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March 29, 2005

R&D投資も戦時体制のアメリカ

MITのTechnology Reviewをみてると、テロ以降米国政府のR&D投資は急速に安全保障に集中しているみたいで、研究者連中も「これで米国はテクノロジーでリーダーシップをとり続けられるのかしらん」と心配してる向きもあるようだ。

R&Dに対する2005年度の連邦支出は4.8%伸びて1,322億ドル(14兆円程度)だけど、増加分の大体8割くらいは国防関連にまわっている模様だ。というわけで、米国政府の2005年のR&D予算の57%、750億ドル程度が国防関連となっている。この間提出された2006年度の予算案ではさらに6億ドルが国防関連に上乗せされることになっている。

特に派手なのが国土安全保障省(例のホームランド・セキュリティってやつだ)で2005年には20%増のR&D予算でHSARPA(国土安全保障高等研究計画局)は3億ドルを得たが、2006年予算案ではなんと10億ドルが計画されている。HSARPAは3-5年で実用可能な研究に集中する建前なんで、「将来から資源を盗むようなものだ」と批判するガクシャも多い。

対照的にNSF(米国科学財団)の2005年予算はマイナス0.3%、NIH(国立衛生研究所)はわずか1.8%増(2006年予算案ではわずか0.7%増)とお寒い状況で、安全保障集中が浮き彫りになっている。企業が基礎研究にお金使ってればあんまり政府の動向も気にすることはないんだろうけど、米企業も最近は実用技術に集中しつつあり、これもガクシャの心配のタネになっている。ベンチャー企業もお金には敏感だから、安全保障関連の研究は欠かせない。Venture Economicsによると2000年のバブル以来、通信関連のR&Dはマイナス83%、ソフトウェアはマイナス77%となっているが、安全保障関連は58%減少したに過ぎない。

でもね、インターネットもよく考えればDARPA(国防高等研究計画局)から出てきたようにね、米国の国防技術の民生技術へのスピルオーバーは結構あるから、これらのお金からまた政治家やガクシャが意図してなかったなんか変なもんが出てくる可能性もけっこうあるような気がする。テクノロジー自身は別に目的持ってないからね。

March 27, 2005

Bush政権の金庫番はガラガラ

ブッシュ政権の2期目は社会保障、年金、税制改革とかなり重い課題が山積みとなっていますが、どうも手足となる財務省はガタガタの状態のようで、The EconomistNew York Timesなど懸念を表す向きも増えています。で、ちょっとみてみると、

財務長官:ジョン・スノー
副長官:空席
次官:(国際関連)ティム・アダムス(現在指名中、現職ジョン・テイラーは4月22日付で辞任)
次官:(国内財務)空席
次官:(Enforcement)スチュアート・リービー

長くなるのでこの下は省きますが、次官補クラスまでみても3分の1程度が空席という恐ろしい状態です。しかもジョン・スノーを含め経済に関しては大半が軽量級といっても良い布陣になっています。The Economistにいわせれば「経済学者よりビジネスマンを重用している表れ」か「政策のセールスマンさえ確保すれば後は上手くいくと思っている」のではないか、となりますが、さすがにそこまで単純なんでしょうか(可能性がないとは言えませんが)?

米国のガクシャの中には「給料が低いわりに、権力がないから」なり手がないなんて言ってる人もいますし、ブッシュ大統領のアドバイザーになったばっかりにガクシャ連中から「総スカン」を食ったマンキュー(マンキウ)先生の例もあってなり手がないとも思えますし、能力よりも忠誠度が問われるという印象のある政権では能力のある人がよってこないとも考えられます。

どちらにしても米ドルがフラフラしているこのご時世にちょっと危なっかしいですね。アルゼンチン危機やアジア通貨危機、あるいはLTCM危機みたいなことがあれば結局アラン・グリーンスパン頼りってことになるんでしょうか。彼の任期も残りわずかですが、、

March 25, 2005

着うたで排除勧告?

着うたでレコード5社に排除勧告だそうで。

公正取引委員会は3月24日、大手レコード会社5社に独占禁止法違反(不公正取引)が認められるとして、排除勧告を行った。同委員会は2004年8月に5社に立ち入り検査を行っている。

勧告を受けたのは、ソニー・ミュージックエンタテインメント、エイベックスネットワーク、東芝イーエムアイ、ユニバーサルミュージック、ビクターエンタテインメント。5社は着うたを提供する業務をレーベルモバイルに委託している。公取委によれば、5社はレーベルモバイル以外に着うたを提供する事業者に、正当な理由なく原盤権の利用許諾を行わなかった。

この記事は結構ミスリーディングじゃないかしらん。これだけみるとレーベルモバイル以外に原盤権の利用許諾を行わなかったことが問題のようにみえるけど、ちょっと違うんじゃない?

