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July 29, 2005

カナダ:iPodに対する著作権料上乗せ否定

日本でもiPodなどのデジタル・プレーヤーに対する著作権料の上乗せ(私的録音録画補償金)が討議されていましたが、カナダでは昨年12月14日にカナダ連邦控訴裁判所が、カナダの著作権委員会にはそのような著作権料の上乗せを強制する権利はないという判決をしていました。

これに対し、従来そのような料金の徴収を行ってきたCanadian Private Copying Collective (「私的コピー徴収団体」って感じでしょうか)がその決定を覆すことを求めて、最高裁に上告の申し立てをしていましたが、カナダ最高裁は昨日それを棄却したもようです。

これでカナダにおいては、少なくとも現行法においてはこのような著作権料の上乗せが認められる可能性は実質的になくなったと思われます。

もともとこのような上乗せを認めるということは、ケーザイ学的にいうと音楽が「公共財」的な性格を持っているため、通常の商行為では制作者の収入が実際に「あるべき水準」より低くなり、インセンティブがなくなるため、当該の「公共財」に対し公共の税金で補助を行うことを認めるという考え方に近いものです。(あくまでケーザイ学的観点で、著作権だとかの観点の議論ではないです)

例えば、空気を例にとれば、「空気」がもし生産されなければ存在しないと仮定してみましょう。みんなが必要な「公共財」ですが、「空気」の生産事業者にみんなちゃんと対価を支払うでしょうか。みんなが払っているということで必ず「ただ乗り(フリーライダー)」(音楽の場合であれば違法コピー)が登場し、結局必要な水準ほど「空気」が生産されなくなりみんなが苦しむ、というわけです。まあ、そこで政府は空気を消費する機器に(または直接「人頭税」みたいな)「税金」をかけてそれを補填する、ということになります。

さて、個人的には「音楽」に対してこのような考え方を適用するのは少し無理があるような気がするのですが・・・(逆に価格の上昇が需要水準を「あるべき水準」より抑える可能性もあります)。実際、価格が高すぎて、本当に消費されるべき水準より低くなっている面の方が大きいのではないかと個人的には疑っているのですが(根拠あんまりナシです)。

カナダでの決定はあくまで法律に基づくものですが、まだ今後の展開が不透明な段階では当面はこのような決定がケーザイ的にも良いのではないかと思います。

July 27, 2005

SONY BMGのわいろ事件

最近SONY BMGがラジオ局に自社で売ってる曲を放送してもらうためのPayola(賄賂)を支払っていたという件で、ニューヨーク州のスピッツァー(Eliot Spitzer)司法長官の調査を受けていた問題が米国では結構騒がれていました。

結局SONYは謝罪し1,000万ドル以上の制裁金を払って和解するみたいです(Nikkei Netの記事 - what's my scene?さんとこ経由)。基本的に連邦法では特定の楽曲を放送する見返りに「相当な額」の支払いなどを受けてはいけないことになっています(法律はトーシロなんで聞きかじり)。

ところで、例えば小売業のイオンが(いや、別にどこでもいいんですが)、商品棚の良いスペースを提供する代わりにメーカーから「何とか協賛金」とかを貰うのは良くって(いやまったく感心できませんが)、なぜ放送局が放送の時間を提供する代わりにSONYからお金をもらうのはダメなんでしょか? (下に続く)

これは小売業の場合は商品棚は「小売業の財産」であり、自分とこで好き放題にそれを使っても差し支えありませんが、放送局の場合には放送周波数は「放送局の財産」ではなく「公共の財産」であることによります。つまり放送局は公共の財産を使用する「ライセンス」を受けているにすぎません。

まぁ公共の財産使ってるんだから、放送局が勝手にその財産を好き勝手に処分して一部の人の便益を満たすことで大儲けするのは御法度よってことですね。規制当局のFCCの怠慢も槍玉にあがるんじゃないでしょうか。

プレスに対する和解の発表で、スピッツァーは

「音楽を品質、芸術的な競争、美的判断などで放送するのではなく、ラジオ局は支払いを受けるために放送し、しかもそれは一般に開示されないような方法でなされていた。」

と述べています。

ところで、金融関連の人ならば、Eliot Spitzerという名前に聞き覚えがあるんじゃないでしょうか。証券業界やらミューチュアル・ファンドを巻き込んだ不祥事を暴いた人でしたね。この場合も一定の条件でフェアな取引を行うよう規制された業界で、監督官庁(この場合はSEC)の怠慢で不祥事が起こっていたわけですが、なかなか元気な人ですね。

