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January 27, 2002

アルゼンチン破綻

(国際経済に強くなろう)第29号:2002年1月27日発行分

ヤバイ、アブナイと言われていたアルゼンチンがとうとう破綻した(よーするに政府が借金=国債の利払いを停止した)。アルゼンチンは一般に新興経済(Emerging Markets)と称される経済の中では最大級の部類に入る経済であり、今回の破綻は過去の政府破綻では最大級になる。

他の国への波及が現時点ではあまり無いように見えるって事と、なんといっても「遠い国」だって事もあって、日本ではあまり大きくは取り上げられていないみたいだけど、低成長の経済、借金まみれの政府、過大評価された通貨の組み合わせの行く末を見る上では、全然日本と無関係ってワケでもないんじゃない?

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□ アルゼンチンの光と影
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知らない人も多いみたいだけど、アルゼンチンってのはかつてはとっても豊かな国だった。1930年頃には、アルゼンチンの一人当りGDPはフランスやドイツに匹敵する程だったんだよ(最近はフランスやドイツの3分の1程度)。

政策的な産業振興、国内経済の保護・規制という面では日本と似た面も多くあった経済だったけど、第二次大戦後の国内産業の保護による産業育成は結局大きな成功をおさめる事はなく、政情不安定など相まって長期間に渡って経済は低迷する事となった。

1980年代末までには、放慢財政を支えるためのお金の大量発行(つまり政府がお札を刷ってどんどん使っちゃうって事よんーちなみに日銀による国債引き受けも同じ事。だって政府の刷った債券が日銀にそのまま行って本物のお札に化けるワケだからね)による強烈なインフレが恒常化していた。インフレ率は一時5000%(つまり1年間で価格が 50倍)にまでなって経済は混乱の極に達していたんだ。

80年代末に政権交代があり、1990年代に入ってアルゼンチン政府は急激な改革に乗り出す事となった。経済の活性化のために産業の保護・規制をゆるめるととともに、政府の借金に歯止めをかけるため支出を抑制し、インフレ退治のためにペソとドルの為替レートを1対1に固定した。90年代初頭のメキシコ危機に端を発した南米通貨危機を乗り切った後は海外投資家からの高投資、構造改革した産業の輸出の成長により年率5%以上の経済成長を成し遂げて新興経済の優等生と言われていた。

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□ アルゼンチンのユーウツ
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一般にアルゼンチンの問題と言われていたのは、GDPの55%に達していた政府の借金と、ドルとリンクされたため強くなりすぎた通貨だ。強い通貨の下では経済はどうしてもデフレ気味になってくる(ある国の通貨が強い=その国の通貨の海外での購買力が高い=って事は海外の物価が比較的安い=って事は安価な品物が入ってくるー>物価が下がる)。

デフレは公民あわせて借金まみれのアルゼンチンにはキツイものだった(収入はデフレにあわせて減るけど借金は減らないからね)けど、おまけに、借金の膨張による信用不安をおそれた政府は強烈な緊縮財政に打って出たため、ただでさえ減速していた経済はますます痛めつけられる事となった。

ただ、アルゼンチンの場合国内事情もあったけど、国外からのショックが不幸を増幅したと言える。まずは90年代初めのメキシコ経済危機、それに数年前のブラジル(アルゼンチンの最大の貿易相手)の通貨切り下げによるペソの一段の過大評価、そして90年代末のアジア通貨危機による、先進国から新興経済に対する資金の流れの停止、と他人の事故に巻き込まれ続けたってカンジだった。

それに、アルゼンチンの主要輸出物の一つである農畜産物の世界規模での価格低下もアルゼンチン経済には大きくのしかかっていた(おまけに先進国はこの手の製品に対しては、自国の農民保護のため、決して自国の扉を簡単には開けようとはしなかった)。

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□ トルコ、アルゼンチン、そして??
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一時、欧米メディアではアルゼンチンと日本を比較する記事が多く出ていた。デフレ、低成長、膨大な政府の借金(アルゼンチンの公的債務のGDP比55%に比べ日本は130%)、とまぁ似ている部分は一杯あるわけなんだけどねぇ。

そーゆー比較には反対する人ももちろん多くいる。代表的な意見は、アルゼンチンと日本の大きな違いは、アルゼンチンの場合借金はほとんど外国からの借金であり、アルゼンチン国民も政府の借金を支えられる程の金融資産をもっていないのに比べ、日本の場合は政府の借金は国内がほとんどで、しかも政府に貸せるだけの十分な金融資産を日本国民が持ってるってゆーものだ。

でもねぇ、これって外人に借りたら返さなきゃいけないけど、国民に借りたやつは返さなくっても良いって事なのかしらん?或いは、日本人ならその膨大な金融資産をリターンが低くっても日本政府に貸し続けるはずって事かしらん?

実際には日本人の金融資産が日本にとどまり続けるって保障は何も無い。イタリアが通貨危機に陥った時はイタリア人の資産は海外に逃げ出してしまったんだった(イタリア政府の借金も大部分国内だった)。日本人はイタリア人とは違うって?はいはい。

一部の悲観論者が主張するような、日本からの大規模な資本逃避が起こって経済危機が発生するというシナリオは少し極端だと思うけど、アルゼンチンの例で良く分かるのは、膨大な債務を抱えた政府は外的な経済ショックに極めて弱いって事だ(財政の手が縛られてるからね)。

アメリカ政府は経済危機の可能性がある地域としてトルコ、アルゼンチン、日本に対してタスクフォースを早くから組んでいると言われていたが、トルコは通貨危機に見舞われ、アルゼンチンは破綻した。トルコ、アルゼンチンでの危機のきっかけの一つに、政府が危機を目前にして、右往左往して経済政策の一貫性を失ったために、内外の信認を失った事がある。日本政府もちょっとしたデフレに右往左往せずしっかりやって頂きたい。

  

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