原油が高騰していますが、昔ちょっと話題になった100ドルって話もまた復活するかもしれませんね。ところで、それに負けないくらい印象的な価格上昇を見せているのが二酸化炭素の排出権です。下のグラフは欧州排出権取引スキーム(EU ETS)での排出権価格ですが、今年の初めの1トン当たり7ユーロ前後から6月には25ユーロを超える勢いでした(現時点ではかなり反落していますが)。
これは、京都議定書のターゲットを達成できない国が相当数あるという見方を裏付けるものですが(つまり、排出できる量:排出権の需給悪化が想定されるってこと)、もう1つはEU当局が排出枠に関してある程度厳格な立場を取り続けるだろう、という市場の当局に対する「一定の信認」の表明ともとれます。
ところで、京都議定書のターゲットを(まっとうな方法では)達成できないだろうと見られている最右翼の国がカナダと日本だということはあんまり知られていないようですね。クールビズなんてのんきなことやってますが。
それなりに進んでいるのは上にあげた欧州で、域内の25カ国にある13,300の大規模な二酸化炭素排出企業/施設(発電とか地域暖房とかね)に対し、強制的な排出枠が割り当てられ、排出枠を下回った場合はEU ETS市場で排出権を売却できるし、逆に排出枠を超えそうな企業は排出枠を遵守するためにETS市場で排出枠の購入ができるというものです。
排出枠を超えた場合は重い罰金が課されるため、企業はいやでも自社施設の排出枠に神経質にならざるを得ません。排出権市場は米国でのSOx排出削減での経験をもとにして創設されたもので、市場メカニズムに沿った形で経済的にこの手のあんまり有り難くないものを減らすには有効な政策手段であることが確認されています。
さて、日本に関してはこのような国内排出権取引システムも存在せず、海外の大方の見方は「日本は多分議定書の目標は達成不可能、でもまっとうじゃない方法で達成するかも」というものです。
つまり、カギはロシアとウクライナなんですが、京都議定書のもとではこの両国は二酸化炭素をまったく減らす必要がない、、、というより現在の排出量より排出枠の方が極めて大きくなっており、余分な排出枠を外国に売却して大儲けできるという状態になっています(なんでこうなったかに関しては、長くなるので省略・・・)。この余分な排出枠は、実際の二酸化炭素排出削減には関係なく、しかも投機的目的で使用される可能性があるため「ホットエア」と呼ばれています。で、日本はロシアに大金を払ってこのホットエアを購入してメンツを守るんじゃないか(そしてロシアは足許見透かしてすごい価格をふっかけるだろう)というのが海外では大方の見方なわけです。
一方のカナダに関してもホットエアを購入するんじゃないかという見方もありましたが、カナダ国内ではホットエアなんかを買ってまで目標を達成するということに対して大きな反対があり(まっとうですね)、主要閣僚がすでにカナダの議定書目標不遵守の可能性を示唆したりしています。それでもカナダでは大規模最終排出事業者(LFE)に対して排出枠を強制し、欧州と同様の排出権取引システムを導入することはほぼ決定的になっています。
のこる日本ですが、2005年から環境省主導で試験的な国内排出権取引システムが始まります。しかし、自主参加型(つまり排出枠、参加に関して強制力がない)で、参加企業には電力などの大規模排出事業者は含まれず、しかも参加表明した企業には政府が排出削減のための投資に対する補助金を支払うという、実効性はほとんどゼロの補助金垂れ流しのおそろしいシステムです。これでは排出削減のコストが税金を通じて間接的な形で賄われるため、排出権の市場価格に反映されないだけではなく、企業の製品コストにも反映されません。
これでは普通では市場に反映されない二酸化炭素の排出コストを人為的に市場に反映させ、排出レベルを本来経済的に許容できるレベルに(しかも効率的に)下げるという市場メカニズムをまったく無視したものになっています。しかも、試験システムで企業が表明した「自主目標」は27万6,380トンでメチャクチャ少ないんですが、それに対する補助金の予算が26億円ということで、1トン当たりナンと68ユーロ以上となっています。上であげた欧州ETSでの市場価格(一応削減コストを反映していると考えられます)のナンと3倍にあたる税金を補助金として投入するわけですね(ちなみに英国なんかでは排出削減は民間責任であり税金による二酸化炭素排出削減の補助は一切行わないとしています)。
クールビズやこういう役立たずのプロジェクトで「努力している」というアリバイ作りをして、最終的にはプーチンに多額の贈り物をしてホットエアを購入して政府のメンツを守るというおそろしいシナリオではないことを祈るばかりです。なんか私のまわりには「日本はすごく進んでいる」なんて激しく誤解して、議定書不参加の米国批判でストレス発散してる(ちょっと恥ずかしい)人がかなり多いんですが・・・