日本でもこの手のことは(証券も放送も)多そうな気がするんですが、どうなんでしょ。

SONY和解(NYT)
SONY和解(Washington Post)
スピッツァーのオフィスのプレス・リリース
証拠書類(英語ですがこれ結構生々しくて面白いです)

July 24, 2005

人民元切り上げ(その2)

人民元の「通貨バスケット」への移行はどうも極めて大きく取り扱われているようですが、実質切り上げ2.1%でしかも中心レートから上下0.3%の変動幅、しかも中心レートは「秘密の通貨バスケット」で人民銀行が決める、というシステムにしては全体的に少し騒ぎ過ぎじゃないかという気がします。「ドル基軸通貨が云々」なんて、ちょっと・・・ 実質はせいぜい「ドル圏」内通貨の小幅なリアラインメントといったところではないでしょうか?

「イエスかノーか」みたいに迫ったおかげで、もし無視されたら完全にメンツのつぶれたアメリカ人が大騒ぎするのは分かるんですが・・・

例えば大騒ぎされている米国債への影響ですが、以前にも書きましたが中国の米国債保有高は外貨準備高に比較して小さいものです。最近の米国財務省のデータをみても2,435億ドルと大きいことは大きいですが日本の6,857億ドルの比ではないですし、英国、ドイツ、ルクセンブルグの3国の米国債保有高の合計と同じくらいです(ところで日経など、中国が「こっそり」と米ドルでない通貨に変えていたからだなんて書いているところもありますが、主要マネーセンターでそのような動きは見られていません。少なくとも大きい額がドルから他の通貨に変えられていたということは無いはずです)。

また「通貨バスケット」ですが、もし中国が貿易高にある程度従ってバスケットの構成比を決めるという過激な仮定をおいたとしても、2004年1-8月の中国の貿易相手をみると

EU 15.5%、米国14.8%、日本14.8%、アジア太平洋諸国(香港、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、タイ、フィリピン、その他ASEAN)34.9%、その他20%

ですが、「じゃあ米ドルは14.8%?」というのは大間違いで、日本、アジア太平洋諸国、その他の国も強弱の差はあれ対ドルで為替をある程度固定している国が多数ですから、ドルの比率が大して低下するわけでもないと考えられます。というわけで、米Barronsにのった記事の抄訳をのせておきます。

中国は人民元の対ドルのペッグを断ち切り、主要通貨のバスケットに対しペッグすることにより、米政府の執拗さに屈したようにみせかけた。この決定により人民元は2.1%切り上げられたが、実質的な影響はサイをノミが噛んだ程度だ。

中国政府の巧妙な動きは、米国で高まる保護貿易主義を鎮めることを目的としたものだが、さしあたりうまくいったようである。今回の決定に対するコンセンサスは「良い最初のステップ」というものである。アラン・グリーンスパンとジョン・スノーなどが賞賛を口にしただけではなく、対中強硬派の最先鋒で、中国に為替政策の変更を迫る報復的な法案(シューマー・グラハム法)の共同提案者であるチャック・シューマー上院議員でさえ、一時的にせよ態度を軟化させたようである。

これほど露骨にとるに足りない動きが、私たちの勇敢な政治家たちからこれほど迅速で、圧倒的に肯定的な反応を引き出したということは、面子を重んじるのが中国人の専売特許ではないことを示している。例えばシューマー上院議員が求めていたのは27.5%の切り上げであった(この不可思議な数字の根拠はまったく不明だが、2.1%より大きいのは確かである)。

ブリッジウォーター・アソシエーツは、中国が「好きなように何でも行うことが可能で、好きなように何とでも他国に説明できる」為替システムを考えついた、と鋭い観察をしている。中国が採用する通貨バスケットの構成は、時として倫理をわきまえない外国人投機家が為替操作などを行えないように秘密にされ、対ドルでの取引レンジは極めて狭く、取引日の前夜に人民銀行によって設定される。

