14年間、年間平均リターン33%以上のヘッジファンド?
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この間New York Timesをぺらぺら見ていたら、14年間にわたって平均年率33%以上のリターン!! (同時期のS&Pのリターンは年率約11%)を上げているヘッジファンド(Medallion)の話が出ていました。
運営している会社(ルネサンス・テクノロジーズ)の社長はジェームズ・サイモンズ(James Simons)で、数学をちょっとかじった人ならピンとくると思いますが、その昔多様体の研究(だったと思う)で米数学会のヴェブレン賞(数学界でも相当ステータスの高い賞の1つです)をとった元大数学者です。
投資の世界でも、その筋の人にはそこそこ知られていたものの(2004年のヘッジファンド・マネジャー年収ランキングで2位だったような気がします)、バフェットなどのようには一般には良く知られた名前ではなかったのですが、今度のNYTの記事で相当有名になったのではないでしょうか。NYTの論調はこの統計とコンピュータを駆使したファンドに感銘を受けた感じで、サイモンズ先生の「特定の価格パターンはランダムではなく、結果を予見し得る」という言葉を引用しています。
確かに、14年間にわたって年率33%というのは並み大抵ではないですが、ファンドの使用している実際の戦略の詳細の吟味なしに「大学者+コンピュータ+数学+高リターン=すごい(に違いない)」という超おめでたい論調を見てすぐに思い出したのはノーベル賞学者によるヘッジファンドLTCMでした。実際にすごいファンドである可能性ももちろんありますが、こういう論調はファンドの潜在的リスクを無視しているという面で、極めて危険です。
分かりやすい例としてもう1つすごいファンドを挙げてみましょう。このファンドは1992年から1999年の間に平均年率41%のリターンを上げています(同時期のS&Pは16%)。このファンドの名前は「資金大量虐殺パートナーズ」というふざけたものですが、それもそのはず、以前にこのブログでも紹介したアンドリュー・ロー先生が、ファンドのリスク評価の難しさを説明するために仮想的に作ったシミュレーション上のファンドで、このファンドの戦略はS&P500指数(SPX)のプット・オプションを全力で売るだけという単純なものでした。
もちろん株を持っている人がプット・オプションを買っておけば万一のリスク・ヘッジになりますが、プット・オプションを売る方は万一の場合は大きい損害を被るという意味で、そしてこの例のファンドでは全力で売っているという点で極めてリスキーな戦略です(これはロー先生のRisk Management for Hedge Funds: Introduction and Overviewという論文で紹介された例です)。1つ間違っていればLTCM並みの派手な破綻となったことでしょう。
私は市場効率性仮説原理主義者ではないですから、市場に非効率な(予見可能な)パターンが少々あっても別に驚きませんが、全般的に言えば概ね市場は効率的だと思っていますし、リターンとリスクのトレード・オフは厳然と存在すると思っています。
サイモンズ先生のファンドがリスクが高いのかどうかは全く窺い知り得ることではありませんが、単にある期間すばらしいリターンを上げていると言う理由だけで、実際に使われている戦略も知らずに投資したり、投資を勧めるのは賢明なことであるとは思えません(ちなみに効率性仮説によれば、過去のパフォーマンスは将来のパフォーマンスの何の保証にもなりません)。年末ラリー期待で、米国は少し浮かれているようですが、NYTにもこのような記事が出てくると少し緩みすぎではないかという気がしないでもありません。
しかし、ヘッジファンドはフツーの神経では何年もやり抜くのは並大抵ではないですが、やはりここまでの人になるとアタマだけではなく神経も全然フツーではないんでしょうね。ついでに、この先生のファンド、運用報酬5%、成功報酬44%(!!!)と手数料体系も並みではないようです。

コメント
しかし、44%の成功報酬ってすごいボッタクリだね。
投稿者: ssk | November 28, 2005 08:12 PM
強烈ですね。やっぱりあっちの学者は違う。しかしどっから44%という数字がきたんでしょうね・・・
投稿者: くま | November 29, 2005 08:51 PM