2008/6/5 木曜日

FRB議長の新しい為替方針・・・って???

猛仕事の日々で今日はとうとうダウンして、ちらちらウェブを徘徊してたら「ドル急上昇、FRB議長の新しい為替方針受け」というヘッドラインが目に入りました。

いつから為替方針が中銀のお仕事になったのか分かりませんが、バーナンキ先生、ドル下落の下手人にされて議会でイジメられるのがイヤになったんでしょうか。いずれにせよ、為替の動向と中銀のトップの意思決定に強いリンクがあるという印象を与えるのはあまり賢明な行為であるとは思えません。もうみんな「これで利下げ打ち止めは確実」なんて言ってますし。まぁ、利下げに関しては、そうなのかもしれませんけど、そういうシグナルを発するにしても良い方法とは思えません。

大体、先生が取れるアクションの幅はそんなにないんですから、こんな軽口たたいてて、それでもドルが落っこちて、それで金利もいじれなければそのうち「オオカミ少年」ならぬ「オオカミおじさん」になっちゃう可能性もあります。

財務長官がオオカミおじさんなのは別にしょうがないとして(皆それは知ってますし)、一応信用が商売道具の中銀総裁がお仲間になるのはちょっとやばいんじゃないでしょうか。ポールソンとコンビで狐と狸なんて最悪だと思うんですが。

2008/5/20 火曜日

米予備選:ヒラリーおろしの不思議・・・

まぁ、あんまり外国人がとやかく言う話題ではないのですが、最近の米国のメディア(や、そしてそれにつられた各国メディア)の「ヒラリーは何でおりない?」という、かなり変な報道を見て少し気になったので、ちょっとばかり・・・(ちなみに、私はオバマのファンでもヒラリーのファンでもありません。1外国人としてはマケインが良いと思ってますから。ただ、民主党の候補に関して言えば、当初少なからぬ好意を持っていたオバマ氏には、予備選を通じて完全に失望させられたのは確かです。)

まず、今までの獲得代議員数を見ると、オレゴン、ケンタッキー選の前でオバマ氏約1900人、クリントン氏約1720人(特別代議員の推定含む)、得票数で見ればオバマ氏約1600万票、クリントン氏1550万票(問題となっているミシガンとフロリダを除く。両州を加えるとクリントン氏がわずかにリード)。代議員数で決まる予備選で、確かにクリントン氏の勝ち目はフツーに考えればほぼありませんが、特別代議員のまだ200-300人が態度を表明しておらず(そして、特別代議員は態度を変えることもあり得るため)、テクニカルに可能性はゼロとは言えません。

しかも過去を見ると、例えば1980年にはテッド・ケネディ氏がカーターに獲得代議員数で700人以上の大差を付けられながら、最後の党大会でカーターに決戦を挑んでいますし、1984年のハート氏、1988年のジェシー・ジャクソン氏、あるいは古いところでも1976年のユーダル氏(ちなみにこの年は共和党のレーガン氏も予備選での劣勢に関わらず共和党大会まで戦っています)など、最後の最後まで戦っています。私は、ヒラリー氏ほど善戦している候補が途中で降りた過去の例は知りません。

また、1位候補の陣営が、2位候補に撤退の圧力をかけるのは珍しくないかもしれませんが、今回はメディアや民主党の指導部までが片方の候補(しかも過去の2位候補と比較しても戦いに残るのは不思議ではない候補)に強烈な圧力をかけているという点でかなり異様な気がします。なぜでしょうか。

1. メディア
メディアに関してはかなり「セクシズム(性差別)」と逆「レイシズム(人種差別)」を感じます。テッド・ケネディーやユーダル、ハート、ジャクソンに許されて、ヒラリーに許されない理由は他に何があるでしょうか?「オバマネーション」の住人の若い(あまり活字を読まない)お嬢さん以外の女性は、これに多かれ少なかれ合意する人が多いような気がします。

ヒラリーはもともと「野心的すぎる」とか「あまりに戦闘的だ」とかされてきましたが、おっさんの政治家でこれがけなし言葉になる人はいないでしょう。1976年の共和党予備選では、代議員数でも得票数でもフォードに劣るレーガンが共和党大会まで残って「仁義なき」激しい決戦を挑みましたが、今のヒラリーのような馬鹿げたな非難は浴びせかけられなかったでしょう(レーガンは80年に予備選、本選で勝利し大統領になっています)。善し悪しはともかく、米国の政治の「強さ」の理由の1つは、日本では想像もつかないほどの徹底的な競争と戦いにありますが、どうもヒラリーがその戦いに参加するのは気に入らない人が多いようです。