今回の発表は、新たな為替システム自体の内容に関しては貧しいものだが、中国の経済システムの本質を示唆するものとしては注目に値する。例えば今回の発表で使われている「社会主義的市場システム」あるいは「管理変動相場制度」という言葉が示すのは、中国が第一義的に「統制」経済であるということである。どのような経済でも政治的な要素はあるが、中国ではすべてがそれに盲従している。これは中国経済を予測不能なほどもろいものにしている。例えば、失業の急増による社会不安を怖れて中国政府は経済の過熱を抑制できていないが、これは全世界で衝撃が感じられるほどのハード・ランディングの可能性を大きく高めるものである。

今回の変更がどのような意外な影響を及ぼすかを予想するには時期尚早だが、我々の巨大な貿易赤字も財政赤字も為替ではなく我々の役立たずの財政政策が原因であることから、今回の切り上げが貿易赤字にも財政赤字にも何の影響も与えないということは賭けても良い。そして大惨事でも起こらない限り米国の財政政策が変更されることはないだろう。

(ついでに言うと、上の「巨大な貿易赤字も財政赤字も為替ではなく我々の役立たずの財政政策が原因」というのはクルーグマンなんかが言いそうですが、少し違うような気もします。どちらかというとバーナンキマンキューなんかが言ってる「世界中の資本が米国に流入するため」という方が当たってるような気がします。)

July 21, 2005

人民元切り上げ

先日8月の人民元切り上げの可能性のハナシを書いたところですが、8月を待つまでもなく人民銀行が人民元の実質的切り上げを発表、即日実施としたようです

内容は先日書いた内容と大体同じで、対ドル切り上げ幅2.1%(1ドル=8.1100元)に相当する通貨バスケット制をベースとする管理変動相場制への移行となっており、変動幅は従来通り中心レートから上下0.3%と狭いものとなっています。

通貨バスケットは中心レートの決定に際してドルだけでなく他通貨も考慮するということです。この中心レートは毎日市場が開く日の前日夜に発表されるようですが、通貨バスケットの構成比やレートの決定方法などの内容はおそらくあまり明確にされることはないでしょう。

またマレーシアも即時に管理変動相場への移行を発表していますが、「ブレトン・ウッズ2」で多かれ少なかれ対ドルにペッグされているとみられる通貨はつられ高になりそうですね(円も含め)。

BBC哲学者人気投票:Top10決定

Ludwig Wittgenstein70X70
BBC radio4がやってた「我々の時代の最も偉大な哲学者」人気投票の結果発表がありました。

それで結果ですが、1位、しかも2位以下を大きく引き離しての1位は、な、なんと、カール・マルクスでした・・・こりゃ驚きです(いや、エラい人だと思いますが・・・ちなみに私の趣味で写真はウィトゲンシュタインです・・・すみません)。トップ10は上から順に、

  1. マルクス : 27.93% (!!)
  2. ヒューム : 12.67% (イギリスだからでしょうか)
  3. ウィトゲンシュタイン : 6.80% (くまも一時狂いましたが、ちょっと上すぎるような・・・)
  4. ニーチェ : 6.49% (上に同じ)
  5. プラトン : 5.65% (こっから下はまぁ、どっかには出る名前ですが、「我々の時代」かしらん?)
  6. カント : 5.61%
  7. アキナス : 4.83%
  8. ソクラテス : 4.82%
  9. アリストテレス : 4.52%
  10. ポパー : 4.20% (ウィトゲンシュタインにポパーですか、、、、?)

となっています。

しかし、ちょっとサイトを見てみると、もともと最初のノミネーション自体に問題がありそうですが、このマルクスのダントツぶりは何なんでしょうか? 組織票でしょうか、、、柄谷行人がいっぱい入れたとか・・・

ただ、こんな投票やる放送局は少ないでしょうねぇ・・・

BBC : In Our Time's Greatest Philosopher Vote - Result

July 19, 2005

8月の人民元切り上げはあるか?

