国際経済メールマガジン4月2日配信分(第37号):
つい数日前(3月30日付けFinancial Times)、Martin Wolfが現在の国際通貨体制に関してのカリフォルニア大のDooley先生とドイツ銀行のLandau、Garber両氏による論文「The Revised Bretton Woods System」を紹介していた。ちょっと面白かったので、4月2日配信のメールマガジンでとりあげて見ました。今や世界の大半を占める地域が「ドル圏」となっており、米国の低金利政策がこのドル圏の経済ブームを作り出しているというお話です。
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□ 新ドル圏?登場
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この論文はタイトルが示すように、現在、かつてのブレトン・ウッズ体制(ドルを中心として、各国が自国通貨の対ドルレートを固定するという固定相場制)に近い国際通貨体制が世界経済の過半をしめる地域で形成されているというものだ。
これを「ドル圏」と名付けると、「ドル圏」は、1.ドルが流通する米国やすでに通貨のドル化をした地域(core zone)、2.自国通貨の対ドル相場を固定して、事実上自国の金融政策を放棄した地域 (inner circle - 仮にドル圏内環としよう。中国、香港、マレーシアなどが含まれる)そして3.自国通貨の対ドルレートは固定していないものの、対ドルレートを安定させるためには大規模な市場介入も辞さない地域(outer circle - 仮にドル圏外環としよう。日本、インド、韓国、ロシア等が含まれる)からなる。
このドルに対する固定相場、または緩やかな相場安定を基軸とした「ドル圏」は今や世界全体のGDPの53%、人口の52%を占めるという巨大通貨・経済圏を構成している。

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□ 新ドル圏における米国連銀政策の意味
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アメリカ連銀の金融政策は必然的にこの「ドル圏」全域に波及する。連銀はアメリカの雇用の上昇と物価上昇があきらかになるまでは、低金利政策を継続させる構えのようだけど、これはもちろんドル圏全体の金利に下向けの圧力をかけて、ドル圏全体の経済を刺激するする事になる(自国の金利を上げれば金利目当てのマネーが流入して対ドル相場が上がる危険性があるからね)。
ドル圏全体で見れば雇用はありあまる程だし、生産力もあり余ってるし、おまけにアメリカの生産性は速いペースで上がっているから連銀の低金利政策にかかわらずアメリカの雇用もインフレも簡単には上がらない。したがって必然的に低金利政策は長引かざる得ないとゆーことになる。
ドル圏内部の各政府の外貨準備の主要通貨はもちろんドルだけど、他の通貨、例えばユーロに切り替える、ということは対ドル相場安定という「ドル圏」の政策に反するから簡単にはできない。したがってドル圏内部の政府はアメリカ国債を買い続け(つまりアメリカにお金を貸し続け)、アメリカはそのおかげで金利上昇の心配も無く、稼ぐ以上の投資・消費ができることになる。これはますますアメリカ経済を刺激し、「ドル圏」の国々は対アメリカ輸出でうるおうことになる。
増大する輸入に悲鳴をあげる国内産業を保護しようとして、アメリカがドル安に誘導しようとしても、ドル圏内部の各国政府による大規模なドル買いの市場介入を招くから、ドル圏内部の通貨に対してはそれほど効果は無い。それよりもドルを含む、ドル圏内部の通貨全てが(円とか元とかね)がドルに対するよりドル圏外の通貨(ユーロ)等に対して下落する事になる。
市場介入は各国でのマネーサプライを増大させるし(これについてはまたいつか説明しよう)、通貨の下落はドル圏外への輸出を増大させるし、対ドルレートの安定は対米輸出の安定を保証するし、ドル圏経済はますます刺激される事になる。
とゆー具合に、アメリカ経済を浮揚させようとする連銀の金融政策は「ドル圏」全体の経済を壮大な規模で刺激するすることになる。日本を始めアジアの政府は歴史上類を見ない規模で市場介入をおこないドルを買っているが、上に上げた論文に従えば、これもブレトン・ウッズ崩壊後初めて、歴史上類をみない規模で「ドル圏」が形成されてきていることの結果でしかない、ってことになる。
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□ 新ドル圏の経済ブームの行く末は??
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上にあげたロジックにしたがうと、連銀の低金利政策はけっこう長く続かざるを得ないということになり、したがって「ドル圏」の経済ブームも長く続く事になるんだけど、いったいその先はどーなるんだろうか?
温故知新ってことで、かつてのブレトン・ウッズ体制の崩壊を簡単に振り返ると、基本的には、世界規模でのインフレと安定したドルのせいで競争力を失った国内産業を保護しようとした米国政府の一方的ドル切り下げという2つの要因でかつてのドル体制は崩壊したんだった。
そしてこれらは基本的に今度も起こりえる。ドル圏全体の低金利と政府による通貨市場に対する大規模な介入は、ドル圏内部のマネーサプライを増大させることになる。マネーサプライの増加は長期的にインフレにつながると考えているのは「金こそ全て派(マネタリスト)」だけじゃない。ただ、上にも書いたようにドル圏内部は生産力、労働力過多の上に中国等はそれ以上に生産力を増強しているから簡単にはインフレ圧力は出てこないだろうけどね。
ドル安誘導に関しては、日本政府や他のアジア政府による市場介入を批判したり、大統領選挙という事もあって国内産業への気使いが目立つけど、アジア各国のアメリカ国債購入が細るようなことがあれば、低金利政策が破綻するから、当面は金利上昇のデメリットと国内産業の不満による政治的デメリットを天秤にかけた中途半端なものにならざるを得ないだろう。
とゆーわけで、この「新ブレトン・ウッズ」体制がいつ破綻するかは分からないけど、Martin Wolfの言葉を借りれば「それまでは、経済ブームをせいぜい楽しもう」ってことになるのかもしれない。
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□ おまけ「ドル圏」の外側は??
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ここで気になるのはユーロ圏だけど、すでに対ドル、対円でのユーロ高や、ドイツの経済不振に音を上げた連中が欧州中央銀行(ECB)に利下げしろっていう大合唱をしている。3月は利下げを見送った欧州中銀だけど、5月には利下げに踏み切るという見方も多くなってきている。巨大な「ドル圏」での低金利政策に完全に知らん顔をするのはむつかしいということかもしれない。
最近の米Foreign Affair誌に「もうG7とかG8とかそんなものは無意味だ。アメリカとEUのG2を作ってそこでいろんな事を決めちゃえば良い」なんてトンでも無い事を書いてたおっさんがいたが、けっこう当たってるのかもしれない。そうなれば「新ブレトン・ウッズ体制」は崩壊する前にホントに世界をおおうかもね(もちろんそれで崩壊しなくなるって事じゃないよ)。