国際経済メールマガジン3月25日配信分(第36号):
なぜ信用膨張はバブルを呼ぶのかという問題をウォートンのAllen先生とニューヨーク大のGale先生の理論をダシにして紹介した駄文です。基本的にはPrincipal-Agent問題の定式化といえます。
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国際経済に強くなろう
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■ 今回のテーマ:信用膨張とバブル ■
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ウェブでも書いたけど、アメリカでのバブル懸念が広がっている。アメリカで
の前回のバブルはハイテクバブルだったけど、今度は株ばっかりじゃなく、不
動産が結構な高値になっている。資産の価値がどんどん上がってるもんだから
それを背景に新規の借金やら借り換えやらでまた投資資金が増えて資産価格が
また上がるという、どっかで見た光景になっている、っていうんだけど、今回
は信用膨張(つまり貸し借りの膨張)とバブルの関係についてちょっと考えて
みよう。
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□ ニワトリとタマゴか?
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金利が下がると、借金をしやすくなる。そして金利が下がると、投資もしやす
くなる。したがって金利が下がると信用(貸し借り)も実物投資も膨張する。
債券以外の金融資産(株とかね)も比較的魅力的になるから金融投資も膨張し
て資産の価格も上昇する。
例えば年間10円のキャッシュフローのある資産の適正価格は金利10%なら100円
だけど、金利が1%なら1000円になる(1000円以下だとこの資産の方が金利を稼
ぐより有利だから、1000円になってこの有利さが消滅するまではみんなこの資
産を買い上がることになる)。
これは当たり前なんだけど、往々にして金利の低下(や経済成長とか)で合理
的に説明できる以上に、資産の価格がはるかに上がっちゃうことが時々おこる。
さっきの例で言えば、この資産の価格が2000円にも3000円にもなっちゃう事が
あるが、これが俗にいう「バブル」だ。
企業なんかの場合は将来のキャッシュフローはまあ当たるも八卦ってとこがあ
るから、株の場合はさっきの例みたいには簡単にはいかないけど、どう転んで
も将来的にキャッシュフローが倍になりそうになくても平気で株価が倍になっ
ちゃったりする事があるわけだ。で、その購入資金が借金だったりすると、信
用量も金利で合理的に説明できる以上に増える事になる。
さて、信用が膨張して、資産価格がバブルっぽくなってくると、新聞なんかで
は「余った金が行き場を失ってXX市場に流れ込んで価格急騰」なんて感じで良
く書いたりするけど、これだと貸し借りでお金が増えてバブルになるって感じ
だ(まあお金が増えた分の裏には借金が増えてるんだから別に「余ってる」ワ
ケじゃないんだろうけどね)。
また、ケーザイ学者なんかの論法では、何らかの理由で資産の価格が上昇し続
ける、あるいはなんらかの理由で資産の適正価格が実際よりもっと上にあると
人々が思っちゃったりして、どんどん投資を行う。投資のリターンに対してみ
んな強気だから(金利が低くてやりやすい)借金をしまくりその結果信用も膨
張する。「何らかの理由」ってのは「根拠無き熱狂」だったりするんだけど、
これだとバブルがあって信用が増えるってカンジになるね。
とゆーことで、「信用の膨張」と「バブル」ってのはニワトリとタマゴみたい
なカンジだけど、「金あまり」とか「根拠無き熱狂」ってのにあんまり感心し
なかったのがウォートンスクールのアレンとニューヨーク大のゲイルの両先生
だ。先生たちによると、「信用の膨張があると必ずバブルになる」。なんで?