6月末の中国の外貨準備は7,110億ドルというトンでもない額になっているようですが、これは2004年12月末段階から1,010億ドルの増加です。ちなみに日本の外貨準備は6月末で8,430億ドルですが、過去12カ月で1,070億ドルの増加ですから、中国の外貨準備は日本のほぼ2倍のペースで増加していることになります。

上の数字からみると中国の外貨準備は1カ月当たりで160-170億ドル程度増えてる勘定になりますが、この外貨準備の数字には国有銀行につぎこんだ150億ドルやユーロ安による目減りは含まれていないので、実質的にはもっと速いペースで増えていることになります。

で、中国の貿易黒字は過去、大低下半期に加速していますから、それを考慮に入れると今年中にあと1,200億ドルや1,400億ドル位増えるのはわけないと思われます(これは低すぎるかもしれません)。一方で米国は巨大な経常赤字をかかえており、この歴史上まれにみるスーパー赤字とスーパー黒字の組み合わせはブレトン・ウッズ2の安定性に暗い影を投げています。

そこで、人民元切り上げの話になるんですが、Financial Timesは、米国が8月の中国の人民元切り上げを予想していると報じています。さて、こんなに短期的に人民元の切り上げはあるんでしょうか。

どうも、いろいろ見ていると秋までに何らかの動きがある可能性は高いが、実質的にはほとんど影響のない程度という見方が多いようです。

人民元切り上げの根拠として多くが挙げているのが、

  • このままだと10月中旬に米国は中国を「為替操作国(Currency Manipulator)」であるとお墨付き(?)を与えることになる。
  • シューマー・グラハム法の採決が今秋おそらく行われる。これは中国が人民元切り上げをしない場合、27.5%の報復関税をかけるという(メチャクチャえーかげんな)ものです。
  • 胡錦濤主席の今秋の訪米。訪米前にアクションがないとブッシュ大統領が胡錦濤主席に直接人民元問題をぶつけることになりますが、この光景はあまり中国の国内政治的に見て宜しくない。
  • 通貨介入の不胎化のために発行した手形残高が膨大な額になりつつあり、人民銀行の金利リスクへのエクスポージャーが増大している。

こう見るとそれぞれもっともらしいのですが、これを打ち消すのが、今巷でささやかれている中国の景気減速の兆候で、もし人民元を切り上げてさらに景気が減速すれば、共産党が最も怖れる社会の不安定化の可能性があるという見方です。それに、どうも米国の圧力に屈したととられるのも共産党にとっては好ましくないという見方もあります。

ということで、両方足して2で割ると(?)、実質3%とか5%の切り上げになるちょっとした動き - 米ドルに対するペッグから、シンガポール形式の通貨バスケットに対するペッグへの変更が有力視されているようです。こうすれば米国の報復を避けつつ、しかも米国の圧力への屈服というよりも「新たな通貨政策への移行」という大義名分もたちますし、これくらいの実質切り上げなら経済への影響も最小限になるというわけです。

ありそうな話ですが、どうでしょうか??

すごく小手先に見えるような気もしますが、考えてみれば中国共産党にとっては人民元の安定(そして変更があっても小幅な変更)が望ましいことは明らかです。そして、それは多分、中国経済の大きい影響を受けている日本や他の国にとってもある程度同様ではないでしょうか。

ある程度の開放経済では、不均衡が為替で修正されない場合は、物価水準を通じて修正されることになります。つまり、人民元のレートが現在過小評価されているとしても、時間が経てばそのうちに中国の生産性や給与水準が上昇し不均衡が修正されることになります。

為替による修正と異なるのは、為替による修正がほとんど一瞬にして起こるのに対して、物価や生産性による修正は極めて長期間のプロセスになるということで、安定性が至上命題の中国にとっては(そして他国にとっても)極めて好ましいといえます。ちなみにマッキンノン御大も大体こういう考え方のようです。

問題は中国は極めて巨大で、この不均衡修正プロセスが極めて長期間になるであろうということで、その間米国が赤字に耐え続けられるかという点です。これに関してはガクシャでも強気派から弱気派まで分かれており(一応弱気の方がアタマが良いと思われているようですが)、何とも言えませんが、1つだけ確かなのは米国の政治家と国民がそれほど長い間耐えられないということでしょう。

これは、ユノカルの買収一つでこれだけ大騒ぎしてるのを見ても明らかでしょう。米国の経常赤字は、中国に対するドル資産売却(人民銀行のドル買いはそのうちの1つです)で埋められる必要があるわけで、中国のドル資産は1カ月に1個ユノカルを買っておつりがくるくらい増えてるわけです。このドルはもちろん日本みたいに米国債ばっかりに行くわけじゃありません。ユノカルどころかいろんなモノが中国資本に買われることになるでしょうが、米国人がそれに耐えられるかどうか?多分無理ではないでしょうか。