逆にオバマ氏への支持は、メディア・タイプの連中からすれば「私は人種差別主義者ではない」という免罪符のようなものです。「うるさい女」と「免罪符付きミスター・フィールグッド」では勝負にならない様な気がします。2人の最後の直接討論では、大手メディアとしては珍しくABCがオバマ氏に厳しい質問を投げかけましたが、その後の他のテレビ局、新聞のABCへの非難には少し異様なものを感じるほどでした。

2. 民主党
まず、ここでも一般代議員数で勝っている「初の黒人大統領になるかもしれない候補」を特別代議員の票でくつがえすのは極めてマズい、というブレーキがかかっているのは確かでしょう。しかし、より大きい要因は民主党の左傾化にあるように思えます。共和党がブッシュの下で相当右傾化したように、民主党もその間に相当左旋回しています。

クリントン前大統領は民主党を中道に路線転換し2期連続という近年の民主党としては目覚ましい勝利を挙げましたが、NAFTAの締結など民主党の伝統的な左派からするとあまり好ましい人物とは言えません(英労働党におけるブレアのポジショニングと少しだけ似た面もあるかもしれません)。ヒラリーはビル・クリントンよりもはるかに左ですが、それでもオバマ氏にははるかに及びません(日本ではオバマ氏が中道とかいう、米国でさえすでに見られない報道がいまだにあるようですが)。

オバマ氏は有力な左派の大物達からすれば「非常に愛いやつ」ですが、ヒラリーはこの連中からすればあまり好ましくないビルの片割れです。実際、オバマ氏もここらへんは心得ていて、講演ではNAFTAを徹底的にこきおろしたり、「クリントン、ブッシュのもとでアメリカ人はどんどん経済的に貧しくなった」(事実とは異なりますが)とか言って拍手喝采をあびています。勝負が全く分からない極めて早い時点でテッド・ケネディーやジョン・ケリーなどの伝統的な左派の大物の支持を得ている点でもこれが分かります。

ただし一般の米国人に目を向けると、5月14日時点のPew Researchでは、72%の回答者が「メディアはオバマ氏をまだ勝利者と呼ぶべきではない」と答えており、メディアや民主党指導部の見方とは相当離れている点も注目されます。まぁ、最終的にはオバマ氏が勝利するのでしょうが、私は今回断固戦うヒラリーを少し見直しました。「ヒラリーが○ン○マを半分オバマ氏にやれば、2人とも2つづつになる」とかいうきたないジョークを見ましたが、まぁ、大したものです。

ABCで厳しい質問を浴びせられて不満を述べるオバマ氏について、「熱いのがいやなら、キッチンから出て行け」とまで言ったヒラリーですから、最後の党大会のフロアーまで戦って欲しいものです。

2008/5/11 日曜日

インフレ懸念って、そりゃそーでしょう。

そろそろ利下げも打ち止めか(どうか分かりませんが)と思ったら、Bernanke先生は今度は市中銀行が連銀に預けている準備金に対して、金利を支払う許可を求めているようで(もともとは2011年までは認められていないので、前倒しの許可ですが)、暴走機関車というか、欲望という名の電車というか(意味不明ですが)、やりますねぇ。お小遣いをもらえる銀行は喜ぶでしょうが。

ところで、気になるインフレの方ですが、先月末にはボルカーお爺さんが「もう、そろそろ心配した方がええんじゃないかのう」とおっしゃってました。それに関連して面白いチャートを発見したので一発ご紹介。下は、1980年に使用されていたCPIの計算方法でインフレを計算したらどうなるか、という表でShadow Government Statisticから頂きました。

これは、コアCPIではないですが、コアでも大体同様の傾向になっているはずです。このチャートによると、ボルカーお爺さんが就任した当時の計算方法でいけば、インフレ率はすでに10%を上回っている状態でFF金利のターゲットは2.0%、DRは2.25%という、お爺さんからすれば「いや、もう若いもんにはついていけんわ」という世界ではないでしょうか。

もう一発分かりやすいチャートが、データの出所は同じShadow Govt Stat.ですが、レーガン時代、クリントン時代の前の計算方法でインフレ率を計算したらどうなるかというやつです(Sandiego Union Tribute)。