公取の発表をみるとあくまで「共同で」(つまり主要レコード会社が共謀して)利用許諾を行わなかったってとこがポイントで(つまり「共同の取引拒絶に該当」となっている)、単に「原盤権の利用許諾を行わなかった」ことを問題とはしていない。実際「今後、それぞれ自主的に原盤権の利用許諾の可否を決定すること」となっている。

どの会社やどの人に許諾を出すかについては、(今の契約形態だと)各社が独占的な決定権を持っているはずだから「他の配信会社に対して許諾しなかった」ことだけでは、独占禁止法違反ってのは無理だろう。

さて、ここで苦しいのはレーベルモバイルという(共同の)会社が存在しちゃってるということじゃないんだろうか。一体シェアがどれくらいあるのか知らんけど、この会社自体十分マズイような気がする(フツーはあり得んだろう。わかりませんが)。この(共同出資の)会社はそのままにして「共同で決めちゃいかん」というのもなんだかなぁ、、、

これべつに音楽とか許諾権の話じゃなくてもね、例えば米国でGMとフォードとクライスラーが共同で販売会社を作って、そこ以外には売らないってみんなで決めたようなもんじゃないのかしらん。まあ米国だと競合関係の会社の人間が一堂に会してビジネスの会議をもつだけでもお縄になりかねないくらいヤバいから絶対にあり得んだろうけど。

まぁ公取とレコード業界にすればそんなことはどーでも良いことで、今後の音楽配信における再販制度なんかの方が大事なのかもしれませんがね。

ちなみにくまは着うたなんてのはまったくキョーミありません。だって携帯きらいなんだもん。

March 24, 2005

高裁はアフォか

昨日はlivedoorがニッポン放送による新株予約権の第三者割当発行差止めを求めていた件で高裁の決定が出てみなさんlivedoor完全勝利かなんて言ってたんだけど、今日新聞で決定の内容をちょろちょろ見てると??X??@???ってカンジだったので高裁のホームページで全文をみてみましたが、、、、

中段まではまぁどうってことないんだけど、中盤以降に「株主全体の利益の保護という観点から新株予約権の発行を正当化する特段の事情がある場合には,例外的に,経営支配権の維持・確保を主要な目的とする発行も不公正発行に該当しないと解すべきである」とあって、その例として買収者が以下のようなことを目指している場合には、会社の経営者が対抗手段をとっても良いというようなカンジになっている。

  1. いわゆるグリーンメイラー(真に会社経営に参加する意思がないにもかかわらず,ただ株価をつり上げて高値で株式を会社関係者に引き取らせる目的で株式の買収を行っている場合だそうです)
  2. いわゆる焦土化経営(会社経営を一時的に支配して当該会社の事業経営上必要な知的財産権,ノウハウ,企業秘密情報,主要取引先や顧客等を当該買収者やそのグループ会社等に移譲させるなど、のことだそうです)
  3. 会社経営を支配した後に,当該会社の資産を当該買収者やそのグループ会社等の債務の担保や弁済原資として流用する予定で株式の買収を行っている場合
  4. 会社経営を一時的に支配して当該会社の事業に当面関係していない不動産,有価証券など高額資産等を売却等処分させ,その処分利益をもって一時的な高配当をさせるかあるいは一時的高配当による株価の急上昇の機会を狙って株式の高価売り抜けをする目的で株式買収を行っている場合

なんじゃこりゃ。

1.何でこれが悪いのか良く分かりません。低く買えて高く売れるってことは、価格が変だったってことでは??まぁこれに関しては諸説あるみたいですが。
2.はっはっは。事業再編が出来ないなら会社買収するとこなんかなくなるような気がしますが?とゆーか、買収->事業再編->事業復活->(うまくいけば売って大もうけ)、ってのは企業買収では当たり前のシナリオなんでは?

3.これはLBOの場合あたりまえでは???LBOはあかんのですか?おいおい。ちょっと待て。

4.要らん資産を売って配当に回すのもダメ???株価を上げて売るのもダメ???。。。。

別にくまは企業買収家さんたちのファンでもなんでもないけどね、これはちょっと拡大解釈すれば買収に対する防衛はなんでもありって感じのちょっとひどい文章だねぇ。くまは単なるマネーゲームには興味ないけど、マネーゲームにはマネーゲームの意味がある。10円で買ったものが即座に20円で売れるってことは価格決定メカニズムがきちんと作動してないってことでね、サヤトリする連中がいないと市場はちゃんと機能しない。市場が機能しないとまっとうな事業で成功している企業でも、企業価値が上がらず事業投資を行うことも容易にならない可能性があるってことでね、事業投資はよくって金融投資はいかんという理屈は成り立たない。この決定の文章はアメリカのどっかのセンセーショナルな安新聞の20年前の記事から抜き出してきたようなカンジだ。くまも人のことは言えないけど、ちょっと勉強不足激しすぎではないかしらん。