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□ 他人のお金は使いやすい
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両先生の論点は非常に簡単だ。たとえばあなたが今10億円もってるとしよう。
ある資産があって、50%の確率で12億円、50%の確率で8億円になるとする。
もしあなたがリスク中立なら(ケーザイ学用語だ。まぁ無理してリスクをとら
ないし、非常にリスクを怖れるわけでもないって事)、あんまり無理して購入
しようとは思わないだろう。
さて、今度はあなたは一文無しだとする。奇特な人がいて10億円貸してくれた
とする(話を簡単にするため金利はゼロとしよう)。今度は全く同じ資産でも、
50%の確率であなたには2億円はいる(12億で資産を売り払って元金の10億円を
返すからね)。50%の確率であなたは破産して1文無しになる(貸した人はもち
ろん残った資産を差し押さえる)。
この場合はもちろん合理的な人間なら購入した方が有利ってことになる。最初
のケースでは資産の適正価格は10億円だが、次のケースでは借金して買う人に
とっての資産の適正価格は11億円となる。したがって、借金によりファイナン
スされる場合は、「合理的に」バブルが発生する。
この例はもちろん極端に簡略化されている(例えば破産のコストだとか貸した
人が実はすごくコワイ人であとでコワイ目にあうなんて事は考えてない)。し
かし、例えばこれが「あなた」ではなくて企業だったりしたらどうだろう?実
際このような企業による投資を山ほど見たのではないだろうか?失敗しても倒
産はまずないし、倒産すればそれはその時なんてね。ペイオフ以前の銀行にい
たっては、借りたお金(つまり貯金)を返せなくても政府がかわりに保証して
くれると言うオマケまでついていたんだった。
平たく言えば投資を決定する主体にとっての損得と、実際上の損得が一致しな
い場合、必然的に、又、合理的にバブルが発生し得る。って事なんだけど、借
り手と貸し手の損得は上で見たみたいに基本的に異なるから、信用が膨張して
る(つまり借金してる連中が一杯モノを買ってる)っていう状態は「必然的に」
バブルになるってワケ。
これは基本的にスティグリッツ先生なんかがずっと言ってる、モラルハザード
による市場の非効率性の定式化と言える。
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□ 政策的手段
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バブルに対する政策的手段ってのはいろいろ議論の種になってきた。一つは規
制(prudential regulation)によるもので、例えば上の資産の例で言うと、10億
借りて投資するなり貸し出しなりする場合は2億円の自己資金をもってないとダ
メってゆーような規制だ。
この場合は投資で穴あけた場合も自分のお金を出して補填しないといけないか
ら、上の例で見た、損得で見た資産の適正価格は10億円となってバブルは生じ
ない。ちょっとエリアは違うけどBISの銀行に対する自己資本規制も良く似た
コンセプトだと言える。ただ、企業で言えば自己資金は株主資本になるけど、
株主が大損しても企業のマネージャーが(個人的に)大損するとは限らないか
ら、これでは「損得の不一致」は完全には無くならない。
あとは、バブルっぽくなってきたら、中央銀行は早めに金利をあげて対応しろ
ってのもあるけど、これはウェブログでも書いたけど、「言うは易し、行うは
ナントカ」ってカンジで結構むつかしい(興味があったらblogの方を見て下さ
い)。
最後は、連銀のグリーンスパン流の「バブルには中銀は手出ししない(口は出
してもね)」ってやつだ。バブルがつぶれた時に市場にお金をばらまいてバブ
ルが崩壊した痛みを和らげるしか、バブルに対して中央銀行が出来る事はない
ってカンジだけど、上で言ったように信用の膨張はバブルを呼ぶから、最悪の
場合は中央銀行がお金を出回らせる、と投資家が判断した場合は次のバブルが
すぐ起こるってことになってこれも痛し痒しだ。とゆーことで、バブルに効く
特効薬とゆーのは今のところナイ。
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□ おまけ
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簡単にしすぎてAllen, Gale両先生にご迷惑をかけるといけないんで、参考文献
をあげておきます。Googleなんかで検索すればPDFで手に入るものもあると思い
ます。
Allen, F. and Gale, D. (1999).
‘Bubbles, Crises, and Policy’
Oxford Review of Economic Policy, vol.15, No.3 pp.9-18
Allen, F. and Gale, D. (2000).
‘Bubbles and Crises’
The Economic Journal, vol.110 pp. 235-255
Allen, F. and Gale, D. (2002).
‘Asset Price Bubbles and Stock Market Interlinkages’
Center for Financial Institutions Working Papers,
Wharton School Center for Financial Institutions,
University of Pennsylvania