんし、環境アセスメントをしろと中国企業に圧力をかける市民ロビー団体も存在しないため、アフリカの一部のあまり評判の芳しくない政府にとっては非常に有り難い商売相手になっているようです。
これによって、各国政府が西欧諸国による民主化などの条件に従う必要性が薄れており、アフリカで活動する人権団体にとっては頭の痛い状況になりかねません。天安門事件のように政府反対派を封殺しながら、過去20年で4億人にも上る国民が貧困から脱出した中国は、アフリカの一部の圧政的な政府にとっては「非常に素晴らしいモデル」であるわけです。以下、Granta誌にのっていたいくつかの例を紹介・・・
スーダン:市民虐殺で世界的な問題になっていますが、中国の中国石油天然気集団公司(CNPC)が進出しており、今やスーダンの石油の60%が中国向けとなっています。国際社会の原油制裁措置など、スーダンにとっては痛くも痒くもないワケです。
スーダンには中国企業が建設した兵器工場が3カ所あり、大虐殺のあったダルフールで政府軍と民兵が使用した兵器のほとんどがこれらの工場、または中国で製造されたもののようです。2004年の米国と英国による国連安保理でのスーダンに対する制裁決議は中国が拒否権発動を匂わせたため、骨抜きとなっています。
ジンバブエ:西欧ではつまはじきのムガベ大統領ですが2005年5月の演説で「我々は日の昇る方角である東方に向かい、日の沈む西方に背を向けた」と演説しています。ジンバブエの農業は崩壊しつつありますが、ジンバブエ政府が白人の農民から没収した農地はいまや次々と中国人所有になっており、中国向けの作物が栽培されているとのことです。
少し以前に、70万に上る家屋を破壊したジンバブエ政府を国連が非難したことがありましたが、同じ週に北京を訪問していたムガベ大統領は「外交と国際関係における目覚ましい業績」により中国の外交学院大学から「名誉教授」の称号を受けています。
これらの他にも、旧英国領で英国からの援助の最大の受け手であるシエラレオネなどでも、英国はシエラレオネに対する援助は同国の将来の民主化の進展次第としていますが、政府機関の建物や軍司令部の建設、スタジアムの修復などが既に「内政非干渉」の中国によって行われており、英国などは中国の陰に完全に隠れているようです。
筆者は最後に
中国人は、植民地時代の後遺症もなく、複雑な敵意に満ちた関係もなく、アフリカに対等な者として来ている。中国は買いたがっており、アフリカには売るものがある。アフリカの各国政府が新たに得られた富を分配するような形で行動すれば(これがそうなるかには大きい疑問があるが)、中国は欧州や米国が提供することに失敗した機会をアフリカに提供する可能性がある。
と述べていますが、これは西欧人に良くある中国の力に対する神秘的な信仰を少し感じました。西欧の援助や西欧企業との事業は今まで貧困からの脱出という面ではそれほど成果を上げておらず、単に民主化や透明性の条件を外した中国の活動によって貧困からの脱出が可能になるかもしれないというのは少し疑わしいような気がします。私は、アフリカにおける虐殺や、人権状況は重要な問題であると思っていますし、現在の圧政的な政府が、相手が中国というだけで「新たに得られた富を分配するような形で行動する」かどうかはまさしく「big if」と思われますが・・・
追記:ちゃいなさんのご指摘で、誤訳訂正・・・(お恥ずかしい・・・)
ブッシュ政権のCEAの委員長なんかになったために、右からも左からもズタズタにされて学校に戻ったマンキュー先生ですが、1月3日のWSJに「Repeat After Me(私の後について繰り返してね)」というなかなか面白い文章を書いています。