(別件ですが後記)なんて書いてると某SBIの某氏がテレビでなんか言ってますな(大人の解決とか)。この方々本当になんでもありですな。本当に社外取締役いるんですか??>ニッポン放送

March 23, 2005

livedoorつれづれ(その3)

ニッポン放送のフジテレビジョンへの新株予約権発行差し止めに関して東京高裁もライブドアの主張を認めることとなったようだ。

当たり前といえば当たり前なんだけど、以前CSKとベル21の時に「??」っていう判断が下っていただけに「ひょっとしたら」っていうのは多くの人が思ってたんじゃないかしらん?

ニッポン放送は横浜ベイスターズの株式30.8%、フジテレビはヤクルト球団の株式20.0%、通販会社ディノスは62%がフジテレビ、ニッポン放送が32%の出資となっている。これだけみても、livedoorにとっては極めて「おいしそう」なターゲットといえる。まぁフジとかニッポン放送にとってプラスかどうかってのはこれからだろうけどね。

ところで、テレビでは相変わらず寝ぼけた方々が「敵対的買収では従業員のやる気が落ちて上手くいかない」だとか言ってるねぇ。これ寝ぼけ過ぎ。

会社員の仕事は会社の事業に貢献することでね、別に買収なんかなくてもその過程でいやな上司に当たったり、無能な経営者に当たったり(たまにリストラにあったり)なんてのは会社員として避けられない運命なワケ(しかもホリエモンが何をするかなんてまだ分かってもいない)。でまぁ「ジョーダンじゃねぇ」って人はやめるし(日本では少数派だね)、いそいそと新しい上司や経営者とウマくやる人もいるし(これは結構いるね)、以前と変わらずそこそこ働いて、以前と変わらずアフター5に一杯やって愚痴こぼすって人もいる(これは多いね)。全然そういう経験をしないラッキーな人も中にはいるんだろうけどね。こんなこと程度でやる気がどうのこうのだとか社員の気持ちがどうのこうのなんて、大のオトナが大騒ぎしてるのを見てると日本の先行きが思いやられる。

まぁ寝ぼけた人たちのほとんどは会社で勤めたことがないようだけど、経営者が誰になってもそこそこ働くってのが会社員ってモンだと思うよ。使い方のウマいヘタはあるだろうけどね。

くま自身はいろいろ買収やその後の経営統合やリストラだとかの大騒ぎも何度かみてる。ニッポン放送のみなさんもひょっとしたらすごく大変になるかもしれないけどがんばって下さい。

March 21, 2005

5セントの音楽

サンディー・パールマンというとクラッシュのプロデューサーをやってた人ですが(いや、他にもパブロフズ・ドッグとかマハビシュヌ・オーケストラとかのプロデューサーも、、、、どーゆー取り合わせかまったく謎ですが)、今はカナダのMcGillで研究やってるみたい。

で、今月の初めのカナディアン・ミュージック・ウィークで彼が行った講演が、「1曲5セントの音楽ダウンロード」だそうだ。彼のアイデアはシンプルで、「すべて」の音楽をダウンロード可能にし、グーグルやYahooのような方法で検索可能なデータベースに収め、1曲5セントで売るというものみたい。

1曲5セントなら売上げは指数的に増加して、アーチストなど版権を持ってる連中には福音となる上、これくらいの値段ならばユーザーも不法ダウンロードよりも「正規の」ダウンロードにお金を払うだろうというもののようだ(もちろん講演ではカナダの音楽産業関係者からケチョンケチョンにケナされたみたいだけどね)。

DRMなし、高音質で、「すべて」の音楽がカバーされていて、5セントならば確かに魅力的のような気もする。ただiTSMをベースにすると約20分の1の値段なんで、超単純にコスト一定で考えても需要が20倍以上にならないと企業は興味を示さないかもね。それにやっぱり、薄利多売で十分いける大人気バンドのプロデューサーが考えたプライシングのような気もしないではない。

大体99セントにしろ5セントにしろ、またCDの値段でもそうなんだけど「大体同じ値段」にする必要があるんだろうか。「物質的」な原価で値段が決まる製品でもないと思うしね。まぁ、オペレーション的には簡単で良いのかもしれないが、売値も買値も需要と供給で決まるってのが市場ってもんだ。お金とるなんてとんでもない音楽もあれば、もっと払っても良い音楽ってのもあるんだけどね。