というわけで、8月に小幅な切り上げがあろうがなかろうが、まだまだ人民元問題はどうなるか分からない状態が続きそうです。

July 15, 2005

カネボウ

産業再生機構でリハビリ中のカネボウの買収に結構いろんな企業が名乗りを上げているようですね。

再生機構はカネボウとカネボウ化粧品の一体再生を掲げ、複数企業の連合体に両社株を総額五千億円規模での一括譲渡を期待している。

私の認識では、もともとカネボウ化粧品はそこそこの好業績、残りの事業はぐちゃぐちゃで、外国企業であればとっくの昔に化粧品事業を残して他の事業をリストラしていたところだったと思いますが、残りの事業が「本流(?)」なので、最初は化粧品事業が売りに出された(が挫折)という経緯だったような気がします。

(化粧品事業も債務の山なんて報道も再生機構入りの前には出てましたが、当初化粧品事業は別法人ではなくバランスシートをきれいに分けるのは不可能と思われるため単に別事業の債務を配賦で上乗せしただけではないかとも疑われます - 大体化粧品事業であれだけ売っていて債務の山になるというのはフツーあり得ないような気がします)。

何の「再建」の必要があったのか良く分からない化粧品事業にまで「再建事業」のレッテルを貼って国費をつぎこみ、そもそもの問題の原因になった「お荷物」を(一度分離したにもかかわらず)くっつけて「一括譲渡」とはどういうことなんでしょうか・・・おまけに「再建」した化粧品事業は売上も営業利益率も2003年の水準を下回る(営業利益率に関しては激しく下回っています)というのも何だかまったく良く分かりません。

買収するところはどこも商売ですから、最終的に儲からない事業は不要でしょう。どこが買うにしても最後にこれらの事業のどれだけが残るのか疑問です。再建機構は4000億もつぎこんで、結局はがれる厚化粧をしたようですが、どうも「粉飾決算」事件といい、古くからの「名門」企業だけに分からんことが多すぎるような・・・

元名門企業のせいか、そこそこサラリーマンとしてはジェントルマンの方も多かったような気もするんですが(いや、フツーの管理職の方とかのハナシで、帆足さんとかじゃないですよ)、、、、

July 13, 2005

アフリカに今必要なもの・・・

Live8はいろいろなビデオやクリップを見たんですが、それなりに良かったような気もしますし、みんなの関心や注意を喚起するという面では成功だったんだろうと思うんですが、少し暗澹とした感覚も残っています。それはLive8のサイトを見ていろいろ読んでしまったからもあります。

私は開発経済学に関しても援助の問題に関してもほとんどトーシロに毛が生えたか生えないかという程度なんで、志の高いイベントに文句言えるような身分ではないんですが、「Live8よお前もか」みたいなそこはかとない脱力感をわずかに感じたのは確かです・・・

G8サミットのために集まった8人の世界のリーダーに援助を倍増し、債権を放棄し、貿易関連法を公正にするための実行可能な計画を示す。これらの8人が合意すれば、我々は貧困を過去のものとした世代になるだろう。

良いことだとは思うのですが、内容が非常に問題です。第一に援助に関して言えば、過去においてそれほど効果的であったとは言えず、倍増したところで実効性が上がるとは思えないのです。この手の問題に関してはもはやクラシックといっても良いニューヨーク大学のWilliam Easterlyペーパーからちょっと図を示してみましょう。
Africa-Aid

もちろん、Live8のベースになっている活動でも単に援助を増やせといっているのではなく、「より良い援助を」と言っています。しかしなぜ今まで「より良い援助」が行われていないかが問題です。そしてこれについてはLive8は極めてムーディーというか、無責任な主張をしていると感じられます。

援助は援助の受け手が民営化やサービスの規制緩和を行うという約束をするということを条件にするべきではない。

残念ながらアフリカの行政機構、政府そして政治は腐敗、非民主的ルールなど極めて問題が大きく、これらの条件は「ネオ・リベラル」ではなくても妥当なものだと考えるのではないでしょうか。最悪の場合私腹を肥やして国民なんか何とも思ってない権力者だって(かなり)いるわけです。

