このブログで米国医療改革のハナシがシリーズになる時間もなく、ヘルスケア改革法案はマサチューセッツ州上院議員選の民主党敗戦以降瀕死の状態にあるようです。というわけで、オワリになる前にせめて第2弾だけでも・・・
マサチューセッツの敗北で何が変わるかというと、民主党の議席数が上院での議事妨害を止めることに必要な60議席を割ることになり、野党の協力がなければ上院の強行突破が不可能になるということです。
で、法案の現状だけおさらいしておくと、ヘルスケア改革法案は、下院と上院でわずかに違うバージョンがすでに通過しており、あとはこの2つの差を何とかして埋めて1つにして両院を通過させるだけ、という状態でした。山で言えば9合目ですが、この差を埋めるのに上下両院の民主党間で内ゲバやってるあいだにマサチューセッツで負けて、上院の扉が閉じてしまったというところです。
それでも、法案を通す方法はいくつかありました(というかまだあります)。
1. 電撃戦:要するに、当選した共和党のブラウン氏の認証が済む以前に、両院民主党が交渉して差を埋めた法案を可決する。という強硬手段です。
2. 下院民主党が妥協:上院ですでに通過している法案を何の修正もなく下院で可決する(下院では民主党が圧倒的多数)。上院での再可決の必要がないので、上院版が法律になります。
3. 調整法案を両院で可決:「Reconciliation」と呼ばれるもので、両院の法案の差を埋める新たな調整法案を両院の委員会、本会議を通過させるというものです。この場合は上院では51票だけが必要であり、本会議の議事の時間も20時間に限定される(議事妨害による時間切れ戦術が不可能)代わりに、元の議案からの変更の範囲にはかなり強い制限が課され、成立しても有効期間5年間の時限法となります。
状況
1. 電撃戦はオバマ大統領が否定しました。今まで両院民主党の交渉が成功していないのに、すぐにまとまるはずがありませんし、選挙で選ばれた議員を無視して「こけた」場合の政権へのダメージも甚大です。まあ、いずれにしても、これはもうすでに間に合いませんが。
2. 下院民主党の妥協に関してはペロシ氏が否定しました。上院版は下院の「左派」にとってはのめないというワケでしょう。
3. Reconciliationに関しては、審議時間には限定があっても修正議案の数には限定がないため、共和党は民主党の結束が難しい点をついて多数の修正案を繰り出すでしょう。また、調整法案には「バード規則」が適用されるため、予算に直接影響するアイテムしか盛り込むことができません。長期的に財政赤字を増加させるような調整にはやはり60票が必要になります。この範囲で両院民主党が納得できる調整法案を作ることができるなら、もともと苦労してないというハナシもあります。
一番の問題は、法案に世論の支持がないように見えるということです。今年は中間選挙を控えて民主党議員はソワソワしてますから、世論の支持が低い法案のごり押しは不可能ではないにせよ難しいのは間違いありません。しかし、個人的には現在の法案は支持できないまでも、ここまで来てやめるのか、という気はいたします。失業やら景気をほぼ放ったらかして、1年間左と右で泥試合をした結果がこれではフツーなら指導層は全員クビではないでしょうか。
上のオプション2であれば、(下院民主党を説得できれば)今でも通過させることができますから「ヘルスケア命」のヒラリーならば、後先気にせず平気でごり押ししたかもしれません。本当にオバマが「重要課題で正しいこと」と口先と同様にアタマでも確信しているのならばこの線で押すべきであろうと思いますが、この人にはどうも「信念」というものはないようです。そこが良いのかもしれませんが。
今後
現在まで、ペロシ女史などの「主戦派」は3.のオプションで押すことを考えていたようですが、民主党議員が揺らいでいる状況では51票の確保も危ういですし、上で書いた困難な問題や雇用関連の法案の議事を考えると2月の休会までに今会期にねじこむのは難しそうです。
オバマ大統領の方は、急がずに両党で議論を延長して、合意できるところは合意して新法案のコアを作れば良いと言ったと伝えられています。相変わらず言ってることは妥当で「さすが」とか言いそうになるんですが、よーく考えると、最初からそうしておけば良いところをペロシに全部お任せして今の状況を招いたのはご本人です。
というわけで、相変わらずリーダーシップには期待できそうにはないということで、当分盛り下がりながらも議論は春になってもダラダラ続くかもしれないというのが現時点のシニカルな見方です。最終的にはおそらくかなり小規模に縮小された法案が通るのではないでしょうか(これは必ずしも米国にとってはマイナスではなく、結果的にはプラスではないかと思いますが)。
