
米国のミッチェル中東特使の今週のイスラエル入りを前に、イスラエルのネタンヤフ政権はヨルダン川西岸の入植地での新規住宅建設を許可しましたが、最近の展開からは色々なことが見えるような気がします。
ネタンヤフに対する与党リクード内の右翼からの突き上げは最近激化しており、ミッチェル中東特使訪問とともに水曜日には大掛かりな入植地拡大の気勢を上げる構えでした。これに、ベニー・ベギン(メナヘム・ベギンの息子)などのリクードの有力者が呼応するようなことがあれば、ネタンヤフの威信は大いに揺らいでいたことでしょう。
住宅建設の許可の発表は週の後半、週末のためのニュースのタイミングにすっと入り込み、右翼の動きに対する効果的なカウンター・パンチになりました。おそらく以前から、この切り札を出すタイミングを測っていたと思われますが、抜け目のないおっさんです。
また、それ以上にしたたかなのが、住宅建設の許可の付け足しに、この許可の後に「平和交渉のための新規建設の6カ月間の一時停止」を加えている点です。これには明らかに、米政権との「お互いの顔を潰さない」ための暗黙の合意があったと思われます。
新規住宅建設の発表には米国も非難を加えていますが、米国が新規建設を本当に止める気であるならば、極めて強力な圧力を加える手段がいくらでもあるわけですから、これは形ばかりのものと見て差し支えないでしょう(たとえは悪いですが、中国が北朝鮮を非難するようなもんです)。
オバマの顔を大っぴらには潰さずに、同時に実質的には入植地での新規建設ペースをまったく緩めず、右翼の支持だけでなく、この「和平のための一時停止」で和平交渉派の中道左派の一部の支持も取り付けて政権基盤を強化するという「1粒で何度も美味しい」戦術的勝利の演出はなかなか大したものだと言えます。これだけ「最大限の」努力をしたんだから、次はパレスチナとアラブ諸国側が努力する番だとボールを押しつける算段でしょう。
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米国とイスラエルが裏で適当に妥協点を探って「後はパレスチナが妥協する番だ」というのは、何のことはない、今まで何度も繰り返されてきた(そして失敗した)構図なんで少し鼻白みますが、今回は西岸地区でパレスチナ自治政府のファイヤード首相がイスラエルとの交渉や合意に依存しないパレスチナ人による国家の樹立を目標としており、こちらが本当の意味での新しい動きかもしれません。
ちなみに、ファイヤード首相はテキサス大学で経済学博士を取得して、セントルイス連銀や、IMFで働いていたこともある経済学者で、今まで欧米での「声」となる人物に欠けていたパレスチナにとっては極めて重要な人物です。同氏の政府が掌握する西岸地区での経済成長率は今年5%に達すると見られています。
ただ、ファイヤード氏は、ハマースとの折り合いが最悪で(当たり前ですが)、おまけに米国はイスラエルとの和平交渉をバイパスするようなパレスチナ人による一方的な国家樹立は絶対に認めておらず、そしてハマース抜きでの和平交渉など(ハマース入りでの和平と同じくらいに)困難な話ですから、今回も何かあまり期待できないような気はいたします。