まぁ、意図的にインフレを過小に見積もるように統計が「改善」されているわけではないのでしょうが、例えば品質向上による値下がり効果(例えば、同じ値段でパソコンのスピードが倍になったら、値段が下がるのと同じとかいうやつです)は調整されているのに、安物の粗悪品の増加に対する「値上がり効果」の補正なんぞは聞いたことがありませんし、1980年代以降の「改善」は概ねインフレ数値を引き下げるものであったというのは確かではないでしょうか。

基本的にはこれは中銀からすれば、テイラールールの定数項をパーマネントに引き下げるのと同じような効果があるといえます。いや、テイラールールの下方シフトですと、市場の信認の問題や、インフレによる政策金利の定常状態の上方シフトにより、結局利下げ効果は相殺されますから、この場合の効果はテイラールールの下方シフト以上になります(なんたってインフレ上がらないですから)。

昔、どっかの国では「中央銀行総裁の首を切っても公定歩合を下げさせろ」とか言った有力政治家がいたそうですが、そんなことするよりも統計局の役人をおどしてインフレ率を下げる方が効果的かつスマートかもしれません(ってもちろん冗談ですので)。

2008/3/30 日曜日

血まみれ第1四半期:いろんな人達

第1四半期は大嵐になりましたが、金融、投資業界では嵐を生き残った人、沈没した人、相変わらずエゲツナイ人など、実力と運がシビアに試された期間でした。ここ3カ月は地獄のように忙しかったのであまり書けませんでしたが、最近数カ月でちょっと興味を引かれた(名経営者と言われていた/まだ言われている)人達のおハナシを一発。

1. やっぱりエグイで賞:ウォーレン・バフェットさん(バークシャー・ハザウェイ)

人の弱みに付け込んで「お前達の一番おいしい商売を買ってやるから、心安らかにお陀仏しろ」というのはフツー「救済」とは言わないもんですが、売ってくれないとなると、今度は自ら乗り込んで弱体化した連中の商売の奪取に動くあたり、年をとっても強烈にシビアなお方です。外が嵐だろうが、宇宙戦争だろうが、バークシャーの株を持ってる人は毎晩ぐっすり眠れることでしょう。

2. 明暗を分けたで賞:リチャード・コバセビッチさん(ウェルズ)とアンジェロ・モジロさん(カントリーワイド)

去年の米国のモーゲージ・ビジネスでは、オリジネーターとして1位だったのがウェルズ・ファーゴで2位でカントリーワイド・フィナンシャル、サービサーとしては1位がカントリーワイドで2位がウェルズでした。

しかし、結局カントリーワイドはボロボロになってバンカメに1株7.7ドルで救済買収され(1年前は45ドルくらいでしたが)、ウェルズはホーム・エクイティ・ローンで傷を負ったものの相変わらず結構な利益を出しており、コバセビッチさんも後任に無事席を譲って会長に収まるなど、名経営者と謳われた2人は対照的な結末となったようです。ただモジロさんは4000万ドル近い退職金や手当を断ったようで、一代で築いた会社の末路に対する無念さが少し見えるような気がしました。

あと、(今まで)無傷なところでは、ブラックロックのラリー・フィンクさんも、最近色々買った資産を合わせて1.3兆ドルでほとんど無傷というのは大したものではないでしょうか。一方でリーマンのリチャード・ファルドさんは色々煙が立っていますが大丈夫でしょうか?

おまけ: ベアーのとばっちりで賞:ジム・クレイマーさん

いや・・・。相変わらず面白い人ですが、この「ベアー・スターンズは絶対大丈夫。ベアーには問題なんで全然ない。ベアーの株を今売るのはアホだ」というのは・・・ちなみに3月11日放映です・・・

2008/3/25 火曜日

米国予備選:民主党に流れるウォール街のお金:金欠マケイン

相変わらず地獄の忙しさで、おまけに予備選のチェックなどしてると何も書くヒマがないのですが、前回に続いて予備選に関してちょっと。今回の予備選は、史上まれに見る額を各候補が集めて使いまくっていますが、お金では相変わらずパッとしないのがマケインお爺さんです。で、米国の金融界の連中の寄付がどうなっているかをさっとチェックしてみました(出所はCenter for Responsive Politics)。

もともとウォール街の連中は共和党支持が強いのですが、今回の共和党候補は金融界に割と(かなり)冷淡なマケインということで、寄付にもそれがストレートに出ています。今のところヒラリー・クリントンとバラク・オバマの民主党両候補が証券/投資業界の連中から仲良くそれぞれ約600万ドルずつもらっているようですが、それに対してマケインは250万ドル程度とウォール街の冷たさが表れています。