March 19, 2005

livedoorつれづれ(その2)

livedoorがフジの買収にLBO(レバレッジド・バイアウト)を考慮なんてどっからでたニュースかわからんニュースをみんな流しまくってるけど、その際にLBOの説明でほとんど常に出てくるのが1980年代のKKRによるRJRナビスコ買収だねぇ。中にはLBO自体を1980年代に流行った過去の悪しき手法みたいに取り上げてるのもあるけど、さすがにこれ古すぎ。

実際には、トムソン・ファイナンシャルによると2004年だけでも米国でのLBOは683億ドル(ほとんど7兆円!)に達していて、これはRJRナビスコを巡る買収劇のあった1988年以来の最高になっている。おなじみのKKRもパンナムサットの買収なんかで頑張ってるみたいだ。

もともと企業買収ってのは、企業の買収後に事業の再建・再編などをやって投資価値を上げる手法だから、世間で言ってるマネーゲーム的なものというよりは、本質的には長期的でかなり思慮深い投資だといえる。

ただ最近、米国では企業買収・再建での儲けに目をつけたヘッジファンドの連中が乗り出してきているようで、米国の企業買収の専門家たちはちょっと眉をひそめてるようだけどね(ヘッジファンドの連中は基本的にトレーダーだからね、企業価値を上げる専門家じゃないわけ)。

EFFが「絶滅の危機にある機器」リスト

Electronic Frontier FoundationがEndangered Gizmos List(絶滅の危機にある機器リストとでも言えばいいんでしょうか)をサイト上に掲載しています

エンターテインメント業界などの圧力で絶滅に追い込まれつつある機器を救おうってハナシなんだけど、EFFは次の様に書いている。

「業界に認可されたテクノロジーや機器だけが市場において生存を"許される"ような世界にますますなってしまうわけだ。これはイノベーションや自由競争にとって悪いだけじゃない。教室でのプレゼンテーションのためにテレビや映画のクリップを"正当"に使用したり、政治的な意見を表明するために自分だけの"デイリー・ニュース"スタイルのビデオを作ったり、音楽を持ち運ぶために単にMP3のファイルを別の機器にコピーしたりっていうような、エンターテイメント・コングロマリットの連中にはまったく何の関係もないようないろんな活動までが脅かされることになるんだ」

以前にも書いたけど、米国政府は経済成長と著作権保護、そしてエンターテイメント産業の圧力等の中で意図的に中途半端な立場をとっているが、デジタル著作物の揺籃期でまだいろいろぶれる可能性が少しにしてもある時期だけに、EFFのやってるような活動も大事だと思うよ。

March 17, 2005

World Bank総裁にウォルフォウィッツ

米国の国連大使にタカ派のボルトンが任命されたのに続いて、世界銀行の総裁にもネオコンの重鎮ウォルフォウィッツが任命されたようだ。

ウォルフォウィッツはイラク戦背後の理論的支柱の1人で、911のテロ直後にイラク侵攻を主張した人物だ。まぁ、ブッシュがウォルフォウィッツをペンタゴンから追い出したかっただけじゃないかという説もあるみたいだけど。

ただ、世銀の従来の仕事範囲だけでも米国は明確な意図を持っており(例えば、貸出しよりも供与の重視とかね)、外交面でも何らかの意図を持っていると考えるのが普通だろう。

大体ここらへんの連中は自由と民主主義を広めればなんでも片付くと考えているきらいがあって、パレスチナのテロなんかでも、パレスチナ人の怒りは権力の座にとどまりたいパレスチナとアラブのエリートによって人為的に作られたものでパレスチナが民主化されればそれが平和(テロの撲滅)の第一歩になるなんて考えてる向きも多い(民主化されて「テロじゃない形」で怒りが爆発するなんて想像もできないらしい。実際地方選ではハマスの支持が高いことが実証されてるんだけどね)。そう言えば、イラク人が米軍を「解放者」として迎え入れるなんて言ったのはこのウォルフォウィッツ先生だったような、、、

というわけで「自由と民主主義を広げるために(イスラム原理主義者との戦いに勝つために)」世界銀行を活用するってのはあり得るハナシだ。

ペンタゴン出身の世銀総裁っていうと、これまた戦争の理論的支柱(こっちはベトナム戦争だが)だったマクナマラってのがいたが、世銀の援助をアメリカの外交政策を支持する連中に集中させて強烈な批判を浴びたっていう過去がある(らしい)。「自由と民主主義」は結構だけど、世銀には世界の貧困の撲滅っていう大事な使命があるのを忘れないで欲しいもんだ(「自由と民主主義」が貧困撲滅の第一歩って言うんだろうけどね、きっと)。