ノーベル賞学者で「ネオ・リベラル」なんかからほど遠いインドのセン教授でさえ「市場の自由化を行うことから全く経済的な恩恵がないとしても、それが市場の透明性を高め政府の腐敗を減少させるのであれば、それだけの理由で自由化を行う価値がある」と述べています。

また、Live8のサイトでは、

WTO、IMF、世界銀行の3つは富裕な国に支配されている。彼らは貧しい国に外国の輸入品および事業に対し市場を開放することを強制し、電力事業のような公益サービスを売却させる。たとえそれが貧困な国の利益に適わなくてもだ。彼らはまた、貧困な国が弱い農民や産業を保護するのを禁じている。富裕な国は彼ら自身の農民や産業の保護を継続しているのにだ。

ああ・・・としか言いようがないのですが、「貧困はグローバリゼーションを押し付ける富裕国と大企業とIMF/WTO/WBのせい」というおなじみの(しかし大体において間違った)モチーフが見えます。アフリカの最貧国は数字で見れば経済的には最もグローバリセーションから隔絶された国々ですし、生活水準を改善するためには先進国に商品を売る必要も、先進国から商品を買う必要もあります。

問題は「貧困国が市場を保護することを禁止している」ことではなく「先進国が農産品などの輸入に門戸を閉ざしている」ことです。先進国が自国の農業の保護に費やしているお金は(助成金や輸入制限などの市場保護も金銭換算すると)アフリカへの援助などピーナッツに見える金額です。貧困国がその余裕もない市場の保護をするのを支持するのではなく、自国の政府が自国の農民を保護するために最貧国の農民の収入の方法を奪っていること自体を非難すべきではないでしょうか。

個人的に言えば、以下のことがとっても必要じゃないかと思うんですが-

  • 貧困国の輸出品に対して門戸を開くこと。収入の道を邪魔しておいて援助なんてのはナンセンスです。
  • アフリカ諸国への兵器輸出の禁止と内戦停止の援助。ほんとにトンでもない連中(政府を含めてです)が武力を用いトンでもない内戦を繰り返し、経済の破壊だけではなく、トンでもない悲惨なことが起こっています。はっきり言って、これをほっておくのは犯罪に等しいと言えます。なぜこれを無視するのかまったく分かりません。
  • 援助に関して言えば、AIDSなどの医療、そして教育、戦争で破壊されているインフラ、そして貧困層の自立を助けるためのマイクロ・ファイナンスなどの強化が必要なのではないかと思います。

ケーザイは英国でベンキョーしたんで、なんとなく爆破テロやらサミットやらLive8やらで複雑な感情がかきたてられたここ一週間でした・・・

July 12, 2005

(いまさらですが)米国長短金利の謎

今週のBarronsをパラパラ見てると、ここ数カ月いろんなとこで定番になっている米国長短金利の「謎」に関する記事がまた載っていたんですが、今回は長期債券強気3人組 (Van Hoisington、Gary Shilling、David Rosenberg)に焦点を当てていてちょっと面白かったです。

米国金利の謎っていうのは、連銀が短期金利(FFレート)を引上げているにもかかわらず、長期金利があんまり上がっていないってことで、連銀の短期金利引上げが始まってからもう1年にもなるのに長期金利はどかっと低め安定したままってやつです。連銀議長のグリーンスパンも「Conundrum(謎)」なんていってますね。

長期金利は普通短期金利より高くなりますが、これはすごく簡単にいうと期間が長い分だけリスク(不確定性)が高いんでリスクに応じた分の「ご褒美(つまり高い金利)」がなければ誰もお金貸さないってことですね(定期預金の方が普通預金より金利低けりゃ誰も定期預金なんてしないのと同じです)。

短期金利を引上げてるのにそれに応じて長期金利が上がらんってのは何か変だってことになってるワケなんですが、よく見る説明では、アジアの中央銀行(特に中国だとか)が通貨防衛のため米国国債をいっぱい買ってるから(つまりお金貸しまくってるから)金利が上がらんってものですね。

しかし、長期金利を考える際のリスクっていうのは国が破産するとかいうのを別にすればインフレが一番大きいので、長期金利が上がらんってのは市場がインフレは起こらんと読んでるともいえます。

そこでHoisingtonのは個人的にも一番興味を持っている点に触れていたので面白かったのですが、つまり今の時代は、グローバリゼーション、技術革新といった面で1871年から2度の大戦が起こるまでの期間に似ているというものです。