世論調査では、民主党両候補とマケインは概ね互角というところなので、これは「勝ち馬に乗る」とかそういうものではなく、基本的に言うことをあんまり聞いてくれそうにない御仁に出す金はないというところでしょうか。サブプライム騒ぎでも基本的に「徳政令」一本槍の民主党のお二方に対して、マケインは以前には「不法のあったものには処罰を」なんて言ってましたし、今日も「政府の仕事はシステミック・リスクに対処することであり、大銀行であれ、小さい借り手であれ、無責任な行動をとった者を救済して、それに報いるのは政府の仕事ではない」なんて言ってました。

ちなみに2000年の選挙では、証券/投資業界の連中の寄付はブッシュに400万ドル、ゴアに140万ドル、2004年はブッシュに880万ドル、ケリーは400万ドルちょっとというところでした。

ところで、マケインは軍事的にはタカ派なので、軍需産業の連中には良いかというとそうでもなくって、ヒラリーの22万ドルに対してマケインは18万ドル程度でここでも大負けです(オバマでも14万ドルを集めています)。

大体ステルス機への給油機に関する国防省と米国軍需産業の大手ボーイングの大型商談を、不正な取引の可能性があると言いがかりをつけてつぶした張本人がマケインで、このあおりを食ってボーイングのエグゼクティブが2人牢屋に放り込まれたという事件があったこともあり(しかもこの事件のおかげでボーイングの代りに受注したのがウヨクの米国人の大嫌いなフランス企業というオチまでついていました)、軍需産業もイマイチ応援したくないというところでしょうか(未だに議会ではボーイングに近い両党の議員がマケインを攻撃しています)。

他にも例えば、法曹/ロビイストの寄付ではヒラリーが1,400万ドル、オバマが1,100万ドルに対して、マケインは350万ドルと、やはりマケインにはお出してもしゃーないというところのようです。

マケイン陣営への財界からの主要アドバイザーはシスコ・システムズのジョン・チェンバース(!!)がいたりと結構渋いんですが(サイフも渋いと思いますが)、まぁ、これでマケインが勝ったら大したもんですねぇ。

2008/2/7 木曜日

選挙中盤・・・

ここ1カ月ほど地獄の忙しさで、長時間労働の後はへとへとになって最後に大統領予備選の状況をチェックして眠るという超不毛な生活をしていたおかげで、そこらへんの人よりも選挙状況には明るくなってしまいました。

と言っても、米国の内政にはほとんど無関係な一外国人でしかないので、何のコメントをする立場にもないのですが、ただ米国の大統領となると米国外にもそれなりの影響があるので、その面では興味の引かれるところです。

一外国人として次期米大統領に望むことといえば、1. 予見可能性(つまり、あまりブレないこと)、2. 内外の保護主義に対抗できること、3. 米国外のイベントに一貫した建設的な関与ができること、くらいなんですが、まぁこれが満たされるのは残っている候補の中ではマケインお爺さんくらいではないかと思われます。

金融関係や投資家の間ではロムニーの人気が高いように感じます(もちろん、投資家優遇税制を当て込んでのことです)。しかし、同氏はさすがに元ベインの親玉で、情報の非対称性を利用する手腕は今回の選挙戦を見ても大したものですが、これは世界市場で重要な地位を占める米国の大統領としてはあまり望ましい資質ではないような気がいたします。それに都合が悪くなるところころ変わるところは知事時代から変わっていないようですし。メインストリートの経営者にはそれほど人気がないように見えるのもこういうところがあるような気がします。有能なのは分かるのですが。

火曜日のところではマケインお爺さんが共和党ではアタマ2つくらい出た感じですが、共和党のハードコア(右翼)の方々はお爺さんを目のカタキにして嫌っているので今後も少し多難な感じもあります。まぁ、お爺さんの頑丈さは今までで十分にテスト済みですが、頑張って欲しいものです。

2007/11/26 月曜日

「暗黒の金曜日セールス」は好調のようですが・・・

毎年この時期になるともうヘロヘロで、ロープにでもつかまるか、タオルでも投げ込んで欲しい気分ですが、感謝祭の翌日は「Black Friday」と呼ばれており全米主要小売店が年間一番のバーゲン・セールを行う日です。またクリスマス商戦の「キックオフ」とも言え、消費の動きに注目が集まる日でもあります。