追記:1つだけ付け加えておくと、ウォルフォウィッツ先生は結構マジで「自由と民主主義」を信じてるお方のようにみえる。地政学的な理由だけからドンパチやったようにみえるラムズフェルドやチェイニーよりはまだマシなお方だとは思うよ(もちろん信じる者ほど「コワイ」ってのも言えるワケだけどね)。

March 15, 2005

「CD音質」のナゾ:音楽配信なんかぶっとばせ

最近、米系某オーディオ・ストリーミング・ソフト会社関連の仕事をしたんだけど、その時に「CDクォリティ」って言葉をしばしば聞いた。どうもそこの会社の人も宣伝じゃなくってマジで「CDクォリティ」ってのを「良い音質」っていう意味で言ってるようだったのでちょっと考え込んでしまった。

CDってのはサンプリング周波数44.1kHzで原音をサンプルしてるので、原理的に22.05kHzの音までしか再現できない(いわゆるサンプリング定理ってやつだ)。CDフォーマットができた時のフィリップスとソニーの言い分は人間の可聴域はそれより狭いから全然問題ないってものだったんだけど、これはもちろん半分はウソだ(本当だったらDATとかSACDの意味無いじゃない。プロの録音機材ならサンプリングは192kHzが当然だし、アマの機材だって最近は96kHzが普通だ。もちろんこれには他の理由もあるけどね)。

半分は本当ってのは人間が聞いていると「意識」している音の範囲は割と狭いってことだ。でも聴覚とか臭覚は人間の感覚の中でも一番古いもので(つまり「意識」なんかよりもっと古い)、実際には人間は「意識」してるよりも、はるかに多くのモノを聞いたり、嗅いだりしてるし、それに「意識せずに」影響されている。

感覚でいえば比較的新しい視覚だって、サブリミナル広告でも分かるように人間が意識してる以上のモノを実際には見ていて、それに影響されてる。音の世界でいえば特に変動が激しい音(例えば音楽だったら音の立ち上がり、弦のきしる音とかパーカッション系の音)では人間の聴覚は驚くほど敏感なことが分かっている。

象さんの近くにずっといると気分が悪くなったり、変な気分になったりするらしいんだけど、これは象さんが人間の「可聴域」より低い声でぶつぶつ言ってるかららしい。人間は象さんの声を聞いてると自覚せずに聞いてるわけだ。

とゆーわけで、「CD音質」ってのは出がらしのお茶か、ファースト・フードみたいなもんだ。だから「CDクォリティ」で胸張られると、「違いが分かる男のネスカフェ」みたいでなんかすごく淋しくなったりする。すぐに新しいフォーマットにとって変わられるかと思っていたけど、一旦テクノロジーってのは普及し出すとそうもいかないみたいね。まぁ、SACDだとかDVDオーディオとかでもめてたってのもあるだろうけどね。

ところが今度はその「CDクォリティ」をさらに圧縮して配信したり売ったりって話になるんだから恐ろしいことだ(まぁロスレス圧縮の場合は音質は落ちないけどね)。喫茶店にいったら「ネスカフェ」薄めて出されるようなもんじゃないの。これが嫌だったらファースト・フード嫌になった人みたいに、自炊(家で自作)するか高価なスローフードの外食(ライブかコンサート)に行くしかないんだからね。

こんな話外ですると「細かいこと気にするロックじゃないオッサン(笑)」になっちゃたりして困るんでニコニコして聞いてる他ないんだけどね。やれやれ。

March 13, 2005

競争は穏やかならず

ニッポン放送のフジへの新株予約権発行は差し止めになったけど、同時並行的に外資の日本企業買収を容易にする会社法案のM&A規定は1年凍結となったみたいね。まぁ1年かけて経営陣でも守る方法をよく考えようって事のようだ。そんなこと考えてるヒマあったら独禁法や公取なんかの強化をしたほうが国のためになりそうな気がするけどね。

どうも最近、「競争」ってのに対して国中が「逃げ腰」になってるような気がするのはくまだけなんだろうか。なんか財界のいい年した方々も含めてみんな「争い」から逃げたくて、「仲良しで序列の決まった内輪」でやっていきたいっていう願望が強いような気がする。まぁ、そういうことがますます不可能になってきてるから逆にノスタルジーが強くなってるだけなのかもしれないけどね。

ところで「競争」って言葉は「福翁自伝」によると、福沢諭吉が江戸幕府の勘定方に頼まれて経済書の目録を翻訳したときに作ったらしいですね。Competitionにぴったりくる日本語がなかったので「競い争う」ってとこから作ったらしいです。