この期間はよく第1次グローバリゼーションの時代なんていわれますが、産業革命による生産性向上、グローバリゼーションによる安価な労働力、生産能力の過剰供給で、全世界的な好景気にも関わらず経済はデフレ気味で推移していました。戦争中までの期間を合わせても1871-1949年の間で長期国債の平均金利は2.8%、平均インフレ率は0.7%となっています。

Gary ShillingにいたってはHoisingtonの挙げているのと同様の理由で米国は向こう数年のうちデフレに突入するとしており、それが長期金利の上がらん(今後さらに下がる可能性すらある)理由だとしています。このお三方とも長期国債を山のように買い込んでるようなので、マジなのは確かかも知れませんね。

まぁ、依然として圧倒的多数のガクシャ、エコノミスト、アナリストはそのうち長期金利も上がると考えてるんで、このお三方は異端ですが・・・(でも最近はSteven RoachとかBill Grossなんかも長期金利低め安定派に鞍替えしていますね)。

July 05, 2005

いろんなリスクをヘッジする?

Q1. ずっと住んでる家の価格が暴落する可能性があります。どうしたら良いですか?
Q2. あなたはプログラマーですが、インドへのアウトソーシングで給料が激減しそうです。どうしますか?

なんていうのは、人生で良くある(ファイナンシャル)リスクの一例ですが、結構ヘッジできないリスクの一例でもあります。例えば、1の方の答えとして「さっさと売っぱらう」とか2.の方で「別の勉強して転職する」なんてのはあんまりヘッジにはなっていません(おっと、念のために言っておくと、これはあくまで例で、アウトソーシングで先進国における給与が減少しているというようなことを示すデータを見たことはありません)。これが例えば、

Q3. 持ってる株が暴落しそうです。どうしたら良いですか?

なんかだったら、「空売りする」ってのもヘッジの有効な方法としてあるんですが。

この差は何かというと、リスクを売買する市場があるかないかという差になるんですが、例えば自分の家を「空売り」したり、自分の給料を「空売り」できるだけで大分事態は変わるわけです。

なんで、こんな話をするかというと、イェール大学のロバート・シラー先生が創立者の一人であるMacro Securities Reseachっていう会社が現在米国各都市の住宅価格指数と連動する金融商品(MACRO)をSECに登録して、アメリカン証券取引所に上場する予定だからです。同じ指数商品の先物をシカゴ・マーカンタイル取引所に上場する予定もあるみたいです。

これで例えば、カリフォルニアに家を持ってる人は、住宅が暴落するかも、と思った場合はカリフォルニアの住宅価格指数と連動するMACROの空売りをすれば良いわけです。

ところでシラー先生がなんでこんなことをやってるかというと、この先生例の「根拠なき熱狂(Irrational Exuberance)」というアラン・グリーンスパンが使った言葉のもとになった2000年のハイテクバブルに関する本を書いたお方なんですが、もともと401kとか社会保障の「自己責任化」には反対してる先生で、その理由の1つに「金融市場はあまりに不完全でリスクをヘッジする機能がない」ってものがありました。一番最初の例でも、金融市場でヘッジできる(ファイナンシャル・リスク)は、極めて限られているのが分かります。

その解決策として先生が提案してたのが、何でもかんでもリスクが売買可能なMACRO市場というわけで、本で読んだ時は学者の夢物語と思っていましたが、この先生本当にやってたんですね。頭が下がります。そのうち、各職業の給与水準に連動する金融商品なんてのも本当にでるかもしれませんね。「プログラマーの給料売り」とか・・・

ところでこの"Macro Securities"、最近は原油価格と連動するETFも開発したようですが、がんばっていますね。日本でファイナンシャル・エンジニアリングというと、ちょっとコンピュータで統計モデルを動かしてデリバティブ売買のモデルを作るとかちょっと(?)の感じがあるのですが、このようにヘッジできなかったリスクがヘッジできるようになるとか、原油ETFのように一般人の売買対象にならなかったものが、より広く市場で売買されるとかいうのはファイナンシャル・エンジニアリングの重要課題だと思います。

ところでシラー先生の「根拠なき熱狂」の日本語版って植草一秀さんの翻訳だったんですね・・・・英語版をお勧めします。

  

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