Bloombergによると、Black Fridayの売上は全米で前年比8.3%と予想を大きく上回る好調だったようです(週末の2日間でも7.2%の上昇のようです)。ニュースを色々あさってみると、中身は一概に明るいとは言えないようですが(例えば1人当たりの支出は3%以上減少しているなど)、株式市場にとっては年末のプレゼントになるかもしれません。

もちろん、「これで心配は吹きとんだ」などと言える状態には程遠いわけで、このニュースで皆さんが少し浮かれ気分になっているようであれば、ポートフォリオの組み替えのチャンスかもしれません。

先週の第3四半期の業績発表がほぼ終わった時点で、S&P500の企業利益は前年比8%以上の落ち込みで、米国の景気の減速はかなりはっきりしています。

これ程のマイナスの時は通常ですと数四半期後には”R”の字がちらつくのですが、まぁ、金融と一般消費財という「サブプライム銘柄」が両者ともマイナス30%を上回る落ち込みで足を引っ張っているわけで、ダイハードな強気派は金融だけ除いた数字を計算して「米国は大丈夫」なんて言ってる人もいます。しかし、これは何となくハンバーガーからバーガー部分を除いてカロリー計算をして「ハンバーガーは健康食品」なんて言ってるような感じもいたします。

一方で、資本財、ハイテクは2桁成長ですが、これは両者とも基本的にグローバル経済銘柄で、世界経済が相変わらず底堅いことを示していると言えます。基本的に米国は減速、グローバルはそこそこ強いというシナリオは変えていない人が大半のようですが、米国がどれだけ弱くて、世界経済がどれだけ底堅いかはこれからのお楽しみ(楽しくないかもしれませんが)というところでしょう。

2007/11/12 月曜日

市場つれづれ

先週後半はまたまた豪快に米国市場が下げましたが、少し「???」と思ったのが新聞の見出しの類いです。

米国のメディアなんかでも「サブプライム問題への恐れで市場下落」なんてのがデカデカのってましたが、これはもちろん30%位しか当っていない、、、というか70%は違うような気がします。

大体大下がりしたのは、サブプライム関連どころか「ドル安銘柄、グローバル経済銘柄、業績好調銘柄」のハイテクの大型株連中です。先週1週間で見ても、メディアが「下手人」としている金融はマイナス3%くらいでしょう(ハイテクは8%以上下げています)。それに先週はクレジット関係では、そんなにサプライズの話はなかったですし。

さて、問題のハイテクですが、最近は「ミニ・フロス」(バブルというほどでもないんで)状態で、ここ3カ月だけでもNASDAQ100は20%以上、年初来では30%近く上昇していました。つまり、何かきっかけがあれば、いつ大きく調整しても不思議はない状態でした。今回のきっかけはシスコのアウトルックが、皆さんが「イって」しまうほど強くなくって、失望売りがかさんだというところではないでしょうか。

火曜日の終値から見ると、ハイテクの調整具合が良く分かりますが、VMwareが20%以上、シスコ、百度が約16%、オラクルが約15%、アップル、ヤフー、RIMMが約13.5%、グーグル、アマゾンが約10%、比較的損害が軽微だったマイクロソフトでさえ3日間で7%以上下げています(シスコだけでも時価にしてほとんど330億ドルが吹っ飛んだ勘定になります)。

さて、サブプライム問題に、経済減速、そして今度は「最後の砦」が「陥落(しかし大げさですが)」ということで、American Association of Individual Investorsが調べたところでは、米国の個人投資家の50%以上が市場に対して「弱気」となっているようです。これは米国人にしては相当弱気な数字でかなり一般投資家が動揺しているのが分かります(ちなみにファンド・マネジャーなどの調査では弱気派は大体20%程度です)。

というわけで、かなりパニック気味に強烈な経済減速を織り込んでいる感じなのですが、来週はThanks giving商戦の最初の感触が少しずつ出てくる週ですので、それ次第で変わってくるような気もします。

2007/10/22 月曜日

シティ(+アルファ)のスーパーファンド

先週はシティ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガンの米銀3行による「サブプライム対策基金」の設立合意が話題になっていました。

まぁ、これは正確には「サブプライム対策」とゆーよりはSIV対策なわけで、SIV対策というとどうも「シティ救済」という感じが濃いような気がするのですが。自社傘下のSIVの飛び火(というか自業自得なんですが)を避けたいシティと、サブプライムによる動揺に何か手を打ちたいポールソンのお互いに全然違う思惑がどっかでくっついちゃった感じじゃないでしょうか。