幕府役人「イヤここに争という字がある、ドウもこれが穏やかでない、ドンナことであるか」

福沢:競争の説明をする

幕府役人「なるほど,そうか西洋の流儀はキツイものだね」「何分ドウモ争いという文字が穏やかならぬ.これではドウモ御老中方へご覧に入れることが出来ない」

福沢:「争」がなければ翻訳のしようもないので競争の二文字を真っ黒に消して目録を提出した。

福沢さんも1万円を飾るだけあって(?)なかなかのもんですが、どうも封建時代への先祖帰りが起こっているのかもしれませんな。しかし、封建制が潰れた後の日本はそんなことなかったはず(以前「日本的なるもの」に関して書いた駄文です)なんですけどね。でも、お役人はずっと変わってないのかもしれないね。

March 11, 2005

日本人はアメ車か?

(国際経済に強くなろう第41号)3月10日配布分:「先進国で広がる格差」より。

第2次大戦終了から1980年代までが先進国間の所得ギャップが縮小する時代だったとすると、1990年代以降は先進国間の所得ギャップが開いていっている時代だ。これはとうとうOECDのリサーチのトピックとなっているが、残念なことに日本はちょっと遅れ気味のようね。

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□ 広がる対米ギャップ
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現時点で米国の1人当たりの所得(購買力平価ベース)を100とすると、欧州、日本の1人当たり所得は大体70-75の間に入っている。日本はかつては80を超えていたこともあるが、90年代以来ぱっとせず対米ギャップは広がる一方だ。

欧州でも国による差は結構あり、英国などは対米ギャップを狭めている傾向にあるが、フランス、ドイツなどでは日本と同様ギャップが広がっており欧州全体で見ると日本と同様やっぱり米国と差が開きつつある(ついでにいうと米国よりも所得が高くしかも米国をさらに引き離しつつある国がOECDで1つだけある-ノルウェイだ)。

下の図はOECDのEconomic Reformからパクってきた図だが(クリックすると見やすいです)、縦軸は米国と比較した場合の相対成長率でマイナスの領域(つまり図の下の方)にある国は、1人当たり所得で米国に遅れつつある国で、逆に上の方にある国は米国に追いつきつつある国だ。また横軸は相対的な1人当たり所得で左の方の国ほど所得が低く、右の方ほど高い。米国より豊かでしかも米国を引き離しつつあるノルウェイ(NOR)、米国と同等の所得だが成長力が高いアイルランド(IRL)以外はパッとしないが、中でも日本(JPN)、ドイツ(DEU)、イタリア(ITA)の「三国同盟」はとくにパッとしないねぇ。

Oecdgrowth-1

さて、毎年少しずつでも長年となると差は大きいものとなる。現在の米国人の中流階級の生活水準は100年前の米国の相当な金持ちと比較しても格段に恵まれているが、これはたとえ数パーセントずつの成長でも長期間では大きな差になることによる。たとえば1年間に5%ずつ所得が伸びると大体14-15年で所得は倍になる勘定だ。50年間では10倍以上、100年では130倍となる。

これはどーゆーことかと言うと、日本はもうそんなに成長しなくても良いという人もいるけど、日本が今の生活水準からそう変わらなければ、100年後には間違いなく世界でみれば貧乏国の仲間入りになるってことだ。ん?100年後の日本人なんて知った事じゃないって?まぁそーゆーのも分かるけどね。

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□ 欧州人は働き足りない
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OECDは米国とのギャップの内容を「労働力の活用度」と「労働力の生産性」に分けて大まかな分析をしている。活用度ってのは利用可能な労働力をどれだけ活用しているかってもので、生産性は労働の付加価値の高さだ。

例えば、人口10人のある国では働いている人間が1人、その1人が稼ぐ所得を100万円とすると、人口1人当たり所得は10万円となる。さて1人当たりの所得を増やすには、1)生産性を上げる:この場合だと稼いでる人の所得が例えば120万になれば、人口1人当たり12万円となる。2)働く人数を増やす。あるいは働く時間を増やす。さっきの人が残業でもするか、他の人も働くってことだ。

逆の例で言うと所得が下がるってのは、生産性が落ちてるか、労働活用度が落ちてるってことなんだけど、米国との相対的なギャップで言うと、米国と他の国の差が開いてるってことは米国と比較して、1)生産性が落ちてる。または、2)労働活用度、要は全体としてみたときの労働量が落ちてる。ってことになる。

OECDの分析によると、欧州では生産性は米国と比較しても結構いい線いってるらしい。とすると、要するに働いてる人/時間が少ないってことになるが、この理由としてOECDは労働市場の硬直性を指摘している。つまり、解雇や給料を下げるのが難しいから雇用主が雇用を躊躇するとかね。あとは年金が結構いいからある程度年とると働くより年金もらう方を選択しちゃうとか。

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□ 日本はアメ車
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「そーか。日本でもニートなんて働いてない若いの多いからなぁ」なんて思った人がいるとすると残念ながら大間違いだ。日本の場合は欧州と逆で、労働力活用度では米国より増加率が高い。したがってそれをちゃらにするぐらいのスピードで生産性で差をつけられてるってことだ。これって深刻でしょ。日本の車は燃費がいいけど、こと労働に関して言えば日本人は逆にアメ車並みってことだからねぇ。

まぁ、OECDが出してるデータなんかはもう聞き飽きたようなものだ。日本の市場は製品市場(まぁいやぁモノの世界)では相当競争的だが、サービス、農業では規制とか非競争的な補助金が多くて新規参入、競争が阻害されてるとか、GDP比で公共投資が多いとかね(これも非競争的なとこに資源が投じられてるってことね:GDP比で言えば「左翼」労働党の英国に比べて3倍近い)。

くまは結構いろんな国で働いたんだけど、日本人、特に現場の連中はそんなにさぼってるワケじゃないし(まぁ無駄な仕事多いんだけどね)、質だってそんなに悪くない。なあんで一生懸命働いてる連中が結構ずぼらしてる連中より貧しくなっちゃうのかね。これはね、別に「有効需要が足りないせい(お金使いたくてうずうずしてる日本国政府御用達のケーザイ学者の決まり文句だ)」じゃないと思うよ。

March 09, 2005

Political Compass?

なんか、Political Compassってのが流行ってるそうで、一発やってみた。

まぁ、自分が経済的に左翼か右翼か、社会的にリバタリアン(強いて訳せば自由派)かAuthoritarian(強いて訳せば統制派・権威主義者とでも言うべきか)かわかるってやつだけど(そんなもんテストしなくても分かるっていやそれまでなんだけどね)、日本でいう左翼・右翼とはちょっと違うんで気をつけて下され。

経済に関しては、参考までにこれなんか見てもらっても良いかも。社会的には基本的に国の権力の民間への介入を認めるのがAuthoritarianって感じだ。

くまの点は
Economic Left/Right: 0.75 (経済的にはほとんど真ん中、やや右)
Social Libertarian/Authoritarian: -4.56 (社会的にはかなりリバタリアン-自由派)

ってことだった。本当は経済的にはもちょっと右だと思うんだけど、アメリカ製のいかにもっていう単純な質問にそのまま答えられるほどおめでたくない(?)のがマイナスとなったかも(?)。Socialの方もアメリカ製のいかにもっていう質問が結構あったのでちょっとはブレてると思う(北欧の連中とか日本人ならこのテストだと別に本当にリバタリアンでなくても多分かなりの確立でリバタリアンになると思うね)。

ところで日本の政治・お役所関係の方はほとんど経済的左派(まぁ、税金や規制で守る対象が違うだけでね)、社会的Authoritarian(このテストだとリバタリアンとなるかもしれないけどね)だと思うからこのテストほとんど意味ないと思うけど。

Political Compass

March 08, 2005

Intelがファイル交換を守るよう提言

SiliconValley.comによると、インテルがエンターテインメント産業から目の敵にされているファイル交換を守るように最高裁で弁論をおこなった。

もともとの裁判はGroksterとStreamCast Networksのソフトを使ってユーザーが映画、音楽のファイル交換を行っていたのに対し、MGMが両社に対して訴えを起こしたものだ。下級審では両社に無罪が言い渡されていたが、MGMはこれを不服として最高裁に訴えを起こしていた。この裁判、ハイテク業界とエンターテインメント業界両方が注目しているものだが、判決は3月29日までに出る予定。

インテルの主張は、ハリウッドが要求するようにユーザーが技術をどう使うか100%コントロールするのは不可能で、それを前提とするルールを作れば技術の進歩は阻害されてしまうというもの。ハイテク側は20年前のSony対ユニバーサルのベータマックス裁判を例としてあげている(裁判所の判断は、VCRには合法的な用途がありユーザーがVCRを使っておこなった著作権侵害に関してメーカーは責任を負うことはないというものだった)。

先週火曜日の弁論では、インテル、インターネットの最初の設計者の1人であるDavid Clark、全米のスタートアップ企業の資本の85%を供給している全米ベンチャー・キャピタル・アソシエーション、カリフォルニア大学バークリー校60人の教授の代理であるサミュエルソン・ローなど23の学者、企業、団体がGroksterとStreamCast Networksの側で弁論を行った模様だ。