SIVは、特別目的会社(SPC)みたいなもんで、一部投資家にうまい話をして出させたエクイティを種に、これまたうまい話でCPなどを発行しまくってお金を借りまくって、そのお金を金融会社の債券やらモーゲージ証券につぎこむという商売ですが、要するに人から出資させたお金をベースに借金して、別の人の借金に投資するという大掛かりなサヤ取り商売です。(で、投資先のモーゲージ証券の値下がりで大ピンチに陥っているというわけです。)

こんなもんですから、SIVのサヤ取りのスプレッドはおそらくせいぜい0.2%位で、4000億ドルのSIV業界のおそらく20-25%を占めるシティでも、せいぜい稼げるのは2億ドル程度ではないでしょうか。エクイティ出資者と山分けにすると税引前で1億ドル程度の儲けになりますが、年間300億ドルも儲けるシティがこんなアホほどリスキーな商売に、こんなスケールで手を出している事自体がこの業界のクレージーさを物語っています。

で、シティは自社傘下のSIVには全然エクイティを出していませんから、バランスシートにものせていません。SIVへの投資家が大損失を被っても、「救済する法的義務は全くない」とおっしゃっています。もちろん、これがそのまま通用すると思ってる人はあまりいなくって、シティも母屋に火がつかないようにこの「救済ファンド」でSIVを支えておきたいというところでしょう。

バンク・オブ・アメリカ(とJPモルガン)はSIVにはほとんど手を染めていないはずですが、バンク・オブ・アメリカが運用しているマネー・マーケット・ファンドが山のようにSIV発行の借用書を抱えているそうで、こっちにはこっちの事情がありそうです。(なんでマネー・マーケット・ファンドがそんなもんに一杯投資しているのかも問題ですが)

評判も散々です。

ウォーレン・バフェット(Foxのインタビューで):「んなことやってるひまあったら、SIVを自分のとこのバランスシートに入れろ」
ビル・グロス(インタビューで):「アホか」

しかし、今回の話で(シティ以外で)一番評判を落としたのは、嬉しがって銀行間の会議を設定したポールソン先生ではないでしょうか。大体この手の話の「自然な」仲介者はNY連銀ですが、NY連銀も動く気配が無いときに「もう待てん」って感じで「昔のお仲間たち」を救済に動いたと見られても仕方がないような気がします。(はしゃいで、G7でも「PIMCOやフィデリティも参加する」なんて口走ったようですが、その後PIMCOに否定されて散々です)

2007/10/13 土曜日

何となくバブリー・・・

今週はFOMCの議事録で利下げに全員一致だったというので、皆さん「やっぱり、もう一杯、いやひょっとしたらもう二杯」という感じで完全に一杯機嫌になったという感じでした。(FRBの場合は委員の反対にどれだけ意味があるのか、私には少し分かりかねますが・・・。英国のMPCの場合は、各委員が自分の意見に対して「個人的にも公的にも責任を負う」とされており、総裁が票決で敗れることも結構あるので、票数に意味があるのは分かりますが・・・ それにコーン御大は「50bpもやったら十分かも」みたいなことも言ってますし)

フェリックス・ズラウフなどは2年程前から、今の強気相場は10年毎のバブル絶頂-崩壊への助走だなどと言っていましたが(今年の始めにも、今年は大きい調整があるが、強気市場は終わらんなんて言ってました)、何となくそれを思い出したりした週でした。

で、今週は色んなとこに「データとリリースへの対応の早わかりシート」ってな感じの題の戯れ言のメールが回っていたようですが、内容はこんな感じでした(原文は英語ですが)

弱いデータ = FRBの利下げ、したがって株は上がる。
強いデータ = 経済は強含み、したがって株は上がる。
銀行の損失40億ドル = 悪材料出尽くし、したがって株は上がる。
原油価格急上昇 = エネルギー関連銘柄に好材料、したがって株は上がる。
原油価格下落 = 消費者に好材料、したがって株は上がる。
ドル急落 = 他国籍企業に好材料、したがって株は上がる。
ドル急上昇 = インフレ沈静、したがって株は上がる。
インフレ急上昇 = 全資産の価格上がる、したがって株は上がる。
インフレ沈静 = 利益の質が上がる、したがって株は上がる。

あーあ。何と言いますか・・・まぁ、これが「強気」ってもんなんでしょうが。
(ところで、上のサンタさんバーナンキの絵はここで頂きました)