まぁ、個人的にはハイテク産業とエンターテインメント業界の力関係は、アーチストとエンターテインメント業界の力関係にも少なからず影響を与えるだろうから注目している(著作権だとか違法コピー取締りの話がいつもうさんくさいのは、基本的に「本当に受け取るべき人」のところにお金が流れていない、いやごめん、流れているかどうか分からない、ってとこにある)。

あと、もう1つ面白いのは20年前の裁判でユニバーサルに勝ったハイテク側のSonyが今回はMGMの背後にいるってことで、これは両方の事業に足を伸ばしているSonyの何とも言えない困難な状況を表している。新しいCEOがどう舵取りするか分かんないけど、「両事業のシナジー」なんてのにこだわってるとますます難しくなるかもしれない(昔のタイム・ワーナーとAOLの合併でも最初は「シナジー」なんて言ってて失敗、結局独立度を高めた運営をし始めてから何とか立ち直り始めた)。

エンターテインメント関連業界と関係の深いインテルにとっても、GroksterとStreamCast Networksの側につくのは簡単ではないだろうけど、将来のビジネスを考えれば旗幟を明らかにするのはSonyと比較すれば容易だろう。

March 07, 2005

Sony新社長にStringer氏

ソニーの出井会長が退任し、「サー」ハワード・ストリンガー氏が後任CEOとなるようですね

ソニーの最近の業績から考えれば遅すぎたくらいの交代ですが、後任のストリンガー氏はソニーは大規模な買収ができないと言われていた時代にBertelsmann Musicの買収で手腕を認められ、その後MGM買収のコンソーシアムの結成でも力を発揮した人物です。

英国生まれ(ウェールズ人)ですが、仕事はずっと米国で、CBSのドキュメンタリー・プロデューサーなどを経て、最終的にはCBSネットワークのトップまでのぼりつめた人で1999年には「ナイト」の称号を得ています(だから「サー」です)。そこそこお年で、メディア界出身にしては穏やかそうな雰囲気もあるので、日本の大企業には向いてるかもしれません。

出井さんと言えば、森首相の時の「IT戦略会議議長」でしたが、あのころが一番お元気だったのかもしれません。経団連でe-Japanの戦略の発表をされた時に見に行ったのですが、戦略会議自体にはかなりフラストレーションを感じておられていたようで、「こんな仕事は2度と受けたくない」なんて言ってました。

東京三菱銀行の某氏を横にしながら「企業だって出てくる人はみんな業界の亡霊を後ろに背負っていて、日本の会社は本当は競争なんかしたくないと思ってるんじゃないかと僕は思う。特に銀行界の方々なんかは」なんて事を言っていたのが面白かったのですが、、、、「IT戦略会議」なんてたるいところでたるい連中と付き合ったのが運のつきだったのかもしれません。

ブッシュに「やさしい」グリーンスパンに非難集中

Greenspan
グリーンスパン連銀議長が先週ブッシュの減税、社会保障改革に控えめながらもプラスとなる議会証言をしたことから、もともとグリーンスパンがブッシュの減税に「お墨付き」を与え続けてきた事を快く思っていなかった民主党の連中の怒りがとうとう爆発したようだ。(記事:ヘラルド・トリビューンFinancial Timesなど)

グリーンスパンはクリントン政権時代も辣腕を振るって民主党政権下の好景気の立役者となり、「不偏不党」の有能な金融テクノクラートというイメージがあったためか、可愛さ余って憎さ100倍、民主党のみなさん余計に頭に来ているようだ。民主党系のケーザイ学者連中も「裏切られた」なんてそろって怒りを表明している(例えばクルーグマン先生)。民主党系メディアも結構多いのでそこそこの騒ぎとなっている。

しかしねぇ、これはちょっとお門違いのような気もする。グリーンスパンが有能な金融テクノクラートだということは確かなんだろうけど、彼は「まっとうな社会では政府支出はGDPの5%以下であるべき」っていうような、長年のアイン・ランド(Ayn Rand)信奉者でガチガチの「保守主義者(経済学的な意味でね)」なんだから、民主党やケーザイ学者の方々がもともとありもしないグリーンスパンの「幻影」を勝手に愛していたという方が正しいような気がする。

「財政政策に金融当局が口をはさむな」ってのも分かるけど、あまりにインパクトの大きいものに関してはそんなに簡単じゃないかも(そういえば昔、速水日銀総裁も構造改革の加速を小泉に直訴してたね)。それに口をはさんだとしてもブッシュの政策の非難をしてればこんなにも騒がれなかったんだろうから、勝手にイメージが作り上げられるスターってのも辛いものがあるね。

  

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